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【種牡馬辞典】Galopin系

Galopin

<プロフィール>
1872年生、英国産、11戦10勝
<主な勝ち鞍>
1875年英ダービー(T12F)
<代表産駒>
Galliard(1883年英2000ギニー)
St. Simon(1884年アスコットGC、グッドウッドC)
Donovan(1889年英ダービー、英セントレジャー)
Disraeli(1898年英2000ギニー)
<特徴>
1875年英ダービーを制すなど11戦10勝を挙げ、種牡馬としても1888、89、98年リーディングサイアーに輝いた偉大なる名馬。父Vedetteは1818年ドンカスターS(T32F)などを制したBlacklockを3×4でインブリードしており、本馬はさらにBlacklockとその仔Voltaire(1829年ドンカスターC)のラインについて二重の累進交配をしている。この血脈を源泉とするスタミナは種牡馬としても大きな影響力を持ち、父として大種牡馬St. Simon(1884年アスコットGC、グッドウッドC)を輩出したほか、Son-in-Law(Galopinの5×4)やTeddy(Galopinの5・4×5)、Gainsborough(Galopinの5・3×4)やBlandford(Galopinの5×4・5)など次世代の種牡馬にも多大なる影響を与えた。

-St. Simon

<プロフィール>
1881年生、英国産、10戦10勝
<主な勝ち鞍>
1984年アスコットGC(T20F)
1984年グッドウッドC(T20F)
<代表産駒>
La Fleche(1892年英1000ギニー、英オークス、英セントレジャー、1894年アスコットGC、英チャンピオンS)
Persimmon(1896年英ダービー、英セントレジャー、1897年アスコットGC、エクリプスS)
Diamond Jubilee(1900年英2000ギニー、英ダービー、エクリプスS、英セントレジャー)
William the Third(1902年アスコットGC、ドンカスターC)
<特徴>
英リーディングサイアーに9回輝いた歴史的大種牡馬。クラシックには未出走だったが、1984年アスコットGC、グッドウッドCを制すなど競走馬としても負け知らずの怪物で、両レースではともに20馬身差の圧勝劇を見せている。引退後は種牡馬として爆発的な成功を収めた反面、他に優秀な系統を欠いたことで血の袋小路となり父系の繁栄は長く続かなかった。しかし、父Galopinと母父King Tomという両名血を併せ持った配合形は時を経ても強い影響力を持ち、自身が3~5代あたりに登場する時機にはStockwell(≒King Tom)とGalopinを中心に形成されたサラブレッドの進化に多大な貢献を果たす。Pharos=FairwayはSt. Simonを4×3でインブリードしており、Sir Gallahad=Bull DogはSt. Simon=Angelicaを5×3でインブリード。さらには、大種牡馬HyperionもSt. Simonの4×3を持っており、現代競馬においては本馬の影響を受けていないサラブレッドは一頭たりとも存在しない。

-----Prince Rose

<プロフィール>
1928年生、英国産、17戦16勝(異説あり)
<主な勝ち鞍>
1932年仏共和国大統領賞(T2500m)
<代表産駒>
Princequillo(1943年サラトガC、ジョッキークラブGC)
Prince Bio(1944年仏2000ギニー)
Prince Chevalier(1946年仏ダービー)
<特徴>
1932年仏共和国大統領賞を制したほか、1931年凱旋門賞でも3着と好走したベルギー競馬史を代表する名馬。種牡馬としても1946年仏リーディングサイアーに輝くなど成功を収め、St. Simon系の復活に貢献した。父父Prince PalatineがGalopinの3×5、父Rose PrinceがGalopinの4・6×5、本馬がGalopinの5・7・6×5・5と父祖Galopinを代々掛け合わせてきたサイアーライン。本馬も長手の体形、かつ無駄肉の少ない馬体であり、子孫には豊富なスタミナを継承している。

------Princequillo

<プロフィール>
1940年生、愛国産、33戦12勝
<主な勝ち鞍>
1943年サラトガC(D14F)
1943年ジョッキークラブGC(D16F)
<代表産駒>
Hill Prince(1950年ウッドメモリアルS、プリークネスS、アメリカンダービー、ジョッキークラブGC)
Round Table(1957年ブルーグラスS、ハリウッドGC、アメリカンダービー、1958年サンタアニタH)
Quill(1959年エイコーンS、マザーグースS)
Tambourine(1962年愛ダービー)
<特徴>
第二次世界大戦の戦火で命を落としたPrince Roseの代表産駒。母も芝2000m以上の重賞を制した中長距離馬であり、本馬も小顔で、胴や四肢が長く、無駄肉の少ない純ステイヤーであった。種牡馬としても1957、58年と米リーディングサイアーに輝き、繁殖牝馬の父としては8度の米リーディングブルードメアサイアーを受賞。Prince Rose系のステイヤー資質をしっかりと後世に伝えている。なお、戦争の影響でアメリカで競走生活も種牡馬生活も送ったためダートでの実績が目立つが、本質は芝中長距離馬であり、1957年アメリカンダービー馬Round Tableや1962年愛ダービー馬Tambourineの活躍がそれを証明している。Nasrullah(≒Royal Charger)系とのニックスはよく知られており、この組み合わせからはSeattle Slew、Secretariat、Sir Gaylord、Mill Reef、Rivermanなどが誕生した。

-------Prince John

<プロフィール>
1953年生、米国産、9戦3勝
<主な勝ち鞍>
1955年ガーデンステートS(D8.5F)
<代表産駒>
Stage Door Johnny(1968年ベルモントS)
タイプキヤスト(1972年ハリウッドパークターフH、サンセットH、マンノウォーS)
Deceit(1971年エイコーンS、マザーグースS)
Magazine(1973年CCAオークス)
<特徴>
クラシックの有力候補に挙げられながらも、怪我により2歳時の競走成績のみを残して引退。種牡馬としては期待以上の活躍を見せたが、父Princequillo同様にブルードメアサイアーとしての成功の方が大きく、Alleged(1977、78年凱旋門賞)やRiverman(1972年仏2000ギニー)、Cozzene(1985年BCマイル)など数多くのGⅠ馬の誕生に貢献した。母Not AfraidがSundridgeの4×6・5やThe Tetrarchの5×4などスピード血脈を豊富に持ち、本馬が父の産駒としては豊富な筋肉量を誇り2歳時から高いパフォーマンスを発揮できたことはここに起因すると考えられる。また、Mill Reefの母Milan Millやマルゼンスキーの母母Quill、Kingmamboの4代母NeriadなどPrincequillo×Count Fleetの配合馬は多く、それらと合わせて同血脈を増幅する役割も担っている。

----------Meadowlake

<プロフィール>
1983年生、米国産、3戦3勝
<主な勝ち鞍>
1985年アーリントンワシントンフューチュリティ(D6.5F)
<代表産駒>
Meadow Star(1990年スピナウェイS、米メイトロンS、フリゼットS、BCジュベナイルフィリーズ、1991年エイコーンS、マザーグースS)
Greenwood Lake(1999年米シャンペンS)
Sutra(2006年フリゼットS)
<特徴>
3代母Nothirdchanceは1951年エイコーンS優勝馬であり、Hail to Reasonの母でもある名牝。同馬にPorterhouse、Raise a Native、Hold Your Peaceと北米血脈を掛け合わせたのが本馬で、父父Speak Johnだけ欧州血脈が主体となった配合形もバランスがいい。競走馬としては1985年アーリントンワシントンフューチュリティなど3戦3勝を挙げ、種牡馬としても北米2歳牝馬チャンピオンMeadow Star(1990年スピナウェイS、米メイトロンS、フリゼットS、BCジュベナイルフィリーズ、1991年エイコーンS、マザーグースS)などを輩出。特に、Princequillo系らしく牝馬の活躍馬が多く、繁殖牝馬の父としてもヘニーヒューズやリアルインパクト≒ネオリアリズムなどの誕生に貢献した。現在の主流血脈を持たないアウトサイダー種牡馬としても重宝され、スピードと早熟性を強化する北米血脈として今後も注目の種牡馬といえるだろう。

-------Round Table

<プロフィール>
1954年生、米国産、66戦43勝
<主な勝ち鞍>
1957年ブルーグラスS(D9F)
1957年ハリウッドGC(D10F)
1957年アメリカンダービー(T9.5F)
1958年サンタアニタH(D10F)
<代表産駒>
ボールドリツク(1964年英2000ギニー、英チャンピオンS)
Royal Glint(1976年サンタアニタH)
アーテイアス(1977年エクリプスS、サセックスS)
<特徴>
芝とダートを問わず66戦43勝を挙げて世界最高賞金獲得馬となったアメリカ競馬史に名を残す歴史的名馬。ただ、アメリカ産馬ではあるが、3代母Aloeに遡るイギリスの伝統的名牝系であり、父もアイルランド産の長距離種牡馬Princequillo。小柄で、柔らかいフットワークで走る姿は芝馬のそれといえ、種牡馬としてボールドリツク(1964年英2000ギニー、英チャンピオンS)やアーテイアス(1977年エクリプスS、サセックスS)など芝の一流馬を多数輩出したことがその証拠だ。全妹Monarchyもその牝系を発展させており、Pulpit、Tale of the Cat、ヨハネスブルクなど種牡馬として活躍する馬も多い。特にPulpitはRound Table=Monarchyを5×4でインブリードしており、その父系を大きく発展させることに成功している。

------Prince Bio

<プロフィール>
1941年生、仏国産、11戦6勝
<主な勝ち鞍>
1944年仏2000ギニー(T1600m)
<代表産駒>
Sicambre(1951年仏ダービー、パリ大賞)
Northern Light(1953年パリ大賞)
Le Petit Prince(1954年仏ダービー)
<特徴>
名種牡馬Prince Roseのフランスでの代表産駒。3代母がGalopinの3×4、母母がSt. Simonの5・6×3、母がSt. Simonの6・6・5×6・7・4と代々Galopin→St. Simonを累進交配しており、本馬はSt. Simon系Prince Roseを父に配した形。怪我により1944年仏2000ギニーが引退レースとなったが、種牡馬としてはGalopin→St. Simonのスタミナを子孫に伝えており、Sicambre(1951年仏ダービー、パリ大賞)を筆頭に中長距離の一流馬を多数輩出した。1951年には仏リーディングサイアーにも輝いている。

-------Sicambre

<プロフィール>
1948年生、仏国産、9戦8勝
<主な勝ち鞍>
1951年仏ダービー(T2400m)
1951年パリ大賞(T3000m)
<代表産駒>
Sicarelle(1956年英オークス)
セルテイツクアツシユ(1960年ベルモントS)
ダイアトム(1965年ワシントンDCインターナショナル、1966年ガネー賞)
Phaeton(1967年パリ大賞)
<特徴>
直仔ムーティエ、ファラモンド、ダイアトムなどの輸入により日本でも一世を風靡した1951年仏ダービー馬。3代母がSt. Simonの2×4、母がSt. Simon産駒Rabelaisの2×3のインブリードを持つため、母の仔からは中長距離重賞勝ち馬が複数出ている。本馬も父にSt. Simon系Prince Bioを配して1951年仏ダービーや同年パリ大賞を制覇。種牡馬としても中長距離を中心に多くの活躍馬を輩出し、1966年には仏リーディングサイアーにも輝いた。2002年ダービー馬タニノギムレットはブライアンズタイム産駒らしからぬしなやかなフットワークで走り、これは母タニノクリスタルが持つSicambreの3×4由来の走りであったといえるだろう。

-----Bois Roussel

<プロフィール>
1935年生、仏国産、3戦2勝
<主な勝ち鞍>
1938年英ダービー(T12F)
<代表産駒>
Tehran(1944年英セントレジャー)
Migoli(1947年エクリプスS、英チャンピオンS、1948年凱旋門賞)
ヒンドスタン(1949年愛ダービー)
Ridge Wood(1949年英セントレジャー)
ヒカルメイジ(1957年日本ダービー)
<特徴>
名繁殖牝馬Plucky Liegeを母に持ち、兄姉にはSir Gallahad(1923年仏2000ギニー、ジャックルマロワ賞)、Admiral Drake(1933年パリ大賞)、Bull Dog(種牡馬)などがいる良血馬。競走馬としては屈腱炎により僅か3戦のキャリアで引退となったが、直線一気の豪脚で圧勝した1938年英ダービーでは同レース史上屈指のインパクトを残している。種牡馬としても初年度産駒からTehran(1944年英セントレジャー)を輩出するなど成功を収め、日本でもヒカルメイジが1957年日本ダービーを制覇。St. Simonの4・6・7×3由来のスタミナを子孫に伝え、日本ではヒカルメイジとヒンドスタンが種牡馬として成功を収めた。

-------Gallant Man

<プロフィール>
1954年生、英国産、26戦14勝
<主な勝ち鞍>
1957年ベルモントS(D12F)
1957年トラヴァーズS(D10F)
1957年ジョッキークラブGC(D16F)
1958年メトロポリタンH(D8F)
1958年ハリウッドGC(D10F)
<代表産駒>
Spicy Living(1963年エイコーンS、マザーグースS)
Gallant Bloom(1968年米メイトロンS、1969年スピンスターS、1970年サンタマルガリータH)
Road Princess(1977年マザーグースS)
<特徴>
ゴール板の誤認識によりケンタッキーダービーを取りこぼした悲運の名馬。母Majidehは1942年愛1000ギニーと愛オークスを制した一流馬であり、半姉Masakaも1948年英愛オークスなどを制した名牝という超良血。本馬は父に凱旋門賞馬Migoliを配してMah Iran≒Mahmoudの2×2という強烈なインブリードを形成しており、丸みのある筋肉と美しい背中のラインに目を奪われる。種牡馬としてはMah Iran≒Mahmoud譲りのスピードを子孫に伝え、日本ではメイワキミコ(1977、78年スプリンターズS)やギャラントダンサー(1977年朝日杯3歳S)といった芝馬も多く出した。インブリードのきつさから激しい気性を産駒に伝えた点も特徴的か。My Juliet牝系のスピードと前向きさは父父の本馬に由来し、同牝系の活躍馬にはミッキーアイルやアエロリット、テイエムジンソクなど先行力に秀でた馬が多い。

------ヒンドスタン

 <プロフィール>
1946年生、英国産、8戦2勝
<主な勝ち鞍>
1949年愛ダービー(T12F)
<代表産駒>
ハクシヨウ(1960年朝日杯3歳S、1961年日本ダービー)
リユウフオーレル(1963年宝塚記念、天皇賞秋、有馬記念)
ヤマトキヨウダイ(1964年天皇賞秋、有馬記念)
シンザン(1964年皐月賞、日本ダービー、菊花賞、1965年宝塚記念、天皇賞秋、有馬記念)
アサカオー(1968年菊花賞)
<特徴>
1961~65、67、68年と8度の全日本リーディングサイアーに輝いた大種牡馬。母母Udaipurは1932年英オークス馬、3代母Ugandaは1924年仏オークス馬で、さらに遡れば7代母Memoir(1890年英オークス、英セントレジャー)、その全妹にLa Fleche(1892年英1000ギニー、英オークス、英セントレジャー、1894年アスコットGC、英チャンピオンS)などがいる名牝系である。St. Simon産駒のMemoirからGalopin→St. Simon血脈を代々掛け合わせており、本馬自身もSt. Simonの4×3を持つBois Rousselを父に配した形だ。1949年愛ダービーを制し、引退後はアイルランドで種牡馬入り。1955年に日本に輸入され、シンザン(1964年皐月賞、日本ダービー、菊花賞、1965年宝塚記念、天皇賞秋、有馬記念)を筆頭に数々の名馬を輩出した。柔軟で、軽快に走り、クラシック向きのスピードとスタミナを子孫に伝えた名種牡馬である。

--Rabelais

<プロフィール>
1900年生、英国産、11戦6勝
<主な勝ち鞍>
1903年グッドウッドC(T21F)
<代表産駒>
Verdun(1909年仏2000ギニー、パリ大賞、仏共和国大統領賞)
Durbar(1914年英ダービー)
Ramus(1922年仏ダービー)
<特徴>
競走馬としては一流の成績を残せなかったが、種牡馬としては1909、19、26年仏リーディングサイアーに輝き、直系子孫に名馬Ribotや名種牡馬Wild Riskなどを誕生させた功労馬。母がStockwell=Rataplanの4・5×3、本馬がKing Tom≒Stockwell=Rataplanの3×5・6・4という配合形であり、小柄な馬ながらも豊富なスタミナを子孫に継承した。

-------Ribot

<プロフィール>
1952年生、英国産、16戦16勝
<主な勝ち鞍>
1955年凱旋門賞(T2400m)
1955年伊ジョッキークラブ大賞(T2400m)
1956年ミラノ大賞(T3000m)
1956年キングジョージⅥ&QEDS(T12F)
1956年凱旋門賞(T2400m)
<代表産駒>
Molvedo(1961年凱旋門賞、伊ジョッキークラブ大賞)
Ragusa(1963年愛ダービー、キングジョージⅥ&QEDS、英セントレジャー、1964年エクリプスS)
Tom Rolfe(1965年プリークネスS、アーリントンクラシックS、アメリカンダービー)
Arts and Letters(1969年メトロポリタンH、ベルモントS、トラヴァーズS、ジョッキークラブGC)
<特徴>
1955、56年凱旋門賞連覇など16戦全勝で駆け抜けたイタリア競馬史を代表する最強馬。3代父Cavaliere d'Arpino、父父Belini、父Teneraniは本馬と同じフェデリコ・テシオ氏の生産馬であり、母Romanellaも同氏の生産馬という、まさに同氏の最後の傑作と呼ぶに相応しい歴史的名馬だ。小柄で、無駄肉も少なく、心肺機能にも優れ、やや頭の高いフットワークは実に低燃費。立ち肩で馬力にも優れ、洋芝の雨馬場も全く苦にしなかった。種牡馬としても英伊米で大成功。特にアメリカで出したTom Rolfe(1965年プリークネスS、アーリントンクラシックS、アメリカンダービー)やGraustark=His Majestyらがサイアーラインを繁栄させたことで、子孫には馬格に恵まれたパワー型も多く誕生した。現代競馬で重視される早熟性やスピードの面では劣るが、大レースにおいては現在も本馬の底力が重宝されている。

--------Tom Rolfe

<プロフィール>
1962年生、米国産、32戦16勝
<主な勝ち鞍>
1965年プリークネスS(D9.5F)
1965年アーリントンクラシックS(D8F)
1965年アメリカンダービー(D10F)
<代表産駒>
Run the Gantlet(1971年マンノウォーS、ワシントンDCインターナショナル)
Droll Role(1972年カナディアンインターナショナルS、ワシントンDCインターナショナル)
Bowl Game(1978年ガルフストリームパークH、1979年マンノウォーS、ターフクラシックS、ワシントンDCインターナショナル)
<特徴>
名馬Ribotのアメリカでの代表産駒の一頭で、兄弟には種牡馬Chieftain、War Hawkなどがいる良血。1965年プリークネスSを制すなどダートで実績を残した一方、同年凱旋門賞でも6着と善戦。馬体のアウトラインは凱旋門賞を連覇した父とよく似ており、種牡馬としてもRun the Gantlet(1971年マンノウォーS、ワシントンDCインターナショナル)やBowl Game(1978年ガルフストリームパークH、1979年マンノウォーS、ターフクラシックS、ワシントンDCインターナショナル)といった米最優秀芝馬を出すなど芝適性の高さも見せた。特に母母父Princequilloを増幅した配合形で成功を収めており、上記2頭の他にもFrench Colonial(1980年マンノウォーS)やアレミロード(1986年オイロパ賞、1987年オークツリー招待H)なども同血脈を刺激した配合形だ。その反面、母父RomanはSir Gallahad系屈指のパワースピード種牡馬で、同血脈を増幅した配合形からは1987年米最優秀2歳牡馬フォーティナイナーや1984年米最優秀3歳牝馬、1985年米最優秀ダート古牝馬Life's Magicなどが出ている。

---------Hoist the Flag

<プロフィール>
1968年生、米国産、6戦5勝
<主な勝ち鞍>
1970年カウディンS(D7F)
1971年ベイショアS(D7F)
<代表産駒>
Sensational(1976年フリゼットS、セリマS、1977年レディーズH)
Alleged(1977、78年凱旋門賞)
Delta Flag(1978年モンマス招待H)
Linkage(1982年ブルーグラスS)
<特徴>
怪我によりクラシック目前で引退となったが、種牡馬としてはAlleged(1977、78年凱旋門賞)を筆頭に多数の活躍馬を輩出。本馬自身の競走成績は若駒時に限られるため全5勝はダート7F以下で挙げたものだが、Tom Rolfe×War Admiral×Tourbillonという配合馬らしく豊富なスタミナを有し、産駒には中長距離を得意とする馬が多かった。また、父同様の欧米混血馬でもあり、繁殖相手によって様々なタイプの活躍馬を出した点も特徴的か。

----------Alleged

<プロフィール>
1974年生、米国産、10戦9勝
<主な勝ち鞍>
1977年凱旋門賞(T2400m)
1978年凱旋門賞(T2400m)
<代表産駒>
Law Society(1985年愛ダービー)
Midway Lady(1985年マルセルブサック賞、1986年英1000ギニー、英オークス)
Shantou(1996年英セントレジャー、伊ジョッキークラブ大賞、1997年ミラノ大賞)
<特徴>
曾祖父Ribot以来22年ぶりに凱旋門賞連覇を果たした名馬。母Princess Poutも1970、71年シープスヘッドベイHを連覇した活躍馬で、父Hoist the Flagとの間ではPrincequilloの5×3、War Admiralの3×4というインブリードが発生する。両血脈ともスタミナに秀でており、凱旋門賞連覇をともに先行策で達成した無尽蔵のスタミナは同血脈由来といえるだろう。さらに、2度目の凱旋門賞は道悪での開催であり、力のいる馬場をものともしない馬力も兼ね備えている。種牡馬としても大成功を収め、欧州各国でダービー馬やオークス馬、セントレジャー馬を複数輩出した。ただ、近年の日本競馬においては少々重厚過ぎる感は否めず、本馬の血を持つ活躍馬もマンハッタンカフェ(2001年菊花賞、有馬記念、2002年天皇賞春)やデルタブルース(2004年菊花賞、2006年メルボルンC)といった長距離馬が中心となっている。

-----------Law Society

<プロフィール>
1982年生、米国産、8戦5勝
<主な勝ち鞍>
1985年愛ダービー(T12F)
<代表産駒>
Homme de Loi(1992年パリ大賞)
Right Win(1993年イタリア大賞)
Court of Honour(1995年伊ジョッキークラブ大賞)
<特徴>
4代母Majidehは1942年愛1000ギニーと愛オークスを制した一流馬で、3代母Mehrabiは1957年ベルモントS優勝馬Gallant Manの全姉。Mah Iran≒Mahmoudの2×2という強烈なインブリードを持ち、Mah Mahal由来のスピードを子孫に伝えた。さらに、母Bold BikiniはNasrullah系Boldnesianの産駒で、Mumtaz Begum≒Mah Iran≒Mahmoudの4×4・4が発生。本馬は父に重厚なAllegedを配したが、同馬に足りないスピードと柔軟性を母から補っており、さらに母父BoldnesianはHaloと共通点が多いため(Royal Charger≒Nasrullah、Pharamond =Sickle、Sir Gallahad、Blue Larkspurなどが共通)、マンハッタンカフェ(2001年菊花賞、有馬記念、2002年天皇賞春)やハイアーゲーム(2004年青葉賞、2007年鳴尾記念)、ダイワマッジョーレ(2013年京王杯SC、2015年阪急杯)など他のAlleged系よりも高い日本適性を見せている。

--------Graustark

<プロフィール>
1963年生、米国産、8戦7勝
<主な勝ち鞍>
1966年バハマS(D7F)
<代表産駒>
Key to the Mint(1972年トラヴァーズS、ブルックリンH、1973年サバーバンH)
Avatar(1975年サンタアニタダービー、ベルモントS、1976年サンルイレイS)
Proud Truth(1985年フロリダダービー、ピーターパンS、BCクラシック)
<特徴>
名繁殖牝馬Flower Bowlの仔であり、半姉Bowl of Flowers(1961年エイコーンS、CCAオークス)や全弟His Majesty(1982年北米リーディングサイアー)らをきょうだいに持つ良血馬。デビューから連勝を重ねて注目を集めたが、故障によりケンタッキーダービーを前に引退。それでも、種牡馬としてもHis Majestyとともにアメリカで成功を収め、Key to the Mint(1972年トラヴァーズS、ブルックリンH、1973年サバーバンH)やAvatar(1975年ベルモントS)、Proud Truth(1985年BCクラシック)など多くの活躍馬を輩出した。Ribot、Alibhai、Son-in-Lawなどから豊富なスタミナを受け継ぎ、Traceryの5×4からパワー面も増強。日本でも本馬のインブリードを持つタニノギムレット(2002年日本ダービー)やスリーロールス(2009年菊花賞)、クリンチャー(2018年京都記念、2020年みやこS)などがパワー型中長距離馬として活躍している。

---------Key to The Mint

<プロフィール>
1969年生、米国産、29戦14勝
<主な勝ち鞍>
1972年ブルックリンH(D9.5F)
1972年トラヴァーズS(D10F)
1973年サバーバンH(D10F)
<代表産駒>
Plugged Nickle(1979年ローレルフューチュリティS、1980年フロリダダービー、ウッドメモリアルS、ヴォスバーグS)
Java Gold(1986年レムゼンS、1987年ホイットニーH、トラヴァーズS、マールボロC招待H)
Jewel Princess(1996年ヴァニティH、BCディスタフ、1997年サンタマリアH、サンタマルガリータH)
<特徴>
1970年米年度代表馬Fort Marcy(1967、70年ワシントンDCインターナショナル、1970年マンノウォーS)の半弟で、その他にもKey to Content(1981年ユナイテッドネイションズS)や種牡馬Key to the Kingdomなどがきょうだいにいる良血馬。Graustark×Princequillo×War Admiralというスタミナ豊富な配合形で、St. Simon=Angelicaの4・4×3を持つPapyrusを5×4でクロスする仕掛けも特徴的。筋肉質でありながら伸びのある馬体を有し、Ribot系屈指のスタミナが持ち味だ。ダンスパートナー(1995年オークス、1996年エリザベス女王杯)=ダンスインザダーク(1996年菊花賞)やディープスカイ(2008年NHKマイルC、日本ダービー)の豊富なスタミナは本馬の影響を多分に受けた証といえるだろう。

--------His Majesty

<プロフィール>
1968年生、米国産、22戦5勝
<主な勝ち鞍>
1971年エヴァーグレイズS(D9F)
<代表産駒>
Pleasant Colony(1980年レムゼンS、1981年ウッドメモリアルS、ケンタッキーダービー、プリークネスS、ウッドワードS)
Majesty's Prince(1982、84年ロスマンズインターナショナルS、1983、84年マンノウォーS、1984年ソードダンサーH)
タイトスポット(1991年エディリードH、アーリントンミリオンS)
<特徴>
名繁殖牝馬Flower Bowlの仔であり、半姉Bowl of Flowers(1961年エイコーンS、CCAオークス)や全兄Graustark(1966年バハマS)らをきょうだいに持つ良血馬。競走馬としては兄姉程の実績を残せなかったが、種牡馬としてはGraustarkとともにアメリカで大活躍。1982年にはMajesty's Prince(1982、84年ロスマンズインターナショナルS)などの活躍により北米リーディングサイアーにも輝いた。Ribot、Alibhai、Son-in-Lawなどから豊富なスタミナを受け継ぎ、Traceryの5×4からパワー面も増強。極重馬場の2010年凱旋門賞でワークフォースと好勝負を演じたナカヤマフェスタは母がHis Majestyを2×4でインブリードしている。

---------Pleasant Colony

<プロフィール>
1978年生、米国産、14戦6勝
<主な勝ち鞍>
1980年レムゼンS(D9F)
1981年ウッドメモリアルS(D9F)
1981年ケンタッキーダービー(D10F)
1981年プリークネスS(D9.5F)
1981年ウッドワードS(D9F)
<代表産駒>
Pleasant Tap(1992年サバーバンH、ジョッキークラブGC)
St.Jovite(1992年愛ダービー、キングジョージⅥ&QEDS)
コロニアルアッフェアー(1993年ベルモントS、1994年ホイットニーH、ジョッキークラブGC)
Pleasantly Perfect(2003年BCクラシック、2004年ドバイワールドC、パシフィッククラシックS)
<特徴>
1981年米クラシック二冠馬で、名種牡馬His Majestyの代表産駒。母はアウトサイダーなアルゼンチン牝系だがMahmoud≒Mumtaz Begumを4×4でインブリードするなど重苦しさがなく、His Majestyとの交配においてもMahmoud≒Mumtaz Begumを5×5・5で継続。さらに、PapyrusやSon-in-Lawといった父のスタミナ源も薄くインブリード。体高170cm超の非常に手足の長い馬で、豊富なスタミナと成長力を子孫に伝えている。日本では直仔Pleasant Tap(1992年サバーバンH、ジョッキークラブGC)の産駒であるタップダンスシチーが古馬になってから中長距離路線を席巻し、本馬と共通点の多いLaw Societyを併せ持つグレープブランデーもダート路線で息の長い活躍を見せた。

----Wild Risk

<プロフィール>
1940年生、仏国産、36戦13勝(うち障害競走14戦9勝)
<主な勝ち鞍>
1943年ルサンシー賞(T2600m)
1944年エドガーギロア賞(T4000m)
<代表産駒>
Worden(1952年ローマ賞、1953年ワシントンDCインターナショナル)
ヴイミー(1955年キングジョージⅥ&QEDS)
Balto(1961年パリ大賞、1962年アスコットGC)
Le Fabuleux(1964年仏ダービー)
<特徴>
Worden(1952年ローマ賞、1953年ワシントンDCインターナショナル)、ヴイミー(1955年キングジョージⅥ&QEDS)、Balto(1961年パリ大賞、1962年アスコットGC)、Le Fabuleux(1964年仏ダービー)など多くの長距離馬を輩出したフランスのステイヤー種牡馬。小顔で、胴や四肢が長く、無駄肉の少ない典型的なステイヤー体型で、平地の長距離戦のみならず障害レースでも活躍した。1961、64年には仏リーディングサイアーにも輝き、日本の活躍馬ではテイエムオペラオーが本馬を6×4でインブリードしている。

-----Le Fabuleux

<プロフィール>
1961年生、仏国産、11戦8勝
<主な勝ち鞍>
1964年仏ダービー(T2400m)
<代表産駒>
Bourbon(1971年ロワイヤルオーク賞)
Meneval(1976年愛セントレジャー)
Effervescing(1976年マンノウォーS)
<特徴>
1964年仏ダービーを制した父Wild Riskの代表産駒。母母La RochelleはWorden(1952年ローマ賞、1953年ワシントンDCインターナショナル)、Mahan(1957年ワシントンDCインターナショナル)、Net(1961年ジャックルマロワ賞)、1963、64、69年豪リーディングサイアーWilkes、日本で種牡馬として活躍したブランブルーなどの半姉であり、本馬はWild Risk産駒のWordenと血統構成が酷似している。種牡馬としてはWild Risk産駒らしくBourbon(1971年ロワイヤルオーク賞)やMeneval(1976年愛セントレジャー)などの長距離馬を多数輩出。また、繁殖牝馬の父としても非常に優秀で、Unbridledやフジキセキなど種牡馬としても成功した名馬の誕生に大きく貢献した。

-----Worden

<プロフィール>
1949年生、仏国産、23戦6勝
<主な勝ち鞍>
1952年ローマ賞(T2800m)
1953年ワシントンDCインターナショナル(T12F)
<代表産駒>
Armistice(1962年パリ大賞)
ボンモー(1966年凱旋門賞)
Karabas(1969年ワシントンDCインターナショナル、1970年ハードウィックS)
<特徴>
父Wild Risk譲りのスタミナを武器に1952年ローマ賞や1953年ワシントンDCインターナショナルなどを制した芝ステイヤー。母は種牡馬Norsemanの半姉で、本馬のきょうだいには1957年ワシントンDCインターナショナル優勝馬Mahanがいるほか、1961年ジャックルマロワ賞勝ち馬Net、1963、64、69年豪リーディングサイアーWilkes、日本で種牡馬として活躍したブランブルーなどもいる。Wild Riskの代表産駒であるLe Fabuleuxとは同馬の3代母と本馬の母が同一馬という間柄であり、Le Fabuleux≒Wordenを3×5でクロスするドリームパスポート(2006年きさらぎ賞、神戸新聞杯)やタマモベストプレイ(2013年きさらぎ賞)はフジキセキの産駒ながら超長距離戦にも対応して見せた。


≪坂上 明大(Sakagami Akihiro)≫
 1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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