【種牡馬辞典】Fappiano系・Woodman系・Gone West系・Gulch系
Fappiano
<プロフィール>
1977年生、米国産、17戦10勝
<主な勝ち鞍>
1981年メトロポリタンH(D8F)
<代表産駒>
Tasso(1985年デルマーフューチュリティ、BCジュベナイル)
Cryptoclearance(1987年フロリダダービー、ペガサスH、1989年ドンH、ワイドナーH)
Unbridled(1990年フロリダダービー、ケンタッキーダービー、BCクラシック)
<特徴>
父は大種牡馬Mr. Prospector、母父はアメリカ競馬史を代表する快速馬Dr.Fagerという組み合わせで、本馬も1981年メトロポリタンHなどマイル前後で活躍。父と母父から受け継ぐスピードとSir Gallahad=Bull Dog=Marguerite de Valois譲りのパワーが持ち味といえるだろう。In Realityとの相性の良さは有名で、これは母父Dr. FagerとIn Realityの母My Dear Girlが血統的共通点が多いことが根拠に挙げられる。代表産駒であるUnbridled(1990年フロリダダービー、ケンタッキーダービー、BCクラシック)のほか、Tappiano(1986年スピナウェイS、米メイトロンS、デモワゼルS)、Rubiano(1991年NYRAマイルH、1992年カーターH、ヴォスバーグS)、Serape(1992年バレリーナS)、Cahill Road(1991年ウッドメモリアル招待S)などがこれに該当する。また、Sir Ivorとの相性も良く、これはFappianoの3代母CequilloとSir IvorがPrincequillo、Mahmoud、Man o' War、Marguerite de Valois=Sir Gallahadなどが共通することが根拠に挙げられ、ディープインパクトとの相性の良さもこれで説明がつくだろう。
---Candy Ride
<プロフィール>
1999年生、亜国産、6戦6勝
<主な勝ち鞍>
2002年サンイシドロ大賞(T1600m)
2002年JSアンチョレナ大賞(T1600m)
2003年パシフィッククラシックS(D10F)
<代表産駒>
Shared Belief(2013年キャッシュコールフューチュリティ、2014年パシフィッククラシックS、オーサムアゲインS、マリブS、2015年サンタアニタH)
Gun Runner(2016年クラークH、2017年スティーヴンフォスターH、ホイットニーS、ウッドワードS、BCクラシック、2018年ペガサスワールドC)
Game Winner(2018年デルマーフューチュリティ、アメリカンファラオS、BCジュベナイル)
<特徴>
2歳時にはアルゼンチンの芝マイルGⅠを2勝。アメリカに移籍した3歳時には2003年パシフィッククラシックSでMedaglia d'Oroなどの一流馬を降し、6戦全勝の実績を残して引退したFappiano系の名馬。父Ride the Railsは牝祖Alablueを4×3でインブリードし、1994年フロリダダービーでは名馬Holy Bullの2着。それに対し、母父Candy Stripesは1985年仏2000ギニー2着などがある芝馬で、本馬は血統通り芝とダートを問わず3つのGⅠ競走を制した。ただ、父Ride the Rails、特にその母母Alanesian(1956年スピナウェイS)の存在感が強い配合形ではあり、立ち肩で前駆の強い走りからもダート中距離が適条件だっただろう。種牡馬としては5代アウトブリードということもあり、馬場や距離を問わずGⅠ馬を輩出。日本でも輸入馬の直仔はダートに良績が偏ったが、繁殖牝馬の父としては芝とダートの差はほとんど生まれなかった。父系は代表産駒のGun Runner(2016年クラークH、2017年スティーヴンフォスターH、ホイットニーS、ウッドワードS、BCクラシック、2018年ペガサスワールドC)が大成功しており、当分は安泰だ。
-Quiet American
<プロフィール>
1986年生、米国産、12戦4勝
<主な勝ち鞍>
1990年NYRAマイルH(D8F)
<代表産駒>
Hidden Lake(1997年ヘムステッドH、ゴーフォーワンドS、ベルデイムS)
Real Quiet(1997年ハリウッドフューチュリティ、1998年ケンタッキーダービー、プリークネスS、1999年ピムリコスペシャルH、ハリウッドGC)
Switch(2010年ラブレアS、2011年サンタモニカS)
<特徴>
競走馬としては1990年NYRAマイルHを制した程度だったが、種牡馬としては1998年北米3歳牡馬チャンピオンReal Quiet(1997年ハリウッドフューチュリティ、1998年ケンタッキーダービー、プリークネスS、1999年ピムリコスペシャルH、ハリウッドGC)などを出して成功。ただ、産駒のGⅠ馬5頭中4頭は牝馬というフィリーサイアーで、繁殖牝馬の父となってさらに大きな存在感を示した名種牡馬である。3代母Cequilloは父Fappianoの3代母でもある優秀な繁殖牝馬。さらに、本馬の母DemureとFappianoの母Killaloeはどちらも父Dr. Fager、母母Cequilloという血統構成で、本馬自身はKillaloe≒Demureの2×1という野心的な配合形。代を経ても影響力の強い種牡馬であり、特に母方に入っての存在感は現在も健在だ。
-Unbridled
<プロフィール>
1987年生、米国産、24戦8勝
<主な勝ち鞍>
1990年フロリダダービー(D9F)
1990年ケンタッキーダービー(D10F)
1990年BCクラシック(D10F)
<代表産駒>
Unbridled's Song(1995年BCジュベナイル、1996年フロリダダービー)
Grindstone(1996年ケンタッキーダービー)
Red Bullet(2000年プリークネスS)
エンパイアメーカー(2003年フロリダダービー、ウッドメモリアルS、ベルモントS)
<特徴>
父Fappianoの代表産駒であり、最良後継種牡馬。Fappianoの母父Dr. Fagerと同じAspidistra牝系に属し、本馬自身はAspidistraを4×4でインブリードした配合形。さらに、父と相性のいいIn Realityの血も併せ持ち、これはDr. FagerとMy Dear Girl(In Realityの母)の血統構成に共通点が多いことが根拠に挙げられる。また、3代母MagicはBusanda≒Better Selfの2×2という強烈なパワー血脈であり、本馬自身はBetter Self≒Busandaを5×5・5でインブリードしていることにもなる。Fappianoのパワー源を最大限強化した代表産駒であり、父としても多くのダートGⅠ馬を輩出した名種牡馬だ。ただ、フランス血脈であるLe Fabuleuxを母父に配し、1/4異系血脈を取り入れたことがスパイスになっていることを忘れてはならず、本馬のスタミナ源はここに起因すると考えられる。
--Unbridled's Song
<プロフィール>
1993年生、米国産、12戦5勝
<主な勝ち鞍>
1995年BCジュベナイル(D8.5F)
1996年フロリダダービー(D9F)
<代表産駒>
Midshipman(2008年デルマーフューチュリティ、BCジュベナイル)
Will Take Charge(2013年トラヴァーズS、クラークH)
Arrogate(2016年トラヴァーズS、BCクラシック、2017年ペガサスワールドC、ドバイワールドC)
Forever Unbridled(2016年アップルブラッサムH、ベルデイムS、2017年パーソナルエンスンS、BCディスタフ)
<特徴>
母Trolley SongはNasrullah、Royal Charger、MahmoudなどのMumtaz Mahal血脈を豊富に持ち、さらにHyperionやPrincequilloなどスタミナに秀でた血脈も内包。父Unbridledは北米血脈らしいパワータイプだったが、本馬は芝とダートを問わず、スピードもスタミナも兼備した名種牡馬である。これは、馬体面にも表れており、立ち肩の父に対して、本馬は肩のつき方に角度があり、柔軟性にも優れている。自身と同じく脚元の弱い馬が多かったことは欠点だが、Arrogate(2016年トラヴァーズS、BCクラシック、2017年ペガサスワールドC、ドバイワールドC)を筆頭に数多くのGⅠ馬を輩出して、2017年には北米リーディングサイアーにも輝いた。大種牡馬サンデーサイレンスと本馬の母は、Nasrullah≒Royal Charger系である点、Mahmoudをインブリードする点、Heliopolis≒Gulf Streamを持つ点など共通点が多く、スワーヴリチャードやトーホウジャッカルなど両血脈を併せ持つ活躍馬は少なくない。特に、ディープインパクトとの相性の良さは格別のもので、これはディープインパクトが持つSir Ivorと本馬が持つCequillo(Fappianoの3代母)とIncantation(本馬の3代母)がPrincequillo、Mahmoud、Man o' War、Marguerite de Valois=Sir Gallahad=Bull Dogなどが共通することが根拠に挙げられ、三冠馬コントレイルを筆頭に多くの活躍馬が誕生している。
--エンパイアメーカー
<プロフィール>
2000年生、米国産、8戦4勝
<主な勝ち鞍>
2003年フロリダダービー(D9F)
2003年ウッドメモリアルS(D9F)
2003年ベルモントS(D12F)
<代表産駒>
Pioneerof the Nile(2008年キャッシュコールフューチュリティ、2009年サンタアニタダービー)
Royal Delta(2011年アラバマS、2011、12年BCレディーズクラシック)
Emollient(2013年アッシュランドS、アメリカンオークスS、スピンスターS)
<特徴>
名繁殖牝馬Toussaud(1993年ゲイムリーH)の6番仔であり、兄姉にはChester House(2000年アーリントンミリオンS)、Honest Lady(2000年サンタモニカH)、Chiselling(2002年セクレタリアトS)という3頭のGⅠ馬がいる超良血馬。本馬は名種牡馬Unbridledを父に配して、In Realityを4×3でインブリード。同じく父の代表産駒であるUnbridled's Songが母からMumtaz Mahal血脈を豊富に注入したのに対して、本馬は父のパワー血脈を継続する配合形である。種牡馬としてもPioneerof the Nile(2008年キャッシュコールフューチュリティ、2009年サンタアニタダービー)やRoyal Delta(2011年アラバマS、2011、12年BCレディーズクラシック)などを出して成功を収めたが、産駒の仕上がりが遅く、気性も激しかったことなどから2011年からは日本で種牡馬生活を送ることに。その後、孫American Pharoahの活躍などにより2016年に帰国することとなるが、日本での産駒はUnbridled's Song産駒の輸入馬が芝の方が成績が良かったことに対して、本馬の産駒はダートの成績が芝を圧倒。フェデラリスト(2012年中山記念)やエテルナミノル(2018年愛知杯)など一定数芝の活躍馬も出たが、父のパワー源を増強した配合形の通り、ダート向きの種牡馬だったとみて間違いないだろう。また、活躍馬に牝馬が多かったことも特徴のひとつで、繁殖牝馬の父としての活躍にも期待が持てる。既にOutwork(2016年ウッドメモリアルS)をはじめ多くGⅠが出ており、今後も多方面で勢力を拡大していくであろう名種牡馬だ。
Woodman
<プロフィール>
1983年生、米国産、5戦3勝
<主な勝ち鞍>
1985年アングルシーS(T6F)
1985年愛フューチュリティS(T8F)
<代表産駒>
ヘクタープロテクター(1990年モルニ賞、サラマンドル賞、仏グランクリテリウム、1991年仏2000ギニー、ジャックルマロワ賞)
ハンセル(1991年プリークネスS、ベルモントS)
ティンバーカントリー(1994年米シャンペンS、BCジュベナイル、1995年プリークネスS)
ヒシアケボノ(1995年スプリンターズS)
Bosra Sham(1995年フィリーズマイル、1996年英1000ギニー、英チャンピオンS)
<特徴>
6代母La Troienneに遡る名牝系。母プレイメイトはBusanda≒Strikingの2×3という野心的な配合で、本馬もWar Admiral+La Troienne的な強靭なパワーを強く受け継いでいる。さらに、父Mr.Prospectorのスピードもしっかりと継承しており、不良馬場の2007年スプリンターズSを制覇したアストンマーチャン(母父Woodman)がWoodmanらしさを最も表現した日本の活躍馬といえるだろうか。また、ブラックエンブレム(2008年秋華賞)はNumbered Account=プレイメイトを5×4でインブリードしたWoodman増幅型。立ち肩で前駆が強く、内回りコースで重賞2勝を挙げたことは本血脈の影響を多分に受けた証だ。War Admiral+La Troienne血脈を豊富に持つ名繁殖牝馬Sex Appealとの組み合わせでもプレイメイト→Woodmanらしさを強調することができる。仕上がりの早さにも定評があり、2~3歳戦に強いことも大きな特徴だ。
-ティンバーカントリー
<プロフィール>
1992年生、米国産、12戦5勝
<主な勝ち鞍>
1994年米シャンペンS(D8.5F)
1994年BCジュベナイル(D8.5F)
1995年プリークネスS(D9.5F)
<代表産駒>
アドマイヤドン(2001年朝日杯FS、2002、03、04年JBCクラシック、2003年マイルCS南部杯、2004年フェブラリーS、帝王賞)
Balletto(2004年フリゼットS)
Eremein(2005年ローズヒルギニー、豪ダービー、2006年クイーンエリザベスS)
<特徴>
名繁殖牝馬Fall Aspen(1978年米メイトロンS)の10番仔であり、きょうだいにNorthern Aspen(1987年ゲイムリーH)、Hamas(1993年ジュライC)、Fort Wood(1993年パリ大賞)など多くの活躍馬がいる良血馬。母母Change WaterがWar Admiralの4×2、母Fall AspenがHyperionの3×4やSon-in-Lawの5×5、本馬がSwapsの4×3などを経由したWar Admiralの5・7・6×6×4、Hyperionの6×4・5などパワーとスタミナに優れたダート中距離馬で、引退後は日本を中心にWoodman系種牡馬として成功を収めた。父同様に芝で活躍する馬も一定数輩出したが、多くの産駒はダート、さらには障害競走で活躍。繁殖牝馬の父としてもコパノリッキー(2014、15年フェブラリーS、JBCクラシック、2014、16、17年かしわ記念、2016年帝王賞、2016、17年マイルCS南部杯、2017年東京大賞典)とララベル(2017年JBCレディスクラシック)の誕生に貢献しており、血筋の良さは改めて再評価されていい良血馬だ。
Gone West
<プロフィール>
1984年生、米国産、17戦6勝
<主な勝ち鞍>
1987年ドワイヤーS(D9F)
<代表産駒>
Zafonic(1992年モルニ賞、サラマンドル賞、デューハーストS、1993年英2000ギニー)
Da Hoss(1996、98年BCマイル)
Commendable(2000年ベルモントS)
Johar(2002年ハリウッドダービー、2003年BCターフ)
<特徴>
1987年ドワイヤーSを制すなどダートのマイル前後で活躍。ただ、全弟Lion Cavernは1992年仏2000ギニーで3着するなど芝とダートを問わず活躍し、半弟ロードアルティマは日本の芝短距離路線でOPまで勝ち上がった。これは、本馬の3代母Mixed MarriageがTudor Minstrel×Tehranのイギリス産馬で、Pharos=Fairwayの4×3、Son-in-Lawの4×4などインブリードが濃く、強い影響力を持っていることが根拠に挙げられる。本馬も種牡馬としては芝とダートを問わずGⅠ馬を輩出し、現在も欧米で枝葉を広げている。
-Zafonic
<プロフィール>
1990年生、米国産、7戦5勝
<主な勝ち鞍>
1992年モルニ賞(T1200m)
1992年アラマンドル賞(T1400m)
1992年デューハーストS(T7F)
1993年英2000ギニー(T8F)
<代表産駒>
ザール(1997年サラマンドル賞、デューハーストS)
Zafeen(2003年St.ジェームズパレスS)
Zee Zee Top(2003年オペラ賞)
<特徴>
1993年英2000ギニーでMy Babuのレコードタイムを45年ぶりに更新した名マイラー。次走のサセックスSで鼻出血を発症してそのまま引退となったが、種牡馬としてもザール(1997年サラマンドル賞、デューハーストS)やZafeen(2003年St.ジェームズパレスS)を輩出して一定の成功を収めた。全弟ZamindarもZarkava(2007年マルセルブサック賞、2008年仏1000ギニー、仏オークス、ヴェルメイユ賞、凱旋門賞)を出すなどして種牡馬として成功。同馬は牝馬の大物を多く出しており、本馬も今後は繁殖牝馬の父としての活躍が期待される。
-Mr. Greeley
<プロフィール>
1992年生、米国産、16戦5勝
<主な勝ち鞍>
1995年スペクタキュラービッドBCS(D6F)
1995年スウェイルS(D7F)
1995年ファイエットS(D7F)
<代表産駒>
El Corredor(2000年シガーマイルH)
Nonsuch Bay(2002年マザーグースS)
Reel Buddy(2003年サセックスS)
Finsceal Beo(2006年マルセルブサック賞、2007年英1000ギニー、愛1000ギニー)
<特徴>
ダート6、7FのGⅢを3勝したほか、1995年BCスプリントではDesert Stormerと小差の2着。Bold Rulerを4×3でインブリードした一本調子のスピード馬で、脆さが同居したダート短距離馬だったといえるだろう。ただ、種牡馬としてはFinsceal Beo(2006年マルセルブサック賞、2007年英1000ギニー、愛1000ギニー)を出すなどして期待以上の成功を収めた。母母Lianga(1973年ローベルパパン賞、1975年ジャックルマロワ賞)から繋がる牝系からはDanehill Dancerやストリートセンスなど多くの名種牡馬が誕生しており、本馬もそれらと同様に優秀なスピードと早熟性を子孫に伝えている。
-Elusive Quality
<プロフィール>
1993年生、米国産、20戦9勝
<主な勝ち鞍>
1998年ジャイプールH(T7F)
1998年ポーカーH(T8F)
<代表産駒>
Smarty Jones(2004年ケンタッキーダービー、プリークネスS)
Raven's Pass(2008年クイーンエリザベスⅡ世S、BCクラシック)
Quality Road(2009年フロリダダービー、2010年ドンH、メトロポリタンH、ウッドワードS)
<特徴>
逃げ一辺倒の戦法で主な勝ち鞍はGⅢの2勝に終わったが、1998年ポーカーHでは芝8F戦の世界レコードを樹立。Secrettame≒Sir Ivorの2×3(Secretariat≒Sir Gaylord、Tom Fool≒Atticaなどが共通)とも取れる配合形で、柔軟性とスピードを兼ね備えた芝マイラーであった。種牡馬としては2年目の産駒であるSmarty Jones(2004年ケンタッキーダービー、プリークネスS)が活躍して人気種牡馬の仲間入り。2004年には北米リーディングサイアーにも輝き、その後もコンスタントにGⅠ馬を輩出した。半弟RossiniはジョコンダⅡを出し、同馬はライトニングパール(2011年チェヴァリーパークS)とサトノクラウン(2016年香港ヴァーズ、2017年宝塚記念)を輩出。また、母Touch of Greatnessが持つ血は良質揃いで、AlzaoやSadler's Wellsなど相性の良い血も多い。母方に入っても活躍が期待できる血筋であり、今後も配合面で注目の種牡馬となりそうだ。
--Raven's Pass
<プロフィール>
2005年生、米国産、12戦6勝
<主な勝ち鞍>
2008年クイーンエリザベスⅡ世S(T8F)
2008年BCクラシック(AW10F)
<代表産駒>
Royal Marine(2018年ジャンリュックラガルデール賞)
タワーオブロンドン(2019年スプリンターズS)
Romantic Proposal(2021年フライングファイブS)
<特徴>
3歳前半までは好敵手Henrythenavigatorなどの後塵を拝し続けたが、2008年クイーンエリザベスⅡ世Sで念願の初GⅠタイトルを獲得。そして、同年BCクラシックではオールウェザーでの開催も味方して、欧州調教馬としては史上2頭目のBCクラシック制覇を達成した。父Elusive Qualityは1998年ポーカーHで世界レコードを樹立したスピード馬で、母Ascutneyも北米の芝マイルGⅢ勝ち馬。本馬も非常に軽い走りをする芝マイラーで、種牡馬としても芝のマイル以下を中心にGⅠ馬を輩出した。母母Right WordがPrincequilloの4×3、Nasrullahの4×3、Count Fleetの5×4を持ち、父Elusive QualityはSecrettame≒Sir Ivorの2×3(Secretariat≒Sir Gaylord、Tom Fool≒Atticaなどが共通)とも取れる配合形。本馬のバネの利いた走りはこれらに起因し、母父Lord At Warがアウトサイダー血脈というバランスの取れた配合形も素晴らしい。
-Zamindar
<プロフィール>
1994年生、米国産、7戦2勝
<主な勝ち鞍>
1996年カブール賞(T1200m)
<代表産駒>
Zenda(2002年仏1000ギニー)
Darjina(2007年仏1000ギニー、アスタルテ賞、ムーランドロンシャン賞)
Zarkava(2008年仏1000ギニー、仏オークス、ヴェルメイユ賞、凱旋門賞)
<特徴>
1993年英2000ギニーをレコードタイムで圧勝した名マイラーZafonicの全弟。本馬自身はGⅢを制した程度だが、種牡馬としてはZenda(2002年仏1000ギニー)、Darjina(2007年仏1000ギニー、アスタルテ賞、ムーランドロンシャン賞)、Zarkava(2007年マルセルブサック賞、2008年仏1000ギニー、仏オークス、ヴェルメイユ賞、凱旋門賞)という3頭の仏1000ギニー馬を輩出するなどして成功を収め、2008年には仏リーディングサイアーにも輝いた。産駒のGⅠ馬全5頭が牝馬という点は大きな特徴で、今後は繁殖牝馬の父としての活躍に期待される。
-Speightstown
<プロフィール>
1998年生、米国産、16戦10勝
<主な勝ち鞍>
2004年BCスプリント(D6F)
<代表産駒>
Golden Ticket(2012年トラヴァーズS)
Rock Fall(2015年AGヴァンダービルトH、ヴォスバーグS)
Olympiad(2022年ジョッキークラブGC)
<特徴>
2004年BCスプリントを制し、同年北米チャンピオンスプリンターに輝いた快速馬。母Silken CatはBold Rulerの4×3、First Rose≒Tom Foolの5×4を持ち、本馬はBold Rulerの4×5・4、Tom Fool≒First Roseの5×6・5で継続。Bold RulerとTom Fool≒First Roseを中心とした北米血脈から非凡なスピードを受け継いでおり、種牡馬としてもその特徴を余すことなく継承している。超大物を出すタイプではないが、アベレージの高さは素晴らしく、JRAでもモズスーパーフレア(2020年高松宮記念)やマテラスカイ(2018、20年JBCスプリント2着、2018年ドバイGS2着)を筆頭に勝ち上がり率63%という素晴らしい成績を残している。芝とダートを問わない点も大きな強みだ。
Gulch
<プロフィール>
1984年生、米国産、32戦13勝
<主な勝ち鞍>
1986年米ホープフルS(D6.5F)
1086年ベルモントフューチュリティS(D7F)
1987年ウッドメモリアル招待S(D9F)
1987年メトロポリタンH(D8F)
1988年カーターH(D7F)
1988年メトロポリタンH(D8F)
1988年BCスプリント(D6F)
<代表産駒>
サンダーガルチ(1995年フロリダダービー、ケンタッキーダービー、ベルモントS、トラヴァーズS)
イーグルカフェ(2000年NHKマイルC、2002年ジャパンCダート)
Nayef(2001年英チャンピオンS、2002年ドバイシーマクラシック、英インターナショナルS、2003年プリンスオブウェールズS)
Court Vision(2008年ハリウッドダービー、2009年シャドウェルターフマイルS、2010年ガルフストリームパークターフH、ウッドバインマイルS、2011年BCマイル)
<特徴>
1988年BCスプリントなどGⅠ7勝を挙げたチャンピオンスプリンター。母Jameela(1981年マスケットS、レディーズH、1982年デラウェアH)もGⅠ3勝の活躍馬で、NasrullahやCount Fleetなどの父Mr. Prospectorの柔軟な血には触れず、反対に北米血脈を刺激した配合形。立ち肩で筋肉質、かつ脚の短いパワースピードタイプだ。ただ、アウトブリード血統のため主張はそれほど強くなく、産駒にはイーグルカフェ(2000年NHKマイルC、2002年ジャパンCダート)、Nayef(2001年英チャンピオンS、2002年ドバイシーマクラシック、英インターナショナルS、2003年プリンスオブウェールズS)、Court Vision(2008年ハリウッドダービー、2009年シャドウェルターフマイルS、2010年ガルフストリームパークターフH、ウッドバインマイルS、2011年BCマイル)など芝をこなした馬も少なくない。
-サンダーガルチ
<プロフィール>
1992年生、米国産、16戦9勝
<主な勝ち鞍>
1995年フロリダダービー(D9F)
1995年ケンタッキーダービー(D10F)
1995年ベルモントS(D12F)
1995年トラヴァーズS(D10F)
<代表産駒>
Spain(2000年BCディスタフ、ラブレアS)
Tweedside(2001年CCAオークス)
Point Given(2000年ハリウッドフューチュリティ、2001年サンタアニタダービー、プリークネスS、ベルモントS、ハスケル招待H、トラヴァーズS)
<特徴>
1995年ケンタッキーダービー、ベルモントSを制した米クラシック二冠馬。母母Shoot a Lineは1980年愛オークス、ヨークシャーオークスを制した名牝で、母Line of Thunderも1989年チェヴァリーパークS2着などがある活躍馬。母の仔は14頭中12頭が日本に輸入されており、本馬の半弟にはバトルライン(1997年プロキオンS、かしわ記念、エルムS、1998年全日本サラブレッドカップ)などがいる。本馬はGulch×Storm Birdの組み合わせだが、牝系のスタミナが支えとなってダート中距離路線で活躍。種牡馬としてもPoint Given(2000年ハリウッドフューチュリティ、2001年サンタアニタダービー、プリークネスS、ベルモントS、ハスケル招待H、トラヴァーズS)を筆頭に数多くのGⅠ馬を輩出し、2001年には北米リーディングサイアーにも輝いた。
≪坂上 明大(Sakagami Akihiro)≫
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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