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Danzig系屈指のトニービン適性、「フジキセキ+Deputy Minister」の適性変化
本記事では、YouTubeメンバーシップやnoteで推奨したクラブ馬のデビュー後の活躍を振り返りながら、種牡馬傾向などをまとめております。
≪坂上 明大(Sakagami Akihiro)≫
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
・YouTube ・Twitter
グランデスフィーダ(2歳未勝利 中京ダ1800m)
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<推奨理由>
母シスタリーラヴは北米GⅢ2勝馬で、母としては3頭の産駒からダノンアレー(20年毎日杯3着)やディープモンスター(21年すみれS)を出している。本馬は父がドゥラメンテに替わったが、トニービンとChief's Crownの相性の良さや牡馬であることを加味すればこの変更は大歓迎だ。馬格に恵まれ、筋肉量も豊富。4月末の生まれ、かつ晩成型の配合から本格化は遅そうだが、成長力には大きな期待が持てる。ゆっくり成長を待ち、中距離路線での活躍に期待したい良血馬だ。
<レース評価>
3戦目、ダート1800mでの勝ち上がり。兄のような瞬発力はないが、恵まれた馬格から生み出すパワーとスタミナが本馬の持ち味。母シスタリーラヴのTraffic Judgeの5×5を薄く継続した配合形で、ダートの長丁場が主戦場となりそうだ。まだまだ緩さの目立つ馬体だけに、2歳時に1勝を挙げられたことが何よりも大きい。
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グランデスフィーダの母父はDanzig系Bellamy Road。ハーツクライ系、すなわちトニービン持ち種牡馬とDanzigの相性の良さは以前の記事で書いた通りだ。
さらに、グランデスフィーダの母父Bellamy RoadはChief's Crownの直仔であり、このChief's CrownというのがDanzig系のなかでも特にトニービン持ち種牡馬と相性がいい種牡馬。勝ち上がり率についてはデータの通りであり、ヌーヴォレコルト(2014年オークス)、ディアドムス(2014年全日本2歳優駿)、マスターフェンサー(2020年名古屋大賞典)、ヴェロックス(2019年皐月賞2着、日本ダービー3着、菊花賞3着)が代表例に挙がるなど長打率も十分だ。
これは、父がトニービンと相性のいいDanzigであり、母Six CrownsがSecretariat(1972年米ホープフルS、ベルモントフューチュリティS、1973年ケンタッキーダービー、プリークネスS、ベルモントS、マンノウォーS)とChris Evert(1974年エイコーンS、マザーグースS、CCAオークス)の仔であるということだけでなく、3代母Miss CarmieがHyperionの5×4を持ち、母がNasrullahの3×4を持つなど、トニービンの有力血脈を強く刺激していることに起因すると考えられる。Danzig系の最大勢力であるデインヒルは強靭な筋力を武器に勝ち上がり率を上げてくれるが、長打率に欠ける面も。それに対して、Chief's CrownはDanzig系のなかでも伸びやかさのある中距離馬であり、トニービンの弱点を補いつつ強みを削がない、非常にバランスのいい組み合わせといえるだろう。
ドゥラメンテ産駒については該当馬が5頭しかいないため平均程度の成績だが、今後伸びていく可能性が高い組み合わせのひとつといえるだろう。
マイネルフォルツァ(2歳未勝利 中京芝1600m)
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<推奨理由>
ゴールドシップ産駒の勝ち上がり率向上のツボは①DanzigやRobertoでパワーを強化するか、②Haloでスピードを強化する手が有力。本馬はRoberto系×Danzigのグラスワンダーを父に配して①のパターンを踏襲。この組み合わせの牡馬は1/1頭が勝ち上がっており、今後も牡馬で注目したい組み合わせだ。母は芝1400m3勝の短距離馬でスピードを強化している点も○。2番仔で馬格にも恵まれ、均整の取れた馬体にも好感が持てる。芝中距離での活躍に期待。
<レース評価>
母ラッフォルツァートと同様に初勝利に時間を要したが、母と同じく逃げの手で新馬勝ちを収めた。直線に向いて一旦は2着馬に前に出られたが、すぐさま差し返してのクビ差。切れる脚はないが、いい勝負根性があり、まだ奥がありそうだ。距離延長も歓迎のクチ。
【ゴールドシップ産駒の収得賞金TOP5】
1.ウインキートス(2021年目黒記念)
2.ユーバーレーベン(2021年オークス)
3.ウインマイティー(2022年マーメイドS)
4.プリュムドール(2022年ステイヤーズS2着)
5.マカオンドール(2022年万葉S)
推奨時にゴールドシップの注目配合に挙げた「ゴールドシップ+グラスワンダー」。2022年終了時点においても3/4頭がJRAで勝ち上がる超優秀な成績を残しており、ウインピクシスは現3勝クラス馬という長打の活躍も見せてきた。今後も注目の組み合わせだ。
また、ゴールドシップ産駒は牝馬に活躍馬が偏っており、収得賞金上位4頭はいずれも牝馬。ゴールドシップの鈍重さをなるべく表現しないこと、が産駒の成功方針となっている。
アルーリングビュー(2歳新馬 阪神芝1600m)
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<推奨理由>
Mr. Prospectorを3×3でクロスする母母アルーリングアクト(99年小倉3歳S)に遡る快速牝系であり、母アルーリングライフも1200mで4勝を挙げたスプリンター。本馬は父にイスラボニータを配して「フジキセキ+Deputy Minister」のダート黄金配合を形成した。また、相性のいいIn RealityとFappianoが絡む組み合わせも魅力。血統通りのまとまった体形でダート短距離での活躍に期待したい。
<レース評価>
好位馬群で折り合いをつけ、直線に向いてから一気にピッチアップ。直線では何度も手前を替えながらも楽々抜け出して初戦を白星で飾った。時計は平凡だが、数字以上の評価が必要だろう。推奨時にはフジキセキ+Deputy Minister、立ち繋でダート向きかと思ったが、アルーリングアクト牝系の軽さはさすが。どちらの路線に行くにせよ、今後が楽しみな良血馬だ。
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イスラボニータ産駒における「フジキセキ+Deputy Minister」の有効性については以前の記事の通り。
「フジキセキ+Deputy Minister」はフジキセキが持つWar Relic≒Eight ThirtyとDeputy Ministerが持つGood Exampleなどが北米血脈を刺激し合うことが魅力の組み合わせ。カネヒキリ(2005年ジャパンダートダービー、ダービーグランプリ、2005、08年ジャパンCダート、2006年フェブラリーS、2008年東京大賞典、2009年川崎記念)を筆頭に数多くのダートチャンピオンが誕生しており、個人的にはダート黄金配合と呼ぶことも多い。
イスラボニータ産駒においてもダートのシェア率が高く、アベレージの高さからしても今後さらにシェア率を伸ばしていくと考えられる。
また、War Relic≒Eight Thirty≒Good Exampleはスピードにも優れており、該当馬の平均勝利距離はイスラボニータ産駒全体より200m以上も短い。
これらの傾向はイスラボニータ産駒に限ったことではないため、他の種牡馬においても覚えておきたいポイントだ。
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