熱いぞ、関東馬!(赤塚俊彦)/週刊トレセン通信
先日、中京で行われたチャンピオンズCはレモンポップが優勝。2着にはウィルソンテソーロが入り、3頭しかいなかった関東馬のうちの2頭での決着となった。ダートのGⅠで関東馬のワンツーはあまり印象がなかったので調べたところ、中央のダートGⅠ(フェブラリーS、JCダート→チャンピオンズC)で関東馬が1、2着したのは小島太厩舎のイーグルカフェが1着、大久保洋吉厩舎のリージェントブラフが2着した2002年のJCダート以来2度目。実に21年ぶりの快挙だった。
またその後に行われた阪神ジュベナイルフィリーズはアスコリピチェーノ、ステレンボッシュ、コラソンビートと関東馬がワンツースリー。阪神3歳牝馬ステークス時代を含め、ワンツーこそ何度かあったものの、上位3頭を関東馬が独占するのはレース史上初めてのこととなった。
今年も残すところあと僅かだが、思い返せば2023年は関東馬の活躍が目立った1年だった。3歳の牝馬路線は関西馬のリバティアイランドが三冠を達成したが、牡馬クラシック三冠である皐月賞、日本ダービー、菊花賞はすべて関東馬が勝利。ダービーと菊花賞は3着までを独占した。特に菊花賞に関してはこれで2021年のタイトルホルダーから3連勝。2001年のマンハッタンカフェから2018年のフィエールマンまで16連敗と関東馬不遇のレースだったことを考えると隔世の感がある。
牡馬三冠すべてを関東馬が勝つのはサクラスターオーが二冠を達成し、メリーナイスがダービーを勝った1987年以来。3勝すべてが別の馬だったとなればトウショウボーイ(皐月賞)、クライムカイザー(日本ダービー)、グリーングラス(菊花賞)で決まった1976年まで遡る。47年も前のことだ(ちなみに関西馬3頭が三冠を分け合った最も新しい記録はサートゥルナーリア、ロジャーバローズ、ワールドプレミアで決まった2019年である)
いい馬に関東も関西もないが、やはり美浦で仕事をしている身としては関東馬が活躍し、トレセンが活気づくのは嬉しい限り。馬場を見ても以前よりGⅠ勝ち馬ゼッケンやGⅠ調教ゼッケンを身に着けている馬が多くなったように思う(GⅠを勝つと勝った数だけ星マークが入る特殊調教ゼッケンを着用。またGⅠに特別登録を行うとレースまでの間はそのGⅠ用のゼッケンを着けて調教を行う)長らく負け越していた、良くて引き分けていた中央のGⅠ勝利数も、今年は既に13勝とリードして終盤を迎えている。今年はまだ決まっていないものの、3年連続して輩出している年度代表馬に関しても、4年連続となる可能性は極めて高い。2003年から2012年の10年間で関東馬2頭、関西馬8頭だった年度代表馬だが、2013年から2022年のこの10年間では関東馬5頭、関西馬5頭と盛り返している。
勿論、その背景には大手牧場の存在もあるが、美浦トレセン自体も成績向上に向けて多くの努力をしてきた。負荷を強めるべく2019年の改修によりWコースを外側に移動、左回りでの調教も可能になった。また今年は坂路コースの改修も行われた。厩舎の建て替え作業も順次行われており、ウォーキングマシンを導入する陣営も増えている。全体の勝ち数こそまだ開きはあるが、こと大レースに関しては確実にその効果が出てきていると言えるだろう。
時代は常に移り変わる。関東馬優勢の時代から関西馬優勢の時代へ。近年、また関東馬が盛り返してきたが、そうなればまた関西馬が力をつけてくるであろう。そうやってお互いが追いつけ追い越せと切磋琢磨して日本競馬全体のレベルアップにつながっていってほしい。
本稿は2023年12月20日に「競馬ブックweb」「競馬ブックsmart」に掲載されたコラムです。下記URLからもご覧いただくことができます。