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けい子ちゃんの変声術について

 ハーイ!得意なことは声の振り幅、苦手なことはソレを使いこなすこと、多声類修行中Vtuberの金継けい子です。

 前回に引き続き、開発中の声劇特化アプリ「ボイストランド(2024年12月現在、正式提供に向けてクラウドファンディング実施中)」推しの気持ちを込めて、声劇で使えそうなテクニックを書いていきます。

 ただし、今回のほうが上級者向けというか。「考えるな、感じろ」の世界を言葉メインで解説する、っていう無茶ぶりに挑戦しています。
 上手くなるための技術じゃなくて……普段と違う一面をペロッと……脱いでみたい!という人向けです。けい子ちゃんはそういう音声を味わうのが大好きです。どちらも特殊性癖ですわね。

 いつもと気分を変えて、お喋りしたり歌ったりしたい時にでも、どうぞ、お試しあれ!



使い方の基本

 どういう使い方をすると便利なのか、やったらマズいことは何か、まず最初に整理しておきましょう。

1.ざっと変声術リストを全部読む(この時点で練習はしない)
2.出したい声の特徴を、自分の頭で整理する
3.その声の特徴を、変声術リストから見つけ出して、試してみる
4.体に無理がないように、自分で練習方法を調整する

オススメの使い方

 けい子ちゃんの変声機能は……気づいたら自然発生していた謎技術です。心当たりを説明すると長くなるので、また今度。
 そこから「地声って何?どこからどこまで?」「意識してビシッと使うにはどうしたら?」って思い始めて、色んなところでお勉強したり本を読んだり、少しずつ脳内整理してきました。
 その中から声色を決める要素に絞ったものが、今回ご紹介する「けい子ちゃんの変声術」です。感情表現抜き。変顔もナシ。

ここから、大事な注意点!

 人間の声の使い方って、かなり細かいことを同時並行処理しております。  
 この変声術は、それを意識して出来るように!が目標なのですが……一度に全部意識してやろうとすると、けい子ちゃんみたいに頭がパンクして発熱・頭痛が起きたり、声色が安定しなくなる可能性があります。
 なので、基本、出したい声のイメージを決めてから、一つずつ、感覚に落とし込むように練習しましょう。

 イメージがぼんやりしていると、似てるけどドンピシャではない、ってなりやすいです。
 例えば「誰々さんのような声を出したい」って使い方をしたい時は、まず「誰々さんの特徴はこうです」って説明できるように、似た役を演じている他の人と聞き比べてみたりして下さい。比較すると特徴は分かりやすくなるはず?
 でも直感的に「こういう体の使い方をしてる」って分かるなら、頭を使って観察する必要はないです。練習してできるか、物理的に無理か、ジャッジするだけでOK。

 骨格や体質的に無理だとしても、内側(筋肉の使い方・性格)の再現ならできたりします。まるで中身が入れ替わったようにヒュッと変わるのは面白いです。そういうの聞くの大好き。
 ちゃんと体を壊さないようにお手入れしていけば、練習しているうちに筋肉の付き方とかが変わって、今までと違う声が出るようになることもあります。
 筋肉量が増えると低い声がしっかり出るようになったり、声帯がしなやかになると高い声がスッキリ出るようになったり。のどが痛くなったら、しばらく黙ってのど飴なめたり。メンテナンスは大切に!!

映画「サウンド・オブ・ミュージック」表紙の真似

 顔立ちやボディラインも、ちょっとした動きの仕草も、あらゆる気持ちの変化も。自然と表現に出るくらい、体も心ものびのびした声が一番美しい。けい子ちゃんはそう思っています。
 それが「地声」。それが「一番得意な声」。そこを目指して、全部の変声術を試していくのも使い方の一つ。体への負担に気を付けながら、ぜひ、お好きに遊んでみて下さい。


口の横幅を変えてみる

 練習しやすくて声の雰囲気が変わりやすいのがコレです。口の横幅を広く使った声、狭くした声、これだけで多声類を名乗れるくらいに変わります。

けい子ちゃん唯一使いこなしてる技術

 ガサツとお淑やか。むちむちボディと細身なスタイル。男性らしい男性と女性らしい女性。何としてでも生き残るような生命力が強い人と、矜持のために死ぬ覚悟があるような精神的に強い人。
 そのくらい印象が変わります。どちらもリラックスした状態でスッと切り替えられるのが目標です。
 最初は鏡を見ながらがいいかも? 唇の横幅だけでなく、口の中の空間やアゴ下の筋肉も意識するのがコツです。「ガーッ」と「もー!」みたいな口の開け方の違いを、セリフ全体に使っていく的な……?
 慣れてきたら、広め、狭めに加えて、中間だとどんな声になるか試してみましょう。この中間部分がその人らしい声質ってものです。たぶん。

 たとえば子役をやるときに、少女、少年といった設定の違いがあります。
 最近の流行りの作品だとやらない古典的な考え方ですが、男の子っぽいなら口幅は広め、女の子っぽいなら口幅は狭め、って使い分けると声で設定が分かりやすいです。
 実際の性別より顔の雰囲気で選ぶのがオススメ。男の娘なら狭く、野生児な女子なら広く。
 こういう方針だと音程や語気が自由に使えるので、感情表現しやすいっていうメリットがあります。好きに喋ってもキャラっぽさを保ちやすい……はず?

 逆に演じるキャラの見た目を重視した表現にも使えます。
 同じ演技でも、口の横幅がシンクロしていると、そのキャラ専用ボイスっぽさが出るのです。映画・ドラマの吹替だと「アゴが似てると声が合う」とも言われたりしていますね。


舌の形が一番のポイント

 練習するのが難しいですが、舌の使い方のクセを変えることができると、これもまた声色が大きく変化します。
 全体的に平べったく伸ばしてるのか。どこか盛り上がっているのか。そうやって口の中を変形させると、日本語と英語とフランス語とドイツ語の雰囲気の違いみたいな、特徴が出てくるのです。

いわゆる「美声」を目指すなら

 少し鼻に響かせるように、舌の根っこ、のど寄り部分を持ち上げます。こうすると前に音声が出やすくなって、口ごもる感じのないスッキリした声、ツヤのある声になります。

断面図にすると、こう

 お喋りに慣れてなくて何となく地味な音声になるときは、舌の柔軟性が足りなくて、舌が平べったい状態のことが多いです。これはこれで好き。
 日本語は英語とかに比べて、舌を使わずに唇だけで発音する特徴があるらしいです。

 この一般的美声に、声帯の上下の位置を加えると、若々しいキャピッとした感じになったり、セクシーな大人っぽさが出たりします。
 若さ=声帯の位置を上げるには、ちょっと背伸びしているイメージで、肩より上が引っ張られているような体の使い方。
 大人=声帯の位置を下げるには、全身に疲労感が残ってるときのように、下に押さえ付けられているような筋肉の使い方。
 そして、存在感があるキャラクター(典型的な主人公やラスボスなど)は上下どっちにも力強く。どんどん流れるように感情が変化して、それに合わせて上下のパワーバランスも変わっていく……みたいな感じ?

細めの音色や、おヒゲを出したいとき

 舌先を上あごに寄せるようにすると、摩擦音が強くなります。この状態で
喋るとフランス語っぽい雰囲気になります。

しゅわしゅわ音声のとき

 こうすると「清純キャラ」「物静かな雰囲気」「浮世離れした気配」的なイメージ。発声が弱めだと「虚弱体質 or 病気で弱ってる人」に聞こえますし、逆に強くすれば「細かいことが気になるタイプ」っぽさが出ます。

 ビジュアル的には細身な印象。ある程度なら、おっぱいや筋肉があってもおかしくないですが、そうだとしても「骨格が分かりやすい肉付き」って感じがします。
 男性(もしくは男性的な喋り)の場合は、「口ヒゲを生やしてそう」な感じにも使えますね。声帯でやる方法もありますが。サンタクロースのおじいさんみたいなモジャモジャおヒゲが実際あった場合、そこに声が当たって摩擦音も混じるものなので。    
 ご老人だと「枯れて見える」タイプ。お年寄りは機敏に動けないものなので、加えて、やや唇の動きをゆっくりにすると、それだけでも結構おじいちゃん&おばあちゃん感が出ます。怒鳴るときは語尾の母音を伸ばしたりすると、早く喋ってもお年寄りっぽいバランスを保ちやすいです。

太めの音色や、唇の厚みを出したいとき

 舌先だけを下げるように、下あごの歯並びに沿わせるようにすると、声に丸みが出ます。摩擦音が弱くなるからそう聞こえるわけですね。この状態で発声を強くすると、ドイツ語っぽくなります。

かつ、前歯に声を響かせるイメージ?

 「ナイスバディのお姉さん」「筋肉ムキムキのマッチョマン」「ぷくぷくしてる体型」など、肉体的にむちむちしている印象ですね。若くて細身でも「気の良いオバチャン」っぽさを出したい時は、これに加えて、口をダイナミックに動かすといい感じになる……はず?

 けい子ちゃんが、黒人系の女優さんとか、ぷっくりした口紅がチャームポイントな美人さんとか……唇の厚みが印象的な方を演じるときは、ちょっとコツが変わります。
 アヒルのお口みたいに少し唇を突き出して、歯並びじゃなくて歯先や下唇の内側に当たるような、舌の位置取りをしています。
 これ、たぶん口紅が崩れにくい喋り方でもあります。口紅塗って練習するのもアリかも? ドラァグクイーン系の男性キャラを演じるときも、当てはまる気がします。中性的キャラには不向き。

声帯は無理しないのが大事

 音程の高さ、息の量、声帯の締め具合、このあたりのテクニックは声帯の担当です。取り扱い注意の、一番リスクがあって控えめにやるべき部分です。ちょっとだけ使う小技です。

 他の部分は、体を壊すリスクは低いですが、声帯だけは違います。ご自分の体質に対して声を出しすぎるだけで痛める可能性があって、最悪、声質がハスキーなものに変わって戻らないこともあります。
 なので、年齢や体格の雰囲気を変えるためのベース要素というより、小技として使うこと前提に書いてます。これだと負担は少ないはず。
 それでも違和感を覚えたらすぐメンテナンスして下さい。

音程の扱い方

 庶民的なのかお上品なのか。大胆なのか慎重なのか。こういった部分は、語尾に向かって上げるか下げるかで表現することができます。
 日本語のアクセントは音程の高低なので、ずーずー弁のような特殊な発声は別として、地域ごとの訛り(方言特有の発音)も基本はここのジャンルです。それ以外だと地域の治安職業、通っている学校の雰囲気家庭環境などが癖として出てきたりします。
 周りから影響を受けやすいところなので、空気読まない性格なら、あえてセオリーから外すといい感じになりますわね。

声のハリは四種類

 声帯の張り具合空気量を組み合わせて使うと、実写っぽい声・アニメらしい声、ハスキーな声・ダミ声のようにバリエーションが出せます。

分類図にすると、位置関係はこう

 実写っぽい声より、アニメ声のほうが声帯の張り具合はやや強め。けい子ちゃん的には胸から上を引き上げるイメージで、そうするとキュッと周波数帯が絞られます。
 逆に実写吹替(ただし韓国系やファンタジーを除く)では腰をどっしりと据えて、自然な体の重みで声帯を引き延ばして、空間的な厚みを持たせるとそれっぽくなる気がします。

 空気量が多くて声帯の力を抜くとハスキーな声、ささやきっぽい音色になります。
 空気量が多くて声帯の張りも強いとダミ声になりますが、叫ぶときにうっかり出てしまうのは仕方ないにしても、基本は使わないようにして下さい。

 ちなみに老け役をするとき、よく使われるのはダミ声ですが、実際に年を取った体では声帯は衰えているものです。
 お酒飲んだり大声で喋り続けた結果として枯れた場合には、のどが乾燥してダミ声っぽく聞こえますが、正確には声帯を張るのが上手くできないからノイズが入るのです。そういう声が必要なキャラもおりますが。
 声帯を完全に脱力させた状態で喋ると、声帯がビロビロ動いてノイズ交じりの、実際のご老人に近い発声になります。お疲れ状態で一息ついたときの「あ゛~」って声です。すき。
 こっちのほうが声帯への負担も比較的軽くて、特に、長いセリフを喋るときに役立つと思います。


鼻筋の高さを演出する

 鼻の中には鼻腔と呼ばれる部分があります。これを狭くすると、鼻濁音や猫なで声に。逆にクワッと広げると、鼻筋が高くて伸びのいい音色になります。カラオケでエコーをかけるみたいな?

 「鼻筋を高くするって整形しないと無理じゃないの?」……そんな感じの反応いただいたこともありますが、音声だけの話で言えば、例えばミントの匂いを嗅いで、スーッとしてる時の鼻の状態を再現すればよいのです。
 当然ながら鼻炎状態だと出来ません。健康第一でいきましょう。
 たぶん、軟口蓋の上げ下げをしてる、というのが正確なところ? オペラ歌うとき軟口蓋は持ち上がるものらしいので、同じことしてるのでは……?

断面図(けい子ちゃんは鼻腔が広め)

 鼻腔は、共鳴腔と呼ばれる発声器官の一つです。声帯で生まれた音は、共鳴腔に響くことで普段私たちが聞く声になります。
 チューバとトランペット、チェロとバイオリンのように、響く部分の大きさは音色に違いを生みます。マウスピースや弦という音が出る部分だけで、声帯だけで決まらないのです。

 ちいちゃい小人か、おっきい巨人か。平たい顔族か、彫りが深い顔族か。軽々と抱っこできる小動物か、人間より大きな猛獣か。

 動物の鳴き真似のクオリティを上げたり、物理的な大きさの違いを表現したい時には、のどや口以外も使うってところが大切です。
 胴体と繋がっている手足を伸ばしたり、ムキッと力を入れたり、表情筋を動かすことでも、声帯や共鳴腔って微妙に変形します。この細かいところが命。
 最近だとメカ的技術でも似たことができるので、気軽な一発芸くらいのモチベーションで練習してみてはいかがでしょうか。

鳴き声の大御所フランク・ウェルカーさんの物真似


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