取り戻せた自由(田村明宏)/週刊トレセン通信
ウイルスが完全に消滅した訳ではないので油断してはいけないのだろうが、3月のマスク規制の緩和に続いて5月には感染症5類への変更に伴ってようやく新型コロナに関する規制がほとんどなくなった。意味があったのかどうか分からないアクリル板も撤去された。早いもので3年強の取り組みだった。あの頃はすぐに日常が戻ると思っていた。夏になれば、秋になれば、1年も経てばと楽観的に考えていたが、今から振り返ると2年目の夏あたりが一番、脅威を感じた時期だった。賛否両論あった東京五輪開催。ワクチン接種も始まり出したが、身近な人にも感染者が出て実態のない不安に怯えていた。昨年ぐらいからはもう規制に慣れてしまって不自由な日常が当たり前になっていた。私自身に関して言えばこの期間も毎週、トレセンと競馬場に通う過ごし方は変わらなかったが、こんな生活パターンだった人は稀で恵まれていたのだろう。
今年のゴールデンウイーク明けからは久々に見る人や初めての出会いも増えた。自分勝手な都合で言えば少々、手間や時間がかかったりして煩わしい面もあるが、これがもともとの日常だったのだ。5週連続の東京G1シリーズでは川田騎手からの異例のお願いがあったオークスのゲートが開くまでの一瞬の静寂には日本人のマナーの良さに感心したし、ダービーの大接戦もやはりライブ観戦ができてこその盛り上がりだ。残念ながら結果が出なかったが、ソダシの安田記念参戦によって入場者は前年比199%と大幅に増加し久々に多くのファンでごった返しという感じだった。当日は毎日放送のパドックブースにいたが、ファン層も変わったという印象を受けた。昨今のウマ娘ブームの影響もあるのか若いファンが増えた。我々世代も重要だが、今後を考えれば若い人達に楽しんでもらうのは重要だ。
以前に比べれば無制限に大勢のひとが集まったり、騒いだりする機会は減ったし、テレワークが浸透して効率的になった面もある。競馬場では言えばオープニングテーマとともに開門ダッシュで駆け出すという場面は見なくなったが、それぞれの人が思い思いに自分なりの楽しみ方をしているように感じる。特に強い命令や指導がなくても節度を守って楽しめるような自由がこのまま守られるならここまで続いた我慢も無意味でなかったのかもしれない。梅雨が明ける頃には自分もマスクなしで外の空気を目一杯吸って、各地に移動することになりそうだ。
美浦編集局 田村明宏
田村明宏(厩舎取材担当)
昭和46年6月28日生 北海道出身 О型
今週の注目馬は東京土曜5Rでデビュー予定のルージュスエルテ。いつもサービス精神旺盛な中村助手が「牝馬だけど、ダービーの事前登録をするように先生にお願いしました」と期待のほどを語ってくれた。レース後にはノーマスクでの明るい笑顔が見られるか。
本稿は2023年6月21日に「競馬ブックweb」「競馬ブックsmart」に掲載されたコラムです。下記URLからもご覧いただくことができます。
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