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【種牡馬辞典】Hampton系

Hampton

 <プロフィール>
1872年生、英国産、33戦19勝(障害競走を除く)
<主な勝ち鞍>
1877年グッドウッドC(T20F)
1877年ドンカスターC(T21F)
<代表産駒>
Merry Hampton(1887年英ダービー)
Ayrshire(1888年英ダービー)
Bay Ronald(1897年ハードウィックS)
<特徴>
小柄な馬で当初は評価が低かったが、古馬になってから素質を開花させたイギリスのトップステイヤー。3代母に名繁殖牝馬Queen Maryを持つ名牝系で、母はOtisina=Lanercostの全兄妹クロスを3×2で持つ。種牡馬としても1887年には英リーディングサイアーに輝き、Bay Ronald(1897年ハードウィックS)を通して父系を発展させた。

--Dark Ronald

 <プロフィール>
1905年生、英国産、7戦4勝
<主な勝ち鞍>
1909年プリンセスオブウェールズS(T12F)
<代表産駒>
Son-in-Law(1914年グッドウッドC、1914、15年ジョッキークラブC)
Vaucluse(1915年英1000ギニー)
Herold(1920年独ダービー、ベルリン大賞)
<特徴>
脚部難のため競走馬としては大成できなかったが、種牡馬としてはイギリスとドイツで成功。イギリスでは名ステイヤーSon-in-Law(1914年グッドウッドC、1914、15年ジョッキークラブC)や名種牡馬Dark Legend、豪リーディングサイアーMagpieなどを輩出。また、ドイツでもHerold(1920年独ダービー、ベルリン大賞)など多くの活躍馬を出し、1918~22年の5年連続で独リーディングサイアーにも輝いた。父父Hamptonを増幅した配合形で、Hampton譲りの豊富なスタミナを子孫に伝えた名種牡馬だ。

---Son-in-Law

<プロフィール>
1911年生、英国産、18戦8勝
<主な勝ち鞍>
1914年グッドウッドC(T21F)
1914年ジョッキークラブC(T18F)
1915年ジョッキークラブC(T18F)
<代表産駒>
Straitlace(1924年英オークス、コロネーションS、ナッソーS)
Foxlaw(1927年アスコットゴールドC)
Bosworth(1930年アスコットゴールドC)
Trimdon(1931、32年アスコットゴールドC)
<特徴>
1914、15年ジョッキークラブC連覇や1914年グッドウッドCを制したイギリス競馬史屈指の名ステイヤー。種牡馬としても1924、30年と英愛リーディングサイアーに輝き、アスコットゴールドC優勝馬を3頭出すなど長距離種牡馬として活躍した。ただ、現代競馬においてはLady JurorとAloeというのちに名牝系を築く2頭の牝馬を輩出した功績の方がはるかに大きい。Lady Jurorは現代競馬にスピード革命をもたらしたLady Josephineとの間に誕生した牝馬であり、その子孫にはFair TrialやTudor Minstrel、Forliの父Aristophanesなどがいる。また、Aloeはイギリスの由緒ある名牝系で、その子孫にはAureole、Round Table、Nashwanなど活躍馬を挙げれば切りがなく、日本競馬史屈指の最強馬ディープインパクトもこの一族である。父系は既に途絶えているが、誕生から100年以上が経つ現代競馬においてもサラブレッドのスタミナ面に多大なる影響を与える名種牡馬だ。

------Herbager

 <プロフィール>
1956年生、仏国産、8戦6勝
<主な勝ち鞍>
1959年仏ダービー(T2400m)
1959年サンクルー大賞(T2500m)
<代表産駒>
Grey Dawn(1964年モルニ賞、サラマンドル賞、仏グランクリテリウム)
シーホーク(1965年クリテリウムドサンクルー、1966年サンクルー大賞)
Appiani(1966年伊ダービー、1967年伊共和国大統領賞)
<特徴>
母Flagetteは1932年英セントレジャー優勝馬Firdaussiを2×2でクロスした野心的な配合形。さらにFirdaussiもChaucerの3×3を持つ主張の強い種牡馬だったため、母FlagetteはFirdaussiの影響が強い繁殖牝馬だったと考えられる。その母とSon-in-Law系Vandaleの間に生まれたのが本馬であり、血統通りの豊富なスタミナを武器に1959年仏ダービー、サンクルー大賞などを制した。種牡馬としてはフランスとアメリカで活躍。日本にもシーホーク(1966年サンクルー大賞)が種牡馬として輸入され、天皇賞(春)優勝馬モンテプリンス=モンテフアスト、日本ダービー馬ウィナーズサークル、アイネスフウジンといったGⅠ馬を輩出している。

-------Surumu

 <プロフィール>
1974年生、独国産、9戦3勝
<主な勝ち鞍>
1977年独ダービー(T2400m)
<代表産駒>
Acatenango(1985年独ダービー、1986年サンクルー大賞、ベルリン大賞、1985、86年アラルポカル、1986、87年バーデン大賞)
Mondrian(1989年独ダービー、ベルリン銀行大賞、1989、90年アラルポカル、ベルリン大賞、1990年オイロパ賞)
Temporal(1991年独ダービー)
<特徴>
1977年独ダービー馬であり、種牡馬としても1985、86、89~92年独リーディングサイアーに輝いた名種牡馬。Dark Ronald→Herold→Alchimist→Birkhahnという独リーディングサイアーが連なる父系に属し、父の母Lisも1963年独1000ギニー、独オークスを制した名牝という超良血馬だ。父LiteratはHeroldを3×5・5でクロスしており、生粋のドイツ血統馬らしい背中の長い中長距離馬体型を誇る。本馬も父にそっくりな馬体のつくりをしており、父の影響を強く受けた競走馬であったといえるだろう。ちなみに、母Suramaは日本で種牡馬として大成功を収めたテスコボーイの半妹である。

--------Acatenango

<プロフィール>
1982年生、独国産、24戦16勝
<主な勝ち鞍>
1985年独ダービー(T2400m)
1985年アラルポカル(T2400m)
1986年サンクルー大賞(T2500m)
1986年ベルリン大賞(T2400m)
1986年アラルポカル(T2400m)
1986年バーデン大賞(T2400m)
1987年バーデン大賞(T2400m)
<代表産駒>
Lando(1993年独ダービー、1994年伊ジョッキークラブ大賞、1995年ミラノ大賞、メルクフィンク銀行賞、ジャパンC、1993、94年バーデン大賞)
Borgia(1997年独ダービー、バーデン大賞)
Blue Canari(2004年仏ダービー)
Nicaron(2005年独ダービー)
Quijano(2007年バーデン大賞、2008、09年ミラノ大賞)
<特徴>
ドイツの主要レースを総ナメにし、種牡馬としても独リーディングサイアーに5度輝いたドイツ競馬史屈指の名馬。ドイツ産馬でありながら父父Literatのドイツ血脈を1/4異系とし、その他をイギリス血脈やフランス血脈でまとめた好配合。特に母はThe Tetrarch産駒Tetratemaを5×3でクロスしており、スタミナ豊富なドイツ種牡馬の中ではスピードも兼備した名種牡馬だったといえるだろう。代表産駒Lando(1993年独ダービー、1994年伊ジョッキークラブ大賞、1995年ミラノ大賞、メルクフィンク銀行賞、ジャパンC、1993、94年バーデン大賞)がドイツ調教馬として唯一ジャパンCを制し、母の父に本馬を持つワールドエース=ワールドプレミア≒ヴェルトライゼンデ兄弟が日本の芝GⅠで好走していることもその証であるか。特にワールドプレミアは本馬の影響を強く受けており、ディープインパクト×Acatenangoのスタミナとスピードを武器に2019年菊花賞、2021年天皇賞春を制した。

---------Lando

 <プロフィール>
1990年生、独国産、23戦10勝
<主な勝ち鞍>
1993年独ダービー(T2400m)
1993年バーデン大賞(T2400m)
1994年バーデン大賞(T2400m)
1994年伊ジョッキークラブ大賞(T2400m)
1995年ミラノ大賞(T2400m)
1995年メルクフィンク銀行賞(T2400m)
1995年ジャパンC(T2400m)
<代表産駒>
Paolini(2001年伊共和国大統領賞、ミラノ大賞、2004年ドバイデューティーフリー)
Gonbarda(2005年ドイツ賞、オイロパ賞)
Donaldson(2006年ドイツ賞)
Prince Flori(2006年バーデン大賞)
<特徴>
1994、95年独年度代表馬に輝いたドイツ競馬史を代表する最強馬の一頭。4代母Lis(1963年独1000ギニー、独オークス)に遡るドイツの名牝系に属し、3代母Libertyは1968年独2000ギニー馬Literatの全妹という良血。そして、本馬は7代父Dark Ronaldから繋がるドイツ競馬を代表する父系に生まれ、3代父にはLiteratの名が刻まれている。したがって、本馬はLiterat=Libertyの3×3という名血の全きょうだいクロスを持ち、TetratemaやSharpen Upなどからスピードを補強している点も本馬の魅力といえるだろう。引退レースの1995年ジャパンCではドイツ生産馬として初のJRAGⅠ制覇を達成。種牡馬としては同世代の大種牡馬Monsunに及ばなかったが、Scalo(2010年オイロパ賞)がLaccario(2019年独ダービー)を出すなどしており、その血はしっかりと後世に繋がれている。

---Gainsborough

 <プロフィール>
1915年生、英国産、9戦5勝
<主な勝ち鞍>
1918年英2000ギニー(T8F)
1918年ニューダービー(T12F)
1918年ニューマーケットGC(T20F)
1918年セプテンバーS(T14F)
<代表産駒>
Solario(1925年英セントレジャー、1926年アスコットGC)
Singapore(1930年英セントレジャー)
Orwell(1931年ミドルパークS、1932年英2000ギニー)
Hyperion(1933年英ダービー、英セントレジャー)
<特徴>
イギリス競馬史上13頭目のクラシック三冠馬(戦争の影響で英ダービーはニューダービー、英セントレジャーはセプテンバーSとして代替開催)。1910年英オークス馬Rosedropと25戦22勝の名馬Bayardoとの間に生まれた超良血馬で、短い競走馬生活の中でその血筋に恥じぬ実績を残した。父が持つGalopinの4×2のインブリードを、Galopinの代表産駒であるSt. Simonを父父に持つ母との組み合わせで累進配合した点が特徴的。種牡馬としてもスタミナと底力を子孫に伝え、1932、33年には英愛リーディングサイアーにも輝いた。後継種牡馬であるHyperion(1933年英ダービー、英セントレジャー)が大成功を収め、同ラインは全世界のサラブレッドに多大な影響を与えている。

----トウルヌソル

 <プロフィール>
1922年生、英国産、24戦6勝
<主な勝ち鞍>
1926年プリンセスオブウェールズS(T12F)
<代表産駒>
ワカタカ(1932年日本ダービー)
トクマサ(1936年日本ダービー)
ヒサトモ(1937年日本ダービー)
クモハタ(1939年日本ダービー)
イエリユウ(1940年日本ダービー)
クリフジ(1943年日本ダービー、阪神優駿牝馬、京都農林省賞典4歳呼馬)
<特徴>
1935~40年の6年連続で全日本リーディングサイアーに君臨した大種牡馬。特に、ワカタカ(1932年日本ダービー)、トクマサ(1936年日本ダービー)、ヒサトモ(1937年日本ダービー)、クモハタ(1939年日本ダービー)、イエリユウ(1940年日本ダービー)、クリフジ(1943年日本ダービー、オークス、菊花賞)という6頭の日本ダービー馬を輩出した点はサンデーサイレンスと並ぶ歴代2位の好記録だ。父Gainsboroughが持つGalopinの5・3×4を、St. Simonの4×4で継続。母母が同血脈を持たない点もバランスが良く、好敵手シアンモアとともに昭和初期の日本競馬を牽引した名種牡馬だったといえるだろう。半妹La Sologneは1928年ナッソーS優勝馬。

-----クモハタ

 <プロフィール>
1936年生、下総御料牧場産、21戦9勝
<主な勝ち鞍>
1939年日本ダービー(T2400m)
<代表産駒>
ニユーフオード(1948年菊花賞、1949年天皇賞秋)
ミツハタ(1952年天皇賞春)
クインナルビー(1953年天皇賞秋)
メイヂヒカリ(1954年朝日杯3歳S、1955年菊花賞、1956年天皇賞春、中山グランプリ)
<特徴>
日本競馬史上最初の内国産リーディングサイアー。競走馬としても1939年日本ダービーを制し、種牡馬としては1952~57年の6年連続でリーディングサイアーの座に君臨した。母星旗は下総御料牧場の基礎輸入牝馬の一頭で、本馬の半姉には帝室御賞典優勝馬クレオパトラトマス/月城がいる。母母Tuscan MaidenがSt. Simonの4×4、父トウルヌソルもSt. Simonの4×4などGalopin→St. Simon血脈を豊富に持つのに対して、母父Gnomeの部分で異系血脈を取り入れた配合のバランスが素晴らしい。Galopin→St. Simon譲りのスタミナを子孫に伝え、メイヂヒカリ(1954年朝日杯3歳S、1955年菊花賞、1956年天皇賞春、中山グランプリ)を筆頭に数多くの名ステイヤーを輩出した。

------Fine Top

 <プロフィール>
1949年生、仏国産、36戦16勝
<主な勝ち鞍>
1953年フォレ賞(T1400m)
1954年フォレ賞(T1400m)
<代表産駒>
Sanctus(1963年仏ダービー、パリ大賞)
Fine Pearl(1966年仏オークス)
トピオ(1967年凱旋門賞)
<特徴>
3代父Gainsboroughに遡る父系に属し、父父Artist's ProofはGalopinとその仔St. Simon=Angelicaのラインについて二重の累進交配。本馬はそこにフランスのローカル血脈を掛け合わせているが、Galopin→St. Simon=Angelica血脈についても薄く継続しており、決して短距離馬になるような配合形とは言い難い。本馬自身、伸びのある馬体を有しており、フォレ賞を連覇するなどマイル前後で活躍したことは激しい気性が原因と考えられる。種牡馬としてはSanctus(1963年仏ダービー、パリ大賞)、Fine Pearl(1966年仏オークス)、トピオ(1967年凱旋門賞)といった長距離馬を複数輩出しており、日本でもSanctus→デイクタス→サツカーボーイ=ゴールデンサッシュから多くの名ステイヤーが誕生した。ただその反面、気性難も継続して受け継がれており、ゴールデンサッシュの仔ステイゴールドの気難しさは本馬に起因すると推測できる。

--------デイクタス

<プロフィール>
1967年生、仏国産、10戦6勝
<主な勝ち鞍>
1971年ジャックルマロワ賞(T1600m)
<代表産駒>
Zalataia(1983年オークトリー招待H)
スクラムダイナ(1984年朝日杯3歳S)
サツカーボーイ(1987年阪神3歳S、1988年マイルCS)
<特徴>
父に1963年仏ダービー馬Sanctus、母に1963年クレオパトラ賞(仏GⅢ、T2100m)優勝馬Doronicを持つ中長距離血統。そのため、3歳時には芝2000m以上を中心に使われたが、Fine Top系らしい激しい気性から勝ち切れないレースが続いた。ところが、4歳時にマイル路線に短縮すると1971年ジャックルマロワ賞などを制し、引退レースの1971年クイーンエリザベスⅡ世SでもBrigadier Gerardの2着と健闘。種牡馬としても潜在的なスタミナと激しい気性を伝え、代表産駒であるサツカーボーイ(1987年阪神3歳S、1988年マイルCS)とその全妹ゴールデンサッシュの活躍はまさに本馬の特徴を表現した結果といえるだろう。

---------サツカーボーイ

<プロフィール>
1985年生、社台ファーム産、11戦6勝
<主な勝ち鞍>
1987年阪神3歳S(T1600m)
1988年マイルCS(T1600m)
<代表産駒>
ナリタトップロード(1999年菊花賞)
ティコティコタック(2000年秋華賞)
ヒシミラクル(2002年菊花賞、2003年天皇賞春、宝塚記念)
<特徴>
1987年最優秀2歳牡馬、1988年最優秀スプリンターに輝いた父デイクタスの代表産駒。フランスのアウトサイダー血脈で固められた父に対して、母ダイナサツシュはLady Angelaを3×2でクロスするノーザンテーストを父に、Nearcoを3×3でクロスするロイヤルサツシュを母に持つ配合形。緊張と緩和のバランスが取れた好配合馬で、全妹ゴールデンサッシュも母としてステイゴールドやレクレドールなどの活躍馬を輩出している。柔軟でバネの利いたフットワークが特徴的。自身は父譲りの激しい気性からマイル路線を中心に活躍したが、種牡馬としてはナリタトップロード(1999年菊花賞)とヒシミラクル(2002年菊花賞、2003年天皇賞春、宝塚記念)という2頭の菊花賞馬を出しており、子孫にはFine Top系らしい潜在的なスタミナと激しい気性を伝えている。

----Hyperion

<プロフィール>
1930年生、英国産、13戦9勝
<主な勝ち鞍>
1932年デューハーストS(T7F)
1933年英ダービー(T12F)
1933年英セントレジャー(T14.5F)
<代表産駒>
Owen Tudor(1941年ニューダービー、1942年ニューマーケットGC)
Sun Chariot(1942年英1000ギニー、ニューオークス、ニューセントレジャー)
Pensive(1944年ケンタッキーダービー、プリークネスS)
Aureole(1954年コロネーションS、キングジョージⅥ&QEDS)
<特徴>
名牝Selene(1921年チェヴァリーパークS、1922年パークヒルS)の6番仔であり、きょうだいにはSickle(1927年英2000ギニー3着)、Pharamond(1927年ミドルパークS)、Hunter's Moon(1929年ニューマーケットS)、Guiscard(1936年クイーンズプライズH)、Night Shift(1939年ヨークシャーオークス)などがいる良血馬。Galopinとその仔St. Simonのラインについて二重の累進交配をしており、まさに1900年代前半のイギリス競馬を象徴する配合馬だったといえるだろう。競走馬としては1933年の英ダービーと英セントレジャーを楽勝。母同様に小柄な馬ではあったが、均整の取れた好馬体で13戦9勝の実績を残した。ただ、種牡馬としての活躍は現役時代の活躍をはるかに上回るもので、英愛リーディングサイアーのタイトルを6度獲得するなど大成功。大レースに強いクラシック血統であり、底力とスタミナ、成長力を子孫に伝えている。近年の日本競馬ではトニービン(Hyperionの5×3・5)やノーザンテースト(Hyperionの4×3)に本馬の影響力を強く感じ、女帝エアグルーヴを筆頭に両馬の血を併せ持つGⅠ馬も少なくない。

-----Alibhai

<プロフィール>
1938年生、英国産、-戦-勝
<主な勝ち鞍>
-
<代表産駒>
Determine(1954年サンタアニタダービー、ケンタッキーダービー)
Traffic Judge(1955年ウィザーズS、ウッドワードS、1957年メトロポリタンH、サバーバンH)
Bardstown(1957年ガルフストリームパークH、1957、59年ワイドナーH)
<特徴>
母Teresinaは1924年グッドウッドCを制した遅咲きのステイヤーで、本馬の半姉Theresinaは1930年愛オークス馬。本馬自身はデビュー前の骨折により不出走に終わったが、種牡馬としてはアメリカで成功。父Hyperionと母Teresinaから豊富なスタミナを受け継ぎ、母父Tracery譲りのパワーも子孫に伝えた。父が持つGalopin→St. Simon血脈を、St. Simon=Angelicaの3×3を持つTraceryで継続した配合形も特徴的。Nearcticの母Lady Angelaとは相似な血の関係(Hyperion、Tracery、Gallinuleなどが共通)にあり、Lady Angelaを3×2でクロスするノーザンテーストとは両血脈を増幅する関係といえるだろう。現在はGraustark=His Majesty兄弟を通じて血統表にその名を残しており、豊富なスタミナと強靭なパワーを後世に伝えている。

------Tudor Minstrel

<プロフィール>
1944年生、英国産、10戦8勝
<主な勝ち鞍>
1947年英2000ギニー(T8F)
1947年St.ジェームズパレスS(T8F)
<代表産駒>
Toro(1957年仏1000ギニー、コロネーションS)
Sallymount(1959年ジャックルマロワ賞)
Tomy Lee(1959年ケンタッキーダービー)
<特徴>
1947年英2000ギニーを8馬身差で圧勝した名マイラー。3代母Lady Josephine、2代母Lady Jurorから繋がる世界的名牝系に属し、半姉Neolightも1945年チェヴァリーパークSや1946年コロネーションSを制している。Selene≒Sansovinoの3×2という名血を増幅した配合形が特徴で、さらにHyperionとLady Jurorを併せ持つ点は名種牡馬Forliと共通。Tudor MinstrelとForliの両血脈を持つ馬にはテイエムオペラオーやキングカメハメハなどがおり、ハルーワソングやフェアリードールといった名繁殖牝馬もその影響を多分に受けている。血筋や競走成績からすると種牡馬としての活躍はやや物足りないものであったが、Lady Juror牝系のスピードや機動力、粘り強さを現代の競走馬にも伝える名血といえるだろう。

------Swaps

 <プロフィール>
1952年生、米国産、25戦19勝
<主な勝ち鞍>
1955年サンタアニタダービー(D9F)
1955年ケンタッキーダービー(D10F)
1956年ハリウッドGC(D10F)
<代表産駒>
Primonetta(1962年スピンスターS)
Affectionately(1962年スピナウェイS、1965年トップフライトH)
シヤトーゲイ(1963年ケンタッキーダービー、ベルモントS)
<特徴>
5度の世界レコードを記録したカリフォルニアを代表する名馬。蹄が弱いこともありプリークネスSとベルモントSには出走しなかったが、両レースを制したNashuaを1955年ケンタッキーダービーで破ったのが本馬である。父はHyperion産駒Khaled、母父はSon-in-Law産駒Beau Pereというイギリス産馬の組み合わせであるが、母母Iron Maidenが北米血脈主体の血統構成で、本馬のパワーは牝系由来と考えられる。体高が高く、馬体重も500キロを優に超す巨漢馬。豊富なスタミナと強靭なパワーを子孫に伝え、Swapsを4×5・6でクロスするバラダセール(2011年亜1000ギニー、亜オークス)の産駒には本馬の影響を強く感じる。また、本馬の血は持たないが、全妹アイアンエイジを4代母に持つトランセンドは同血脈を増幅した配合形であり、どこまで行っても止まりそうにない走りには本血脈の美点を強く感じた。なお、母Iron Rewardの半弟には日本でも種牡馬として活躍したアイアンリージ(1957年ケンタッキーダービー)がいる。

------Forli

<プロフィール>
1963年生、亜国産、10戦9勝
<主な勝ち鞍>
1966年亜2000ギニー(D1600m)
1966年ジョッケクルブ大賞(D2000m)
1966年亜ダービー(D2500m)
1966年亜カルロスペレグリーニ大賞(T3000m)
<代表産駒>
Thatch(1973年サセックスS)
Forego(1974年ジョッキークラブゴールドC)
Sadeem(1988、89年アスコットゴールドC)
<特徴>
アルゼンチンの3歳四冠を達成したアルゼンチン競馬史屈指の名馬。Riot≒Fair TrialというLady Juror直仔の血を3×3でクロスしており、Lady Juror的な機動力とHyperion的なスタミナを武器にアルゼンチンとアメリカで10戦9勝の戦績を残した。両血脈を持つ点はTudor Minstrelと共通するが、本馬の方がスピードよりもスタミナに長けたタイプといえるだろう。とはいえ、Tudor MinstrelとForliを併せ持つ馬にはテイエムオペラオーやキングカメハメハなどがおり、ハルーワソングやフェアリードールといった名繁殖牝馬もその影響を多分に受けている。現在はSpecial=Thatch=Lisadellを中心にその血を残し、特にSpecialの子孫であるNureyevやSadller's Wellsは欧州を中心に世界中の競走馬に影響を与えている。

-------Thatch

 <プロフィール>
1970年生、米国産、9戦7勝
<主な勝ち鞍>
1973年St.ジェームズパレスS(T8F)
1973年ジュライC(T6F)
1973年サセックスS(T8F)
<代表産駒>
Thatching(1979年ジュライC)
Masarika(1983年ロベールパパン賞、1984年仏1000ギニー)
Danishkada(1986年仏グランクリテリウム)
<特徴>
1973年にSt.ジェームズパレスS、ジュライC、サセックスSを3連勝したイギリスのチャンピオンマイラー。母母Rough Shodから広がる名牝系の一族であり、名繁殖牝馬Thongの2番仔。全姉Specialは名種牡馬Nureyevなどを出して一大牝系を築き上げ、全妹LisadellもFatherland(1992年愛ナショナルS)などを輩出して、日本でも曾孫エルコンドルパサー(1998年NHKマイルC、ジャパンC、1999年サンクルー大賞)が活躍した。母母父Gold Bridgeのスピード、母父Nantallahのパワー、父Forliのスタミナを子孫に伝え、短距離馬から長距離馬まで幅広いカテゴリーで活躍馬を輩出。Hyperion系の中では長く活躍したラインではあるが現在は衰退しており、日本ではタイキシャトルの母母父として見ることが多い。2020年ラジオNIKKEI賞、セントライト記念を制したバビットは母がThatch=Specialの4×3を持ち、同馬のスピードやスタミナは本馬の支えがあってこそといえるだろう。

-----Aureole

<プロフィール>
1950年生、英国産、14戦7勝
<主な勝ち鞍>
1954年コロネーションC(T12F)
1954年キングジョージⅥ&QEDS(T12F)
<代表産駒>
セントクレスピン(1959年エクリプスS、凱旋門賞)
St. Paddy(1960年英ダービー、英セントレジャー、1961年エクリプスS)
Aurelius(1961年英セントレジャー)
<特徴>
大種牡馬Hyperion晩年の傑作であり、1948年ヨークシャーオークス馬Angelolaの初仔という良血。父Hyperion、母父Donatello、母母母父Son-in-Lawというステイヤー血統で、父の代表産駒の中でも特に四肢が長く、無駄肉が少ない馬体はまさに純ステイヤーのそれであった。また、クラシックでは勝ち切れないレースが続いたが、4歳時には4連勝で1954年キングジョージⅥ&QEDSなどを制覇。成長曲線は晩成型。ただ、気難しさも子孫に継承してしまう点が玉にキズ。Aureoleの孫Vaguely Nobleの血を5×3でクロスするスマートファルコンはその典型例で、逃げると手の付けようがないほど強かった反面、その強さが嘘のように惨敗してしまう姿はAureoleの影響を多分に受けていた証だ。同じくステイヤー種牡馬として活躍したAlycidonは本馬の父と母父を裏返しにした組み合わせで、母母がIsonomyやGalopin→St. Simonを増幅している点も共通する。なお、3代母Aloeから繋がる名牝系でもあり、母のきょうだいにはKingstone(1945年ヨークシャーC)、Hypericum(1945年デューハーストS、1946年英1000ギニー)、Above Board(1950年ヨークシャーオークス)などがいる。

------セントクレスピン

 <プロフィール>
1956年生、英国産、6戦4勝
<主な勝ち鞍>
1959年エクリプス賞(T10F)
1959年凱旋門賞(T2400m)
<代表産駒>
Altesse Royale(1971年英1000ギニー、英オークス、愛オークス)
タイテエム(1973年天皇賞春)
エリモジヨージ(1976年天皇賞春、1978年宝塚記念)
<特徴>
名馬Tulyar(1952年英ダービー、エクリプスS、キングジョージⅥ&QEDS、英セントレジャー)の半弟。3代母AthasiはSt. Simonの3×4を持ち、Blandfordとの間にTrigo(1929年英ダービー、英セントレジャー、愛セントレジャー)、Harinero(1933年愛ダービー、愛セントレジャー)、プリメロ(1934年愛ダービー、愛セントレジャー)などを出した名繁殖牝馬。本馬の母母Harinaも父にBlandfordを配して1935年インペリアルプロデュースSを制しており、母NeocracyもSt. Simonを5・4×4・5でクロスするNearcoを父に持ちそのスタミナを本馬にも伝えた。さらに本馬は長距離種牡馬Aureoleを父に持ち、父似の四肢が長く無駄肉が少ない馬体が特徴的。種牡馬としても欧州ではAltesse Royale(1971年英1000ギニー、英オークス、愛オークス)やCasaque Grise(1967年ヴェルメイユ賞)などを出し、日本でもタイテエム(1973年天皇賞春)とエリモジヨージ(1976年天皇賞春、1978年宝塚記念)という2頭の天皇賞馬を輩出した。父系は途絶えてしまったが、血統表ではスペシャルウィークの母母父として見ることができ、同馬の豊富なスタミナは本馬の支えがあってこそといえるだろう。

-------Vaguely Noble

<プロフィール>
1965年生、英国産、9戦6勝
<主な勝ち鞍>
1968年凱旋門賞(T2400m)
<代表産駒>
Dahlia(1973年愛オークス、1974年サンクルー大賞、1973、74年キングジョージⅥ&QEDS)
エンペリー(1976年英ダービー)
Exceller(1976年パリ大賞、1977年サンクルー大賞、1978年ハリウッドGC、ジョッキークラブGC)
Jet Ski Lady(1991年英オークス)
<特徴>
クラシックは未登録であったが、1968年凱旋門賞では同世代の英ダービー馬Sir Ivorを抑えての大金星。引退後はアメリカで繋養され、初年度産駒からDahlia(1973年愛オークス、1973、74年キングジョージⅥ&QEDS)などを輩出して1973、74年には英愛リーディングサイアーにも輝いた。Hyperionの3×4が配合上の最大の特徴であり、Hyperion→Aureoleの正統後継種牡馬といえる一頭。子孫にも豊富なスタミナを存分に伝えている。また、臆病な性格だったとも言われており、その点も子孫に遺伝。母母母父に本馬を持つゴールドアリュールの産駒は全体的にその傾向にあり、特に本馬を5×3でクロスするスマートファルコンはその典型例といえるだろう。逃げると手の付けようがないほど強かった反面、その強さが嘘のように惨敗してしまう姿はVaguely Nobleの影響を多分に受けていた証だ。


≪坂上 明大(Sakagami Akihiro)≫
 1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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