【種牡馬四季報】JRA 2024年上半期の種牡馬リーディング
競馬オタク・坂上明大が
四半期ごとに国内外の種牡馬事情を解説していきます。
~リーディングサイアー~
昨年総合4位のキズナが順調に賞金を積み上げて、上半期リーディングサイアーの座に就いている。特に3歳世代はクラシック路線を牽引しており、ジャスティンミラノが皐月賞を制し日本ダービーでも2着、ライトバックが桜花賞とオークスでともに3着と好走するほか、クイーンズウォークがクイーンC、シックスペンスがスプリングS、ジューンテイクが京都新聞杯を制している。古馬ではコンクシェルが中山牝馬S、パラレルヴィジョンがダービー卿CT、アリスヴェリテがマーメイドSを制し、GⅠでもディープボンドが天皇賞春で3着と好走した。父ディープインパクトは9位。他の後継種牡馬ではリアルスティールが18位、ミッキーアイルが19位につけているが、現状はキズナの独走状態という感は否めない。来年初年度産駒がデビューするコントレイルには大きな期待がかかる。
昨年総合2位のロードカナロアはキズナにリードを許すも2位を堅持。大阪杯を制し宝塚記念でも3着と好走したべラジオオペラが代表産駒。その他ではエンペラーワケアが根岸S、サトノレーヴが函館スプリントSを制しており、障害競走ではジューンベロシティが東京JSでジャンプ重賞3勝目を挙げている。幅広いカテゴリーで活躍馬を出せるあたりにキングカメハメハ系らしさが表れている。最優良後継種牡馬サートゥルナーリアも既に2頭の勝ち馬を出しており、今後の活躍にも大いに期待したいところだ。
3位は昨年総合9位のエピファネイア。こちらも同期キズナとともに3歳世代がクラシック路線を牽引しており、桜花賞馬ステレンボッシュと日本ダービー馬ダノンデサイルを筆頭に5頭の重賞勝ち馬を輩出。また、古馬もテンハッピーローズがヴィクトリアマイル、ブローザホーンが宝塚記念を制しており、JRAの上半期GⅠ4勝という素晴らしい成績を残した。勝利数ではキズナが106勝、エピファネイアが53勝と2倍の差をつけられているが、大物を輩出する爆発力は本馬が上と言えるだろう。
昨年8位ハービンジャーも上半期は4位にジャンプアップ。勝利数は39勝とエピファネイア以上に少ないが、オークス馬チェルヴィニアを筆頭に、ローシャムパークが大阪杯2着、ナミュールが安田記念2着と大舞台での活躍が目立った。また、今年はべラジオオペラをはじめ母父にハービンジャーの血を持つ活躍馬も目立ち、今後は繁殖牝馬の父としても注目を集めそうだ。
5位は昨年のリーディングサイアードゥラメンテ。GⅠ勝ちはないものの、シルクロードSのルガル、フラワーCのミアネーロ、青葉賞のシュガークンと重賞勝ち馬を3頭輩出。ドゥラメンテ産駒は今年の2歳がラストクロップで、昨年や一昨年のセレクトセールでは高額で産駒の争奪戦が行われていただけに、今後は高額取引馬の活躍にも期待したいところだ。父キングカメハメハはフェブラリーSのペプチドナイルなどを出して14位にランクイン。他の後継種牡馬では重賞勝ち馬を3頭出したルーラーシップが6位、天皇賞春のテーオーロイヤルを出したリオンディーズが10位につけており、ディープインパクト系よりも後継種牡馬へのバトンタッチがうまくいっている印象だ。
ちなみに他のGⅠ馬はいずれも外国産馬で、高松宮記念のマッドクールはDark Angel産駒、NHKマイルCのジャンタルマンタルはパレスマリス産駒、安田記念のロマンチックウォリアーはAcclamation産駒。ただ、AcclamationとDark Angelは親子関係の同系で、パレスマリスは今年から日本で繋養されているだけに、今後のリーディングサイアーを予想する上でのヒントとなるだろう。
父系別では上位20頭中11頭がRoyal Charger系、5頭がMr.Prospector系、3頭がNorthern Dancer系、1頭がNasrullah系。Royal Charger系の内訳はサンデーサイレンス系が9頭、Roberto系が2頭。Mr. Prospector系は全5頭がキングカメハメハ系。Northern Dancer系はStorm Cat系が2頭、Danzig系が1頭。Nasrullah系はA.P. Indy系が1頭だ。
~芝・リーディングサイアー~
芝限定部門でもキズナがトップに君臨。ただ、2位エピファネイアとの差は僅かで、これはキズナがダートでも勝ち馬を多く出していることを意味する。反対にエピファネイアはロードカナロアを抜いていることからもわかる通り獲得賞金のほとんどが芝でのもの。クラシックホースを複数頭出す種牡馬らしく日本の主流条件である芝の中長距離戦に特化した種牡馬といえるだろう。
他のディープインパクト系種牡馬ではディープインパクト自身が5位、シルバーステートが14位、リアルスティールが19位、サトノダイヤモンドが20位にランクイン。また、アルアインは弥生賞馬で皐月賞でも2着に好走したコスモキュランダを出しており、芝部門では今なお強い影響力を持つラインだ。
注目は18位スワーヴリチャード。同馬は現3歳世代が初年度産駒の2年目種牡馬で、数少ない産駒からスウィープフィート(2024年チューリップ賞)とアドマイヤベル(2024年フローラS)という2頭の重賞勝ち馬が出ている。その他にも2023年ホープフルS勝ち馬レガレイラなど有力馬が数多くおり、今後も大注目の有力種牡馬だ。
~ダート・リーディングサイアー~
ダート限定部門ではヘニーヒューズを抑えてドレフォンが上半期リーディングサイアーのタイトルを獲得。重賞勝ち馬は出せていないが、最多41勝の勝ち鞍を挙げて賞金を積み重ねている。
4年連続でダートリーディングサイアーの座に君臨するヘニーヒューズは2位。こちらもJRAでの重賞勝ち馬は出せていないが、フェブラリーSではセキフウが3着に好走するなど日本のダート路線を牽引する種牡馬であることに変わりはないだろう。また、直仔アジアエクスプレスも18位にランクインしており、父系発展にも今後は期待したいところだ。
3位には総合2位のロードカナロアがランクイン。根岸Sのエンペラーワケアを出すなど芝とダートを問わず活躍馬を輩出しており、父キングカメハメハもフェブラリーSのペプチドナイルを出して11位に名をつらねている。キングカメハメハ系では他にドゥラメンテが6位、ホッコータルマエが8位、リオンディーズが15位にランクイン。万能父系らしいマルチな活躍っぷりだ。
スワーヴリチャードと同じ2年目種牡馬であるニューイヤーズデイがダート部門の20位にランクイン。2~3歳戦に限ればキズナと並ぶ最多21勝を挙げており、NARではエートラックスが兵庫チャンピオンシップを制覇。JRAのダート重賞を勝つのも時間の問題か。