まちづくり・多職種連携の必携スキル、ジェネレーターを総合診療医の先生たちと共有
ファシリテーションをしていて、参加者の意見は引き出せても、新しいアイデアや具体的な企画につなげるって、難しくないですか?
話し合いのお題が、新しい場づくり、モノづくり、閉塞した状況の打開策になると、通常のファシリテーションスキル+αが必要となります。
ぼく自身は、ファシリテーションを学ぶ前に、入居予定者が話し合いながら自由設計のマンションをつくるコーポラティブハウスのコーディネイトで、利害調整や合意形成が難しすぎて、ファシリテーション+αのスキル習得を余儀なくされてました。
その後も、50社以上の大企業が名前を連ねつつ、ひとつの世界観を形成するキッザニアでの生々しいスポンサー利害調整、900人近い多職種混在のベンチャー企業の経営など、ファシリテーション+α実践の連続。
我流のやり方と、後から学んで知ったファシリテーションの大きな違いは、
どっちも必要なんだよね、と思ってたころに出会ったのが、パターン・ランゲージの共同研究をしていた慶應義塾大学SFC井庭崇教授が提唱していた「ジェネレーター」という役割。
ジェネレーターについては、以前にも紹介していますのでよければ。
「自ら一緒に参加して盛り上がりをつくる人」、ジェネレーターの役割を、先週、宮崎大学医学部の総合診療医が学び合うセミナーでお呼ばれして話してきました。
総合診療医は、日本で19番目の専門医。
総合診療医の大切なしごとが、看護師やケアマネージャーをはじめ医療・介護・福祉の多職種の専門家たちのハブとなって、患者さんのために最適な対処法をとりまとめていくこと。
そのために、ファシリテーションはお医者さんにとっても重要なスキル。
ジェネレーターという名前はつけてるものの、ベースのスキルはファシリテーションと同じ。
違いをあげれば、自らアイデアを出したり、参加者を焚き付け、盛り上げるという機能。
セミナーでは自分が日々実践している9つのスキルを紹介しました。
1.聞き出す力
900人規模のベンチャー企業経営をする中で、組織モチベーションが大きな課題。社員一人ひとりとの対話の必要性を痛感、コーチングとキャリアカウンセラーの資格を取得、学びながら日々実践、マネジメントへおおいに取り入れていました。
ぼくなりの実践で得た「聞き出す力」は、ジェネレーターとしても、一番コアになるスキルです。
①アクノレッジメント
話し合う相手が1人であれ10人であれ、一人ひとりを承認し、これから一緒に考えていこうねという関係づくりは同じ。
ぼくの場合、相手のしごとにフォーカスします。個人的にしごとが一番興味持ちやすくて、どんなしごとであれ、必ずリスペクトできる要素があるので。
②質問と傾聴のバランス
質問と傾聴はバランスが勝負。センスといってしまえればそれまでだけど。ぼくにそのセンスがあるかは定かじゃありませんが、質問しすぎじゃないか、聞いてるだけじゃないかと絶えず心の中で自問自答はしてます。
③チャンクアップ&ダウン
ぼくが好きなコーチング用語。チャンクは塊。
小刻みに、その時々の状況、雰囲気、参加者の気質にあわせて具体と抽象を行ったり来たりさせることで、それまで出てこなかったようなアイデアが出てきたり。
個人的には、聞き出す力の中で、一番頼りにしているスキル。
2.合意形成する力
ファシリテーターとして、最大のゴール。
ジェネレーターはプロセスで自分自身がアイデア出したり、相手を焚き付けたりするけど、ゴールは、当然にファシリテーターと同じ。
みんなが合意しないことには次に進みません。
①共感できるゴール
共感できるゴールなくして合意なし。
当たり前の話ですが、案外、ここがぼやっとして、機能的なゴールだけ定めて始めてしまうことが多いので要注意。
②モレなくダブリなく
ワークショップしていると必ずいる、関係ない雑談で盛り上がる人たち。
関係ない話しているようで(実際多いけど)、案外、いい線ついた雑談も多いです。特にきれいごとがおおい公共系の話し合いでは、生々しくリアルな声として活用できるかもです。
あと、延々と熱弁をふるいだす人がいたら、満面の笑みで遮断することをおすすめします。個人的に、過去に何度も遮断してきましたが、いまのところ恨みをかったケースはないようです 笑
③ポジティブ翻訳
3人以上集まると(2人でもか)、とかくネガティブな話のほうが伝播早く盛り上がりがち。そっちのほうが考えなくても話せるからね。
対策として、ネガティブな意見が出だしたら、もれなく語尾をポジティブにかえて、他の人に振っていくことをおすすめします。
3.創造する力
ジェネレーターとしての真骨頂はこの力。
自らが一番面白いアイデアを出して、みんなを盛り上げて、新しいチャレンジに結びつけるための力です。
参加者も意見を出せて合意することは大前提。決して、独善的にならないよう、とはいえ、状況を打開する切り口を差し込む、そのバランスが肝要。
①アイデア量産
ブレストにも通じるところですが、参加者だけでアイデアに限りがあると感じたら、自ら、恥も外聞もなく、アイデアを死ぬほどたくさん絞りだしていきます。
アイデアを出しやすい雰囲気と、後述する重ねてもらえるような切り口を出せるかが勝負
②重ね合わせ
いまさら言うまでもなくイノベーションは新結合。
各自のアイデアをどう重ね合わせるかで、新しい企画がうまれるかどうかが決まるといっても過言ではありません。
ここでもジェネレーターの腕が試されます。
単に2つのアイデアを重ね合わせるだけでなく、そこに自らの知見や情報を加える編集力が求められます。
③言霊ストック
最後は、みんなが納得できる一言にできるか。
その場で出た言葉のどれが一番いいか、でやっていくとどうしてもツギハギ感があって新鮮味のない言葉になりがち。
日頃から、決めの一言をストックしておいて、全員が合意した内容を一言でまとめる。そんな終わり方ができるとジェネレーターとしての役割を全うできます。
最後に、誤解のないよう念のためですが、ジェネレーターかファシリテーターか、といった二項対立の話ではなく、ジェネレーターは、ファシリテーターのスキルを十二分につけた先にあるひとつの役割だと考えています。