繁殖牝馬の母年齢と祖母年齢&ファミリーナンバーについて

ファミリーナンバーとは、受け売りなので突っ込まれたら答えられないが、かなり昔に活躍した繁殖牝馬ごとにナンバーを振って、その子孫がどの系統に属するのか分かるようにしたもののようだ。

競馬を始めたのはナリタブライアンの世代で、オークスのときにバイトの先輩から馬券買ってきてやるから何か選べと言われてよく分からないまま競馬新聞を見てチョウカイキャロルとゴールデンジャックを含む3頭の馬を選択。馬連BOX各1,000円で合計3,000円をお願いしたらそれが30,000円以上になったことがきっかけだ。そんなんだから翌週のダービーも当然やって、それも当たったから完全にはまってしまった。こんなにはまることになるなんて思いもよらなかったよ。

そしてその当時、ナリタブライアンにはビワハヤヒデという強い兄がいること、また当時はサンデーサイレンス産駒が出走し始めるときで、ナリタブライアンのダービーのときに2着に来たエアダブリンにダンスパートナーやダンスインザダークという優秀な弟妹が出てきたこと等、そういった背景もあって、強い競走馬が出てくるには優れた繁殖牝馬が大事なんだなあ、と思い知らされたものだった。

よく考えてみれば当たり前なんだけど、同じ種牡馬の産駒は多数いる訳だから、差が出てくるのはやっぱり繁殖牝馬の質。走りそうな馬や結果を出しそうな馬を見極めていくためには繁殖牝馬の見極めも重要になるように思える。したがって、今回は繁殖牝馬にフォーカスを当てて集計調査をしてみようと思う。

繁殖牝馬を調べるには、本当はここ10~20年くらいの範囲内で繁殖牝馬を分類できる方が良さそうな気がするんだけど、繁殖牝馬を自力で分類しようとするとかなり大変そうなので、まずは既にあるファミリーナンバーという指標を使わせてもらって傾向を集計してみようと思う。

まずは単純に繁殖牝馬の年齢についてから。

1.繁殖牝馬の母年齢と祖母年齢について

前述したビワハヤヒデやナリタブライアンの母パシフィカスは、9歳10歳のときに2頭を生んだのちはビワタケヒデがラジオたんぱ賞を頑張って獲ったもののそれ以外はそれほど重賞で勝ち負けすることがなかった。母ダンシングキイは8歳9歳10歳でエアダブリン、ダンスパートナー、ダンスインザダークを生んで、その後18歳でダンスインザムードを生んだが、やはり年齢とともに産駒の活躍は下がっていった。ウインドインハーヘアも同様だ。

当然感覚的には分かっていたことだけど、繁殖牝馬は年齢とともに走る仔を出さなくなる傾向がある。つまり能力伝達が弱くなっていることなので、その意味では高齢で産んだ牝馬の仔は繁殖牝馬としても活躍できない可能性があるのではないか、という仮説。したがって、母年齢ごとの活躍馬の状況を調べるほか、その母が祖母の何歳のときに生まれたかも合わせて調査。母年齢と祖母年齢の相関関係を調べてみた。

ちなみに集計は血統データを入手できた2011年12月末時点以降、2020年5月末までの現役馬の血統データを使用している。2011年から2015年7月までは完全な形でデータを入手できておらず一部欠落となっているため、ご了承の上ご確認ください。

母年齢と祖母年齢全体

横軸が母年齢、縦軸が祖母年齢で、丸の大きさが4勝以上勝った活躍馬の頭数を表していて大きいほどその頭数が多いことを示す。
グラフにしてみると、活躍馬は母12歳以下で且つ祖母12歳以下に集中していることが分かる。そこがAゾーン。
続いて、母は少し年齢が高くなっても祖母が比較的若いときであれば活躍馬が出ているBゾーン。母が15歳くらいでも祖母が10歳くらいまでに産んだ母ならば可能性はある。
そしてCゾーン。祖母が少し高齢15~16歳になってから産んだ母の場合は、母が12歳くらいまでが限界と見える。
上記以外のゾーンは活躍馬も少なく活躍できない可能性が高そう。母年齢と祖母年齢はいずれも12歳以下であることが望ましく、もし母が12~15歳であれば祖母は12歳以下、もし祖母が12~15歳であれば母は12歳以下というのが走りそうな馬を探す上での条件と考えられる。

母年齢と祖母年齢2歳

さらに、ダービー前まで2勝以上勝った馬に限定してみた。これはある程度の早熟性が必要な場合に母年齢と祖母年齢がどうなるかを見てみたものだ。先ほどの全体で4勝以上した活躍馬のグラフに比べ、母年齢と祖母年齢の集中しているところが狭まっていることが分かる。
母も祖母も10歳くらいまでが活躍ゾーンで、母は12~13歳を過ぎると活躍馬が減ってくる傾向が見られる。現役馬の早熟性と母年齢にはある程度の関連性はありそうな気がする。

もし一口馬主やPOGにおいて早くから活躍するような馬を探すのであれば、母や祖母の年齢についても考慮する必要がありそう。

2.ファミリーナンバーの傾向について

前述した通りファミリーナンバーが繁殖牝馬の分類として現在有効かどうか不明だが、良い指標も私の今の知識にはないのでひとまず調べてみた。

なおこちらも前段の1と同様、入手できた血統データからの情報のため、一部欠落などもあり傾向を把握するくらいのものとご理解いただきたい。

FN-勝利数

まずは勝利数から。よく知らなかったが、ファミリーナンバー(以下、FN)の9-fが圧倒的に多い。9-fは出走数も多く、日本には数多いFNのようだ。9-fの近年の活躍馬だとダノンキングリーとかルヴァンスレーヴ、母名で言うとエリモピクシーとかアルーリングボイス、トゥザヴィクトリー、アパパネ、ザズー、アゲヒバリなどがいる。9-fはダービー前でも重賞に限定しても1位のため注目だ。
一方、全体とダービー前を見比べると、ダービー前になると順位の上がるFNがある。2-fは、13-cや4-dを抜いて8位にアップ。2-fだと近年の活躍馬はレイデオロやジェネラーレウーノ、セイウンコウセイなど。ディープインパクトもこの2-fということになる。
8-fや6-aといったところは重賞になると急上昇しているFNだ。コンスタントに結果を出すというよりはここ一番で強い、あるいは急な大物を出す血統なのかもしれない。8-fにはアーモンドアイ、ドゥラメンテがいる。つまりエアグルーヴも8-fということだ。6-aは近年活躍馬が多数、ラッキーライラックやアエロリット、ノンコノユメ、ミッキーアイル、ペルーサもここに入る。
どのランキングにも上位にいる4-rには、ワグネリアンやモズアスコット、エアウィンザーやシャケトラなども入る。エアウィンザーの母エアメサイアはもう一つのエアの発展牝系なので、近頃は少し勢いがないがこの4rも注目のFNだろう。
1-sも安定して上位にいる。1-sには今年牡馬クラシックを湧かせたコントレイルがいるほか、ダノンプレミアムやケイティブレイブもいて近年結果が出てきているFNだ。


出走数が多ければ当然勝利数は増える訳で、単純に勝利数だけで比較してもダメだと思ったので、勝率も見てみようと思う。但し、出走数が少ないと勝率は高くなる傾向があるから、出走数も考慮しながら評価する。

FN-勝率

小さくて読みづらくなってしまった笑
申し訳ないけど拡大できるようなら拡大して見て欲しい。

勝率はB3がトップ。年間平均出走数もそれほど悪くないので、B3は比較的信頼できそうなFN。特に重賞での勝率が高い。B3は近頃活躍馬の多いソニンクの牝系で、ロジユニヴァースやメジャーエンブレム、ディアドラがいる。
16-eは勝率は高いが出走数が少ないのでどうかな。目立つ活躍馬もあまりいない。
それよりはダービー前で順位をグッと上げている16-fが面白い。16-fは、ジェンティルドンナやロジャーバローズ、ドナウブルーがいる牝系だ。
いずれの表にも上位にいるという意味では8-dもある。8-dは、近頃の活躍馬は少なくなってきているが、ヴィクトワールピサやローブティサージュ、ラウダシオンがいる血統だ。

勝利数と勝率で比べるといろいろ違いが多すぎるので、勝利数・出走数・勝率の総合で順位を付けてみたい。
A. 勝利数、B. 出走数、C. 勝率のランキングを見て、以下のように分類。

①A、B、C全てが20位以内
②A、B、Cのうち2つは20位以内で、1つだけ30位以内
③A、B、C全てが30位以内
④A、B、Cのうち2つは30位以内で、1つだけ50位以内
⑤A、B、C全てが50位以内
⑥A、B、Cのうち2つは50位以内で、1つだけ70位以内

上記分類でFNを洗い出し、同じ分類内は勝率が高い方を上と判断して順位付けをしてみた。結果のところ、①②はなかった。③も重賞のところだけ。全体とダービー前は④⑤⑥での順位付けとなる。

FN-総合01

1位はいずれも16-gだった。ただ、16-gは目立つ活躍馬(G1をぽこぽこ勝つような活躍馬)がそれほどいない。直近だとスマイルカナとかファンタジストとか、ここ2走重賞で跳ね返されているがワイルドカードとか。少し前ならシルバーステートとかエイシンヒカリ、レコンダイトとかがいる。
続いては12-cだが、12-cはダービー前になると大きくランクダウン。POGとかだと12-cは少し割り引いた方が良さそうだ。12-cはハルーワスウィートの血脈が入る。ヴィルシーナとかシュヴァルグラン、所謂大魔神血統だ。
12-cよりはどちらも上位の6-aの方が良いか。6-aは前述したとおり近年活躍馬が多数出ているFNである。
7はダービー前のランキングで大きくアップしている。最近だとサトノフラッグだが、ダンシングキイもここに含まれる。ダンス一族の3歳クラシックでの強さが出ているのだろう。
4-nもダービー前だと出てくる早熟血統か。タワーオブロンドン、ディーマジェスティ、イスラボニータ、カミノタサハラなど、言われれば確かにと思えなくもない名前が挙がってくる。
19は両方とも中位で挙がっているFN。近年はこれといった活躍馬はいないが堅実に走る馬が多いのかもしれない。8-cも同様にこれといった活躍馬は少なく堅実に走る馬が多いのだろう。

一方、出走馬が多い割りには勝率が低いFNもある。勝率は僅か数%の違いなのでそれほど気にする必要はないかもだが、その僅かでも出走数が多ければかなりの違いになってくると思うので念のため評価をすると、3-l、12、7-cといったFNは要注意だ。ただ、3-lにはウオッカやインディチャンプ、アウィルアウェイ、エアトゥーレなどもいるのでどちらかというと大物を出す血統なのかもしれない。

そして重賞勝ち馬のランキングは以下の通り。

FN-総合02

重賞になると16-aが大きくランクアップ。ここにはシーザリオが入るので、それも頷ける結果かな。それ以外にも、オーソリティやクリソベリル、ダンビュライト、ブラックスピネル、マリアライト、トーホウジャッカル、ストレイトガール等の活躍馬多数。少し遅咲きなイメージもあるのでPOGには不向きかもしれないが、一口馬主には注目の血統だと思われる。
1-lは今年牝馬クラシックを湧かせたデアリングタクトが含まれる。そしてリスグラシューやエポカドーロ、ユーキャンスマイルなど近年活躍する馬が多数いる血統。過去にはそれほどなくここに来てグッと高まってきている印象なので、今後一口なりPOGなり馬を選ぶときには注目かもしれない。
13-cは近年はそれほど振るわなくなってきている。昔にはサクラメガワンダーやオウケンブルースリ、カレンチャン、サクラゴスペルなどの名前を挙げることができるが、現役馬だとロードクエストくらいで少し厳しそうな感じだ。
4-rや6-a、9-fは既に挙げた通り。いずれもやはり注目のFNだろう。16-hやA4はあまり活躍馬はおらずコンスタントに結果を出す血統か。4-nは前述の通り早熟性がありPOG向きだ。4-mもそれほど目立つ活躍馬はいないが3勝以上勝った馬が非常に多い。コンスタントに活躍するFNのようだ。
最後に全体とダービー前で1位だった16-gが重賞になると大幅に順位を落としている。前述の通りそれほど目立つ活躍馬もいないことはこういったところにも数字で出てきているのかもしれない。

以上が、繁殖牝馬の考察。FNと種牡馬の関係性なんかも調べてみたら何かあるかもしれないので、それも時間を見つけてやってみようと思う。

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