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【種牡馬四季報】フランス・ドイツ 2024年上半期の種牡馬リーディング

競馬オタク・坂上明大が
四半期ごとに国内外の種牡馬事情を解説していきます。

~リーディングサイアー(フランス)~

2023年の仏リーディング8位Lope de Vegaが順位を大きく上げ、2024年上半期の仏リーディングサイアーとなっている。仏ダービー(芝2100m)のLook de Vega、仏1000ギニー(芝1600m)のRouhiyaという2頭のクラシックホースが今年の代表産駒。Machiavellianの3×3が特徴的な配合形で、自身も2010年仏2000ギニー、仏ダービーを制覇。昨年は仏2歳リーディングでも2位につけており、クラシック向きの早熟性と軽いスピードを子孫にしっかりと継承しているようだ。

昨年3位のSiyouniは2024年も堅実な活躍。日本では日本ダービー3着馬シンエンペラーの父として知られるが、今シーズンのフランスではロートシルト賞(芝1600m)、ジャンロマネ賞(芝2000m)、イスパーン賞(芝1850m)と3つのGIを制したMqse de Sevigneが目覚ましい活躍を見せている。後継種牡馬City Lightもリーディング14位と好調で、Siyouni系は今後フランスで発展していきそうな父系の一つだ。

Zarakは昨年9位から6つ順位を上げて3位にランクイン。Zarakは母に凱旋門賞などGI5勝の名牝Zarkavaを持つ良血馬で、自身も現役時代にサンクルー大賞(芝2400m)などを制している。今年は仏2000ギニー(芝1600m)のMetropolitan、ガネー賞(芝2100m)のHaya Zarkと2頭のGIホースを輩出。フランスでは貴重なDubawi系の種牡馬として、若駒から古馬まで多くの活躍馬を出している。

2023年5位のKingmanは現在4位。今年はSparkling Plentyが仏オークス(芝2100m)を制してGI馬となっている。Danzig→Green Desertを経由する系統はKingmanを筆頭に7位のSea the Starsとその後継種牡馬で18位のZelzalや、16位のTerritoriesなど複数の種牡馬がリーディング上位に名を連ねている。

上半期5位のWootton Bassettは2023年4位から順位を一つ落とす形。GI勝ち馬は今年はまだ出せていないが、後継種牡馬のAlmanzorも17位にランクインしており、直仔や孫たちの今後の活躍にも期待がかかるところだ。

昨年の仏リーディングサイアーCracksmanはランク外、2位Frankelは10位。ある程度上位種牡馬が固定されている英愛とは異なり、父系自体に多様性があるのがフランス競馬の面白いところだ。

父系別では上位20頭中13頭がNorthern Dancer系、3頭がMr.Prospector系、2頭がNasrullah系、1頭がRoyal Charger系、1頭がIn Reality系。Northern Dancer系の内訳はGreen Desert系が4頭、Galileo系が3頭、Nureyev系が2頭、Danzig系、Sadler's Wells系、Storm Cat系、トライマイベスト系が1頭。Mr. Prospector系は2頭がGone West系で、残る1頭がDubawi系。Nasrullah系はBlushing Groom系とGrey Sovereign系が1頭ずつだ。

~リーディングブルードメアサイアー(フランス)~

2023年は仏ダービーと凱旋門賞を制した欧州年度代表馬のAce Impactの活躍もありAnabaa Blueがこの部門でのリーディング1位に輝いたが、Ace Impactが引退種牡馬入りしたことにより2位だったGalileoが繰り上がる形でこの部門でのリーディング1位に。GI勝ち馬は現時点ではまだ出ていないものの、Showcasing産駒のKathmanduが仏1000ギニー(芝1600m)で僅差の2着に好走している。

昨年4位だったDansiliは順位を2つ上げて現在2位に。稼ぎ頭は今年の仏ダービー(芝2100m)2着のLope de Vega産駒First Look。1位Galileo、2位Dansiliの並びは2024年上半期の英愛ブルードメアサイアーリーディングと一緒で、現在の欧州ではこの2種牡馬が母の父として有力といえるだろう。

昨年この部門で5位だったInvincible Spiritは順位を2つ上げて3位につけている。Invincible Spiritは現役時代、5歳9月に英GIスプリントC(芝6F)を制してGIウィナーの仲間入りを果たした遅咲きのGreen Desert系種牡馬で、引退後種牡馬として成功。Green Desert系らしい早熟性とスピードを子孫にもしっかりと伝えているようだ。

~リーディングサイアー(ドイツ)~

独ダービー(芝2400m)勝ち馬Palladiumの父Gleneaglesが現在の独リーディングサイアー。産駒全体の獲得賞金414,000ユーロ中401,000ユーロがPalladium1頭で稼いだ賞金だから、今年GleneaglesがリーディングサイアーになれるかどうかはPalladiumの今後の活躍にかかっている。Gleneagles自身はイギリスとアイルランドで活躍したトップマイラーで、父がGalileo、母がGiant's Causewayの全妹You'resothrillingという世界的良血馬だ。Galileo系ではほかにNathanielが14位にランクインしている。

2位Reliable Manは独オークス(芝2200m)の勝ち馬Erleの父で、1位のGleneeaglesと同様に昨年はランク外だった種牡馬。Reliable Man自身は現役時代仏ダービーの勝ち馬で、芝2000m~2400mを主戦場としたMill Reef系Dalakhaniの後継種牡馬だ。Mill Reef系ではほかにLord of Englandが9位にランクインしており、古き良きラインが残るのがドイツ競馬の面白さといえるだろう。

Adlerflugは昨年に引き続き3位を堅持。自身は現役時代独ダービー(芝2400m)などGIを2勝しており、GIIカールヤスパース賞(芝2400m)やハンザ賞(芝2400m)を制した中長距離馬のLordanoが今年の稼ぎ頭だ。

4位Areionは1995年生まれのBold Ruler系種牡馬で、2022年に亡くなったこともあり、産駒は減少傾向。それでも、今年はダルマイヤー大賞(芝2000m)の勝ち馬Califが5歳にしてGIウィナーの仲間入りを果たしており、まだまだ無視できない名種牡馬といえるだろう。

5位Soldier Hollowは3位Adlerflugと同じIn the Wingsを父に持つSadler's Wells系種牡馬で、ローマ賞(芝2000m)など芝2000mのGIを4勝した活躍馬。日本ではNHKマイルCの勝ち馬で社台SSで種牡馬入りしたシュネルマイスターの母の父として知られる。今年の稼ぎ頭Augustusは独ダービー(芝2400m)で3着に好走、今後の活躍を期待したい一頭だ。

父系別では上位20頭中11頭がNorthern Dancer系、Mr. Prospector系が5頭、Nasrullah系が3頭、Royal Charger系が1頭。Northern Dancer系の内訳はデインヒル系が4頭、Galileo、In the Wings、Green Desert系が各2頭ずつ、Storm Cat系が1頭。Mr.Prospector系はDubawi系が3頭、Gone West、Miswaki系が1頭ずつ。Nasrullah系はMill Reef系が2頭、Bold Ruler系が1頭。Royal Charger系はサンデーサイレンス系が1頭だ。

~リーディングブルードメアサイアー(ドイツ)~

独ダービー(芝2400m)勝ち馬Palladiumの母の父Anabaaが前年ランク外から一気に部門トップの座に上り詰めた。AnabaaはGreen Desertもデインヒルも経由しないDanzig系種牡馬で、現役時代にはジュライC(芝6F)、モーリスドゲスト賞(芝1300m)と2つのGIを制している。

2位Oasis Dreamも前年ランク外から一気に部門2位へと上昇。Oasis Dreamは独オークス(芝2200m)のErleの母の父でGreen Desertを父に持つDanzig系種牡馬。現役時代は英GIミドルパークS、ジュライS(ともに芝6F)、ナンソープS(芝5F3y)と3つの短距離GIを制したスプリンターだ。

3位Big ShuffleはSeattle Slewを経由しないBold Ruler父系の種牡馬で2023年5位から2つ順位を上げてここへランクイン。Big Shuffle自身は現役時代英愛のスプリント路線で活躍したスプリンターで、主な勝ち鞍はGIIIグリーンランズS(芝6F)。一流の競走成績とは言えないが、種牡馬としては2003、05、07、09、11、12年の独リーディングサイアーに輝いた名種牡馬で、没後10年以上経つ現在でも強い影響力を誇っている。

現在のドイツ競馬ではDanzig系やBold Ruler系のスプリンターからスピードを補強することで、古き良き中長距離種牡馬に刺激を与えるのが配合の主流となっている。


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