正解と失敗からの解放、「きっとうまくいかない」から「ま、ちょっとやってみるか」ぐらいに。
楠木建さんの新著「絶対悲観主義」には、これからのまちづくりに通じる思考と行動のヒントがたくさんありました。
地方のまちづくりをやっていると
・やたら多い利害関係者の数
・根拠は希薄に語り継がれる保守的な伝統
・論点より「誰」が言ってるかで賛否が決まる構造
など、いかにもうまくいかなさそうな環境はつきもの。
この環境で、新しいことをやろう!なんて言っても、それこそ本にも書いてあるとおり「うまくいくことなんてひとつもない」のです。
といって、そこで
・あきらめて評論家になってブツブツいうだけで終わるのか
・たまにうまくいけばラッキー!で楽しむか
で、仕事のみならず人生楽しめるかぐらいの差がでるのではないでしょうか?
1.事前の期待と事後の結果
本では、「事前の期待」と「事後の結果」によって4つのパターンがまとめられています。
③は最悪のパターン、②はひょっとしたら①より理想かもしれません。
2.絶対悲観主義の効用
本の中で、絶対悲観主義は、仕事への構えをラクにするものと位置付けられています。
個人的に感じた「絶対悲観主義」一番の意義は、「こうでなければならない」という正解や成功からの解放です。
「失敗がこわくなくなる」は、特に10代、20代にとって重要なポイント。
3.失敗からの回復力
地方のまちづくりで、ぼくが一番大事だと思っているのは、新しいことへのチャレンジです。
そして、そのチャレンジをもっとも阻害するのが「失敗」するおそれです。
「絶対悲観主義」なら、「うまくいかなくて当然」「失敗するのが当たり前」という前提になりますので、失敗に対する恐怖心・抵抗感が和らぐことが期待されます。
本の中で、畑村洋太郎さんの「回復力・失敗からの復活」が紹介されています。
要は、エネルギーがないときは、何してもうまくいかないので、待つのみ。それまでにできることは気晴らしをするぐらい。
抜く力、ともいえるのでしょうね。
ぼく自身、うまくいかないときは、両手をあげて降参。1日何もしない作戦にでることが、結果的には回復への近道になっているように実感してます。
このあたり、メンタルケアの必要性がましている昨今、マネジメント層必携の思考スタイルになっていくのではないでしょうか。
4.幸福への出口
「絶対悲観主義」の効用として、正解や成功からの解放とともに、もうひとつ大事なのが、他人との比較からの解放があります。
本の中では、2人の名言が紹介されています。
地方のまちづくりをしていても、どうしても全国や県内の他地域との比較になりがちではないでしょうか?
集客人数、売上とか、メディアやSNSでどれだけ拡散されたとか、著名な誰それが来たとか。。
自分たちのまちは、自分たちにしかわからないので、他のまちと比較したり、定量的な成果での比較に意味はなく、本質は「自分たちがどうしたいのか?」です。
ただし、自分たちの常識、経験、人脈だけでこれまでどおりで考えることとは意味合いが違います。
自分たちがどうしたいのか?が明確にある前提で、その実現のために必要な町外の意見・情報や事例を積極的に取り入れるということは、おおいにやっていかなければならないものと考えます。
5.ポジティブ・シンキングへ
「絶対悲観主義」は一歩間違えれば、単なるネガティブで投げやりな姿勢になるのだと思います。
そこはぼくの日常実務に置き換えても、結構、紙一重かなと。おもしろいところです。
「自分の思い通りにうまくいくことなんて、ひとつもない」という思考までは一緒だとして、その後の行動が、
・うまくいきっこないのであきらめて何もやらない
・人がやってることをとやかくいって自分では汗をかかない
ということでは、単なるネガティブです。
ポジティブに転換していくためには、
・あきらめずにやり続ける
・人に任せず自ら汗をかいてやりきる
といった行動をとれば、うまくいったときの喜びは、最初からポジティブ・自己肯定感満載の状態でやるよりは大きいのだと思います。
「どうせうまくいかない」という考え方は、謙虚にもなるし、コトの難易度をみんなで共有することで、より高みを目指したアイデア出しにもつながっていくので、チームビルディングとしても有効かと。
悲観と楽観のせめぎ合い、これからも楽しんでいこうと思います。