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関川の関を越えるか火の国生まれ(坂井直樹)/週刊トレセン通信

 こんにちは、栗東の坂井です。

 今週の新潟2歳Sにケイテンアイジンの名がありました。ケイテンアイジンはひまわり賞勝ちの実績からもわかる通り九州産馬ですが、1986年以降、新潟2歳Sに九州産馬が出走した例はないようです。

 例年、この時期の2歳九州産馬は小倉に限定戦が組まれ、3週目に大目標であるひまわり賞が行われることもあり、小倉以外で走ることはめったにありません。ただ今年は7、8月の開催順が7月=小倉、8月=中京となった影響で九州産限定戦が1か月前倒しに。かくしてあまり前例のないローテーションとなりました。

 ところで九州産馬ってJRAの各競馬場でどのくらい勝ち星を挙げているのでしょう。関西圏ではもちろんそれなりに勝っているでしょうが、関東圏、特にローカル場ではどのくらい結果を出しているのでしょう。パッと思いつかないので調べてみました。期間は1986年以降先週まで。カッコ内の数字は(1着.2着.3着.4着.5着.6着以下)です。

◎九州産馬の競馬場別成績(1986年以降)
札幌(4.6.10.9.9.70)
函館(9.8.8.7.6.59)
福島(44.45.42.38.39.328)
新潟(27.36.25.40.36.287)
東京(10.10.5.14.19.217)
中山(19.20.22.26.28.362)
中京(39.36.53.59.80.758))
京都(56.78.64.90.77.1082)
阪神(50.52.78.82.86.1176)
小倉(264.276.288.296.326.3181)

 勝利を挙げていないコースはないようですが、福島での勝ち鞍が中京でのそれを上回っていたのにはちょっと驚きました。北海道では出走数そのものが少ないこともありますが、勝率1位は函館(9.3%)でした。出走数を考えると、福島での勝率8.2%(=2位)は特筆ものです。

 今回のケイテンアイジンは2歳馬ですから、2歳馬のみの成績も見てみましょう。

◎2歳九州産馬の競馬場別成績(1986年以降)
札幌(0.3.1.2.1.17)
函館(1.1.0.1.0.15)
福島(25.27.19.17.21.132)
新潟(7.14.11.21.16.96)
東京(1.0.1.3.1.53)
中山(8.11.11.9.8.114)
中京(9.11.14.15.26.198)
京都(23.16.19.26.21.269)
阪神(7.9.18.22.27.320)
小倉(187.190.193.203.207.2037)

 夏場は特に小倉中心のローテーションになるので、北海道では出走数自体が少なく、2歳馬は札幌で86年以降勝ち星なし。ここでもやはり福島の成績が目につきます。勝率は10.4%ですからなかなかの高水準。九州産馬は福島巧者かも?これは馬券作戦にも使えそうです。ちなみにケイテンアイジンは熊本産。熊本産の2歳に限った成績を出すと…

札幌(0.0.0.0.0.0.0)
函館(0.0.0.0.0.3.3)
福島(1.1.2.1.0.23.28)
新潟(0.1.1.3.0.18.23)
東京(0.0.1.2.1.18.22)
中山(0.0.1.2.1.19.23)
中京(0.0.1.2.3.17.23)
京都(2.1.0.3.2.37.45)
阪神(1.0.2.4.3.48.58)
小倉(27.20.18.26.24.357.472)

 中京以東では福島で1勝しているのみ。この1勝はルクシオンによる2020年の福島2歳S勝ちですから結構最近の出来事で、ちょっと潮流が変わっている感もあります。今回の舞台、新潟では熊本産馬は勝ち星なし。86年以前にある可能性もありますが、新しくなった今の新潟になってからは未勝利ということになります。ケイテンアイジンが熊本産馬初の新潟での勝利を挙げることができるのかどうか、週末の走りに注目しましょう。

◎参考:競馬場ごとの生産県別成績(1986年以降)

【札幌】
 鹿児島(3.6.10.9.6.60)
 熊本(0.0.0.0.1.1)
 宮崎(1.0.0.0.1.8)
 大分(0.0.0.0.1.1)

【函館】
 鹿児島(9.6.5.5.3.43)
 熊本(0.1.1.0.1.8)
 宮崎(0.1.2.2.2.7)
 大分(0.0.0.0.0.1)

【福島】
 鹿児島(30.32.24.25.28.207)
 熊本(6.3.7.6.2.66)
 宮崎(7.8.9.6.9.54)
 大分(1.2.2.1.0.1)

【新潟】
 鹿児島(19.23.14.23.24.166)
 熊本(4.5.2.8.3.64)
 宮崎(4.7.9.9.9.55)
 大分(0.1.0.0.0.2.3)

【東京】
 鹿児島(7.6.3.8.9.100)
 熊本(3.3.1.3.8.79)
 宮崎(0.1.1.3.2.35)
 大分(0.0.0.0.0.3.3)

【中山】
 鹿児島(12.11.11.15.15.198)
 熊本(3.2.2.6.4.80)
 宮崎(3.7.9.5.9.82)
 大分(1.0.0.0.0.2.3)

【中京】
 鹿児島(30.30.42.44.67.586)
 熊本(2.1.5.5.4.75)
 宮崎(6.5.5.10.9.92)
 大分(1.0.1.0.0.5.7)

【京都】
 鹿児島(45.62.57.75.65.859)
 熊本(5.5.1.5.8.119)
 宮崎(5.11.6.9.4.101)
 大分(1.0.0.1.0.3.5)

【阪神】
 鹿児島(43.46.63.71.74.934)
 熊本(2.2.10.9.9.133)
 宮崎(5.4.4.2.3.109)
 大分(0.0.1.0.0.0.1)

【小倉】
 鹿児島(205.225.224.240.260.2315)
 熊本(32.22.25.31.32.485)
 宮崎(27.29.39.25.34.376)
 大分(0.0.0.0.0.5.5)

栗東編集局 坂井直樹


坂井直樹(調教・編集担当)
昭和56年10月31日生 福岡県出身 O型
 1986年以降の九州産馬全体の勝率は4.9%、連対率は10.3%。福島についてピックアップしましたが、実は新潟も勝率6.0%、連対率14.0%と平均を大きく超えるコースのひとつです。ただ新潟ではダート>芝の傾向も。ケイテンアイジンにはこの点もはね返す走りを見せてもらいたいところです。

本稿は2024年8月21日に「競馬ブックweb」「競馬ブックsmart」に掲載されたコラムです。下記URLからもご覧いただくことができます。

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