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引退式(赤塚俊彦)/週刊トレセン通信

 昨年末から今年の年始にかけて中山競馬場で各馬の引退式が行われた。諸事情によりイクイノックスの引退式は現地で見ることができなかったが、タイトルホルダーとパンサラッサの引退式を見てきたので、ここで振り返りたい。

 2023年12月24日、有馬記念を終えてもなおスタンドに残る多くのファンの前にタイトルホルダーが再び姿を現した。残念ながら結果で有終の美を飾ることはできなかったが、その競馬ぶりは皆さんご存知の通り。果敢に逃げ、大きくリードを取って4コーナーを回るとスタンドからは大歓声。タイトルホルダーらしい、見せ場十分の競馬をしての堂々たる3着だった。

タイトルホルダーのラストランは3着 横山和生騎手と右は栗田徹調教師

 手綱を取った横山和生騎手が引退式でマイクを受け取ると開口一番「勝ちたかった!というのが本音です、すみません」と素直なひと言。「勝てなかったですが、格好良かったと思います」と言うとスタンドからは賛同と取れる大きな拍手が湧き起こった(ちなみにYoutubeで公開されている引退式の様子も、この横山和生騎手のコメントの部分が「リプレイ回数が最も多い」とされている)

 式にはGⅠを勝った横山和生騎手、横山武史騎手が代表して勝負服を着て壇上に立ったが、脇ではデビュー前から調教に乗っていた原田和真騎手、皐月賞とダービーで手綱を取った田辺騎手、他にも五十嵐雄祐騎手もこの様子を見守っていたことを記しておきたい。引退式を終えてタイトルホルダーが退場する際にはスタンドから「タイトルホルダーお疲れさま!」「和生ありがとう!」との声が飛び、年が明けた1月5日に美浦から北海道へと向かうべく退厩となった。

2022年宝塚記念の優勝レイを身に纏い、多くのファンに別れを告げたタイトルホルダー

 年が明けた1月8日にはパンサラッサが登場。当初は有馬記念前の12月23日に引退式が執り行われる予定だったが、同馬に感冒の症状が出たため、この日に延期となっていた。その甲斐あって「パンサラッサの歌」に合わせて登場したパンサラッサは元気一杯。吉田豊騎手が「一番思い出に残っているのは秋の天皇賞で負けたこと。悔しかった」と言えば、矢作調教師も「産駒にはイクイノックスの子供を負かしてほしい」と。これにはファンも大盛り上がり。天皇賞で名勝負を演じたイクイノックスとパンサラッサの対決は近い将来、第2ラウンドとして産駒が受け継いでくれるだろう。

パンサラッサの引退式にもたくさんのファンが駆け付けた

 ちなみにこのパンサラッサの引退式を脇で見守っていたのが内田博幸騎手。直接騎乗した経験はないが、名馬の晴れ舞台を寒空のなか最後まで見届け、「豊!良かったな!」と馬上の吉田豊騎手を労った。

引退式を見守る内田博幸騎手

 式が終わり、退場の際にはファンの声援に応え(?)パンサラッサが吉田豊騎手を乗せたまま立ち上がりかける場面も。今にも走り出してしまいそうになる姿を見て、そういえばジャパンカップのレース後の取材で吉田豊騎手が「走る気満々だった」と話してくれたのを思い出し、微笑ましくなった。この日も思いっ切りターフを走り回りたかったのかもしれない。実にパンサラッサらしい、元気で明るい引退式だった。

タイトルホルダーもパンサラッサもお疲れさま。

いつも私たちをハラハラドキドキさせてくれてありがとう。

2頭のような強くて個性的な産駒の登場を楽しみに待ちたい。


赤塚俊彦(厩舎取材担当)
1984年7月2日生まれ。かに座。千葉県出身。2008年入社。美浦編集部。
X(旧Twitter)やってます→@akachamp5972
 タイトルホルダーは北海道新ひだか町のレックススタッドで、パンサラッサは北海道新ひだか町のアロースタッドでそれぞれ種牡馬生活をスタートさせます。ちなみにレックススタッドとアロースタッドは車で僅か3分なので、距離的には2頭は割と近いところにいます。タイトルホルダーには有馬記念で一緒に走ったウインマリリンなどが交配予定となっているようです。日経賞を勝った2頭の仔、是非中山競馬場で走る姿を見たいですね。
 今回、競馬ブック読者の方へのプレゼントとして、タイトルホルダーの引退式の写真に横山和生騎手、横山武史騎手2人がサインを添えて提供してくれました。詳細は今週発売の週刊誌・プレゼントコーナー、または弊社WEBサイトをご覧下さい。締め切り間近ですので、ご応募はお早めに。


本稿は2024年2月14日に「競馬ブックweb」「競馬ブックsmart」に掲載されたコラムです。下記URLからもご覧いただくことができます。


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