【種牡馬辞典】Stockwell系
Stockwell
<プロフィール>
1849年生、英国産、16戦11勝
<主な勝ち鞍>
1852年英2000ギニー(T8F)
1852年英セントレジャー(T14.5F)
<代表産駒>
Blair Athol(1864年英ダービー、英セントレジャー)
Lord Lyon(1866年英2000ギニー、英ダービー、英セントレジャー)
Achievement(1867年英1000ギニー、コロネーションS、英セントレジャー)
Doncaster(1873年英ダービー、1874年グッドウッドC、1875年アスコットGC)
<特徴>
名繁殖牝馬Pocahontasの5番仔として生まれ、競走馬としてのみならず、種牡馬としても英リーディングサイアーに7度輝いて大成功を収めた「種牡馬の皇帝」。Nasrullah、Royal Charger、Northern Dancer、Mr. Prospectorといった現代競馬の根幹種牡馬はいずれもStockwell~Phalarisの父系に属しており、現代競馬に多大な影響を与えた名馬であることは間違いない。父The Baronは3代父Whaleboneと母父父Whiskerの全兄弟クロスを3×3で持ち、本馬はWhalebone=Whisker=Webの4・4×4というWaxyとPenelopeとの間に生まれた3きょうだいの血を凝縮した配合形。全弟Rataplanや半弟King Tomなども種牡馬として成功しており、King TomもWhisker=Webの3×4のインブリードを持つ。ちなみに、本馬は非常に大柄な馬であり、当時としては好まれるような見た目ではなかったようだ。
----Rock Sand
<プロフィール>
1900年生、英国産、20戦16勝
<主な勝ち鞍>
1903年英2000ギニー(T8F)
1903年英ダービー(T12F)
1903年英セントレジャー(T14.5F)
<代表産駒>
Tracery(1912年St.ジェームズパレスS、サセックスS、英セントレジャー、1913年エクリプスS、英チャンピオンS)
Damrosch(1916年プリークネスS)
Friar Rock(1916年ベルモントS、ブルックリンH、サバーバンH、サラトガC)
<特徴>
イギリス競馬史上10頭目のクラシック三冠馬。母母St. Margueriteは1882年英1000ギニー馬であり、世界的名牝系の祖となった名繁殖牝馬でもある。Galopin→St. Simonに影響力を独占される時代のなか、父SainfoinがStockwell=Rataplanの3×4・3、母RoquebruneがKing Tom≒Stockwellの3×3と両親とも名繁殖牝馬Pocahontasの仔の兄弟クロスを濃く持っており、自身はStockwell=Rataplan≒King Tomの4・5・4×4・4のインブリードを持ったStockwell的オールラウンダーであった。種牡馬としては大成したとは言えないが、繁殖牝馬の父としてはMan o'Warを出すなど徐々に影響力を強め、日本競馬史上初のクラシック三冠馬であるセントライトはRock Sandの3×4のインブリード馬でもある。また、同時代に種牡馬として活躍したSundridgeとはSainfoin=Sierra、Vedette、Hermit、Stockwell=Rataplan≒King Tomなどが共通しており、両血脈を併せ持った活躍馬も多数誕生した。ちなみに、本馬自身はそれほど大きい馬ではなかったが、肩と繋が立った馬体には高いダート適性も感じられ、アメリカではDamrosch(1916年プリークネスS)やFriar Rock(1916年ベルモントS、ブルックリンH、サバーバンH、サラトガC)といったクラシックホースも輩出している。
-----Tracery
<プロフィール>
1909年生、米国産、9戦6勝
<主な勝ち鞍>
1912年St.ジェームズパレスS(T8F)
1912年サセックスS(T8F)
1912年英セントレジャー(T14.5F)
1913年エクリプスS(T10F)
1913年英チャンピオンS(T10F)
<代表産駒>
The Panther(1919年英2000ギニー)
Papyrus(1923年英ダービー)
Teresina(1924年グッドウッドC)
<特徴>
第10代英国クラシック三冠馬Rock Sandの欧州での代表産駒。父はGalopin→St. Simonに影響力を独占される時代に、Stockwell=Rataplan≒King Tomの4・5・4×4・4という名繁殖牝馬Pocahontasを目掛けて交配した配合形。さらに、母TopiaryもStockwell≒King Tom≒Ayacanora≒AraucariaというPocahontasの仔を5・4×4・3でクロスしており、本馬はPocahontasへの戻し交配を試みた父母間に生まれている。ただ、本馬自身はSt. Simon=Angelicaを3×3でインブリードした形でもあり、親世代で整えたPocahontasの土台に、さらにSt. Simonの影響力を強めた配合形だといえるだろう。種牡馬としてはイギリスとアルゼンチンで繋養され、父同様にオールラウンド種牡馬として両国で成功した。
-------Eight Thirty
<プロフィール>
1936年生、米国産、27戦16勝
<主な勝ち鞍>
1939年トラヴァーズS(D10F)
1939年ホイットニーS(D10F)
1940年サバーバンH(D10F)
1941年メトロポリタンH(D8F)
<代表産駒>
Bolero(1949年デルマーダービー)
Lights Up(1950年ピーターパンS、トラヴァーズS)
Sailor(1955年ピムリコスペシャルS、1956年ガルフストリームパークH)
<特徴>
母母Seaplaneはアメリカ競馬史上4頭目のクラシック三冠馬War Admiralの母母Annette K.の半妹であり、War Admiral自身と同じMan o' War産駒でもある配合形。そこに快速馬Dominoを3・3×2でクロスしたHigh Timeを掛け合わせ、さらにFriar Rock系Pilateを父に配して母方のMan o' Warを刺激したのが本馬である。パワーとスピードを強調した配合形で、怪我と闘いながらも1939年トラヴァーズSなどに勝利。種牡馬としてもLights Up(1950年ピーターパンS、トラヴァーズS)などを出して北米種牡馬ランキングの上位にランクインした。種牡馬War Relic(Friar Rock、Man o' War、Commandoなどが共通)、Deputy MinisterやExclusive Native、カリズマティックの牝祖Good Example(Pilate、Commando、Fair Playなどが共通)などとは血統的共通点が多く、ヘニーヒューズのパワーとスピードにはEight Thirty≒War Relicの7×5・6の影響を強く感じる。
--Bend Or
<プロフィール>
1877年生、英国産、14戦10勝
<主な勝ち鞍>
1880年英ダービー(T12F)
1880年St.ジェームズパレスS(T8F)
1881年英チャンピオンS(T10F)
<代表産駒>
Kendal(1885年ジュライS)
Ormonde(1886年英2000ギニー、英ダービー、英セントレジャー)
Bona Vista(1892年英2000ギニー)
<特徴>
2歳時にリッチモンドSを含む5戦5勝を挙げ、翌年の英ダービー、St.ジェームズパレスSまで7戦全勝で駆け抜けた名馬。3歳秋以降は脚部不安により競走能力を落としたが、1881年エプソムGCでは好敵手Robert the Devilに雪辱を果たし、次走の1881年英チャンピオンSにも勝利。父父Stockwell、父Doncaster譲りの大柄な馬体を誇り、特に後躯の発達は素晴らしく、それでいて柔軟で伸びやかな走りを見せたという。種牡馬としてはHermitやGalopin、St. Simonといった大種牡馬に阻まれリーディングサイアーの称号は得られなかったが、第4代英国クラシック三冠馬Ormondeを筆頭に多くの活躍馬を出し、現代競馬に多大な影響を与えるTeddyとPhalarisに父系を繋いだ功績は非常に大きい。ちなみに、母がRouge Roseではなかった、という疑惑があるようだが、これについては今となって真偽を確かめることは難しい。ただ、本馬が後世に与えた影響が絶大であることには変わりないだろう。
-------Teddy
<プロフィール>
1913年生、仏国産、8戦6勝
<主な勝ち鞍>
1916年トロワアン賞(T2400m)
<代表産駒>
Sir Gallahad(1923年仏2000ギニー、ジャックルマロワ賞)
Asterus(1926年仏2000ギニー、ジャックルマロワ賞、1927年英チャンピオンS)
Ortello(1929年伊ダービー、ミラノ大賞、凱旋門賞)
Rose of England(1930年英オークス)
<特徴>
第一次世界大戦の影響で仏ダービーの代替開催として行われた1916年トロワアン賞の優勝馬。引退後はフランスとアメリカで繋養され、1923年仏リーディングサイアーに輝くなど種牡馬としては世界的成功を収めた。初期の代表産駒にはSir Gallahad(1923年仏2000ギニー、ジャックルマロワ賞)やAsterus(1926年仏2000ギニー、ジャックルマロワ賞、1927年英チャンピオンS)などマイラーが多かったが、後期にはOrtello(1929年伊ダービー、ミラノ大賞、凱旋門賞)やRose of England(1930年英オークス)などを出しており、スタミナインデックスも長めだ。大型馬であったBend Orを5×3でインブリードし、さらに母母Doremiは4代父であり英三冠馬でもあるOrmondeと同じBend Or×Macaroniという組み合わせ。本馬も恵まれた馬格を有し、本馬自身や仔Sir Gallahad=Bull Dogがアメリカでも成功を収められたことはBend Or譲りの肉体に起因すると考えられる。そして、名繁殖牝馬La Troienne、名馬Damascusや名種牡馬Private Accountの父祖となるSun Teddy、Raise a Nativeの母父となるCase Aceの3頭をアメリカで輩出したことも大きな功績といえるだろう。
--------Sir Gallahad
<プロフィール>
1920年生、仏国産、25戦12勝
<主な勝ち鞍>
1923年仏2000ギニー(T1600m)
1923年ジャックルマロワ賞(T1600m)
<代表産駒>
Gallant Fox(1930年ケンタッキーダービー、プリークネスS、ベルモントS、ジョッキークラブGC)
エレギヤラトマス・月丘(1937年帝室御賞典)
Fighting Fox(1938年ウッドメモリアルS)
Gallahadion(1940年ケンタッキーダービー)
Hoop Jr.(1945年ケンタッキーダービー)
<特徴>
名種牡馬Teddyの初期の代表産駒。名繁殖牝馬Plucky Liegeの2番仔でもあり、1933年パリ大賞優勝馬Admiral Drakeや1938年英ダービー馬Bois Roussel、名種牡馬Bull Dogなどの兄という良血馬だ。本馬自身、1923年仏2000ギニーや同年ジャックルマロワ賞を制すなどフランスの芝マイル路線で活躍したが、種牡馬としては米国で成功し、4度のリーディングサイアー、12度のリーディングブルードメアサイアーに輝いた。父譲りの大柄な馬体とアメリカの優秀な繁殖牝馬の助けも借り、スピードとパワーに優れた産駒を多数輩出。ただ、潜在的なスタミナは備えており、イギリスではSir Andrew(1931年プリンスオブウェールズS)やBlack Devil(1935年ドンカスターC)などが長距離路線で活躍し、日本でもエレギヤラトマスが天皇賞の前身である1937年帝室御賞典を制している。Bull Dogとの全兄弟クロスも多く、現代の競走馬に多大な影響を与えた名種牡馬といえるだろう。
---------Gallant Fox
<プロフィール>
1927年生、米国産、17戦11勝
<主な勝ち鞍>
1930年プリークネスS(D9.5F)
1930年ケンタッキーダービー(D10F)
1930年ベルモントS(D12F)
1930年ジョッキークラブGC(D16F)
<代表産駒>
Omaha(1935年ケンタッキーダービー、プリークネスS、ベルモントS)
Granville(1936年ベルモントS、トラヴァーズS)
Flares(1937年英チャンピオンS、1938年アスコットGC)
<特徴>
アメリカ競馬史上2頭目のクラシック三冠馬。全弟にFighting Fox(1938年ウッドメモリアルS)とFoxbrough(1938年ミドルパークS)がおり、半兄にはPetee-wrack(1929年メトロポリタンH)がいる良血馬だ。また、全妹Margueryから繋がる牝系は世界中に広まっており、ジェネラスやTreve、フリオーソなどが出ている。母母Fairy RayがGalopinのインブリードやBend Orを持ち、本馬自身は父父Teddyを刺激する配合形。Bend Or系らしい大柄な馬体を誇り、パワーとスタミナに優れた中長距離馬としてアメリカ競馬史に名を残す素晴らしい実績を残した。種牡馬としても自身と同じ中長距離馬を多く輩出し、代表産駒であるOmaha(1935年ケンタッキーダービー、プリークネスS、ベルモントS)は本馬に次ぐ第3代米国クラシック三冠馬の称号を獲得している。
-----------Chop Chop
<プロフィール>
1940年生、米国産、11戦4勝
<主な勝ち鞍>
1943年エンパイアシティH(D9.5F)
<代表産駒>
Canadiana(1953年クイーンズプレート、テストS)
Victoria Park(1960年クイーンズプレート)
Ciboulette(1963年プリンセスエリザベスS)
<特徴>
1960年加年度代表馬Victoria Park(1960年クイーンズプレート)や名牝Ciboulette(1963年プリンセスエリザベスS)などを輩出し、カナダのリーディングサイアーに5度輝いた名種牡馬。Omaha=Flares兄弟の血を引く希少な後継種牡馬であり、代表産駒であるVictoria Parkがこの父系を繋いだ。ちなみに、種牡馬RomanとはSir Gallahad、Buchan、Commandoなどが共通し、米国的なパワーやダッシュ力を伝えているが、本馬はRomanほどパワーやダッシュ力に特化した馬でない点は留意しておきたい。
------------Victoria Park
<プロフィール>
1957年生、加国産、19戦10勝
<主な勝ち鞍>
1960年クイーンズプレート(D10F)
<代表産駒>
Almoner(1970年クイーンズプレート)
Kennedy Road(1971年クイーンズプレート、1973年ハリウッドGC、サンアントニオS)
Victoria Song(1972年クイーンズプレート)
<特徴>
1960年加年度代表馬に輝いた名種牡馬Chop Chopの代表産駒。種牡馬としても1973年加年度代表馬Kennedy Road(1971年クイーンズプレート、1973年ハリウッドGC、サンアントニオS)を出すなどして成功を収め、繁殖牝馬の父としても非常に優秀な成績を残した。特にノーザンテースト(1974年フォレ賞)、The Minstrel(1977年英ダービー、愛ダービー、キングジョージⅥ&QEDS)、ジヤツジアンジエルーチ(1987年カリフォルニアンS)などは競走馬としてだけでなく種牡馬としても活躍。現在はそれらを通して血統表でその名を見ることが多い。母Victorianaが快速馬Commandoの6・6・5×5を持つため、父Chop Chopよりもパワーやスピードに優れた種牡馬だったといえるだろう。
---------Roman
<プロフィール>
1937年生、米国産、40戦18勝
<主な勝ち鞍>
1940年ジェロームH(D8F)
<代表産駒>
Hasty Road(1954年プリークネスS)
Romanita(1957年モンマスオークス、1956年米メイトロンS)
Plucky Roman(1958年トップフライトH)
<特徴>
Sir Gallahad産駒のダート短距離馬。母母Look Upが快速馬Dominoの3・3×4を持ち、本馬自身は筋骨隆々、かつ寸詰まりの体形でパワーとダッシュ力に優れた競走馬であった。種牡馬としては牝馬の活躍馬を多く出し、繁殖牝馬の父としてもTom RolfeやChieftain、ブレイヴエストローマンなどの誕生に貢献。母系を通して後世にその血を残している。エスポワールシチーの母エミネントシチーはRomanの5×4を持ち、その仔エスポワールシチーのパワーやダッシュ力はRomanに由来するといえるだろう。ちなみに、名種牡馬Chop ChopとはSir Gallahad、Buchan、Commandoなどが共通し、米国的なパワーやダッシュ力を伝えているが、Chop Chopよりも本馬の方がパワーとスピードに特化したタイプだ。
--------Bull Dog
<プロフィール>
1927年生、仏国産、8戦2勝
<主な勝ち鞍>
1930年ダフニス賞(T1600m)
<代表産駒>
Bull Lea(1938年ブルーグラスS)
Miss Dogwood(1942年ケンタッキーオークス)
Occupy(1943年ベルモントフューチュリティS)
<特徴>
名繁殖牝馬Plucky Liegeの7番仔。全兄Sir Gallahadは1923年仏2000ギニーや同年ジャックルマロワ賞などを制して名種牡馬Teddyの代表産駒となった。その他、1933年パリ大賞優勝馬Admiral Drakeや1938年英ダービー馬Bois Rousselを半弟に持つ。競走馬としては大成することができなかった本馬だが、種牡馬としてはSir Gallahadと同じくアメリカで成功。さらに、兄ほど繁殖牝馬に恵まれないなかで1943年には北米リーディングサイアーに輝いており、種牡馬としての資質は本馬の方が高かったと考えられる。また、Our Boots、Occupation、Occupyという3頭のベルモントフューチュリティS優勝馬を出しており、仕上がりの早いスピード馬を多く輩出した。兄同様、繁殖牝馬の父としても非常に優秀で、名馬Tom Foolなどの誕生に貢献。Sir Gallahadとの全兄弟クロスも多く、現代の競走馬に多大な影響を与えた名種牡馬といえるだろう。
---------Bull Lea
<プロフィール>
1935年生、米国産、27戦10勝
<主な勝ち鞍>
1938年ブルーグラスS(D9F)
<代表産駒>
Twilight Tear(1944年エイコーンS、CCAオークス)
Armed(1945年ピムリコスペシャルS、1946年サバーバンH)
Citation(1948年ケンタッキーダービー、プリークネスS、ベルモントS、ジョッキークラブGC)
Real Delight(1952年ケンタッキーオークス、CCAオークス)
アイアンリージ(1957年ケンタッキーダービー)
<特徴>
1938年ブルーグラスSや1939年ワイドナーHなどを制すも善戦止まりのレースが多く、超一流とはいえない競走成績。ただ、種牡馬としては第8代米国クラシック三冠馬Citation(1948年ケンタッキーダービー、プリークネスS、ベルモントS、ジョッキークラブGC)を輩出するなど父Bull Dogの後継種牡馬として大成功を収めた。サイズはそれほど大きくなかったが、骨太で筋肉量も豊富。深く折れ曲がった曲飛節も大きな特徴だ。後継種牡馬はことごとく失敗に終わったが、繁殖牝馬の父としては非常に優秀で、米二冠馬Tim Tamや米最優秀3歳牝馬Idunなどの誕生に貢献。母が3×3のインブリードを持つAlydarや母母父にBull Leaを持つRobertoには本馬の特徴が受け継がれており、サクラバクシンオーなどの牝祖であるクリアアンバーも3×3でインブリードしたBull Leaの影響を強く受ける一頭である。
---------Occupy
<プロフィール>
1941年生、米国産、62戦21勝
<主な勝ち鞍>
1943年ベルモントフューチュリティS(D6.5F)
1944年ジェロームH(D8F)
<代表産駒>
Bridgework(1957年ソロリティS)
Busy Jill(1963年コリーンS)
<特徴>
5代母Mannie Himyarは快速馬Dominoの全妹であり、4代母はLady Reel≒Mannie Himyarの姉妹を2×1でインブリードした配合形。その後の2代ではイギリス血脈を取り入れたが、母Miss BuntingはDomino系Buntingの産駒であり、BuntingはDomino≒Lady Reelの4×4を持つ。したがって、本馬の母Miss BuntingはDomino=Mannie Himyar≒Lady Reelが中核をなしており、すなわちそれは快速馬Lexingtonの影響を強く受けていることを意味する。母父に本馬を持つHabitatがSir Gaylord系種牡馬の中でもスプリントからマイルの活躍馬を多く出したことは本馬の特性を継承した証。競走馬としても種牡馬としても一流とは言えないが、現代競馬に与える影響は少なくない。
------------Damascus
<プロフィール>
1964年生、米国産、32戦21勝
<主な勝ち鞍>
1967年プリークネスS(D9.5F)
1967年ベルモントS(D12F)
1967年アメリカンダービー(D9F)
1967年トラヴァーズS(D10F)
1967年ジョッキークラブGC(D16F)
<代表産駒>
Private Account(1980年ワイドナーH、ガルフストリームパークH)
Desert Wine(1984年チャールズHストラブS、カリフォルニアンS、ハリウッドGC)
オジジアン(1985年ベルモントフューチュリティS、1986年ドワイヤーS、ジェロームH)
<特徴>
1967年ウッドワードSでBuckpasserとDr.Fagerという2頭の歴史的名馬を圧倒した1960年代アメリカ競馬を代表する最強馬。名種牡馬Teddyがアメリカで出したSun Teddyに遡る父系であり、Sir Gallahad=Bull Dogを介さない形で細々と本馬まで父系を繋いだ。By Jimminy≒Blade of Time(Pharamond=Sickle、Blue Larkspur、Ben Brush、Commandoなどが共通)の3×2が特徴的な配合形。北米血統特有のパワーを後世に伝え、父似の四肢の長い馬体から中長距離に対応できる点も強みだ。日本ではビワハヤヒデ≒ナリタブライアンなどが出るPacific Princess牝系が本血脈を後世に伝える最有力血脈といえるだろう。
-------------Private Account
<プロフィール>
1976年生、米国産、13戦6勝
<主な勝ち鞍>
1980年ワイドナーH(D10F)
1980年ガルフストリームパークH(D10F)
<代表産駒>
Personal Flag(1987年ワイドナーH、1988年サバーバンH)
Personal Ensign(1988年ホイットニーH、BCディスタフ)
Inside Information(1994年エイコーンS、1995年BCディスタフ)
East of the Moon(1994年仏1000ギニー、仏オークス、ジャックルマロワ賞)
<特徴>
6代母La Troienneに遡る名牝系に属し、母Numbered Accountは初代エクリプス賞最優秀2歳牝馬に輝いた名牝。ともに父War Admiral、母母La TroienneというBusanda≒Strikingを2×3でインブリードしており、立ち肩で胸が深く、均整の取れた好馬体はその仔にも受け継がれた。母の初仔である本馬はDamascusを父に配したダート中距離馬として競走馬としても種牡馬としても活躍。特に種牡馬としてはPersonal Ensign(1988年ホイットニーH、BCディスタフ)やInside Information(1994年エイコーンS、1995年BCディスタフ)、East of the Moon(1994年仏1000ギニー、仏オークス、ジャックルマロワ賞)など大物牝馬を多数輩出した点が特徴的である。ブルードメアサイアーとしても優秀で、日本で種牡馬として活躍したアルデバランⅡ(2003年メトロポリタンH)やディスクリートキャット(2006年シガーマイル)も本馬の産駒の仔だ。ちなみに、Woodmanの母プレイメイトは本馬の母Numbered Accountと全妹であり、Numbered Account=プレイメイトを5×4でクロスしたブラックエンブレムは立ち肩で前駆の強い競走馬であった。
-------------オジジアン
<プロフィール>
1983年生、米国産、10戦7勝
<主な勝ち鞍>
1985年ベルモントフューチュリティS(D7F)
1986年ドワイヤーS(D9F)
1986年ジェロームH(D8F)
<代表産駒>
エイシンワシントン(1994年セントウルS、1996年CBC賞)
バトルライン(1997年プロキオンS、かしわ記念、エルムS、1998年全日本サラブレッドC)
<特徴>
怪我によりクラシック競走には参戦できなかったが、のちの北米最優秀短距離馬Groovyに3戦全勝するなど2~3歳時にGⅠ3勝を挙げた快速馬。母GonfalonはFappianoの母Killaloeの半妹であり、Sun Princess≒Mahmoudの3×4など血統的魅力の大きい繁殖牝馬。本馬はPerfume≒Royal Chargerの4×3からMumtaz Mahal系のスピードを継続し、Damascus産駒の中でもスピード豊富な競走馬だったといえる。種牡馬としてGⅠ馬は輩出できなかったが、エイシンワシントン(1994年セントウルS、1996年CBC賞)が1996年スプリンターズS2着、マイルCS3着、バトルライン(1997年プロキオンS、かしわ記念、エルムS、1998年全日本サラブレッドC)が1997年フェブラリーS3着など一線級で活躍して産駒も多い。また、繁殖牝馬の父としてはヨハネスブルグやStreet Bossの誕生に貢献するなど優秀な成績を残しており、現在はヨハネスブルグを経由して血統表で見ることがほとんどだ。
-----Orby
<プロフィール>
1904年生、英国産、7戦4勝
<主な勝ち鞍>
1907年英ダービー(T12F)
1907年愛ダービー(T12F)
<代表産駒>
Diadem(1917年英1000ギニー)
Grand Parade(1919年英ダービー、St.ジェームズパレスS)
Orpheus(1920、21年英チャンピオンS)
<特徴>
史上初、英ダービーと愛ダービーを制した歴史的名馬。父Ormeは生涯無敗の英三冠馬Ormondeと大種牡馬St. Simonの全姉Angelicaとの間に生まれた超良血馬で、本馬は英三冠馬Flying Foxと並ぶ父の代表産駒である。Flying FoxはTeddy系の父祖として父系を伸ばし、本馬は後継種牡馬The Bossが一大スプリンター父系を形成。また、Grand Parade(1919年英ダービー、St.ジェームズパレスS)のラインからは日本で種牡馬として成功を収めたダイオライトなどが出ている。両系統ともに日本に多く輸入され、スタミナ系の固着を打破するビタミン剤として日本馬に活力を与えた。
------The Boss
<プロフィール>
1910年生、英国産、16戦6勝
<主な勝ち鞍>
-
<代表産駒>
Golden Boss(1923、24年キングズスタンドプレート)
Sir Cosmo(1930年ジュライC)
<特徴>
タイトルは獲得していないが、6勝すべてを5F戦で挙げたピュアスプリンター。種牡馬としてもスプリンターを多く出し、Golden Boss(1923、24年キングズスタンドプレート)とSir Cosmo(1930年ジュライC)がそのスピード父系を繋いだ。現在では名馬Round Tableや名繁殖牝馬Rough Shodの血統内に本馬の名を見ることが多い。
--------ダイオライト
<プロフィール>
1927年生、英国産、24戦6勝
<主な勝ち鞍>
1930年英2000ギニー(T8F)
<代表産駒>
テツザクラ(1940年京都農林省賞典4歳呼馬)
セントライト(1941年横浜農林省賞典4歳呼馬、日本ダービー、京都農林省賞典4歳呼馬)
ダイヱレク(1943年横浜農林省賞典4歳呼馬)
<特徴>
1930年英2000ギニー優勝馬であり、イギリスのクラシックホースとして初めて日本に輸入された1941~43年全日本リーディングサイアー。父父Grand ParadeはAngelica=St. Simonの3×3などGalopin→St. Simon血脈を豊富に持つOrby産駒の英ダービー馬で、父DiophonがGalopinの5・5・5×3、本馬がAngelica=St. Simonの5・5×4などで継続。当時の欧州馬らしいGalopin→St. Simon血脈を凝縮した配合形であり、その優秀な血脈を余すことなく日本馬に伝え、日本競馬史上初のクラシック三冠馬セントライト(1941年横浜農林省賞典4歳呼馬、日本ダービー、京都農林省賞典4歳呼馬)を筆頭に数多くの一流馬を輩出した。
----Cyllene
<プロフィール>
1895年生、英国産、11戦9勝
<主な勝ち鞍>
1898年ジョッキークラブS(T10F)
1899年アスコットGC(T20F)
<代表産駒>
Cicero(1905年英ダービー)
Polymelus(1906年英チャンピオンS)
Minoru(1909年英2000ギニー、英ダービー、St.ジェームズパレスS、サセックスS)
Lemberg(1910年英ダービー、St.ジェームズパレスS、エクリプスS、1910、11年英チャンピオンS)
Tagalie(1912年英1000ギニー、英ダービー)
<特徴>
遅生まれで貧弱な馬体であったことからクラシックには未登録だったが、1899年アスコットGCを圧勝するなど11戦9勝の実績を残して引退。種牡馬としても3年目にアルゼンチンに輸出されるも、その後に英ダービー馬を4頭輩出。アルゼンチンではリーディングサイアーにも輝き、競走馬としても種牡馬としても周囲の評価を覆す活躍を見せた。父Bona Vista同様に背中が長く、気性も穏やかな馬だったという。イギリスで出したPolymelus(1906年英チャンピオンS)が後継種牡馬となるPhalarisを出し、その父系は現代のサラブレッドの大半を占めるまでになっている。
---------ライジングフレーム
<プロフィール>
1947年生、愛国産、25戦7勝
<主な勝ち鞍>
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<代表産駒>
ウネビヒカリ(1958年朝日杯3歳S)
オーテモン(1960年天皇賞秋)
トキノキロク(1960年桜花賞)
チトセホープ(1961年オークス)
<特徴>
1958~60年全日本リーディングサイアー。父The Phoenixは1943年愛2000ギニー、愛ダービーを制した2冠馬で、母Admirableも1945年愛オークス馬という良血。本馬はPharosの4×3が強いスピード馬で、ビッグタイトルは手にしていないが、1950年St.ジェームズパレスSで2着と好走するなどマイル以下で活躍した。引退後はイギリスで種牡馬入りし、1952年からは日本で活躍。当時は大レースが長距離戦に集中していたため1961年以降はリーディングサイアーの座をヒンドスタンに譲ったが、JRA勝利数1379勝はノーザンテーストに抜かれるまでの最多記録であり、ヒンドスタンとともに1960年代の日本競馬を牽引した名種牡馬であったことは間違いない。また、Nearcoの血を日本に導入したことも大きな功績といえるだろう。
------Phalaris
<プロフィール>
1913年生、英国産、24戦16勝
<主な勝ち鞍>
1917年チャレンジS(T7F)
1918年チャレンジS(T7F)
<代表産駒>
Pharos(1924年英チャンピオンS)
Manna(1925年英2000ギニー、英ダービー)
Colorado(1926年英2000ギニー、1927年エクリプスS)
Fairway(1928年エクリプスS、英セントレジャー、1929年ジョッキークラブC、1928、29年英チャンピオンS)
<特徴>
母BromusはジュライC連覇など19世紀英国最強スプリンターの座に君臨したSpringfieldを2×3でインブリードしており、本馬も距離に限界のある筋肉質なスプリンターとして活躍。種牡馬としては長距離偏重だった当時の欧州競馬にスピード化をもたらした立役者の一頭であり、1925年と1928年には英愛リーディングサイアーにも輝いた。特に、Pharos=Fairway、Sickle=Pharamondなど現代競馬に多大な影響を与える名種牡馬を多数輩出した点は素晴らしく、現在はPharos→Nearco、Sickle→Unbreakable→Polynesian→Native Dancerのラインが現代競馬を牽引している。なお、本馬は第17代ダービー伯爵エドワード・スタンリー卿により生産・所有されたイギリス産馬で、本馬には同じくスタンリー卿の生産・所有馬であるChaucer産駒の肌馬が多くつけられた。先に挙げたPharos=FairwayやSickle=Pharamondもその組み合わせであり、ほかにも数多くの活躍馬が誕生している。
≪坂上 明大(Sakagami Akihiro)≫
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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