建築学生が地方・ベンチャーで働く5つのメリット。キャリア選択のポイントとは?
「ゼネコン、設計事務所、ハウスメーカー、デベロッパー以外の就職先ってないの?」「目の前のお客さんに喜んでもらう設計をしてみたいけど…」「設計課題で建築のプログラムを考える方が好き!」
1.建築系の採用面接をしてて思うこと
前職UDS時代から、新卒・中途を問わず建築学生・建築系の社会人と毎年100人以上面接をしてきました。
応募動機のほとんどが、
ぼくが応募してくれた人によく話すのは、
設計が目的であれば、設計センス・スキル・知識そのものに高いレベルが求められます。建築家やデザイナーとして生き残っていくために、好きな建築家の事務所、アトリエ系に就職するのでしょうが、労働環境としてはハードです。その覚悟があるのか?が問われます。
誰しも建築家としての独立は目指すのでしょうが、いざ就職活動をしてみると、より労働環境のよいところ、という条件で結果的にゼネコンやハウスメーカー、大手の組織系設計事務所、デベロッパーを選ぶ人が多いように見えます。
設計を手段として、目的が明確で、目的を果たすためにゼネコンやデベロッパーにいくのであればおおいに結構なことです。
これはかなり危険な選択。
まずは整理したほうがいいかなと。
2.地方・ベンチャーに就職するメリット
建築家の事務所・アトリエ系ではなく、ゼネコン・ハウスメーカー・大手設計事務所・デベロッパーでもない、第三の選択肢が地方・ベンチャー。
地方・ベンチャーのメリットを5つあげてみます
①まちづくりにトータルで関われる
ぼく自身が、2020年3月から、宮崎県の1万人のまち、都農町に移住してまちづくりの仕事に携わって、建築系スタッフのニーズを痛感します。
小さな町に、建築の経験や技術を持った人はほぼ存在しません。役場の建設課でも1人、2人いればいいところ。
一方で、公共施設はご多分にもれず老朽化、建て替えが必須。人口減少や若者流出を抑止するためには、魅力的な公共の場づくりもしなければ。でも、建築技術者が少ないため、発注するにも与件をつくれる人がほぼいなかったり、発注したとしても、設計事務所から提出された図面のチェックする人材がいないので発注できない、というのが実情ではないでしょうか?(実話)
地方・ベンチャーで働く最大のメリットは、一から十まで、ほぼ全ての工程に首を突っ込むことができる(突っ込まざるを得ない?)こと。都心では分業化・専業化せざるを得ないなか、20代で全体感・総合的な事業感覚を養えるのは、将来を考えると得難いキャリアかなと思います。
②設計与件構築力(=企画)がつく
設計は企画と与件があってからのスタートですが、地方やベンチャーでは与件が言語化されていることは稀です。
なんとなく必要性が問われるぐらいの状態で、新しい建物、もしくはリノベーションをする必然=設計を発生させることそのものを明確に言語化して、予算化する必要があります。
スキルとして与件構築力や事業の企画力が身につきます。
③事業収支の知識・ノウハウがつく
地方やベンチャーだと予算が厳しいのが通常。建物をつくる、なおす必要性の理解は得たとして、かけられる予算そのものが少ないため、工事費の削減方法や、工事費をかけただけの収益を見える化していかなければ、設計行為は発生しません。
スキルとして事業収支の構築力が身につきます。
ぼくの主観ですが、おおくの設計者が数字、特に事業収支に対して苦手意識を持っています。この分野に強みをつくれれば他の設計者との差別化にもつながりますし、施主から信頼を得る一番の近道であると断言できます。
④運営・経営面まで見れる
建物をつくることになったのはよしとして、運営するプレイヤーがいないのも地方の大きな課題です。
従って、運営側の力量や採用力を踏まえた企画・設計にしなければ、カッコイイ建物はできたけど、運営破綻を起こしてしまいます。
町の商工事業者と日頃からコミュニケーションを密に、信頼関係をつくりながら、どれだけの運営ができるのか、どれだけ収益があがれば事業者がやっていけるのかという情報を判断材料にしていけば事業としての成立可能性が高まります。
⑤コミュ力が圧倒的に身につく
地方やベンチャーで働く場合、建築知識や情報を持っている人は稀です。従って、建築界隈の人が使いがちな専門用語、技術用語をわかりやすく説明する能力が問われます。
地方の場合は高齢者の比率も高まるため、カタカナ用語はそれだけでシャッターがおりてしまうこともザラ。
自分が知っていることを、知らない相手がわかるように翻訳しながらコミュニケーションをとっていく必要があります。
このスキルは、別に地方・ベンチャーに限らず、あらゆる施主や関係者に有効なものだと思います。
3.キャリア選択のポイント
建築知識・設計技術をもって、
・住民・自治体のニーズの引き出し
・コンセプト構築
・事業収支を組んで工事費予算算出
・設計与件の言語化
・住民・自治体のニーズに即した設計事務所・建設会社を選定
・設計事務所・建設会社と伴走
これらの機能はどこの地方自治体も喉から手が出るほどほしい人材です。
ただし、求められる知識は広範にわたり、
「頼られる・任せられる」=「責任が大きくなる」
ことを意味しますので、相当な覚悟をもってのぞむことが必須です。
サラリーマン設計者的に、縦割り発想や、業務の線引きをすると信用が失われる可能性があるので要注意です。
12月14日(木)20時より、
2人の建築女子を中心にリアルな状況を共有しながら、これからの建築系のキャリアを話し合う「まちづくりカレッジ」を開催します。
ぜひお気軽にご参加ください。