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フワっとしがちな「まちづくり」の構造を分解、縦横の動きを統合して解像度を上げる
「まちづくりってなんですか?」という問いに、一言でスパーンと答え切れる人は少ない。ぼくも話し出すと長々となって結局フワっとしてしまう。
範囲が広くて奥が深いのがまちづくり。そもそも、まちづくりということばを使う側がそれぞれもってるイメージが違うから定義する意味もない。
ただ、まちづくりを仕事としている現場のプレイヤーとしては、フワっとしたままでは仕事が進まないし、そのままあらたに就職する人が増えたら混乱するだけ。
そんな背景もあって、いままでの体験を思い出しながら構造として分解してみようと思いました。
ま、正解のある話ではないので参考になればラッキー程度で。
まちづくりを独断で縦にバサっと「ビジョン」→「戦略」→「アクション」の3つに分解してそれぞれ整理してみます。
1.ビジョン
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まちづくりで一番大事なことは「理想の未来を共有」すること
実務的にはまちづくりの目的、目標、指針、方針、計画の類いです。
まちづくりの難しいところは、「まち」というのがさまざまな範囲でありつつ、上意下達的な側面もあること。
都農町でいえば、国からと県からのお達しごとも含まれますよね。国といっても縦割り的に、総務省は「長期総合計画」、内閣府は「人口ビジョン」、国土交通省は「マスタープラン」みたいな感じで。
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そして、その計画の多くは東京のシンクタンクや都市計画コンサル会社がつくるため、似たようなことを違う表現で事細かに描きまくった分厚い資料ができあがります。もちろん、書いてあることは正しくていいことですが。
住民目線では難解で概念的なものになりがち。行政職員としても、腹落ちしているとは言い難いけど、公式のものなので、建前的にでもそれらの計画に符号させるように各業務の調整を図ります。
でも、もとの計画に言霊というか、腹落ちすることばがないから、戦略やアクションに落ちていかない。どの自治体でも共通する課題なんじゃないかなと。
肝心な町として目指すべき理想の未来がなんなのか?が一言でシャープに語りきれないので、誰も記憶に残らず、結果、ボヤけがちです。
ぼくらも違う出所からのオーダーで「グランドデザイン」をつくらせてもらったけど、知らない人からみたら同じ計画系がまたひとつ増えた感じ。共犯者の一角になってしまってるという自覚もあり、、
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これらの計画を束ねて、「理想の未来はこうなんだ」とやさしい言語化をさせてくださいよと営業中ですw
このビジョンを有効にさせるために、たえず、後述する戦略や個別アクションと行ったり来たりさせながら、ビジョンの微調整を図っていくことが重要なプロセスになります。
2.戦略&しくみ
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ビジョンで描いた「理想の未来」を具現化させるために、資源配分の優先順位を定めるのが戦略・しくみです。
資源配分は、リソース×ジャンルから
リソース
「ヒト」「モノ」「カネ」「場」「情報」
ジャンル
「農と食」「経済」「観光」「移住」「子育て」「デジタル」「医療福祉」「学び・人材育成」「文化・スポーツ」「ゼロカーボン」
ジャンルは上記10区分以外にも多々ありますが、自治体ごとの優先度で調整しつつ。
ぼくなりには、都農町で10個のジャンルで提案してます。
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役場の予算管理が縦割りなので、ジャンルをまたがることが難しいんですが、リソースをからめて複合的に考えていく必要がありますよね。
自分が都農町で経験させてもらった戦略・しくみは「デジタル・フレンドリー事業」が象徴的。
町役場まちづくり課・財政課と、つの未来財団にぼくらイツノマと官民連携で進めないとなかなか実現には至らない内容だと痛感しました。
「こども参画まちづくり」も、ぼくの中では重要な戦略。町役場まちづくり課・財政課・建設課に、教育委員会、つの未来財団、都農小中学校各校、自治会などを統合して進めてます。
言い換えれば、予算管理する各課単独で実施できる施策が、まちづくりに直結するものは少ないのかもしれません。
戦略・しくみは、まちづくりのど真ん中だと思ってます。上位概念のビジョンと具体的プロジェクトやアクションをつなぐもの、落とし込むものだからです。
戦略・しくみをつくるには、単一組織だけではなく、複数の組織にまたがって推進していく必要があるため、縦横共有していく統合機能が求められます。
3.プロジェクト&アクション
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まちづくりで一番、人それぞれの解釈になるのがプロジェクト&アクションの範疇です。
なにをもってまちづくりというか、よりまちづくりと言ったもの勝ち?になるものです。ぼくらも、宿泊施設を「まちづくりホステル」とうたっちゃってますし。。
民間企業がつくる1件のカフェも、そのこと自体が「まちづくり」です!と言ってしまえば別に否定されるものでもありません。
なので、このプロジェクト&アクションは無数に広がっており、まちづくりの際限がなく、結果フワっとしてくる要因にもなってます。
官民あわせて、個別のプロジェクト&アクションの把握に力をいれたほうがいいんじゃないでしょうか?
個別にアクションを起こしている人にとって、よかれと思って、これがまちづくりにつながるんだと思っていても、肝心の町としてのまちづくりビジョンや戦略の共有がなければ、個点で終わってしまいます。
せっかくエネルギーをかけてまちづくりに取り組むのであれば、個点最適も大事ですが、全体最適につながるように、ビジョンや戦略との整合や附加など見出していけると、町全体にとってもっとプラスになるのではないでしょうか?
4.統合機能の提案
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大雑把にビジョンから戦略、アクションと見てきましたが、一番必要だと思っているのが、これらの統合です。
取捨選択したり、どちらかに寄せたりという審査・評価ではなく、付加・適合をするための統合だと思ってます。
官民それぞれ限りある予算・リソースの中で、いかに重複させず、町内にある動きを効率よく束ねていくかは、これから人口減少が進む中でより重要になってきます。
縦横すべて俯瞰する立場にいるのが首長だと思いますが、一人で見れるもの、やれることには限りがあります。かつ、民間の個別の動きまでは把握しようがありません。
首長直下に、官民連携の統合組織を設置して、まちづくりに関わる町内の動きを定期的、定性的に把握し、付加・適合させる機能ができると、いまよりはもう少し効率的になるし、「まちづくり」ということばの解像度があがっていくのではないかと思います。
コーチング用語で「チャンク」ということばがあります。塊を意味するものですが、塊をほぐすことをチャンクダウン、かためていくことをチャンクアップといいます。
まちづくりにおいても、ビジョンに偏っていたら、戦略、プロジェクト・アクションへとチャンクダウンする必要があります。その逆で、アクションなどの各論に走っていたら、定期的に、戦略、ビジョンへとチャンクアップさせて、上下の統合を図ることも大事なプロセスかなと思います。