【種牡馬辞典】Northern Dancer系
Northern Dancer
<プロフィール>
1961年生、加国産、18戦14勝
<主な勝ち鞍>
1964年フロリダダービー(D9F)
1964年ケンタッキーダービー(D10F)
1964年プリークネスS(D9.5F)
<代表産駒>
Nijinsky(1969年デューハーストS、1970年英2000ギニー、英ダービー、愛ダービー、キングジョージⅥ&QEDS、英セントレジャー)
The Minstrel(1976年デューハーストS、1977年英ダービー、愛ダービー、キングジョージⅥ&QEDS)
El Gran Senor(1983年デューハーストS、1984年英2000ギニー、愛ダービー)
セクレト(1984年英ダービー)
<特徴>
20世紀で最も成功した大種牡馬。母Natalmaは名種牡馬Haloの母Cosmahの半妹であり、デインヒルやMachiavellian、バゴなど多くの活躍馬をそのラインから出した名繁殖牝馬である。そこに短距離適性に繋がる「C-アレル」を爆発的に広めたと言われるNearcticを父に持ち、本馬は小柄ながらも豊富な筋肉量を有していた。早熟性とスピードを子孫に伝えた反面、同世代の種牡馬との比較ではスタミナ面でやや劣り、自身もベルモントSでは直線で失速して3着と敗れている。とはいえ、Gainsboroughの4×5などから潜在的なスタミナは受け継いでおり、特にHyperionを増幅した配合からはセクレト(1984年英ダービー)やEl Gran Senor(1983年デューハーストS、1984年英2000ギニー、愛ダービー)、Sadler's Wells(1984年愛2000ギニー、エクリプスS、フェニックスチャンピオンS)など多くの中長距離馬が出ている。欧米を中心に成功を収め、後継種牡馬たちも次々と活躍。現在も父系は衰えることなく、世界中で本馬を父祖に持つ馬たちがチャンピオンに輝いている。
-ヴァイスリーガル
<プロフィール>
1966年生、加国産、9戦8勝
<主な勝ち鞍>
1968年サマーS(T8F)
<代表産駒>
ゴールドシチー(1986年阪神3歳S)
<特徴>
大種牡馬Northern Dancerの初年度産駒の代表馬。2歳時に8戦全勝の成績を残してカナダの年度代表馬と2歳チャンピオンに輝いた。種牡馬としては全弟Vice Regentに劣ったが、同馬が11年連続加リーディングサイアーの座につく前の1976~78年の加リーディングサイアーは本馬であり、日本でもゴールドシチー(1986年阪神3歳S)などを輩出している。母は種牡馬Victoria Parkの半妹で、本馬も北米血脈らしいパワーを子孫に継承。Northern Dancer×Victoria ParkのノーザンテーストやThe Minstrelとは共通点が多く、カナダ産馬特有のパワーを増幅する血脈といえるだろう。
-Nijinsky
<プロフィール>
1967年生、加国産、13戦11勝
<主な勝ち鞍>
1970年英2000ギニー(T8F)
1970年英ダービー(T12F)
1970年愛ダービー(T12F)
1970年キングジョージⅥ&QEDS(T12F)
1970年セントレジャー(T14.5F)
<代表産駒>
シャーラスタニ(1986年英ダービー、愛ダービー)
ファーディナンド(1986年ケンタッキーダービー、1987年ハリウッドGC、BCクラシック)
ラムタラ(1995年英ダービー、キングジョージⅥ&QEDS、凱旋門賞)
<特徴>
史上15頭目の英国クラシック三冠馬。種牡馬としても”神の馬”ラムタラなど名馬を多数輩出して、1986年には英愛リーディングサイアーにも輝いた。母Flaming Page譲りの胴長、脚長のモデルのような体型で豊富なスタミナが最大の持ち味。母方に本馬の血を持つダンスインザダーク(1996年菊花賞)やスペシャルウィーク(1998年日本ダービー)はその特徴を強く継承した競走馬であり、種牡馬であったといえるだろう。1977年英愛ダービー馬The Minstrel(=Far North)は甥にあたり、血統上は3/4同血の関係。また、同じくE.P.テイラー氏の生産馬であるStorm Birdとも相似な血の関係(Northern Dancer、Bull Page、Omaha=Flaresが共通)といえる。
-Vice Regent
<プロフィール>
1967年生、加国産、5戦2勝
<主な勝ち鞍>
-
<代表産駒>
Deputy Minister(1981年ヤングアメリカS、ローレルフューチュリティS)
Trumpet's Blare(1989年アーリントンワシントンラッシーS)
Twice the Vice(1994年デルマーオークス)
<特徴>
カナダの年度代表馬、2歳チャンピオンに輝いたヴァイスリーガルの全弟。競走馬としては5戦2勝に終わったが、種牡馬としては11年連続で加リーディングサイアーに輝くなど大成功を収めた。母は種牡馬Victoria Parkの半妹で、本馬も北米血脈らしいパワーを子孫に継承。主にDeputy Minister(1981年ヤングアメリカS、ローレルフューチュリティS)を通してサイアーラインを世界に広めていった。Northern Dancer×Victoria ParkのノーザンテーストやThe Minstrelとは共通点が多く、カナダ産馬特有のパワーを増幅する血脈といえるだろう。
-Northfields
<プロフィール>
1968年生、米国産、30戦7勝
<主な勝ち鞍>
1971年ルイジアナダービー(D9F)
1971年ホーソーンダービー(D8.5F)
<代表産駒>
Northern Treasure(1976年愛2000ギニー)
Northjet(1981年ジャックルマロワ賞、ムーランドロンシャン賞)
ノーパスノーセール(1985年仏2000ギニー)
<特徴>
名種牡馬Habitat(1969年ムーランドロンシャン賞)の半弟。競走馬としては超一流とは言えない成績で引退したが、種牡馬としてはNorthern Treasure(1976年愛2000ギニー)、Northjet(1981年ジャックルマロワ賞、ムーランドロンシャン賞)、ノーパスノーセール(1985年仏2000ギニー)などのマイルGⅠ馬を複数輩出。さらに、兄同様に繁殖牝馬の父としても優秀で、パラダイスクリーク、Wild Event、Forbidden Appleと3頭のGⅠ馬を産んだNorth of Edenを出すなど数多くのGⅠ馬の誕生に貢献している。
-Lyphard
<プロフィール>
1969年生、米国産、12戦6勝
<主な勝ち鞍>
1972年ジャックルマロワ賞(T1600m)
1972年フォレ賞(T1400m)
<代表産駒>
Three Troikas(1979年仏1000ギニー、サンタラリ賞、ヴェルメイユ賞、凱旋門賞)
Manila(1986年ターフクラシックS、BCターフ、1986、87年ユナイテッドネーションズH、1987年アーリントンミリオンS)
ダンシングブレーヴ(1986年英2000ギニー、エクリプスS、キングジョージⅥ&QEDS、凱旋門賞)
<特徴>
フランスのトップマイラーとして仏GⅠ2勝を挙げ、引退後はダンシングブレーヴ(1986年英2000ギニー、エクリプスS、キングジョージⅥ&QEDS、凱旋門賞)を筆頭に多数のGⅠ馬を輩出して種牡馬としても大成功。1978、79年と仏リーディングサイアーに輝いたほか、北米でも1986年にリーディングサイアーのタイトルを獲得した。父Northern Dancerと同じく小柄な馬体だが、輪郭は母父Court Martialに似ており、Lady Juror→Fair Trial→Court Martial的なスピードと持続力が特徴といえるだろう。GⅠ7勝馬キタサンブラックや2019年ダービー馬ロジャーバローズの先行粘着脚質はLyphardの影響を強く受けた証であり、トーセンラーやリスグラシューの3~4角でマクッていく姿も本馬の特徴が表現された走りであった。DanzigとはNorthern Dancer、Fair Trial、Hurry Onなど共通点が多く、Lyphardらしさを増幅する組み合わせといえる。
-ノーザンテースト
<プロフィール>
1971年生、加国産、20戦5勝
<主な勝ち鞍>
1974年フォレ賞(T1400m)
<代表産駒>
アンバーシヤダイ(1981年有馬記念、1983年天皇賞春)
ギヤロツプダイナ(1985年天皇賞秋、1986年安田記念)
ダイナガリバー(1986年日本ダービー、有馬記念)
アドラーブル(1992年オークス)
<特徴>
1982~88、90~92年と10度の日本リーディングサイアーに輝いた大種牡馬。Lady Angelaの3×2という野心的な名牝クロスが最大の特徴であり、小柄な馬体はHyperionの影響を多分に受けた証といえるだろう。自身はマイラーであったが、種牡馬としてダービー馬やオークス馬を複数輩出したことはHyperion由来のスタミナがその根拠となっている。Northen Dancerの筋肉量とHyperionの底力や成長力を受け継いだのが本馬であり、インブリードの濃さからそれらを強く子孫に伝える主張の強い種牡馬ともいえるだろう。ダイワメジャー≒ダイワスカーレットやドリームジャーニー=オルフェーヴルの走りにはその影響を強く感じる。Night Shift、Vice Regent、The Minstrel=Far Northなどとは共通点が多く、北米的なパワーを増幅する効果が見込める。ただ、Hyperionらしさは本馬特有のものだけに、その点は注意が必要だ。
-Far North
<プロフィール>
1973年生、加国産、9戦3勝
<主な勝ち鞍>
1975年サンロマン賞(T1800m)
<代表産駒>
Dawn's Curtsey(1985年フラワーボールH)
ファストトパーズ(1986年リュパン賞、仏2000ギニー)
The Wicked North(1994年オークローンH、カリフォルニアンS)
<特徴>
母Fleurは英三冠馬Nijinskyの半姉であり、本馬は同馬と3/4同血の関係。さらに、本馬の全弟には父Northern Dancerの代表産駒の一頭であるThe Minstrel(1996年デューハーストS、1997年英ダービー、愛ダービー、キングジョージⅥ&QEDS)がおり、競走馬としても種牡馬としても全弟には劣ったが、1986年仏2000ギニー優勝馬ファストトパーズを出すなどして一定の成功を収めた。The MinstrelやNijinskyのほか、同じくE.P.テイラー氏の生産馬であるノーザンテーストやVice Regent、Storm Birdなどとも共通点が多く、これらとの組み合わせでは北米的パワーを増幅する効果が見込める。現在はイスラボニータの母系でその血を見ることが多い。
-Be My Guest
<プロフィール>
1974年生、米国産、7戦4勝
<主な勝ち鞍>
1977年クリスタルマイルS(T8F)
<代表産駒>
Assert(1982年仏ダービー、愛ダービー、ベンソン&ヘッジスGC、ジョーマクグラス記念S)
Luth Enchantee(1983年ジャックルマロワ賞、ムーランドロンシャン賞)
Go and Go(1990年ベルモントS)
ペンタイア(1995年愛チャンピオンS、1996年キングジョージⅥ&QEDS)
<特徴>
Northern Dancer×Tudor Minstrelの芝マイラー。ただ、Hyperionの4×4からスタミナ、母母が持つMan o' Warの4・4×5からパワーも継承しており、血統を考慮すれば仏愛ダービー馬やベルモントS優勝馬を出したことにも納得がいく。ケイティブレイブやワールドプレミアのスタミナはHyperion的であるし、フィエロやワールドエースのスピードや持続力も本馬の支えがあってこそ。現在でもいじりがいのある名種牡馬だ。
-The Minstrel
<プロフィール>
1974年生、加国産、9戦7勝
<主な勝ち鞍>
1976年デューハーストS(T7F)
1977年英ダービー(T12F)
1977年愛ダービー(T12F)
1977年キングジョージⅥ&QEDS(T12F)
<代表産駒>
L'Emigrant(1983年仏2000ギニー、リュパン賞)
Melodist(1988年伊オークス、愛オークス)
Opening Verse(1991年BCマイル)
<特徴>
1977年英ダービー、愛ダービー、キングジョージⅥ&QEDSなどを制した大種牡馬Northern Dancerの代表産駒の一頭。母Fleurは英三冠馬Nijinskyの半姉であり、本馬は同馬と3/4同血の関係。母父にVictoria Parkが入る分、Nijinskyよりも筋肉量が多く、種牡馬としてはマイラーの活躍馬を多く出した。同じくE.P.テイラー氏の生産馬であるノーザンテーストやVice Regent、Storm Birdなどとも共通点が多く、これらとは北米的パワーを増幅する効果が見込める。また、1986年仏2000ギニー優勝馬ファストトパーズなどを出した種牡馬Far Northは本馬の全兄である。
-Topsider
<プロフィール>
1974年生、米国産、18戦8勝
<主な勝ち鞍>
スポーツページH(D6F)
<代表産駒>
Top Corsage(1986年スピンスターS)
North Sider(1987年サンタマルガリータ招待H、アップルブラッサムH、マスケットS)
アサティス(1989年伊ジョッキークラブ大賞)
<特徴>
母Drumtopは1970年カナディアンインターナショナルSなど北米で17勝を挙げた活躍馬。本馬は競走馬としては中堅のスプリンターだったが、種牡馬としてはアサティス(1989年伊ジョッキークラブ大賞)などを輩出して期待以上の成績を残した。4代母Rough Shodに遡る名牝系であり、母母Zonahは名繁殖牝馬ThongなどとNasrullah、Rough Shodが共通する配合形。さらに、本馬は父にNorthern Dancerを持ち、Nureyev≒Sadler's Wells=Fairy Kingなどとは共通点が非常に多い。白毛一族として有名なシラユキヒメ牝系はその母ウェイブウインドが本馬の直仔で、ハヤヤッコ(2019年レパードS)を筆頭にキングカメハメハ系との間に多くの活躍馬を輩出したことはここに起因し、ソダシ(2020年阪神JF、2021年桜花賞)やメイケイエール(2021年チューリップ賞)などもその例外ではない。
-トライマイベスト
<プロフィール>
1975年生、米国産、5戦4勝
<主な勝ち鞍>
1977年デューハーストS(T7F)
<代表産駒>
ラストタイクーン(1986年BCマイル)
My Best Valentine(1998年アベイドロンシャン賞)
<特徴>
1977年英愛2歳牡馬チャンピオン。名繁殖牝馬Sex Appealの2番仔であり、全弟El Gran Senorは愛ダービー馬、3/4同血の妹ロッタレースも母としてフサイチパンドラを出している。母のBusanda≒Mr. Busherの2×3という強烈なパワー血脈が最大の特徴であり、母がトライマイベスト=El Gran Senorの4×3を持つブラストワンピースの重戦車のようなパワーは本血脈の影響といえるだろう。また、Woodmanの母であるプレイメイトやウォーエンブレムなどが持つNumbered AccountはSex Appealと相似の血の関係にあるため、これらとの組み合わせでもSex Appealが持つ強烈なパワー血脈を増幅する効果が見込める。
-Danzig
<プロフィール>
1977年生、米国産、3戦3勝
<主な勝ち鞍>
-
<代表産駒>
Chief's Crown(1984年ホープフルS、カウディンS、ノーフォークS、BCジュベナイル、1985年フラミンゴS、ブルーグラスS、トラヴァーズS、マールボロC招待H)
Danzig Connection(1986年ピーターパンS、ベルモントS)
Dayjur(1990年ナンソープS、スプリントC、アベイドロンシャン賞)
Dance Smartly(1991年シリーンS、BCディスタフ)
Lure(1992、93年BCマイル、1994年シーザーズインターナショナルH)
<特徴>
楽勝ばかりで3戦3勝を挙げたが、怪我により競走馬としてはタイトルを獲得できず。ただ、種牡馬としては1991〜93年の北米リーディングサイアーに輝き、その父系は世界中で大繁栄した。父Northern Dancerの豊富な筋肉量を受け継ぎつつ、さらに胴を詰めたようなスプリンター体型。産駒にも1600m以下のGⅠ馬が多く、非凡なスピードは子孫にも強く継承されている。ただ、3代母は英オークス馬で、母母はSon-in-Lawの4×5というスタミナ豊富な配合形。代を経るごとに活躍の幅を広げていったことは牝系の欧州血脈に由来し、また、自身がアウトブリードであることから繁殖牝馬の良さを引き出す能力にも長けていたと考えられる。
-Nureyev
<プロフィール>
1977年生、米国産、3戦2勝
<主な勝ち鞍>
1979年トーマスブライアン賞(T1500m)
<代表産駒>
Theatrical(1987年ハイアリアターフC、ボーリンググリーンH、ソードダンサーH、ターフクラシックS、マンノウォーS、BCターフ)
Miesque(1986年サラマンドル賞、マルセルブサック賞、1987年英1000ギニー、仏1000ギニー、ムーランドロンシャン賞、1987、88年ジャックルマロワ賞、BCマイル、1988年イスパーン賞)
スピニングワールド(1996年愛2000ギニー、1996、97年ジャックルマロワ賞、1997年ムーランドロンシャン賞、BCマイル)
パントレセレブル(1997年仏ダービー、パリ大賞、凱旋門賞)
ブラックホール(1999年スプリンターズS、2001年安田記念)
<特徴>
キャリア3戦で臨んだ英2000ギニーで1位入線するも、進路妨害のため失格。さらに、熱発により英ダービーも断念。結局、再びターフに姿を見せることなく引退となった悲運の名馬だ。3代母Rough Shodから広がる名牝系の出で、特に母Specialの分岐は現代競馬に多大な影響を与えた。本馬以外でも、半姉Fairy Bridgeは繁殖牝馬としてSadler's Wells(1984年愛2000ギニー、エクリプスS、フェニックスチャンピオンS)やTate Gallery(1985年愛ナショナルS)、種牡馬Fairy Kingなど活躍馬を多数輩出。3/4同血の妹Numberも繁殖牝馬としてジェイドロバリー(1989年仏グランクリテリウム)などを出し、2017年最優秀ダートホース・ゴールドドリームも4代母に同馬を持つ。母母父Nantallahのパワー、母父ForliのLady Juror的持続力、Mahmoud≒Mumtaz Begumの4×5のMumtaz Mahal的スピードや瞬発力、Hyperionの4×4のスタミナ、と弱点の少ないオールラウンド種牡馬で、世界各国で芝とダートを問わず、スプリンターから凱旋門賞馬まで多様な活躍馬を輩出した。ただ、Royal Charger系やNasrullah系の日本の主流種牡馬との比較では瞬発力に劣るため、日本においてはパワーや機動力、持続力などが表面化されることが多い。代表例にはエリザベス女王杯優勝馬ながらダートGⅠでも活躍した名牝トゥザヴィクトリーの名が挙がり、仔トゥザグローリー=トゥザワールドが有馬記念で人気薄ながら好走したこともNureyevの4×3が最大の後押しとなっている。Sadler's Wells=Fairy KingやNumberなどとは相似な血の関係にあり、Nureyevらしさを増幅する効果が見込める。
-Storm Bird
<プロフィール>
1978年生、加国産、6戦5勝
<主な勝ち鞍>
1980年デューハーストS(T7F)
<代表産駒>
Indian Skimmer(1987年サンタラリ賞、仏オークス、1988年フェニックスチャンピオンS、英チャンピオンS、イスパーン賞)
プリンスオブバーズ(1988年愛2000ギニー)
Summer Squall(1989年米ホープフルS、1990年プリークネスS)
Balanchine(1994年英オークス、愛ダービー)
<特徴>
2歳時に1980年デューハーストSなど5戦全勝を挙げた英愛2歳牡馬チャンピオン。ただ、3歳以降はアクシデントが重なり、通算6戦5勝で引退となった。自身の実績や後継種牡馬Storm Catの活躍から本馬も早熟ダート短距離馬というイメージが強いが、種牡馬としてはヨーロッパでダービー馬やオークス馬を輩出。立ち肩でスピードがあり、仕上がりの早い馬を多く出したことは間違いないが、Stom Catほどゴリゴリのアメリカンサイアーというタイプではないだろう。本馬と同じE.P.テイラー氏の生産馬であるNijinsky、The Minstrelとは相似な血の関係にあり、これらとの組み合わせでは北米的パワーを増幅する効果が見込める。
-Night Shift
<プロフィール>
1980年生、米国産、7戦1勝
<主な勝ち鞍>
-
<代表産駒>
In the Groove(1990年愛1000ギニー、英インターナショナルS、英チャンピオンS、1991年コロネーションC)
Daryaba(1999年仏オークス、ヴェルメイユ賞)
Azamour(2004年St.ジェームスパレスS、愛チャンピオンS、2005年プリンスオブウェールズS、キングジョージⅥ&QEDS)
<特徴>
Bull Dog=Sir Gallahadを2×3でインブリードするReplyから繋がる牝系で、母母Windy Answerと母Cibouletteは現役時代にそれぞれ10勝以上を挙げた活躍馬。本馬自身は7戦1勝で引退となったが、全姉Fanfreluche(1970年アラバマS)が競走馬としても繁殖牝馬としても成功していたことから種牡馬入りとなり、本馬もAzamour(2004年St.ジェームスパレスS、愛チャンピオンS、2005年プリンスオブウェールズS、キングジョージⅥ&QEDS)を筆頭に多くのGⅠ馬を輩出して成功を収めた。ノーザンテーストとはNorthern Dancer、Chop Chop、Windfieldsなどが共通。Night Shift≒ノーザンテーストの相似クロスからはアンデスクイーン(2019年レディスプレリュード、2020年エンプレス杯)やタイセイビジョン(2019年京王杯2歳S)など活躍馬が複数出ている。
-Dixieland Band
<プロフィール>
1980年生、米国産、24戦8勝
<主な勝ち鞍>
1983年ペンシルベニアダービー(D9F)
1984年マサチューセッツH(D9F)
<代表産駒>
Dixie Brass(1992年メトロポリタンH)
ドラムタップス(1992、93年アスコットGC)
Egyptband(2000年仏オークス)
<特徴>
母Mississippi Mudは1977年マッチメイカーSを制したGⅠ馬。Alibhaiの3×4を中心としたパワーとスタミナが持ち味で、本馬もその影響を多分に受けている。競走馬としては大成することができなかったが、種牡馬としてはドラムタップス(1992、93年アスコットGC)を筆頭にスタミナ豊富、かつパワフルな産駒を多数輩出。レッドリヴェール(2013年阪神JF)の極悪馬場をものともしなかったパワー、デルタブルース(2004年菊花賞、2006年メルボルンC)の無尽蔵のスタミナも本馬の支えがあってこそといえるだろう。
-Lomond
<プロフィール>
1980年生、米国産、7戦3勝
<主な勝ち鞍>
1983年英2000ギニー(T8F)
<代表産駒>
Dark Lomond(1988年愛セントレジャー)
Marling(1991年チヴァリーパークS、1992年愛1000ギニー、コロネーションS、サセックスS)
Valanour(1995年パリ大賞、1996年ガネー賞)
<特徴>
無敗の三冠馬Seattle Slewの半弟で、自身も1983年英2000ギニーを制覇。種牡馬としてもMarling(1991年チヴァリーパークS、1992年愛1000ギニー、コロネーションS、サセックスS)を筆頭に複数のGⅠ馬を出しており、競走馬としても種牡馬としてもSeattle Slewには到底及ばないまでも一定以上の成功を収めた。胴長のストライド走法で走った兄とは異なり、本馬はNorthern Dancer産駒らしいまとまった体形で芝のマイル以下で活躍。ただ、種牡馬としては短距離から長距離まで幅広い距離カテゴリーでGⅠ馬を出しており、Striking=Busherの3×3などを持つ母の影響からダートでの活躍馬を出しても不思議ない万能血統だ。なお、1996年NHKマイルC優勝馬タイキフォーチュンなどを出したシアトルダンサーⅡは本馬の3/4同血の弟。
-El Gran Senor
<プロフィール>
1981年生、米国産、8戦7勝
<主な勝ち鞍>
1983年デューハーストS(T7F)
1984年英2000ギニー(T8F)
1984年愛ダービー(T12F)
<代表産駒>
Belmez(1990年キングジョージⅥ&QEDS)
ロドリゴデトリアーノ(1991年ミドルパークS、1992年英2000ギニー、愛2000ギニー、英インターナショナルS、英チャンピオンS)
Lit de Justice(1996年BCスプリント)
<特徴>
名繁殖牝馬Sex Appealの8番仔であり、1977年英愛2歳牡馬チャンピオン・トライマイベスト(1977年デューハーストS)の全弟という良血。また、3/4同血の妹ロッタレースも母としてフサイチパンドラ(2006年エリザベス女王杯)を出し、同馬は9冠牝馬アーモンドアイを輩出した。母のBusanda≒Mr. Busherの2×3という強烈なパワー血脈が最大の特徴であり、母がトライマイベスト=El Gran Senorの4×3を持つブラストワンピースの重戦車のようなパワーは本血脈の影響といえるだろう。また、Woodmanの母であるプレイメイトやウォーエンブレムなどが持つNumbered AccountはSex Appealと相似な血の関係にあるため、これらとの組み合わせでもSex Appealが持つ強烈なパワー血脈を増幅する効果が見込める。
-Sadler’s Wells
<プロフィール>
1981年生、米国産、11戦6勝
<主な勝ち鞍>
1984年愛2000ギニー(T8F)
1984年エクリプスS(T10F)
1984年フェニックスチャンピオンS(T10F)
<代表産駒>
Salsabil(1989年マルセルブサック賞、1990年英1000ギニー、英オークス、愛ダービー、ヴェルメイユ賞)
Montjeu(1999年仏ダービー、愛ダービー、凱旋門賞、2000年タタソールズGC、サンクルー大賞、キングジョージⅥ&QEDS)
Galileo(2001年英ダービー、愛ダービー、キングジョージⅥ&QEDS)
High Chaparral(2001年レーシングポストT、2002年英ダービー、愛ダービー、2002、03年BCターフ、2003年愛チャンピオンS)
<特徴>
El Gran SenorやDarshaanなど強敵揃いの世代に生まれたため裏路線に回ることが多かったが、その中でも1984年愛2000ギニーなどGⅠを3勝。ただ、種牡馬としての功績は競走馬としての活躍を忘れさせるほどであり、欧州にNorthern Dancerの血を広めた最大の立役者といっても過言ではない。種牡馬Fairy Kingの全兄であり、これまた大種牡馬Nureyevとは3/4同血の間柄。母母Specialと父Northern Dancerとの間に、1971年トラヴァーズS勝ち馬でありNever Bendの半弟でもあるBold Reasonを挟んだ形で、パワーとスタミナ、底力に優れた大種牡馬といえる。1990、1992~2004年と14度の英愛リーディングサイアーに輝き、1993、99年には仏リーディングサイアーのタイトルも獲得。後継種牡馬も数多く成功しており、今後もヨーロッパの一大父系として枝葉を広げていきそうだ。ちなみに、繋の角度がきついため、Nureyevほどダート適性は高くない。
-Fairy King
<プロフィール>
1982年生、米国産、1戦0勝
<主な勝ち鞍>
-
<代表産駒>
エリシオ(1996年リュパン賞、凱旋門賞、1996、97年サンクルー大賞、1997年ガネー賞)
オース(1999年英ダービー)
ファルブラヴ(2002年伊共和国大統領賞、ミラノ大賞、ジャパンC、2003年イスパーン賞、エクリプスS、英インターナショナルS、クイーンエリザベスⅡ世S、香港C)
<特徴>
大種牡馬Sadler’s Wellsの全弟。血統構成は当然Sadler’s Wellsと同じであるが、馬体面では叔父Nureyevに近く、Sadler’s Wellsよりもスピードやパワーに優れた種牡馬であった。とはいえ、Hyperionの4×5由来のスタミナは内包しており、エリシオ(1996年リュパン賞、凱旋門賞、1996、97年サンクルー大賞、1997年ガネー賞)やオース(1999年英ダービー)、ファルブラヴ(2002年伊共和国大統領賞、ミラノ大賞、ジャパンC、2003年イスパーン賞、エクリプスS、英インターナショナルS、クイーンエリザベスⅡ世S、香港C)のような中長距離馬も輩出。オーストラリアでも枝葉を広げており、Nureyevと同じく多様性のある種牡馬だったといえるだろう。Royal Charger系やNasrullah系の日本の主流種牡馬との比較では瞬発力に劣るため、日本においてはパワーや機動力、持続力などが表面化されることが多い。ファルブラヴ産駒アイムユアーズはFairy King=Sadler’s Wells≒Nureyevの2×5・4を持ち、洋芝のクイーンSを連覇。力の要る馬場もタフな競馬も苦にしない馬力と底力は、少なからず本馬の特徴を受け継いだ証といえるだろう。
≪坂上 明大(Sakagami Akihiro)≫
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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