見出し画像

逆襲の2024年へ(田村明宏)/週刊トレセン通信

 去る1月29日に2023年のJRA賞受賞式が都内のホテルで行われた。既に一昨年までのようなコロナ規制は解除されたが、それでもコロナ禍以前のような規模でのパーティーはなくなって関係者のみでの限定された形の開催だったようだ。投票権のある私も参加資格はなくあとで映像を見るのみだが、いつものように受賞された方々の表情は晴れがましい。表彰対象となった馬達は既にご存知の通りでいつものことながら賛否両論はあるものの概ね、納得のいく結果だったと思う。

 私の投票した馬の中でも何頭かは選に漏れたが、ひとつ残念だったのは最優秀4歳以上牝馬部門だ。私が投票したのはスターズオンアース。結果的に選出されたソングラインには264票という圧倒的な差をつけられてしまった。片やヴィクトリアマイルと安田記念の春のマイルGⅠ2勝に対して4戦してGⅠのみで2着2回、3着2回で勝ち星はなし。こうなると印象からは圧倒的に不利だが、中身で言えば直接対決のヴィクトリアマイルこそ負けているが、大阪杯、有馬記念では牡馬相手に互角に戦っていずれも2着。せめて最後の有馬記念で勝っていればもう少し際どかったのではと思わせる走りをしていた。

2023年有馬記念

 当初、予定していた秋の天皇賞を爪の不安で回避。一頓挫明けだったJCでは年度代表馬イクイノックスの3着。そこから当初は予定になかった有馬記念の参戦が決定したが、木曜の枠順抽選会で与えられた枠順は何と過去30年間で2頭しか勝ち馬が出ていない大外の8枠。ルメール騎手をして「心臓が痛いです」と言わしめた厳しい条件だった。いつも以上にスタートに注目が集まったが、自身は抜群の好発を決めて先手を主張したタイトルホルダーの後ろの2番手のインにスッと収まった。この時点では自分の中ではもう満足と言っていいくらいだったが、逃げ馬からは離されてもいい手応えでリズム良く走って2週目の3角へ。だが、そこで鞍上の意思に反して内ラチに接触するような感じでピッチが上がらない。そうこうしているうちに外から後方にいた勝ち馬ドウデュースがいつの間にか並びかけて直線へ。スターズはルメール騎手が何とか立て直しながら追ったが、内にモタれてゴール前でタイトルホルダーこそ捕らえたものの僅かに及ばず2着に終わった。「最近は調教でも右回りでモタれる感じはなかったのですが、ラチ沿いを走った分、モタれたのかも知れません」と振り返ってくれた高柳瑞調教師。鞍上も含めて勝ち馬にばかり注目が集まってしまったが、昨年のベストレースと言ってもいいような有馬記念で堂々の2着だった。

 つい先日、年明けの目標がドバイシーマCであることが発表された。現実に招待されるかどうかは分からないが、昨年のことを思えば春に国内の適条件がないだけにいい選択ではないだろうか。繁殖入りすれば貴重なドゥラメンテの血を残すという役割もあるが、今年は昨年の雪辱を晴らすような活躍に期待したい。

美浦編集局 田村明宏


田村明宏 (厩舎取材担当)
昭和46年6月28日生 北海道出身 О型
今週はイクイノックス、ドウデュース、スターズオンアースと同期ながら出世が遅れていた土曜11Rに出走予定のダノンギャラクシーに注目したい。長期休養を挟みながら3連勝しているが、ここも通過点だろう。

本稿は2024年1月31日に「競馬ブックweb」「競馬ブックsmart」に掲載されたコラムです。下記URLからもご覧いただくことができます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?