レコードの次走は買い?(坂井直樹)/週刊トレセン通信
こんにちは、栗東の坂井です。
先週日曜にローズSが行われ、マスクトディーヴァが快勝しました。阪神芝1800mで時計はなんと1分43秒0。シャフリヤールが持っていた従来のレコードを0秒9も短縮する大レコードでした。
ローズSは秋華賞のトライアル。順調なら、中3週で次の秋華賞へと向かうことになるでしょう。これだけの時計で走ればそれなりのダメージも気になるところですが、たとえばレコードホルダーだったシャフリヤールは、毎日杯をレコード勝ちし、次走でダービーを制しました。ひょっとして素直に買った方が得だったりするのでは?
では調べましょう。1986年以降にサラ系平地競走で発生したレコードタイム(基準タイムを含む)は先週のローズSも含めて1524レース、その勝ち馬が迎えた次走は1433レースありました。
【レコード勝ちの次走】(271.201.162.799)
勝率18.9%、連対率32.9%なら上々で、単勝回収率が109%なのですから、単勝ベタ買いでも儲かるという数字です。今回知りたいのはマスクトディーヴァの取捨ですから、「レコード勝ち→GⅠ出走」を調べてみましょう。
【レコード勝ちの次走のGⅠ成績】(40.21.19.101)
勝率22.1%、連対率33.7%は全体平均を超えていて、単勝回収率は190%ですからとんでもない数字です。これを前走のクラス別に成績を見ると
【条件戦】(2.1.2.19)
【オープン特別】(5.1.2.21)
【GⅢ】(10.6.0.16)
【GⅡ】(15.9.12.31)
【GⅠ】(8.4.3.14)
【重賞トータル】(33.19.16.62)
単勝回収率はGⅠからの臨戦馬でなければ基本的に100%を超えていて、今回のマスクトディーヴァのパターン(GⅡでレコード勝ち→GⅠ)では単勝137%、複勝116%とどちらでも黒字となっています。
今回はトライアルでしたから、GⅠまでは中3週。重賞でレコード勝ちしたあと、詰まったレース間隔でGⅠに臨んだパターンはどうでしょう。
【重賞でレコード勝ち→中1~3週でGⅠ】(16.13.7.28)
勝率は25.0%、連対率はなんと45.3%。これだけ成績が良ければ回収率も当然高く、単勝で155%、複勝でも116%ありました。これを買わない手はありません。
さて、こういう調べものをすると勝った馬ばかりに注目が集まりがちですが、2着以下に敗れた馬も気になるところ。買えそうな気がするのは「レコードタイムのレースで敗れながらも出走馬中最速の上がりをマークした馬の次走成績」です。このパターンのうち次走がGⅠだった例は39例ありました。今年のローズSなら32秒9で上がったブレイディヴェーグ。
【レコード記録レースで上がり最速ながら敗れた馬の次走GⅠ】(3.4.4.28)
単勝回収率は163%と非常に高水準ですが、これは22年大阪杯のポタジェ(単勝5870円)がかなり数字を引き上げているもの。あとの2勝は単勝170円(94年マイルCS・ノースフライト)と320円(09年秋華賞・レッドディザイア)で、勝率が7.7%とくれば、手を出さないのがベターでしょう。
意外と上がり最速でない馬の方がいいのか…?と、レコード記録レースで上がり2位以下で敗れた馬も同様に調べてみたところ、次走のGⅠで(10.20.20.347)、勝率は2.5%、単勝回収率も80%にとどまります。基本的に「レコード記録レースからのGⅠ臨戦は勝ち馬だけ積極的に買え」と言えそうです。
ということで、過去のレコードタイムの傾向からは、ローズS組で秋華賞で買えるのはマスクトディーヴァだけ。空いた2席は別のレースからの臨戦馬で埋めましょう。紫苑Sか、それとも別路線か。秋華賞までじっくり検討することにします。
栗東編集局 坂井直樹
本稿は2023年9月20日に「競馬ブックweb」「競馬ブックsmart」に掲載されたコラムです。下記URLからもご覧いただくことができます。
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