競馬の真実、競走馬の真実、勝つための馬券戦略【一部無料公開、5.7万字】
はじめに
本ブログをご愛顧いただき、誠にありがとうございます。コラム『競馬の真実、競走馬の真実、勝つための馬券戦略』に関するご報告になります。
【完成版】の公開に向けて執筆中ですが、実際の競馬を例に挙げることを強く意識していたところ、毎週末の競馬が消化されるごとに書きたいものが追加され、区切りをつけるのが難しいという状況になっております。
そこで、22年の有馬記念を前にしたこのタイミングで、一部を無料で公開することにしました。公開するのは、【競走馬の話】の章の「3.競走馬が全力疾走できる距離は短い」、「4.強い馬ってどんな馬?」、「5.出遅れた原因を正しくつかむ必要性」、「6.岡田一族が日本の競馬を変える」になります。
なお、【競走馬の話】の項目1、項目2、【予想に必要なサイト&ツール、的中に近づく方法】の項目1、項目2、項目3については、【一部先行版】(200円)としてすでに公開しております。【一部先行版】の無料部分には、コラム全体の流れや伝えたいことを書いています。下のリンクから飛ぶことができますので、ぜひお読みください。
【一部先行版】(200円)⇒https://note.com/keiba_yoso/n/nf1f87750c0f0
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一部の公開になりますが、約5万7,000字のボリュームになっております(「note」での自動計算、リンクURLの文字等を含む)。
なお、単行本を完成させるようにコンセプトから立ち上げ、順序立てて作っているコラムではありません。急に思いついたことで、しかし、関連があることを書き、しばらくして戻ったりします。追加原稿を差し込んでいるケースも多いです。
「みなさまに届けたい」という気持ちを大事にした結果ととらえていただけるとありがたいです。伝える必要があると思うこと、読んでおもしろいと思うことを書きたいように書きました。「脱線ありき」という割り切った進め方になっています。話があちこちに飛んで読みづらくなっていますが、この点はご容赦いただけたらと思います。
【完成版】の前の段階になるため、この無料公開の部分は告知なしで修正、追記を行います。いいことではないのですが、こちらもご理解いただけますと幸いです。
【完成版】の公開時期に関しては「未定」とさせていただきます。多くの部分はできているのですが、通常の競馬予想を最重要とし、時間がある時にコラムを書き進めていきます。
この無料コラムをお読みいただき、タメになったと思うところがございましたら、ツイッター(ユーザー名:@y_ohyauchi)のコラム紹介の固定ツイートを「リツイート&いいね」していただけますとうれしく思います。フォローもお待ちしています。
これからも大谷内泰久と本ブログをよろしくお願いいたします。
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【目次】(仮)
競走馬の話
1.競走馬の肉体的な弱さ
2.競走馬の気性面の脆さ
3.競走馬が全力疾走できる距離は短い
4.強い馬ってどんな馬?
5.出遅れた原因を正しくつかむ必要性
6.岡田一族が日本の競馬を変える
調教の話
1.調教欄には馬券に直結する情報が満載
2.急速に進歩した仕上げの技術
3.外厩の発達と馬の入れ替え
騎手の話
1.国際的に評価が低い日本の騎手
2.下手でもデビューできるシステム
3.騎手って素行が悪くない?
4.レベルの高い若手の登場
5.注目すべき騎手、乗れない騎手
調教師の話
1.馬を育てるプロではあるが…
2.デキや作戦に関するコメントは本当か?
3.昔は調教師が実名で予想を出していた
4.調教師は馬主、騎手となぜケンカする?
JRAの話
1.売り得金3兆円の意味
2.もみ消されるスキャンダル
3.射幸心を煽る方向に転換
4.降級制度廃止、出走間隔規定の改悪
展開の話~なぜ競馬は荒れるのか~
1.すべてを飲み込む“展開”の恐ろしさ
2.枠順と並びの重要性
3.コース別の傾向、変化する馬場の読み方
4.“脚質”や“逃げ馬”という言葉の違和感
5.知識が増えると難しくなるのが競馬予想
6.荒れて当然だから有効になる馬券戦略
衝撃の暴露話
1.武豊の取材拒否事件の真相
2.競馬ブックの謝罪事件とは?
3.〇○騎手の人気馬飛ばし事件
4.反社会勢力とのつながりはある?
5.競馬に八百長はあるのか…
5.競馬史に残る事件をいくつか
競馬新聞とスポーツ紙の役割の変化
1.かつては競馬新聞が人気を作っていた
2.打てる印の数の限界
3.人気になると好走する確率が下がる??
4.競馬新聞の縦組み、横組み問題
5.競馬新聞、スポーツ新聞のどれがいいの?
予想に必要なサイト&ツール、的中に近づく方法
1.出走馬のすべてを知るツールはある?
2.過去のレース映像、調教VTRの視聴はどこで?
3.ネットやコンビニで買える競馬新聞、スポーツ紙
4.血統を勉強するには
5.馬体、パドック、返し馬について
6.“データ”はどう扱うべきか?
7.馬主、一口馬主になりたい方へ
8.馬券につながる必須の勉強方法
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競走馬の話
3.全力疾走できる距離は?
人間の安静時の心拍数は60~80ぐらい。持久力を要する運動を続けているマラソンランナーは、50とか40という数字になる。これは心臓が鍛えられた結果として起こる肥大化であり、「スポーツ心臓」と言われる。
普通の人間が激しい運動をした時、心拍数は120~160に上がるというのが私が持っていたイメージ。調べてみると「最大心拍数」というものがあり、【220-年齢】という計算式で算出されるようだ。
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『心拍数の活用法』(コニカミノルタ陸上競技部)
https://www.konicaminolta.com/jp-ja/athlete/running/sports_safety/004.html
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サラブレッドの場合、平常時の心拍数は35~40程度。名馬になると、数字は下がって20台の後半とか、さらに下がって22とかになったりする。前出のキタサンブラックにセクレタリアト、他ではテイエムオペラオー、タニノギムレット、ディープインパクトなどが心拍数が低かった名馬だ。ちなみに、キタサンブラック、セクレタリアト、テイエムオペラオーは、心臓が大きかったことでも有名である。
そして、調教中やレース中に速いスピードで走ると、心拍数は一気に跳ね上がって220~240という数字になる。平常時は人間より小さい数字で、速く走ると人間より大きい数字になるわけだ。
平常時と運動時を単純に倍数比較した場合、人間が2~3倍なのに対し、サラブレッドは6~8倍にもなる。この上がり幅は半端でない。競走中に心臓にかかる負担が特に大きいということだろう。
私は獣医学者ではないので想像でしかないが、競走馬が心房細動(不整脈)を起こしやすいのは、心拍の上下動が激しいことが原因なのではと勝手に思っている。なお、心房細動は一過性のもので、治療を行うことなく治癒することがほとんどだという。
ちと話はそれるが、心房細動を発症して4秒も5秒も負ける、あるいは競走中止になった馬が次にレースを走って、何事もなかったように好走することがある。「ことがある」というか、「少なくない」という印象だ。
でも、感冒などが原因で熱が上がって休んだ熱発明けの場合、凡走するケースが多い。しっかりと乗り込み、時計を出し、動きが良かったとしてもである。
どうして心房細動と熱発とで差が出るのか? これは競馬サークル内でもよく言われていて、七不思議的なものになっている。熱発の場合は血液が通常とは違う状態になるわけで、その影響が残るからだと考えている人もいる。が、解明はできていないようだ。
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『心臓の強さが名馬の条件!JRA羽田獣医に聞く』(サンスポZBAT!、2018年7月3日)
http://race.sanspo.com/keiba/news/20180703/etc18070305050001-n1.html
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【推奨検索ワード:心房細動 JRA競走馬総合研究所 平賀敦】
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心臓への負担が大きい分、トップスピードで走り続けることは難しくなる。また、人間と一緒で全力疾走する時は息を止めたような状態になるので、それを持続させることでも限界が出てくる。
あと、息が残っていたとしても、筋肉の持久力など体に無理がくればハイスピードは維持できない。特にアクションが大きな馬など、派手に見えて一気に伸びるのだが、早めに脚が鈍ったりする。大きな動きをしているのだから、消耗が早くなるのは当然のことだ。
例えば、「走りがダイナミック」という表現は私も普通に使う。ただ、該当するのは、体がまとまっていて推進力と持久力がある走りだった場合だけ。無駄のある粗い体の使い方だったら、ダイナミックという言葉は使用しない。スピードが落ちたとして単純にスタミナが切れたのかもしれないし、同じ失速でも原因はさまざまだ。
記者の記事や厩舎のコメントに「長く脚を使うタイプ」と書かれているのをよく見る。これも私も使ってはいるが、感覚的であいまいな表現だ。実際は「競走馬は長く脚を使えない」というのが正解で、本当に長く脚を使っていたら、その馬は単純に真面目に走っていない。
競走馬が全力疾走できる距離は、何となくのイメージで300mぐらいだろう。これは伝え聞いた話だが、大井競馬で騎手としても調教師としても活躍した赤間清松氏(故人)は、「オレが本気で追ったら、馬は50mしか伸びない」と話していたそうだ。これは要するに「強く追って最高レベルまでスピードを引き出すことができる」という自慢である。
最近は馬場が速すぎることがあって以前とは違っていたりするのだが、でもやはり2ハロン続けて速いラップを刻むのは難しい。2ハロン続けて速いラップを作れたとして、次の1ハロンはもう伸びなくなる。
新潟競馬場の直線競馬(芝1000m)などは顕著。もちろんレースによって大きく違ってくるが、ラストから2ハロン目が10秒8で、ラストが12秒1という感じでラップが急落するケースが多い。競走馬が全力疾走できる距離というのは、意外と短いのである。
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ここから重要な話に入る。
結論から言おう。「競馬という競技は、人間の競技に当てはめると、すべてが中距離戦である」-。
これは私個人がそう考えているという話ではない。JRAの付属機関である「JRA競走馬総合研究所」がみちびき出した結論だ。
ここでは下記の書籍の内容を引用する形で紹介したい。なお、書籍はJRA競走馬総合研究所の研究結果が書かれたもの。競馬を勉強したい方にとっては必読の書と思う。
ただ、2006年の発行で古いものではある。当時とは競走馬も競馬も違っているから、そのことを頭に置いておいた方がいいだろう。ベースは変わらないと思うが。古い分で手に入りづらかったりしたが、今は電子書籍で購入できる。
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『競走馬の科学 速い馬とはこういう馬だ』(JRA競走馬総合研究所、2006年4月21日発刊)
電子書籍⇒https://ebookjapan.yahoo.co.jp/books/339097/
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紹介したいのは以下の部分になる。
「競走馬の1000~3600メートルという距離は、競技としてはないが人間の500~1500m走に相当する。つまり、競走馬は陸上競技でもっとも過酷といわれる中距離を走っていることになる」-。
これを読んで、「本当なのか?」と驚いた方が多いのではないかと思う。人間の競技に当てはめてカテゴライズすると、【スプリンターズS(芝1200m)=中距離戦】、【ステイヤーズS(芝3600m)=中距離】になるというのだから…。
でも、よくよく考えると、別におかしなことではない。上に書いたように競走馬が全力疾走できる距離は長くはなく、1000m戦、1200m戦をひと息で走り切ることはできない。競走馬のように鍛えている者であることを前提として、人間の競技の100m走と性質が違うのは明らかだ。
「短距離の差し、長距離の逃げ」という格言がある。1400m戦やマイル戦より、2400mの競馬の方がラスト1ハロン数字が速くなったりする。例えば小倉のダ1000mで砂がタフな状態の時など、追い込みがバンバン決まる。何度も言うようになるが、競馬においてスピードだけで勝負するレースは存在しないのである。
「だから短距離戦と長距離戦(長丁場)という言葉は使うべきではない」とか、そういうことではない。あくまで“競馬におけるカテゴリー”として区分けされているものであり、問題があるわけではないから私も普通に使っている。ただ、競技の性質からズレているのは確か。誤った印象を与えてしまうので、一般的になっている「電撃の6ハロン」とか「マラソンレース」とかの極端な表現は避けるようにしている。
ちなみに、人間の競技のマラソンは42.195kmで、100m走の420倍以上になる。対して競馬の3600m戦は1000m戦の3.6倍…。そもそもが比較してどうこう言う問題ではない。
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ゴール前でスピードが鈍ったとして、「バテてしまったんだな」と決めつけるのはNG行為である。これを理解するには“ゴールしたあとの姿”を見るのがいい。これは、その馬が全力を出し切ったのか、まだ隠し持っているものがあるのかを確認する作業。クラスが上がって通用するかを図るために必要で、もっと先でどの程度まで行ける器なのかを読む材料にもなる。
2021年で例を探すと、まず、日本ダービー(勝ち馬シャフリヤール)のタイトルホルダーが思い浮かぶ。好位のインをなだめつつの手応えで進み、直線で少し外に出して早めに先頭に立つという競馬。しかし、切れ味不足だったのと早く脚を使った分でジリ貧になってしまった。結果は6着だった。
驚いたのはゴールしたあとである。レースが終わって息を止めたような状態から解放されると(要するに息を吐くと)、またスーッと脚を使ったのである。1コーナーに来た時には先頭に出ていた。
ここで詳しい血統解説はしないが、タイトルホルダーはスタミナと底力に富んだ母系。直線で後退したといえ、タンクに息は残っていて、スタミナが切れたわけではなかった。そして、秋になり、菊花賞で逃げを打って5馬身差で圧勝することになる。少し行きたがるところがあるので◎を打ち切れなかったのだが、ダービーの「ゴールしたあとの姿」を思い出して狙うべきだったと反省している。彼のその後の成長は書くまでもないだろう。
次の例は21年10月17日のオクトーバーステークス(東京芝2000m)。パンサラッサがハナを切り、大逃げの形になって稍重の中で1000mを59秒3で通過する。後半は早めにペースを上げ、1600mからの2ハロンが11秒4-11秒8になった。残り200mでも大きなリードがあったが、徐々に脚勢が鈍り、外から伸びてきたプレシャスブルーが迫ってくる。交わされそうになったところ、アタマだけ残って逃げ込んだ。
ラスト1ハロンのラップは12秒7。見た目に少し息が厳しい感じで脚も上がらなくなっていたが、ゴールを過ぎるとスッと脚を使い、交わされそうになったプレシャスブルーを含めた後ろの各馬を離していった。これもタイトルホルダーのダービーと同様にスタミナが切れたわけではなかった。
次走は福島記念。逃げて1000m通過が57秒3というハイラップを刻み、4馬身差で押し切る圧巻のパフォーマンスを演じる。オクトーバーSのゴールしたあとの姿からすれば、想像できない走りではなかった。
そして、パンサラッサは翌22年の春にドバイに遠征し、ドバイターフ(国際GI)を逃げ粘って同着の1着で制覇する。世界に通用するスピードとスタミナがあることを示した。同年の秋には天皇賞(秋)で大逃げを打って2着に粘る奮闘を見せている。
あと、絶対に見ておくべきなのがオアシスステークス(21年4月24日)のヘリオス(3着)と、室町ステークス(20年10月24日)のリュウノユキナ(2着)である。特に室町Sにおけるリュウノユキナがレッドルゼルに差されあと、いったいどんな動きを見せたのか…。とにかく衝撃的なので、ぜひ映像で確認してもらいたい。ただ、リュウノユキナの場合、全力疾走できる距離の問題もあっただろうが、先頭に出てソラをつかった分もあったのは間違いない。
この2つを見て、競馬に対する見方が変わる人がいると思う。ヘリオスもリュウノユキナもそのあとにしっかりと活躍し、しっかりと馬券になっている。
タイセイアベニールのキーンランドカップ(21年8月29日)、リアアメリアの阪神牝馬ステークス(21年4月10日)も見ておきたいレースとして挙げておく。どちらもゴールしたあとの動きが異常。気持ち的にスイッチが入らず、レースが終わったあとで急に本気で走り出したように感じられた。本来は「2.競走馬の気性面の脆さ」に入れるべきものかもしれない。
レース後の姿を確認するには、パトロールフィルムを見るのがベスト。ご存じのように、レース映像もパトロールフィルムもJRAのホームページで無料でストリーミング再生することができる。
ただ、パトロールフィルムは早めに切られることがあり、通常のレース映像の方がわかりやすい場合もある。先に挙げたヘリオスのオアシスSは、通常の映像でないと把握できない。また、リアアメリアの阪神牝馬Sは、JRAのパトロールフィルムではスゴさが伝わらず、『JRAレーシングビュアー』(月額550円(税込))のパトロールフィルムで確認する必要がある。
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『JRAレーシングビュアー』(中央競馬ピーアール・センター)
https://prc.jp/jraracingviewer/
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事例は多くあり、時が経てばどんどん増えていく。
22年の秋だと、秋華賞のストーリア(8着)は印象的だった。舞台は阪神の内回り芝2000m、手綱を取っていたのは松山弘平。出脚が良くて流れに乗っていったが、1コーナー前で前に入られ、囲まれるとイヤって少しバカついてしまう。少し下がって1コーナーで挟まれる形になり、ズルッと後退してしまった。
道中は後方寄りの馬群の中、軽く抱える感じで行きっぷりは良かった。後半のコーナーに入ると、前が動かず、周りが動かず、ストーリア自身も動けない。直線に向いてからは前が壁になり、松山は手を動かしつつ外へと誘導する。残り200mを過ぎてやっと完全に前がひらけたが、そこから内にモタれてしまい、ジリジリとしか脚を使えなかった。
この秋華賞が終わったあと、「ストーリアは運がなかった。1コーナーの不利が痛かったし、後半もスムーズに捌けなかった」と思った。しかし、これは正解でもあり、不正解でもあった。確かにストーリアはスムーズな競馬ができずに力を出し切れなかった。でも、運が悪いところがあって、そこに気性の問題が重なっていた。
ゴール板を過ぎたあとのストーリアがどうだったかを見てみよう。私が確認した限りでは、『JRAレーシングビュアー』のパトロールフィルムがもっともわかりやすい。
ゴールの瞬間は内と外の2頭と同じ感じのスピード。が、1コーナーに来ると、前向きさを見せてスッと脚を使う。3着のナミュールを内から抜き、勝ったスタニングローズ、2着のスターズオンアースに迫るところまで上がっていた。なお、ナミュールは横山武史が強めに抑えてスピードを落としていた。
ストーリアは次走で3勝クラスを走った。12月4日で中6週。秋華賞で走り切らなかったから、使うことができたのだろう。攻めをしっかりとやっていた。結果はドーブネ(千葉サラブレッドセール2歳で5億1711万円(税込)で売却、落札者は“ウマ娘”の藤田晋氏)の2着だった。さらなる飛躍が期待される。
あと、細かい説明は省くが、22年の皐月賞におけるマテンロウレオ(12着)の走りを見てもらいたい。道中を見て、直線を見て、ゴール板を過ぎて少ししてから…。なかなかインパクトがあり、考えさせられると思う。
こういったものをマメにチェックして見つけておくと、次のレース、もしくはその先にいい馬券を狙い撃って獲ることができるようになる。
なお、もちろん秋華賞のナミュールのようにゴールしてからジョッキーがサインを出して減速させることがある。どう抑えたかという程度の問題もあるが、この場合は脚が残っていたかの判断はしづらくなるので注意したい。
あと、ゴールする前にジョッキーが手を動かしていなかったとして、それで馬に余裕があったことにはならない。というのも、スタミナの問題、筋肉の持久力の面の問題などからほとんど余力はなくなっていて、1着が確定したところでヤネが手綱を緩めるケースがあるからだ。
こんな場合にスポーツ紙などに「最後は流して楽勝!」と書かれたりする。そうなると、その馬は次走で過大評価されることになる。引っ張られずに冷静に判断を下したいところだ。過剰人気になるのであれば、それは間違いなく好機。攻め方はいろいろと考えられるが、うまいことやっていい馬券につなげたい。
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「ゴールしたあと」、「ゴールしたあと」としつこく書いているが、ゴールに到達する前の姿も重要である。まあ、それを言い出したら、「まるまる1周+ゴールしたあと」のすべてを見ないといけないのだが…。
「後方から差し切りそうな勢いで伸びてきて、あと2完歩あれば交わせた」といったケースでも、最後は鈍っていて、いっぱいいっぱいになる寸前だったりする。そんな状況だったら、10m先には交わすかもしれないが、50m進んだら差せずに逆に離されてしまうだろう。
ジョッキーの役割からすると、「最後にギリギリでゴールする」というのは悪いことでない。いわゆる「脚を使い切る」というもので、これはジョッキーの“仕事”である。騎乗馬が持っているスタミナ、全力疾走できる距離の両方を意識し、ゴールする瞬間や直前でちょうど苦しくなるというのが理想。早くバテてしまっても良くないし、脚を余すのも良くない。
ただ、これはあくまで理想…。成し遂げるのが難しいのは、この項で書いてきたことからわかるだろう。スタミナや筋肉の持久力だけでなく、気性も大きく影響してくる。
大きい視点で、スタンドから競馬を見ているとわかることがある。逃げ切ったり、差し切ったりと、いろいろなパターンの決着があるのは当然のこと。安易にまとめてしまうのも良くないのだが、直線の攻防で先行している馬たちに後ろから来た馬が迫るというのが一般的ではある。
その場合でも、差している馬がゴールに近くなって勢いが鈍り、結局は走っている馬たちみんながほぼ同じようなスピードでゴールすることがある。そのまましばらく走っても、もう順番は変わったりしない。こんな光景になった場合、ジョッキーたちがうまく脚を使い切ることができたと言えるのではないかと思う。
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調教師や調教助手のコメントで、「この馬は使える脚が短いからね」というものをよく見かける。わかりやすい例として、ダート1200mを主戦場にしているゴッドバンブルビーの名前を挙げたい。
同馬が在籍しているのは、22年10月の時点で3勝クラス。1勝クラス(旧500万下を含む)以上でのダ1200mの着順を並べると、1着、5着、7着、4着、2着、6着、2着、10着、2着、1着、5着、2着、6着、6着、5着、14着、4着、4着となる。
じっくりと脚をタメ、直線で追い込んでくるというスタイル。脚抜きの良いダートの中で34秒6の上がりを使ったことがあり、34秒台が4回、35秒台が11回となっている。36秒0が2回、36秒1が1回あって、これで先に挙げたダ1200mのすべてだ。メンバー中で最速の上がりだったケースは、18走中で10回にのぼる。
「34秒6、最も遅いもので36秒1、上がり最速が10回…。なのに使える脚が短いの?」という疑問がわいて当然である。でも、同馬を知っている人、同馬の馬券を買ったことがある人からすれば、ストレートに納得がいくと思う。
直線は外を攻めることが多いが、グッといい勢いで伸びてくる。しかし、最後の100mとか50mで何か急というのに近い感じで脚が上がらなくなって鈍ってしまうのである。陣営もジョッキーもそのことはわかっているわけで、最後まで脚を使えるようにタメるだけタメたりして工夫している。詰まるのを覚悟で内を捌いたりもしてくるが、どうやっても最後で甘くなってしまう。
「それなら、もっと仕掛けて早く動けばいいのでは?」と思う方もいるだろうが、それをやると早く鈍ることになるし、パタッと止まる可能性だってある。
このゴッドバンブルビーのレースをいくつか映像で確認していただきたい。「全力疾走できる距離」に関し、理解できるところが出てくると思う。
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結局のところ、長く脚を使うことだけを考えるなら、100%の走りはしない方がいい。肉体的にはグワッと全力で体を動かせば早く疲れてしまうし、息の面ではがむしゃらに走れば息が続かなくなってしまう。
先に紹介した書籍『競走馬の科学~速い馬とはこういう馬だ~』には、「理想的なペース配分」に関する解説がある。エネルギー消費の側面からいろいろと検証していて、非常に勉強になる。
4.強い馬ってどんな馬? 強い弱いは持久力の差
前の項と似た話、そこから発展した話になる。
強い馬というのは、どんな馬なのか?
わかりやすくざっくりと言って、持久力がある馬である。肉体面でも精神面でもだ。
競馬の神様と言われた故大川慶次郎氏は、「バテない馬が一番強い」と、よくおっしゃっていた。実際にバテない馬はいなくて、「持久力がある馬が強い」と言っているととらえていい。
大川氏が予想界で活躍していた昭和の時代は、芝は今みたいに生えそろってキレイな状態ではなかった。底力が要求されるタフな競馬になることが多く、そんな中で渋太く脚を使う馬、派手に離さなくても接戦で1着をつかみ取る馬が強かった。
そんな馬の昭和後期の代表がシンボリルドルフ。平成に入ってメジロマックイーン、テイエムオペラオー、ダイワスカーレットが現れる。他にもそんな存在はいるが、「何で○○を出さないのか?」となるから、これぐらいにしておきたい。
近年ではキタサンブラックの名前を出すとわかりやすく、令和の時代にタイトルホルダーが出現した。タイトルホルダーは離して勝つケースがあるが、“スタミナと持久力の塊”といった印象である。
近年はJRAの馬場造園課の技術レベルが上がり、高速馬場になることが増えた。それでも冬場とか開催が進んだりすれば、パワーとスタミナが試される状態になる。
速い馬場の場合でもクラスが上がればレースが流れて持久力が必要な競馬になる。例えば21年の有馬記念は、勝者がエフフォーリアで、レースの上がりが36秒7だった。同じ日に同じ舞台で2勝クラスの戦いがあり、こちらは上がりが36秒2。有馬記念より数字が速かった。GIのラスト1ハロンが、その日の未勝利戦とか新馬戦より遅くなるのはめずらしいことではない。
「スローだった2歳の新馬戦で、33秒5の上がり使って差し切った馬がいる。次に重賞を使って人気になる。そして、簡単に凡走する」-。こんなケースを多く見てきたと思う。重賞に限らず、オープンや1勝クラスでもよくあって、秋の2歳戦の恒例行事のようになっている。
ただ、上のような新馬戦の勝ち方をして、次走で重賞を軽く獲る逸材もいる。そのあたりは、走りがしっかりしているか、体は強いか、気性は危なくないか、調教で負荷をかけられているか、あと、血統とか厩舎のコメントなども見て、どれだけのレベルにあるのかを読むしかない。
スローの中で速い上がりで伸びたとしても、ペースが速くなって同じように脚を使えるかはわからない。そもそも、「スローなのにポジションが後ろだった」というのがいいこととは言えない。トモが入らずにゲートをきちんと出られていなかったりしたらなおさらである。
また、折り合いがついていたとしたら、「スローの競馬で折り合った」というのは闘争心の観点からして褒められるものではない。
競走馬は生き物である。だから当然のことで、スローの競馬よりハイペースの競馬の方が伸びるという馬は存在しない。もちろん、デキが同じ、折り合いがついているなど条件を合わせた場合の話である。道中を速いペースで走り、直線でも速いラップでビュンビュンと走ったら、それはもう生命体でない。
よく、「クラスが上がって時計を詰められるか?」というコメントを見かけるが、「全体の時計を短縮」というのでなく、「クラス上がって速いペースについていき、それで後半で脚を使えるか?」と、とらえるのが正しい。
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サラブレッドのセリの種類に「トレーニングセール」というものがある。上場馬をコースで走らせ、そのあとでセリを行うという売買方式だ。
「参考になるものを…」と思って探してみると、日高軽種馬農業協同組合(HBA)のホームページに2022年の5月に札幌競馬場で開催された2歳トレーニングセールの情報が掲載されていた。
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『2022年 トレーニングセール』(HBA日高軽種馬農業協同組合)
https://wmp512t973.user-space.cdn.idcfcloud.net/sale_detail.php?sale_info_id=3a3967ffe584be68cea190b311d75675
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上記ページには参加者向けの情報が掲載されている。購買者登録の方法など一般ファンが普段は目にしないものがあり、読んでみるとおもしろい。ネットで売買に参加する「オンラインビッド」の説明もある。他に上場馬の血統表や測尺(体高、馬体重など)をリンクで飛んで調べることが可能だ。
「公開調教タイム一覧」(PDFファイル)を開くと、上場馬が記録したタイムを確認することができる。152頭が上場名簿にあり、欠場が3頭。走るのは札幌競馬場のダートコースで、砂厚は9.5cm、計時は2ハロンである。
2ハロンの最速は21秒9(11秒6-10秒8)をマークした「モアスマイル2020(牡)」だった。父はスマートファルコン、母の父がホワイトマズルで、2代母の仔にオークス馬スマイルトゥモローがいるという血統。この2歳馬は1,760万円(税込)で落札された。ちなみに売り手側の販売希望価格は800万円だった。
セールでの最高取引額は、「Distinguishable2020(牝)」の4,620万円(税込)だった。購買者は冠号が“シゲル”でおなじみの森中蕃氏。森中氏は同年の10月に残念ながら逝去されている。この牝馬はシゲルソロソロと命名され、7月にデビューして初戦は大差のしんがり負けだった。
セールの結果は『JBISサーチ』で確認していただきたい。上場馬の売却成績などが詳しく載っている。
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『2022 北海道トレーニングセールの公開調教タイム表』(HBA日高軽種馬農業協同組合)
PDFファイル⇒https://w2.hba.or.jp/upload/b5879136bea834b49948ba732487643b/91f93ac92a1666f22538fc04d8073cdd.pdf
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『トレーニングセール2歳の売却成績』(JBISサーチ)
https://www.jbis.or.jp/seri/2022/12B1/sale/
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何よりおもしろいのが実際にコースで走った姿を映像で確認できることだ。「JBISサーチ」には、トレーニングセールにおける公開調教や通常のセリの様子がアーカイブされたページがある。上記の北海道トレーニングセールについてもYouTubeチャンネルが紹介がされているので、上場馬が走っている姿をぜひ見てもらいたい。
そして、タイムをチェックし、その馬がいくらで落札されたのか、いったい誰が落としたのかを調べる…。こんな楽しい作業はなかなかない。
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『過去の市場取引中継アーカイブ』(JBISサーチ)
https://live.jbis.or.jp/archive/?_ga=2.34441185.1784430846.1634731320-141413063.1600861665
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『2022 北海道トレーニングセール、公開調教の映像』(YouTube、JBIS-Search×ふるさと案内所チャンネル)
https://www.youtube.com/watch?v=XrMW5SMjwz8&list=PLt0pEbJFnonWOZ9DnpN5mp01QeoCcS0LN
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2歳の上場馬は、骨格が固まる前で、小さくて細く、さらに筋肉がついておらずに頼りない。時期的に当たり前のことであって、上記のYouTubeチャンネルで映像を見てもわかる。
そんな2歳馬がダートで脚抜きが良い状態ではない中、1ハロンを10秒台で走ってくるわけだ。上の北海道トレーニングセールでは、1ハロンの最速が10秒7だった。
前年の2021北海道トレーニングセールでは事前の調教タイムが公表されていて、1ハロン計測で最速が10秒37となっている。また、アメリカのトレーニングセールにおいては、1ハロン9秒台を計時する馬を見かけたりする。
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『2021 北海道トレーニングセール 調教VTRタイム』(HBA日高軽種馬農業協同組合)
PDFファイル⇒https://w2.hba.or.jp/upload/cf0ffebaa192e71d0fe01b6926fe5967/94a961f39fcac6cf90f2e3a658e6086a.pdf
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実際の競馬、例えば芝のレースで早めに抜け出して勝った馬がいて、ラスト1ハロンが11秒1だったとする。するとスポーツ紙などメディアは「ラスト1ハロン11秒1の切れ味を披露!」と取り上げ、その馬は注目される存在になる。
2020年生まれのノッキングポイントは、22年の6月に東京の芝1600mの新馬戦を1分35秒3(良)でV。直線残り200mで先頭に並び、抜け出してラスト1ハロンを11秒1で駆けた。2着に3馬身の差をつける快勝だった。
そのあとで放牧に出され、次に走ったのが10月のサウジアラビアロイヤルカップ(GIII)。単勝140円という圧倒的な支持を受けたが、4着に終わっている。
ノッキングポイントはなぜ負けてしまったのか? これまでに書いてきた競走馬の肉体や精神の問題、前の項や本項の問題など、さまざまなものが絡んでくる。同馬に関しては、肉体面の問題が大きかった。そこが不安で、私の予想では△にとどめていた。詳しくは【展開の話】の章で書きたい。
22年の11月26日、阪神芝2000mで行われた京都2歳ステークス。単勝200円の1番人気に推されていたグランヴィノスが直線で弾け切れずに6着に敗れた。
グランヴィノスは父がキタサンブラックで母がハルーワスウィートという血統。元プロ野球選手でメジャーでも活躍した“大魔神”こと佐々木主浩氏の所有馬で、上にはヴィルシーナ(ヴィクトリアマイルを連覇)、シュヴァルグラン(ジャパンカップ)、ヴィブロス(秋華賞、ドバイターフ)がいる。上の3頭も大魔神の所有馬だ。
グランヴィノスは京都2歳ステークスと舞台が同じだった新馬戦を快勝している。レースは1000m通過が64秒0という異常なスローで、上がりが11秒8-11秒2-11秒2の34秒2。この流れの中を外から抜け出した。自身の上がりは33秒8、勝ち時計は2分03秒5(稍)だった。
そして、中間の攻めではレッドジェネシス(京都新聞杯)、ジュンライトボルト(のちにチャンピオンズカップを制覇)、ユーキャンスマイル(阪神大賞典、菊花賞3着)を煽る動きを見せていた。
注目されるのは当然で、ただ、新馬戦のペースが遅すぎたことが懸念材料だった。京都2歳Sは良馬場での戦い。グリューネグリーンが逃げて、1000m通過が60秒4。タテ長の展開で中団の外につけ、追走ぶりは悪くなかった。
しかし、4コーナーで跨っていた川田将雅が気合を乗せていった時、フットワークが伸びなくて反応が鈍い。舌がハミを越しているようにも見えた。そのまま失速しておかしくなかったが、直線でジリジリとではあるものの脚を使って0秒5差でゴールした。
馬体重は新馬戦の時が518キロで京都2歳Sが520キロ。巨漢馬に属する数字だが、京都2歳Sの時には細く、頼りなく映った。管理する友道康夫厩舎(栗東)はハードな稽古を課すことで有名だが、中間の攻めが強すぎた可能性はある。
ただ、新馬戦と流れが違ったのは大きいだろう。自身の1400m通過を比較すると、新馬戦が1分29秒7で、京都2歳Sは1分25秒3になる。馬場状態は違ったが、その差は4秒4という大きな数字だ。2度目の競馬で25馬身分以上も先を走っていたことになり、そこから脚を使うのが大変なのは説明するまでもない。
京都2歳Sの走破時計は2分01秒0。結果として新馬戦の時より2秒5も速く走っている。2戦目だったわけだし、内容が悪かったとするのは間違いだろう。少なくとも苦しい走りでも差を詰めてきた根性は評価できる。
この競馬でガタッとくる可能性があり、そこは気になるところだ。ただ、まだ時間はある。きょうだい馬は息の長い活躍を見せたし、うまく立て直してしてもらいたい。
なお、京都2歳Sは逃げたグリューネグリーンが押し切って勝利している。5番人気で単勝1,440円の同馬には◎を打っていた。グランヴィノスは新馬のペースが気になったので▲にとどめていた。
グランヴィノスが京都2歳Sを勝つポテンシャルを持ち、さらにデキが良かったとして、新馬戦で変な競馬に付き合ってしまったため、戸惑う危険性がある。これは私がよく使う表現なのだが、グランヴィノスにとっての京都2歳Sは新馬戦のようなものだったのである。
20年生まれの牝馬リバティアイランドは、22年の7月に新潟の芝1600m(外)の新馬戦を1分35秒8(良)でV。こちらは残り200mの前で先頭に立ち、ラスト10秒9で突き放した(3馬身)。レースの上がりが10秒9-10秒2-10秒9の32秒0と特別に速い数字で、自身は31秒4という驚異的な上がりをマークした。
リバティアイランドの次走は10月のアルテミスステークス(GIII)。先に挙げたノッキングポイントと同じく単勝140円という大人気を背負ったが、2着に敗れる。ただ、マークされる立場であり、直線で露骨に閉じ込められた。外に持ち出して差し込んだものの、クビだけ届かなかった。
次はGIの阪神ジュベナイルフィリーズ。レースはテンの3ハロンが33秒7と速いペースで流れたが、中団につけて前向きな追走ぶりで、直線で外からグッと伸びて突き抜けた。着差は2馬身半で、勝ち時計は1分33秒1(良)、自身の上がりは35秒5だった。
3戦の自身の1000m通過を見ると、64秒4、60秒6、57秒6となる。GIの舞台で経験したことのないペースにいきなり対応したわけだ。新馬戦とアルテミスSはゲートが開いてトモが入り切らない感じで頭が上がり、右にヨレていた。しかし、阪神ジュベナイルフィリーズではしっかりと出て流れに乗っている。
道中の行きっぷりと合わせ、肉体面で上乗せがあったのだろう。管理するのは中内田充正師(栗東)、主戦が川田将雅。2歳馬に強いこのコンビが大舞台に合わせて作ってきた。中間は坂路、芝コース、CWコースで負荷をかけ、動きも上々だった。
もともと体質に弱いところがあり、3戦目の馬体重は新馬戦の時より2キロ少ない464キロ(アルミテミスSは468キロ)。まだ体は緩い感じがあり、成長する余地が残っている。クラシックが楽しみだ。
ここで挙げたノッキングポイント、グランヴィノス、リバティアイランド…。スローの新馬を勝った馬の次走は楽しみでもあり、怖さもある。慎重に評価を下さないといけない。
リバティアイランドに関しては、極端な例とは思う。新馬戦で使った31秒4という上がりは、古馬のレースを含めてJRAの史上最速タイ。特別に走りやすい夏の新潟の開幕初日でのものではあったが、さすがに31秒4となると尋常でない。
リバティアイランドが勝った阪神ジュベナイルフィリーズで2着に入ったのは美浦のシンリョクカ。東京の芝1600mをスローの中で抜け出し、2戦目のGIだった。抽選を突破しての参戦。翌週の朝日杯フューチュリティSに登録していて、弾かれたらこちらに挑戦していたのだろう。
シンリョクカの新馬は11秒6-11秒0-11秒1の上がりを抜け出したもので、自身の上がりは33秒0。体つきは幼かったが、直線でギアを上げてから回転の速いフットワークでグッと伸びた。前と後ろに一体感があり、トモの蹴りも強い。ゴールしたあとは「まだまだ余裕がある」といった感じで、大きな可能性を予見させる勝ちっぷりだった。
阪神ジュベナイルフィリーズは2度目の実戦、一気の相手強化、初の関西圏への輸送など、厳しい条件がたくさんあった。それでも速い流れの中で脚をタメ、直線で末脚を繰り出した。新馬とはまるで流れに対応して結果を出したわけである。
翌週に行われた2歳王者決定戦の朝日杯フューチュリティS(阪神芝1600m(外))では、シンリョクカと同じく府中の芝1600mの新馬戦をスローの中で速い上がり(33秒1)を使って圧勝したレイベリングが2戦目ながら3着に入った。
レイベリングの初戦はシャドーロールを着けて少し頭が高くなるところがあったが、トップスピードに入ってからのフットワークは格別に力強かった。シンリョクカもそうだったように、緩さを見せながらの走りだったのと、体に芯が入った走りだったのとでは、上のクラスに行ってからの結果は確実に違ってくる。
なお、レイベリングは岡田一族であるビッグレッドファームの所有馬。岡田一族については次の項で詳しく説明している。予想コメントでは、レイベリングについて「やはり岡田一族のデアリングタクト的な強さを秘めている」と書いていた。
デアリングタクトは新馬勝ちで見せた直線の瞬発力、推進力が異様なほどの凄まじさだった。それなのに、2戦目のエルフィンS勝ち(4馬身差)は単勝が3番人気で480円。けっこう、いい馬券になっていた。そして、彼女は無敗のまま牝馬三冠を総獲りすることになる。デリングタクトに関しても次の項で詳細に書いている。
朝日杯フューチュリティSは1着がドルチェモアで、2着がダノンタッチダウンだった。上位3着に入ったジョッキーは、坂井瑠星、川田将雅、横山武史となる。
これまで予想コメントやツイッター等のSNSで書いてきたように、馬を伸ばすパワーと技術に関して、この3人がJRAのジョッキーでトップ3と思う。「個人的には…」という話ではあるが、異論を言われても何とも思わない。前時代の武豊や福永祐一と比べてレベルははるかに上で、今後の競馬界を引っ張っていくことになる。
古馬のレース、「速い上がり」というワードで思い浮かぶのがソーヴァリアントの3歳夏の利尻特別(1勝クラス)勝ちである。舞台は札幌の芝2000m。好位追走から4コーナーで楽な手応えのまま先頭に立ち、直線で突き放して圧勝した(6馬身差)。
勝ち時計は1分59秒8(良)。レースの1000m通過が62秒7というスローだったが、後半で一気にラップが速くなり、上がりは11秒3-10秒9-10秒9の33秒1だった。ソーヴァリアント自身の上がり3ハロンは33秒0になる。洋芝でラスト2ハロンがともに10秒台というのは、まあ見ないことがない。まったく驚異的だ。
ソーヴァリアントは体質が強くなく、走りにも緩いところがある。同年にチャレンジカップで重賞を勝ち、そのあとで右第3中足骨骨折して休養に入った。4歳秋の復帰戦(オールカマー)では心房細動を発症(13着)。しかし、立て直しに成功し、暮れにチャレンジカップ連覇を果たしている。
「しっかりしていないところがある」、「スローの競馬で勝った」となると、上に行ってからの心配が出てくるのだが、洋芝でラストに10秒台を連発したともなると、体さえ無事なら飛躍するのは約束されたようなものである。また、同馬はデビューしてしばらくはゲートをしっかりと出られず、パフォーマンスを上げるようになった段階ではダッシュがつくようになっていた。
ソーヴァリアントのことを書いていて、同じ社台ファームの生産馬で、社台レースホースと馬主も同じプログノーシスが頭に浮かんだ。
3歳春のデビューで新馬勝ちを決め、中1週で毎日杯に挑戦してシャフリヤールのレコード勝ちの3着に駆ける。しかし、体がしっかりしておらず、その後は休み休みの臨戦になった。1勝クラスから3勝クラスを3連勝したが、スタートでトモが入らずに置かれるし、気性が強くて行きたがるし、追われてシュッと加速できるわけではないし、危なっかしさがあった。
あらためオープンを走ったのが4歳の秋のカシオペアステークス(L)。7ヵ月ぶりの実戦だったが、単勝150円の断然人気になっていた。ゲートでやはりトモが入らず、道中は外の追走で力んだ走りに。直線で追われてからの反応は鈍く、何とか脚を使って2着に上がった。相手が軽かったので私も◎にしてはいたが、「やっぱり…」という負け方になってしまった。
次走は中5週でGIIIの中日新聞杯(中京芝2000m)を使う。単勝260円の1番人気だったが、いつものプログノーシスのレースぶりで、直線で舌がハミを越しながら外から伸びて4着という結末だった。
典型的な人気先行馬…。体がしっかりとし、気性も成長すれば大きな舞台で戦えるようになるだろうが、こんな感じの馬が実が入らずに終わるケースは多い。可能性は残っているが…。
なお、上に挙げた毎日杯で2着だったグレートマジシャンは社台グループのノーザンファームの生産馬で、馬主が社台系のサンデーレーシング。同馬も体質に問題があり、毎日杯の次にダービーで4着したあとで休養に入った。脚元に不安が出て復帰するのに手間取り、ターフに戻ったのはダービーから1年2ヵ月経った4歳の夏だった。
新潟の関越ステークス、単勝240円の1番人気。しかし、グレートマジシャンは直線で故障を発症し、安楽死の処分がとられることになる。愛馬会法人であるサンデーサラブレッドクラブの発表によると、右前脚の繋靭帯の内側と外側が切れかかっていて、球節を亜脱臼していたとのこと。相当にヒドイ状態だったようだ。
関越ステークスを走る前の陣営(美浦・宮田敬介厩舎)のコメントは体の心配をしている内容だったし、壊れることを覚悟していたのではないかと思う。夏の新潟の開幕週で馬場は硬かったし…。
ディープインパクト産駒で、母はドイツで独オークスとバーデン大賞を勝ったナイトマジック(イギリス産馬)という超良血。脚元の問題からどうだったかはわからないが、種牡馬入りが考えに入る存在ではあったはずである。
個人的には実戦を走らせるべきではなかったと思う。まあ、私は部外者であり、関係者の苦労とか細かい事情を知らないから言えるのだが…。ただ、グレートマジシャンはあまりにかわいそうだった。
話を戻す…。「これまでとは違うペースについていき、そこから脚を使えるのか?」という問題に関して、本当のところはやってみないとわからない。それは調教師もジョッキーも同じである。
なぜかというと、単純な話で実際にそういった競馬をしたことがないからだ。新馬戦を強い競馬で勝ち、手綱を取ったジョッキーがほめちぎる。しかし、思ったほど活躍ができずに終わるケースは少なくない。「○○はジョッキーの言った通りに大物になったじゃないか」という例はあるだろうけど、逆だってたくさんいる。
「ジョッキーがほめちぎった」という例の最上級は、ラスール(牝)が新馬戦を勝った時のルメールの発言だろうか。ルメールはこう言った、「新しいグランアレグリアですね」と。ラスールは2戦目にシンザン記念で牡馬にぶつけ、単勝180円の1番人気に推されながら7着に敗れる。3戦目に1勝クラスを快勝したが、続くフローラステークスは6着どまりで、骨折して休養に入った。
ルメールの場合はコマンドラインの例もある。同馬に関しては、デビュー前に攻めで跨った段階で「ダービーを予約しておきます」と発言していた。新馬戦とサウジアラビアロイヤルカップを連勝したものの、1番人気に推されたホープフルSは不利もあって12着。以降は休みがちで大敗が続いている。
ルメールはリップサービスが過ぎるところがあり、コメントを鵜呑みにできない。このことに関しては、のちの章で触れようと思っている。
いつものように脱線する。急にダイユウサクを思い出した。1985年生まれで、父ノノアルコ、母クニノキヨコ、BMSがダイコーターという血統。7歳(現年齢表記で6歳)になる91年の有馬記念で、単勝1万3,790円(14番人気)の低評価をくつがえして勝利を収めた。手綱を取っていたのは、熊沢重文である。
2着は武豊が騎乗していた1番人気(単勝170円)のメジロマックイーン。この歴史的名馬に1馬身1/4の差をつけ、当時のレコードを記録しての完勝だった。ちなみに3着がナイスネイチャ、4着がプレクラスニー、5着がダイタクヘリオスである。
さかのぼってダイユウサクのデビュー戦を見てみる。4歳(現3歳)のことになり、未勝利ではなくて4歳以上400万下を使っていた。単勝5,610円の10番人気…。走れる状態になかったのかもしれないが、しんがり11着で何と勝ち馬から13秒0も離された。
2戦目は未勝利戦を走って7秒3差のしんがり14着。そこから休養に入り、翌年の春にようやく初勝利を挙げた。そして、初勝利から2年8か月後に有馬記念を勝つことになる。比較するのは適切でないかもしれないが、デビュー戦で13秒も負けた馬が頂点に立つのだから競馬はおもしろい、競馬はわからない、馬はわからない。
あと、有馬記念は阪神(旧コース)の芝1600mで勝って中1週での東上(栗東所属)だったこと、芝1200mでレコード勝ちしたことがあることなど、ダイユウサクに関しては驚くようなエピソードがいろいろとある。きわめつけは、馬名申請の時、名前を間違えて登録されたことだろう。この件に関してはググって調べていただきたい。
馬主さんから聞くことがあるが、競走馬を所有して楽しみが大きいのが新馬戦の時だったりするそうだ。攻めでまったく動かず、調教師からもいい話は聞けずという場合でも、実戦で豹変する可能性がないとは言えないからである。
話はだいぶ戻って、新馬戦のペースというと、メジロブライトの新馬戦を挙げないわけにはいかない。これには関しては【展開の話】の章で詳しく書きたい。
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【推奨検索ワード:ルメール 新しいグランアレグリア】
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【推奨検索ワード:ダイユウサク】
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22年10月29日の東京4R。牝馬限定の芝1400m戦で、レースは1000m通過が63秒0という超スローの流れになった。勝ったのはルミノメテオール。好位の後ろ、馬群の中で脚をタメ、直線で前が開くと、しっかりと伸びて抜け出した。ラストから2ハロン目が11秒1。勝ち馬の数字になるラスト1ハロンは11秒を割って10秒9だった。
この新馬戦の翌日に行われたのが古馬GIの天皇賞(秋)(芝2000m)。吉田豊が手綱を取ったパンサラッサが大逃げを打ち、直線半ばでも大きなリードを取って大いに沸かせた。さすがに脚が鈍ってイクイノックス(ヤネはルメール)に差されることになったが、1馬身差の2着に残った。なお、勝ち時計は1分57秒5(良)で、イクイノックスの上がり3ハロンは32秒7だった。
パンサラッサは58キロ、イクイノックスは3歳のアローワンスがあって56キロ…。そうだったらルメールが戦い方を変えていたかもしれないが、同斤ならパンサラッサが逃げ切っていた可能性がある。
1000mの通過は57秒4。そこからも11秒6-11秒8-11秒6と吉田豊&パンサラッサはペースを緩めない。1600mの通過が1分32秒4という速さ。そして、ラストの2ハロンは12秒4-12秒7だった。
新馬戦のラスト2ハロンが11秒1-10秒9(22秒0)で、天皇賞が12秒4-12秒7(25秒1)。足した数字で3秒2もの差がある。初めて競馬を走る2歳の牝馬と古馬の最高峰の戦いとの比較で、このようなことに起こるわけだ。
これが競馬のおもしろさであり、醍醐味である。そして、先にはやはり【展開の話】が待っている。
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日本で唯一の直線のみの競馬である新潟芝1000m(直)戦。夏にはGIIIのアイビスサマーダッシュが行われる。02年の第2回の覇者がカルストンライトオで、53秒7(良)というレコードでの走破だった。このレコードは20年経った22年になっても破られていない。
13頭立ての12番枠、手綱を取ったのは大西直宏だった。ちなみに大西は1997年にサニーブライアンでダービーを勝っている。
ゲートが開いて五分のスタートを切り、大西は外に動いて外ラチ沿いにつける。ムキになって走っているわけではないが、大西はカルストンライトオの気分に任せ、前向きさを活かしてスイスイと逃げた。そして、2馬身で押し切ることとなった。
レースのラップを見てみよう-。
【12秒0-9秒8-10秒2-9秒6-12秒1】
2ハロン目が9秒台で、4ハロン目には9秒6。挟まれた3ハロン目は10秒2で、2ハロン目からの3ハロンが29秒6というとてつもなく速い数字になっている。
大西は残り200mからムチを入れて必死に追っていた。さすがに馬の方は息も筋持久力も続かなくなっていて、我慢させる形でラスト1ハロンは12秒1かかった。大きくバテたという感じはなかったが、ラスト2ハロンの比較でラップは2秒5も落ちている。
道中で抑えて少しペースを落とし、ラストを11秒台にすることも可能だったろう。しかし、大西と陣営はそれをやろうとしなかった。常識的には無謀な速いラップを踏み、しかし、無理をしているわけではなく、800mまでを勝負と考えて、あとは馬の頑張りに期待した。
あらためて戦った相手を見てみると、2着だったブレイクタイムは前の年に安田記念(勝ち馬ブラックホーク)で2着していて、前のレースのNSTオープン(新潟芝1400m(内))では1分19秒0のレコード勝負の中を同タイムでクビ差の2着に駆けている。
実は1番人気だったのはブレイクタイム。カルストンライトオ側も相手への意識、プレッシャーはあって当然で、結論として「飛ばして逃げて…」という作戦を取ったのだろう。ちなみにブレイクタイムは、次走で京成杯オータムハンデキャップを4馬身差で圧勝し、翌年にも京成杯AHを勝っている。
競走馬が出せるラップに関して、以下で検索してヒットする記事が参考になる。
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【推奨検索ワード:最速ラップ9秒6は時速75キロ 競走馬総合研究所 極ウマ 日刊スポーツ】
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2年後の04年、カルストンライトオはふたたびアイビスサマーダッシュを逃げ切って勝利する(2着と3馬身差)。馬上にいたのはやはり大西、斤量は2年前と同じで56キロ。12頭立ての5番枠からのスタートで、単勝220円の1番人気に推されていた。勝ち時計は53秒9(良)、ラップ構成は以下のようになっている。
【11秒9-10秒1-10秒2-10秒5-11秒2】
今度は9秒台のラップがない。5番枠から外ラチに持っていく作業が入っていて、前半で速く走りすぎることはしたくなかったか。ただ、大西は手綱を動かして出していっており、馬が少しズブくなっていたのかもしれない。
そして、ラスト1ハロンが2年前より0秒9も速い11秒2。苦しさは見せず、脚も上がらずに勢い良くゴール板を駆け抜けた。違う質の競馬をつくり、2度目の戴冠を果たしたわけである。
なお、直線競馬ではダート馬が活躍する傾向があるが、この点については先の章で触れたい。極端なラップ差に関しては、先に紹介した書籍『競走馬の科学~速い馬とはこういう馬だ~』から学べることがある。
次走でスプリンターズステークスに挑んだカルストンライトオ。雨が降って不良馬場という状況だったが、軽快なピッチで先導し、直線で後続を寄せつけずに4馬身差で逃げ切った。GI制覇を達成した。
カルストンライトオのアイビスサマーダッシュでの2度の勝利は、前の項で書いた「競走馬が全力疾走できる距離が長くないこと」、「競馬には人間の100m走のように息を止めて走り切れる競走はない」ということを証明するものになっている。
また、前項で距離適性に関して「折り合いが重要」と書いた。ハミを噛んで走って終いに鈍る馬でも、折り合って息が入れば終いにしっかりと脚を使うことができるし、いつもより長い距離でも結果を出すことができる。これを証明するものでもあるだろう。
結局、「どこで脚を使うか」、「どういう息の消費の仕方をするか」ということが問題になる。これもまた【展開の話】の章につながっていく。
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話が違う方向に行って長くなったが、逸れた話も関係のないものではなく、それを踏まえた上でトレーニングセールのところまで戻りたい。
トレーニングセールの映像を見ていただいたとして、衝撃を受ける方が多いと思う。私も目の前で見てそうだった。完成前、デビュー前の2歳馬がダートコースを10秒台で走ってくるのだから、そうなるのも当然である。私の場合、大げさでなく競馬に対する見方が変わった。
千葉のトレーニングセールに行った時、一緒にいた船橋競馬の調教師はストップウォッチを持って自分で計測していた。自動でタイムが計測されているのにである。なぜだろうと思って聞いてみたら、「馬が高く売れるようにするため、主催者が時計を実際より速く表示しているんじゃないか?」と、疑っていたからおもしろい。
トレーニングセールにおいては、「時計を出すか出さないかの駆け引き」も醍醐味のひとつである。血統が地味な馬、馬体が目立たない馬は、細い体でもしっかりと追われてくる。ちとかわいそうな感じだが、速い時計を出さないと買い手が付かず、売り手側はそうするしかない。
良血馬の場合、馬体や精神面で大きく気になるところがなければ取引は成立する。だから、ビシッと追う必要はない。ただ、時計が速ければ速いほど買いたい馬主が増えることになり、競り合って売値が上がる。
名門牧場の上場馬など、併せ馬で15秒程度にとどめたりする。2歳の春の段階で速い時計を出すところまで造ろうとすると、成長を阻害することになるかもしれないし、故障するリスクもある。特に良血馬は元手がかかっているわけだ。リスクと売りたい価格のバランスを考え、公開調教でどう見せるかを決めることになる。
問題になるのは、「実は何かしら不安を抱えている」というケースだ。大きな時計しか出さなかったとして、大事にしているとも取れるが、不安があることを隠すために時計を出さない(あるいは出せない)のかもしれない。そのあたりは売り手VS買い手の戦いである。
なお、上場するには主催者の審査があり、それに合格する必要がある。はっきりとした異常がある場合、セリにかけることはできない。
ここで、【競走馬の話】で書いた「競走馬を仕上げるのは大変」ということと矛盾するんじゃないかと思う方が出てくると思う。
トレーニングセールで計測するのは1ハロンか2ハロン。海外で3ハロン計測のセールがあるが、日本では見たことがない。2ハロン分を速めに走るまでに造り込めた馬がセリに出ているわけである。
3ハロン計測で全体に速い時計を出そうとすると、壊れる馬が続出する可能性がある。なので、最初の1ハロンは大きく入ることになるだろう。馬の将来を考えても、2ハロンで十分と思う。
トレーニングセール出身で活躍した馬の例として、モーリスが思い浮かぶ。取引されたのは2013年の北海道トレーニングセール(サラブレッド2歳)で、落札者はノーザンファーム、価格は1,050万円(税込)だった。
その前の段階で、12年に北海道サマーセール(サラブレッド1歳)に上場し、157万5,000円(税込)で取引されている。販売申込者は生産牧場である戸川牧場で、落札したのはターフマネジメント。大作ステーブルも絡んでいて、詳細がわかりづらくなっている。
そして、2歳になって5月に行われたトレーニングセールに臨む。事前の公開調教で1ハロン11秒06をマーク。本番となる公開調教は5月20日に札幌競馬場のダートコース(左回り、砂厚は確認できず)で実施され、タイム(2ハロン計測)は10秒87-10秒93の21秒80だった。翌日の21日にセリが行われ、上述した価格で取引されることになる。
なお、本番の公開調教の時、騎乗者の斤量は69キロだった。また、事前の馬体重の公表では492キロで、販売希望価格が500万円となっていた。
モーリスの公開調教の映像はYouTubeに上がっている。デビュー前の彼が2歳のトレーニングセールでどんな走りをしたのか…。とても興味深く、見てみるとおもしろいと思う。
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『2013 北海道トレーニングセール 公開調教 第6クルー』(JBIS-Search×ふるさと案内所チャンネル)
https://www.youtube.com/watch?v=vNinnzmRoKk
※モーリスの映像は39分15秒ごろから
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モーリスは天皇賞(秋)、安田記念、香港カップ、香港マイルなどGIを6勝し、歴史に残る名馬になった。獲得した賞金は、日本で5億3,624万6,000円、香港で3,534万香港ドル(約6億2,000万円、2022年11月14日のレート)である。
現役を退いたあと、社台ファームで種牡馬入り。シャトル種牡馬として、種付け時期が半年違うオーストラリアでも種付けを行っている。
種付け頭数が1年に200頭を超えることがある。種付け料は2022年が700万円(受胎確認後)。オーストラリアについては、下記のnetkeibaの記事を見ていただきたい。
日本での活躍した産駒はピクシーナイト(スプリンターズS)、ジェラルディーナ(エリザベス女王杯)、ジャックドール(金鯱賞、札幌記念)など。オーストラリアではHitotsuが芝1600m~芝2500mでGIを3勝、Mazuが芝1200mのGIを勝っている。
1歳のサマーセールで150万円で取引された競走馬は、莫大なカネを生み出すことになった。
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『モーリスの種付け料は8万2500豪ドル、日本円で約770万円に 豪スタッドが発表』(netkeiba.com、2022年4月24日)
https://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=202341
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セリに行くと、目にする人はそうそうたる顔ぶれである。前出の千葉のセールでは、社台ファームの代表である吉田照哉氏を見かけた。照哉氏の父である故吉田善哉氏が社台ファームを立ち上げたのが千葉県の冨里市。千葉は社台グループ、吉田一族の原点である。
千葉のトレーニングセールは正式名称が千葉サラブレッドセール。社台グループが深くかかわり、強く支え、規模は大きくなっていった。セールの開催地は船橋競馬場になる。
2021年の取引では59頭が上場。そのうちの56頭の販売申込者が社台ファームだった。ちなみに、残りのうちの2頭が岡田スタッド、1頭が下河辺トレーニングセンターである。売却総額は15億2,856万円(税込)になり、同セールの最高額を記録した。
最も高い値になったのが「プレミアステップスの19(牡)」で、落札額は5億1,7110万円(税込)。競り落としたのは藤田晋氏である。この男馬はドーブネという名前を与えられ、デビューして新馬戦、ききょうS(オープン特別)を勝つなどしている。
2番目に高かったのが「ラセレシオンの20(牡)」で、価格が6,941万円(税込)、落札したのは廣崎利洋HDだった。この2歳馬につけられた競走名はアスクワイルドモアで、3歳の春に京都新聞杯を制覇することになる。
22年の取引でも社台ファームの生産馬が多く上場し、最高値で落札したのが藤田晋氏だった。「フローラルカーヴの20(牝)」で価格は6,424万円(税込)。競走名はヒラリとなり、セリが行われた2ヵ月後に函館でデビューした。デビュー後の3戦は2着、6着、6着となっている。
なお、20年はコロナ禍で中止になり、「楽天サラブレッドオークション」に上場された。21年と22年はオンラインセール方式で行われている。
出世頭はオメガパフュームだろう。17年に上場し、原禮子氏が1,620万円(税込)で競り落とした。3歳の時から東京大賞典を4連覇。中央でも重賞を勝っていて、22年11月6の時点で総賞金が7億5,207万円になっている。
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『千葉サラブレッドセール』(千葉県両総馬匹農業協同組合)
http://ryoso-b.jp/sitemap.html
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【推奨検索ワード:楽天サラブレッドオークション】
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セリの会場には有名馬主や調教師、ライターなどが集まってくるのは、トレーニングセールに限ったことではない。昔は競馬関係者以外でも入場できる機会があったような記憶があるのだが、コロナの影響もあって今は無理だろう。
ただ、現在はセリをリアルタイムで視聴することができる。「グリーンチャンネル」、「グリーンチャンネルweb」、「JBISサーチ」で中継されるので、機会があったら見るとよいのではと思う。「馬主になりたい」、「馬主は厳しくても一口馬主に出資したい」という方にとっては、とても勉強になる。そういう方は、すでに常に見ていると思うが…。
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『【密着動画】育成牧場|トレーニングセールの舞台裏』(Pacalla、2020年2月22日)
https://pacalla.com/article/article-2658/
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「トレーニングセールでは、デビュー前の2歳馬がダートコースを1ハロン10秒台で走る」
「実際の競馬では、芝でラスト1ハロンを11秒台の前半で走ったら騒がれる」(新潟の直線競馬は特殊)
「最高峰の戦いである天皇賞において、2022年の場合は極端な競馬ではあったがラスト1ハロンが12秒7だった」
こういう風に考えていくと、「サラブレッドというのは、個体として1ハロンを11秒ぐらいで走るものなんじゃないか?」と思えてくる。そもそも競馬の世界は走らなければ淘汰される世界…。“地味な血統”と言われたとしても、血を残す争いの中を勝ち残ってきた者だ。
普段の調教だってそうだ。ウッドコース、ダートコース、坂路と馬場に限らず、速い時計を出すのは下級条件の馬だったりする。5ハロンも最後の1ハロンも…。
1勝クラスの馬、2勝クラスの馬、3勝クラスの馬、オープン馬と、だんだんと調教タイムが速くなっていくわけではない。まあ、調教はできるだけ速い時計で走らそうとしているわけではない。あと、調教では動かず、実戦で走るタイプがいるし、馬場状態や騎乗者の体重に左右される部分も多い。それでも、やはり調教で下のクラスの馬が重賞を勝っているような馬より速い時計をマークするのは立ち止まって考えないといけないことだと思う。
ちょうどこの部分を書いている週の調教タイム(ラスト1ハロン)を確認してみる。2022年の11月9日、美浦ウッドコースの最速は11秒0。これをマークしたのは、デビュー前の2歳馬スズハロームだった。
栗東CWコースの最速は10秒7。2番目に速いのが11秒0だから、0秒3もの差がある。これを叩き出したのも、美浦のウッドコースと一緒でデビュー前の2歳馬(タッチオンウッド)だった。
これは、ある競馬関係者が私に言った言葉である。
「競走馬は100mぐらいだけ走らせるなら、そんなに変わらないんだよ」
もちろん、そのまま受け取っていいものでははなくて、言った本人もそれはわかってくれということを前提に話している。実際は変わらないことはなくて、「そんなに」というのが肝である。
前の項で書いた「競走馬が全力疾走できる距離は短い」、本項の「100mぐらいだけ走らせるなら、そんなに変わらない」-。この2つは競馬という競技の本質にかかわるものだ。この2つがあるからこそ“展開”が生まれるのであり、また、競馬は力通りには決まらないのである。その先は【展開の話】の章で詳しく書きたい。
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この項目の冒頭部まで戻って、強い馬とは「わかりやすくざっくりと言って、持久力がある馬である。肉体面でも精神面でもだ」と書いた。具体的に少しだけ挙げてみると…。
「苦しくなってから根性を出して踏ん張る」
「交わされてから差し返そうとする」
「道中で少し一生懸命に走りすぎているのに、直線で渋太く脚を使ってくる」
※ムキになって走る気性でも、苦しくなって淡白に走るのをやめる馬、苦しくなってからも強い気持ちで頑張ろうとする馬に分かれる
「道中でスーッと進出し、息を入れてから直線でまたスピードを出して走る」
※サークルオブライフの初勝利(22年9月20日の中山2R)がこれに該当
「ズブい感じで後方からジリジリと差を詰めた程度でも、相手が強くなっても同じように脚を使ってくる」
※クインズサターンが好例。2戦目(2015年10月17日の東京9R)に騎乗した岩田康誠は「こういう馬は出世する可能性を秘めている」と話した
キングオブドラゴン(ヤネは田辺裕信)の湾岸ステークス(2022年3月6日、3勝クラス、中山の外回り芝2200m)でのレースぶりは強く印象に残っている。14番枠(16頭立て)から押してハナに立ったが、掛かる感じになったエターナルヴィテス(田中勝春)が1コーナーで絡んできて前に出られてしまう。田辺は手綱を動かして前に出ようとするが、結局は2番手に下げた。普通ならこの時点で2頭ともレースは終了なのだが…。
キングオブドラゴン&田辺は2番手で前を見る形になり、軽くうながす感じの追走になった。後続は6馬身以上も離れていた。3コーナーを過ぎてエターナルヴィテスにプレッシャーをかけていき、4コーナーの直線に向かう前に先頭に立つ。直線で渋太く脚を使い、最後は苦しくなりながらもクビ差で押し切った。
勝ち時計は2分12秒4(良)。レースの1000m通過は59秒1で、上がりは12秒3-12秒1-12秒6だった。注目しないといけないのは、2ハロン目からの5ハロンのラップと4ハロン目からの3ハロンのラップである。
【11秒7-12秒3-11秒1-11秒5-11秒8】
2ハロン目から1000mは58秒4、そして、4ハロン目からの3ハロンは34秒4と、いずれも速い数字なっている。特に中山の外回りコースは、1コーナー手前から2コーナー手前までが急な上り坂で、2コーナー途中から3コーナー途中まで4mの高低差を駆け下りるという大きな起伏がある。上りでラップを上げるのはいいことではないし、下りでスピードが出すぎるのも良くない。スタミナの消費は大きくなり、直線にある中山名物の急な上り坂を耐えるのは難しくなる。
競馬を始めてから多くのレースを見てきたが、湾岸Sでのキングオブドラゴンはトップクラスに入る異様な渋太さを発揮しての勝利である。騎乗した田辺はレースが終わって「おもしろい馬です」と話した。ちなみに、突っかかってきたエターナルヴィテスは2秒2差の15着に轟沈している。
キングオブドラゴンは次走で阪神大賞典を逃げて6着、次に鳴尾記念で逃げて5着と上々の走りを見せた。そのあとも重賞を走って結果は出ておらず、アルゼンチン共和国杯では直線で内ラチに接触して外に逃げ、複数頭に迷惑をかけてしまう。これで「平地調教再審査」を課せられた。しかし、見限ってしまうのは、まったくまだ早い。
この例のように、「ん、こんな競馬をしたら普通は止まるだろう」という競馬になりがら好走する、あるいは抵抗することがあった場合、その馬のそのレースぶりは覚えておくべきだ。切れる脚がなくて派手ではなかったとしても、条件が合えば好走してくるだろう。キングオブドラゴンにしても、いつ何をやらかすかわからない。人気になっていないケースが多いだろうから、馬券の面で妙味がある。
そんな馬は多くいるが、頭に浮かんだ馬を少し…。
ベステンダンクは10歳まで現役を続け、22年のマイルチャンピオンシップ(17着)を最後に引退した。「ワンペースの走り」という印象が強いと思うが、渋太く脚を使ってきて、切れ負けする感じから盛り返すように抵抗することがあった。9歳のマイラーズカップからはブリンカーを着けて前向きさが見えていた。
オープン特別とリステッド競走で馬券に絡んだことが6回あったベステンダンク。その時の人気は、9、3、11、12、7、6となっている。10歳のマイラーズカップでは大逃げを打って4着に頑張った。馬券に絡んだわけではないが、単勝2万980円の14番人気での見せ場十分の奮闘だった。
ちなみに、ベステンダンクの7つ下の弟がトウシンマカオ。3歳の秋にオパールステークス(L)と京阪杯(GIII)を連勝し、短距離路線で覚醒した。弟も気持ちのが強いところがあり、さらなる飛躍が期待される。
ロイヤルパールスは3勝クラスを単勝2万9,950円のしんがり16番人気でV。6歳のながつきステークス(オープン特別)を勝った時は、単勝1万5,860円の15番人気だった。7歳になって大和ステークスを3着に駆けたが、11番人気という低評価。次のレースでオープン特別を3着していて、前のレースで好走していたのにもかかわらず9番人気とやはり売れていなかった。
他にもとなると止まらなくなるのだが、最後に1頭、ビーアストニッシドの名前を挙げたい。注目しないといけないのは、新馬戦(3着)と2戦目(1着)である。
中京の新馬戦は、直線で気の悪さを見せ、左にモタれたり、外にヨレたりで大変だった。そして、阪神の2戦目は特に見る価値がある。序盤の出方、道中の折り合い、直線のモタれ方、ラスト1ハロンのラップ、レースしたあとの姿…。このコラムでこれまでに書いてきたことをわかりやすく説明してくれる走りになっている。
ビーアストニッシドは続く京都2歳ステークス(勝ち馬ジャスティンロック)で逃げて半馬身差の2着に粘った。10頭立ての9番人気、単勝オッズが7,070円と、見事に売れていなかった。テンションが高くなっていたこと、馬場の内が荒れていたことと、マイナス要素があったのは確か。でも、新馬戦と2戦目の内容から、軽視すべきでなかったのは明らかである。
私の予想の印は▲まで。ただ、◎が6番人気のポットボレット(4着)、○が8番人気のシホノスペランツァ(5着)で、穴馬3騎をまとめて狙っていた。馬連1万8,920円と複勝1,070円(20%)が何とか引っかかった。
◎のポットボレットは岩田望来がうまく誘導できなかった。スムーズなら勝ち負けになっていたのは間違いない。ただ、1番枠に入って乗り難しくなるのは見えていた。そのことをわかった上での◎で、予想コメントには「問題は1番枠を引いてしまったこと」と書いていた。ちょうど月曜に投稿している『【今週末の予想提供】、【全頭診断・騎手評価】の例』にこの京都2歳ステークスの予想と予想コメントが載っているので、そちらを見ていただけたらと思う。
3歳の春になり、スプリングステークス(GII)を逃げ切って制覇する。人気は5番人気(単勝700円)だった。三冠は11着、10着、13着だったが、10着のダービーなど直線で内にモタれてしっかりと伸ばせなかった割に負けていない。
パンサラッサ的なものを感じるのがビーアストニッシド。気性の悪さがあって普通の競馬ができていないのが悩みで、今後はその点で成長できるかが鍵になる。いい方向に向かうようなら、どこかで穴を開けるだろう。条件を変えてきたり、馬装を工夫してきた時には警戒すべきである。
クラスが上がれば競馬は厳しいものになり、それに耐え得るだけの持久力、勝負根性を備えているが好走できるかどうかを分ける重要なポイントになる。予想する際に過去のレース映像をチェックする時、特にこの2つを意識することを大事にしたい。
強い馬というのは、どういった馬なのか。しつこくなるが、これまでに書いてきたすべてのことが【展開の話】の章へとつながっていくことになる。
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5.出遅れた原因を正しくつかむ必要性
「出遅れ」とは当たり前のように普通に使われている言葉。でも、私はある時から違和感を感じるようになり、今はあまり使わないようにしている。スタートが切られ、ゲートをスムーズに出て置かれることになったとして、その原因はさまざまだ。それらを一緒くたにし、1つの表現でまとめてしまうのが適切と思えなくなったのである。
下に考えられる原因をいくつか並べている。原因は多くあり、「漏れがあって当然」と考えていただきたい。
「ゲート内で集中力を欠いてキョロキョロしていた」
「緊張して体を固くしていた」
「パニック状態になってしまった」
「後ろ足を踏ん張っていた」
「トモに力が入らず、頭を上げてアオッてしまった」
「ちょうど立ち上がろうとした時にスタートを切られてしまった」
「発馬機の右(もしくは左)にモタれかかっていた」
「突進して下がったところでゲートを切られた」
「一完歩めで躓いてつんのめった」
「出てから右(もしくは左)にヨレてしまった」、「飛び上がる感じで出てしまった」
「出てはいるが、ダッシュが鈍かった」
「気持ちが乗らず、しごいても進んでいかなかった」
「大外枠に入り、外ラチが目に入って外にヨレてしまった」
「大外枠に入り、ひらけている広い方(外)に行ってしまった」
【競走馬の話】の「1.競走馬の肉体的な弱さ」で書いたように、スタートというのは駐立したスピードゼロの状態から後ろ脚を踏み込んでダッシュをつけるもの。トモと言われる後駆が疲れている状態だったりすると、スッとスピードを上げられないし、アオッたりヨレたりすることになる。
この場合の出遅れは馬の肉体的な問題である。なので、トモが弱い馬や、トモのハマりが悪い、ハマるのが遅い馬は、うまく出られないというのを繰り返すわけだ。
イレ込みがちな馬、ゲートが嫌いな馬は、ゲート内でソワソワして横を向いていたり、暴れたりしてしまう。それで出遅れた場合、原因は馬の気性。なので、肉体的な問題と同様に遅れるのに常習性が出る。
肉体面、気性面が原因があるものを「出遅れ」とまとめてしまっていいのだろうか? あと、「この馬はゲートが下手」と書く記者がいるが、雑すぎやしないか?
これをすると、「なぜ遅れたのか」という重要な部分がスポイルされてしまう。馬自身のトモの強さ、気性の脆さをきちんと把握できなくなるし、そのレースでのデキやテンションがわからなくなる。これは問題ありだ。
たまたま立ち上がろうとした瞬間にスタートを切られた場合、それは偶発的なものである。このように「偶発的な出遅れ」というのは、個人的には少ないと思っている。トモに力が入らなくてアオッた場合と、はっきりと区別しないといけない。
なにが原因なのか、あるいは偶発的なものだったのか、だいたいの場合はわかる。なので私は、「出遅れ」と使う場合があったとしても「○○で出遅れた」と説明を付けている。もちろん、判別しづらいケースはあり、私の見立てが間違っていることもあるだろう。それでも「出遅れた」で済ますのは、やはり良くない。
ダッシュがつかない馬に対し、「出遅れ癖がある」というは明らかに間違っている。トモが弱いとか気性に問題があるわけで、基本的には何度やっても置かれる。ゲートは関係ないのだから…。ただ、たまたま完ぺきな形でタイミング良く力が入り、五分に出ることがあるかもしれない。
ゴールドシップの場合はゲートが苦手+ダッシュが鈍い+気性が悪い合わせ技での問題児だった。すべての馬が違った原因を持っている。
出遅れた原因を正しくとらえることができれば、次のレース、あるいは先々に馬券につながる。その馬を“買う”でもいいし、“切る”でもいい。ゲート、スタートはレースの一部であるかもしれないが、そこに勝った理由、負けた理由が詰まっていたりする。
実際に馬の名前を挙げて説明するのがいいのだが、あまりに多くなるので控えることにした。ゲート難で有名なゴールドシップのゲート内、スタートの映像は細かく見てみるのは勉強になる。あと、ゲート難が解消せずに引退することになった白毛馬のブチコのことを調べてみていただきたい。
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【推奨検索ワード:ブチコ ゲート 引退】
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ゲートのことを語る時、“ラガーレグルスの悲劇”に触れないわけにはいかない。
2000年の皐月賞、1枠1番に入ったのがラガーレグルス、騎手は佐藤哲三。重賞勝ちがあり、トライアルの弥生賞で3着に駆け、3番人気の支持を受けていた。ただ、それまでのレースから、ゲート内がイヤなのは明らかだった。膠着(動かくなる状態)したこともあった。
さあスタート…。しかし、ちょうど暴れて立ち上がったところでゲートが開いてしまう。腰を落として座り込む形になり、佐藤哲三は後ろに落っこちる形で落馬した。
レースはもちろん進行し、1コーナーにさしかかるあたりでもラガーレグルスはゲート内にいた。スターター、スタート係はさぞ焦ったことだろう。中山の芝2000mは4コーナーの出口がスタート。1分半後には馬たちが回って到達する。大きな発馬機(ゲート)をしまわないといけない…。この点は何とか収まったようだ。
佐藤哲三は引退会見でラガーレグルスのことを話している。「当時の僕は技術が足りなかった。今までの僕の技術の向上に繋がったと思うので、今思えばあの時は辛かったですが、いい馬に巡り会えたと思っています」という内容だった。
かわいそうなのは、もちろん馬である。ゲートのイヤがり方が普通でなかったし、次に走るのが最も注目される日本ダービーということもあったか、JRAは「本番と似た形でのゲート試験をする」という課題を出した。
場所はダービーが行施行される東京競馬場、ダービー(芝2400m)と同じ設定でスタンド前…。時間は開催日の昼休みで、要するにファンがいる前でゲート試験が行われた。
ラガーレグルスのテストは“不合格”だった。試験は2回あり、1回目はスムーズにスタートすることができ、2回目は皐月賞の時と同じようにゲート内で立ち上がってしまった。2回目に関しては、“あること”が原因の1つとされ、騒動が起こったと言われている。ただ、私は現場にいなかったし、ネットでニュース等を検索しても調べがつかなかったので書かないでおく。
最近ではビアンフェが実戦形式でのゲート試験を課せられている。2020年のスプリンターズSで「枠入り不良」になり、翌21年のスプリンターズSでも「枠入り不良」に…。実戦に近い形での発走症調教試験が行われたのは21年の11月13日だった。場所は阪神競馬場、そのスタンド前で、全レースが終了したあと。重賞のファンファーレが鳴らされ、一連の流れでテストされた。
すべてがスムーズに運び、結果は“合格”だった。復帰して2走後のオーシャンSで3着に駆けている。ただ、ビアンフェは前進気勢が強くて追い切りでもガリガリ行ってしまうところがあり、いつまたゲート入りをイヤがったりするかわからない。
ゲート、およびスタート前にまつわるトラブルは、歴史をさかのぼればいくらでも挙げることができる。興味のある方は、ローブティサージュを調べていただきたい。
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【推奨検索ワード:ビアンフェ 発走調教再審査】
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【推奨検索ワード:ローブティサージュ ゲート】
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ついでというわけではないが、ゲートのことを書いたので、「助走距離」に触れてみたい。聞く機会が少ないものなので。
上の画像は東京競馬のダート1400m戦のスタート後のものである。見てすぐわかる通り、おかしい点がある。発馬機(ゲート)が置かれているところと残り1400mを示すハロン棒の位置がズレている。しかも、少しではなく、両者の間にはけっこうな距離がある。
この間が「助走距離」にあたるものである。ゲートからスタートし、少し走ってから残り1400mを通過し、そこから1400m走ってゴールするわけだ。実際には1400m以上の距離を走っていることになる。
タイムが計測されるのは、先頭の馬が残り1400mの地点に達した時からである。余計に走っている分は含まれない。ただ、ダッシュがついて少しスピードが出た状態からの計時になるため、当然のこと1400mの地点から出た場合とではタイムが違ってくる。
日本においては、JRAでも地方競馬でも設定されている。しかし、JRAはこの距離を取っていることは認めても助走距離という言葉を使おうとしないし、その距離が何メートルであるかも公表していない。
JRAの職員に聞いても明確な答えは返ってこない。芝のレースでは馬場の荒れ具合を見て少し位置を変えているという話もあるが、そこまで気にして見てこなかったので本当かはわからない。
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【推奨検索ワード:助走距離 仮柵 ホッカイドウ競馬】
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日本の競馬は西洋の競馬が持ち込まれて始まったもの。当初のスタートは単純に馬を並べて旗を振るぐらいだったようだ。馬が言うことを聞いてきちんと並び、合図と同時にスタートするのは不可能。そこから「バリヤー式スタート」というものが生まれ、技術の進歩もあって現在の発馬機に至る。
その変遷、進歩については、以下の【推奨検索ワード】やリンク先の記事を調べてもらいたい。特に最後に挙げるnetkeibaの記事は読みごたえ満点だ。
この記事は2015年と少し古いもの。元ジョッキーの赤見千尋氏がJRA審判部の長島隆樹氏にインタビューを行っている。「ノン・ランナー」という制度、ゲートクルー(ゲートボーイ)、地方競馬では認められ、JRAでは禁止されている「尾持ち」、あと、「カンパイ」(スタートのやり直し)などについて長島隆樹氏が丁寧に説明している。
ただ、2015年と少し古い記事になり、今とは違うところもあるだろう。その点は注意していただきたい。
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【推奨検索ワード:JRA 競馬用語辞典 発馬機】
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【推奨検索ワード:日本スターティング・システム株式会社 発馬機の変遷】
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【推奨検索ワード:東海ばね工業 馬に捧げた人生物語】
※第1話~第4話まであり
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【推奨検索ワード:バリヤー式スタート】
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『JRA発走委員(プロローグ)『時代ごとに進化してきた“ゲート”の歴史』』(netkeiba.com、2015年9月7日)
https://news.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=31210
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6.岡田一族が日本の競馬を変える
まず、前置きを…。“岡田一族”とは私が勝手に使っている造語のようなもの。競馬の世界で一般的になっている言葉ではない。また、細かく見れば、一族の人間がみな同じ考えを持っているわけではないだろう。この点をご承知いただけたらと思う。
2020年の春、3歳の牝馬が争ったオークスを勝ったのはデアリングタクトだった。2着はウインマリリン、3着はウインマイティー。「知っているよ!」と突っ込まれるのを理解した上で書くが、この3頭はすべて岡田一族の所有馬であり、“マイネル・コスモ軍団”の一員と言っていい。岡田一族の上位独占だった。
翌21年の秋、タイトルホルダーが菊花賞を5馬身差で完勝する。同馬は4歳になった22年の春に天皇賞(春)を7馬身差で圧倒し、宝塚記念をレコードで制覇した。秋にはフランスの凱旋門賞に挑戦して期待が集まったが、残念ながら11着に終わっている。
タイトルホルダーは馬主が山田弘氏で、生産牧場が岡田スタッド。岡田スタッドの代表は岡田一族の岡田牧雄氏(後述する岡田繁幸氏の弟)である。牧雄氏がイギリスのタタソールズオクトーバーセールで購入したのがタイトルホルダーの母であるメーヴェ(イギリス産)だった。
メーヴェが産んだ牝馬メロディーレーン(菊花賞5着)は牧雄氏が所有し、タイトルホルダーは山田氏が当歳(0歳)のセレクトセールで競り落とした(落札額は2,160万円(税込))。所有者ではないものの、タイトルホルダーをつくり上げ、育て上げたのは岡田一族である。
ちなみに、メーヴェはタイトルホルダー以降は不受胎が続いた。22年にはエピファネイアを付けて不受胎。ベンバトルを付け直し、受胎したことが確認されている。イギリス生まれのベンバトルは、ゴドルフィンが所有し、ドバイターフなどGIを3勝した。22年からビッグレッドファームで繋養されていて、同馬は“岡田一族の種牡馬”ということになる。
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【推奨検索ワード:「誰にも手出しできないようなコンビになってます」栗田徹調教師が語る“タイトルホルダー&横山和生”が「阿吽の呼吸」になるまで】
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岡田一族、岡田帝国の祖となるのは、故岡田繁幸氏である。実家が生産牧場を経営していて、独立する形で生産牧場の1974年にビッグレッドファームを立ち上げた。86年になると、一口馬主のラフィアン・ターフマンクラブを創立する。
以降は“相馬眼のある男”として地方競馬、中央競馬を盛り上げていく。関連した組織の所有馬にはマイネル、マイネ、コスモの冠号が付けられ、“マイネル・コスモ軍団の総帥”、もしくは“マイネル軍団の総帥”と呼ばれていた。
ブリーダーとしてのベースになったのは、独立する前にアメリカに渡って修業した経験にある。「夢はダービー制覇」と語ることが多く、実際に果敢に挑戦してきた。
なお、岡田牧雄氏もアメリカの牧場で技術を学んでいる。下記のPacallaの記事に渡米した際のことが書かれていて、詳しくはそちらを読んでいただきたい。「オーナーブリーダー」にも触れられていて、興味深い内容になっている。
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『【牧場の歴史 vol.03】岡田スタッドグループ編』(Pacalla、2019年7月4日)
https://pacalla.com/article/article-2371/
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最も近づいたのは1986年のグランパズドリーム。同馬は品種が“サラ系”であり、サラ系についてはググって調べていただけたらと思う。
ダービーでは14番人気(23頭立て)の低評価だった。しかし、直線でラチ沿いに入って抜け出しかかるシーンをつくり、少し離れた外から伸びたダイナガリバーと叩き合った。およばずの2着(半馬身)に終わったが、繁幸氏もやったかと思っただろう。堂々たるレースぶりだった。グランパズドリームはこのレースを最後に引退している。
2004年には妻である岡田美佐子氏の名義だったコスモドリームがクラシック戦線を沸かせた。地方のホッカイドウ競馬に所属し、地方枠で中央の競馬に挑んでいた。「地方から中央のダービーを」というのも繁幸氏が持っていた夢である。
皐月賞はダイワメジャーの2着(1馬身1/4差)、ダービー(勝ち馬キングカメハメハ)は8着、菊花賞(勝ち馬デルタブルース)は4着。菊花賞の次にジャパンカップを走り、ゼンノロブロイの2着と奮闘した。
5歳時には有馬記念で4着に食い込んだ。ディープインパクトがハーツクライの後塵を拝した伝説の有馬記念である。6歳時の春にはシンガポールのシンガポール航空インターナショナルカップで国際GIを制覇。同年の秋には、天皇賞(秋)で4着、ジャパンカップで4着と健闘してみせた。
繁幸氏は今では一般的になっている“外厩”を推し進めた人物でもある。ダービー制覇が叶わぬまま2021年に逝去したが、日本の競馬史に刻まれるべき功績を残した。
繁幸氏の歴史、功績については、書いていくと大変な量になってしまう。亡くなった時には競馬関係者、記者による多くの追悼文が発表されていて、そちらを調べていただきたい。
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【推奨検索ワード:サラ系】
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【推奨検索ワード:外厩】
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【推奨検索ワード:岡田繁幸】
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【推奨検索ワード:日本一の「相馬眼」ダービー制覇叶わぬまま…岡田繁幸氏死去 サンスポ】
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『社台グループが認定厩舎に参入』(netkeiba.com、2004年6月8日)
https://news.sp.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=3146&rf=column_search
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繁幸氏が見出した競走馬、岡田一族の生産馬、所有馬には明確な特徴がある。
まず、一般的に言われるように、血統的に地味な馬が多い。何をもって地味というかは問題になるが、少なくとも社台グループのようにわかりやすい良血馬、華やかな血統が多いわけではない。ただ、目立たなくても底力を秘めている血を好んでいるのは明らかで、前出のメーヴェが好例である。
次に“馬のカタチ”を重視し、強い負荷をかけて故障しないか、身になって成長につながるかを見極めている。「どう見極めているのか?」と問われたら、「わからない」としか言いようがない。歴史に名を残すブリーダー、ホースマンの見立ては、私が説明できるものではないので…。
当歳(0歳)や1歳馬の段階で、年齢を経て馬体がどう変わっていくかを読む能力にも秀でているのだろう。いろいろな面で“先見の明”が必要になり、それを磨いてきたのだと思う。
例えば競走馬を真っすぐに立たせた時、肢の足先が外を向いていると「外向姿勢」と言われる。反対に内を向いていると「内向姿勢」だ。こういった馬は一般的には嫌われる傾向にある。しかし、他の部分が優れていて、大成する可能性を秘めていたら、手ごろな価格で手に入れることができるだろう。
外向や内向は矯正することも可能で、競走馬として能力を発揮できるようになるかを読むのはホースマンの仕事である。そのほかもろもろを含めた“先見の明”…。岡田繁幸氏が残した遺産を岡田一族の面々は受け継いでいる。
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【推奨検索ワード:JRA 馬の資料室 馬の見方のヒント 前肢のコンフォメーション】
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次に育成…。岡田一族の育成方法を語る時、“昼夜放牧”を挙げないわけにはいかない。昼夜放牧とは、言葉通りで昼、夜に放牧に出すというもの。牧場内の広い草地に放ち、自由に行動させ、自由に走らせることを言う。なお、日本には四季があり、季節によって放牧に出す時間帯は変わってくる。
岡田一族の所有馬は、基本的に1歳の春になると北海道の幌泉郡えりも町にある「オカダスタッド えりも分場」に送られる。そこで行われるのが昼夜放牧で、1日に20時間におよぶ場合もあるそうだ。襟裳地方は風が強くて環境が厳しく、そんな中で走り回ることで地が鍛えられる。
これに耐えられなかった馬は脱落することになり、肉体的に強くなった馬だけがデビューできるわけだ。さらに、襟裳で昼夜放牧をすることで、精神的にも鍛えられることになる。岡田スタッドの生産馬であるタイトルホルダー、その姉のメロディーレーン、そしてデアリングタクトも、えりも分場の昼夜放牧で土台がつくられた。
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昼夜放牧という言葉が出るたび、第3回のジャパンカップを勝ったイギリスの牝馬スタネーラのことを思い出す。1983年のことだから、私が競馬に出会う前の話ではあるが…。
キーワードになるのは“引き運動”。来日して状態が悪くて時計になるところは乗れず、馬を引いて歩かせる運動が主だったという。それで勝利を収め、日本のホースマンは驚いたそうだ。
こちらに関しては、佐藤洋一郎氏のコラムを読んでいただきたい。岡田一族の育成と違う話ではあるのだが、「じっくりと造っていく」という意味合いでつながるところがあると思う。
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岡田一族が競走馬として仕上げていく次の段階では、コースや坂路などで鍛えることになる。例えば北海道の新冠町にあるビッグレッドファーム明和は、広大な面積を誇り、施設、設備が充実している。肝となるのは屋根付きの坂路コース。1100mの距離があり、ここで乗ることで脚力、持久力を増強させる。
トラックコースは1200mで、他にトレッドミルやウォーキングマシーンがある。厩舎は310頭が収容可能というから驚きだ。
デビューした馬を短期放牧に出す場合、美浦所属馬は近場の育成牧場「グロースフィールド」を利用したりする。この牧場には1200mの走路やトレッドミルなどがあり、マイルチャンピオンシップに出走したウインカーネリアンはこちらに放牧に出されていた。
なお、ビッグレッドファーム明和はホッカイドウ競馬の認定厩舎の認定を受けている。種牡馬としてはゴールドシップが繋養されていて、一般の方の見学が可能とのことだ。これは変わる可能性もあるので、「ゴールドシップに会ってみたい」という方はホームページで状況を確認していただきたい。
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『ビッグレッドファーム明和の施設紹介』(ビッグレッドファームのホームページ)
https://www.bigredfarm.jp/blank-201
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かように岡田一族は、時間をかけてみっちりと土台を作っている。人間の世界では“体幹”という言葉が一般化して久しいが、これを強化するのと似たイメージか。あと、人は健康維持のためにウォーキングがいいと推奨されるようになった。競走馬とはレベルが違う話だけど、じっくりと基礎体力を上げるという点では同じなのかもしれない。
さて、同一族の所有馬、生産馬が競走馬として競馬を走るようになった…。そこで出てくる特徴が“ジリッぽいながらも長く渋太く脚を使う”というタイプが多いというものである。データで示すことができるわけではないが、見ていて明らかだ。
あと、忘れてはいけないのが精神面の強さである。「2.競走馬の気性面の脆さ」で、「競走馬にとって最も重要な要素は、“気持ちの強さ”、“根性”なのかもしれない」と書いた。岡田一族の馬は、この点で優れている。
昼夜放牧の効果があって当然だし、他にも特別なノウハウを持っているものと思う。若いうちの馴致の段階から何か違うのかもしれない。実戦では苦しくなってから食らいつくように粘り、混戦で結果を出してくる。もちろん、あくまで傾向であって、ムラな馬、淡白に失速する馬もいる。
馬券の面から見ると、妙味のある貴重な存在であると言える。血統が地味め、スパッとは切れないので目立ちはしない…。ということで、「力があるのに人気にならない」というケースが多くなるからだ。
具体例については、膨大な数があるので控えることにした。さかのぼってもいいし、これからでもいい。レースの結果を見て、岡田一族がどんな形で好走しているのかを確認してもらいたい。これまで気にしてこなかった方は、いかに多く岡田一族の馬が馬券に絡んでいるかを知ることになる。
裏開催の1勝クラス、2勝クラスとかのレベルでは特に活躍している印象がある。芝のレースの場合、夏の裏開催は札幌か函館で力を要す洋芝、夏以外の裏開催は馬場が荒れていることがあり、これはマイネル軍団にとって歓迎できる状況である。
ここで、追記で挟み込む…。この原稿を確認していた2022年の11月21日、その前日の20日(日)にいい例があったので挙げてみたい。福島競馬の後半レースを見ると、8Rは2着にルヴェルジェ(2番人気)が入り、9Rは1着はマイネルメサイア(5番人気)、3着キュンストラー(9番人気)と2頭が馬券に絡んだ。
10Rは4頭が出走し、1着がウインピクシス(1番人気)、2着がイザニコス(15番人気)でワンツー決着。馬連の配当は1万8,790円になった。スゴい破壊力である。
この日の東京競馬を見ると、南武特別では4番人気のバラジが2着に食い込み、12Rで3番人気のシュヴェルトライテが勝利を収めている。もちろん、本場でも軽く見てはいけない。
そこから2ヵ月戻って9月17日の中京競馬、オープン特別のケフェウスステークス(芝2000m)。ビッグレッドファームが生産し所有しているコスモカレンドゥラが掛かり気味に行って大逃げの形になった。後半のコーナーで後ろを引きつけ、もう直線で脚を使うのは厳しそうな情勢。しかし、追われて渋太く離し、そのまま粘り込んだ。1分57秒6(良)の好時計勝ちだった。
2着にはコスモビューファームが生産、所有するエヴァーガーデンが入っている。こちらも持ち味である粘り強さを活かしての好走だった。コスモカレンドゥラは単勝2,940円の9番人気で、エヴァーガーデンは4番人気。馬連の配当は8,050円だった。
また時間をさかのぼって22年1月16日の小倉12R、1勝クラスの芝2000m戦。勝ったのはビッグレッドファームが所有するフォレスタで、2着にはコスモビューファームが生産し、馬主がウインのウインミニヨンが入った。2頭の人気はそれぞれ8番人気、6番人気。岡田一族のワンツーで、馬連は1万1,730円になった。
なおこのレースは12頭立てで、他に岡田一族の関連馬が3頭いた。その3頭の着順は、4着、5着、12着だった。「岡田一族の5頭ボックス」をやっていれば、馬連は的中したわけだ。
このような例は他にも多くある。週末の競馬が消化されるたびに増えていくので区切りがつかず、22年12月17日にもインパクトのあることが起こった。
中山メインは牝馬重賞のターコイズステークス。ここで2着に入ったのが岡田一族のウインシャーロットで、人気は4番手(単勝910円)だった。
阪神メインはスプリントのオープン戦であるタンザイナイトステークス。このレースには、岡田一族の所有馬が4頭出走していた。中で15番人気(単勝1万910円)だったミニオンペールが3着に入る奮闘を見せる。1着と2着も人気薄だったため、3連単は271万馬券になった。雨が降って芝は稍重になっていて、渋った時の岡田一族の怖さが存分に示された。
「岡田一族を専門に狙って儲けている人がいるんじゃないかな?」と、以前から思っていた。ネットで検索してみると、やっぱり“らしきもの”が引っかかった。【推奨検索ワード】を挙げておくので、気になる方は見ていただけたらと思う。
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土台がしっかりして走りのバランスが良いため、馬場が荒れていても苦にせず走ることができる。だから道悪への対応力が高く、「渋った時の岡田一族、マイネル軍団」という狙い方はアリである。これも道悪だった時の結果を調べてもらいたい。穴を出すケースが多いことが実感できるだろう。道悪が苦手は馬もいて当然で、決めつけは禁物である。
馬場が荒れた時、道悪の時に活躍していることをメディアが取り上げることは少ない。というか、ほとんど見ない。個体差があるからなのかわからないが、ちと不思議である。ステルス的な存在がいることが関係しているのかもしれないが、記者ならわかっているはずだし…。
“ステルス”と書いたのは、馬名を見ただけでは岡田一族とわからない馬がいるからである。以前はマイネル、コスモと付いているか岡田繁幸氏の個人名義が多かったが、冠号が付いていない馬が増えている。
この項目の最初に20年のオークスのことを書いた。そこで2着したのがウインマリリン、3着がウインマイティー。冠号ウインは岡田一族の経営になる。馬主登録をしているのは株式ウインで、一口馬主を運営する株式会社ウインレーシングクラブが出資しているという形になる。
ウインの代表者は岡田繁幸氏の息子(三男)である岡田義弘氏。ウインレーシングクラブの代表は義弘氏の妻・岡田亜希子氏になる。亜希子氏はコスモヴューファームの代表もつとめている。
ちなみに、ウイン、ウインレーシングクラブの前身である組織には、大迫一族がかかわっていた。2011年になって岡田一族が経営することになる。
大迫一族の長だったのが大迫忍氏(故人)。忍氏は冠号ゼンノ(冠号ビコー、冠号なしも)で活躍馬を多く所有していた。代表馬は何と言ってもゼンノロブロイ。藤沢和雄厩舎に所属していたゼンノロブロイは、2004年の秋に天皇賞(秋)→ジャパンカップ→有馬記念のGI3連勝を成し遂げた。
忍氏は05年に逝去し、ゼンノロブロイは忍氏の妻である大迫久美子氏の名義になった。なお、これは競馬ファンでなくても通じる話で、忍氏は地図で有名な株式会社ゼンリンの代表取締役だった。なお、忍氏の妻も息子も馬主として競馬にかかわっている。
話は戻ってステルス岡田一族。ウインは冠号がついているからわかりやすい。ラフィアンの所有でもマイネルと付いていないケースがあり、岡田一族の個人名義だと気づかないこともあるだろう。
もちろん、「この馬は岡田一族」と個体で認識できてしまえば問題なく、あと、勝負服からわかるようになる。1つのレースを見て、マイネルと付いている馬が1頭もおらず、しかし、マイネル軍団=岡田一族の馬が4頭も5頭もいたりする。けっこうな数がいるので、予想をする際にチェックするといいと思う。
私は予想する時には競馬新聞い赤ペンでチェックを入れるが、最初にやるのが3歳馬に○を付けることで(時期による)、2番目が馬主と牧場を見て岡田一族の関連馬に〇を付ける作業である。
先に書いたように、馬場が荒れた時とか道悪の時には注意すべき。また、持久力を活かすために思い切った策を取ってくるケースがあり、岡田一族の所有馬は展開を読む際にも重要な存在になる。
下に馬主名義、生産牧場の例を並べているので参考にしていただきたい。あと、検索して調べてみると、いろいろとおもしろいと思う。
【馬主名義の例】(敬称略)
岡田美佐子、岡田牧雄、岡田荘史、サラブレッドクラブ・ラフィアン(代表:岡田紘和)、ビッグレッドファーム(代表:岡田亜希子)、コスモヴューファーム(代表:岡田亜希子)、ノルマンディーサラブレッドレーシング(代表:岡田将一)、ウインレーシングクラブ(代表:岡田義弘)、プレジャーオーナーズ(代表:岡田義広)、ブルースターズファーム(代表:岡田ゆりか)
※ラフィアンターフマンクラブ(代表:岡田ゆりか)は愛馬会法人で、サラブレッドクラブ・ラフィアンに出資している形
【生産牧場の例】
岡田スタッド、ビッグレッドファーム、コスモヴューファーム、ノルマンディーファーム、ブルースターズファーム
【特殊な形態】(敬称略)
LEXPROは株式会社LEX(代表:岡田牧雄)が経営母体の馬主の共同所有のクラブ。中央競馬、もしくは地方競馬の馬主資格がないと申し込みできない。ホームページには「馬主は代表名義として岡田牧雄、錦岡牧場(土井一族、冠号ヤマニン)、吉田勝己(ノーザンファーム代表)、吉田千津(社台グループの総帥・吉田照哉の妻)のいずれかになる」という記載がある。ただ、22年の12月の時点で錦岡牧場の所有馬は中央にも地方にもいない。なお、メロディーレーンは同クラブの所有馬である。
レックスタッドは株式会社LEXが経営している牧場。種牡馬を繋養していおり、ノヴェリスト、スクリーンヒーロー、マツリサゴッホ、エイシンフラッシュ、ゴールドドリームなどがラインナップに名を連ねる。
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【岡田一族に入れていいか微妙】
生産牧場の岡田牧場を仕切っているのは馬主でもある岡田隆寛氏。隆寛氏は繁幸氏、牧雄氏の親戚になるが、岡田一族に含めていいか個人的には微妙と思う
【岡田一族の生産馬を購入している馬主】
冠号ホウオウの馬主・小笹芳央氏は岡田スタッドの生産馬を多く所有。冠号テーオーの小笹公也氏は芳央氏の弟で、ビッグレッドファーム、岡田牧場の生産馬を購入したことがある。
タイトルホルダーの所有者である山田弘氏は岡田スタッドの生産馬を多く購入している。サウンドトゥルー(チャンピオンズカップ、JBCクラシック)も山田&岡田のコンビだ。
原禮子氏は冠号オメガの所有馬が多いが、冠号を付けないケースもある。オメガパフューム、ヌーヴォレコルトは社台ファームの生産馬。岡田スタッド生産ではオメガレインボーなどがいる。
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馬主としての岡田一族は特定のジョッキーを使う傾向にある。まあ、ジョッキーが偏るというのは、どの馬主だって同じではあるが…。
数で言えば、丹内祐次、柴田大知、ミルコ・デムーロ、黛弘人、松岡正海が多いだろう。ただ、前置きしたように岡田一族とは私が勝手にまとめて呼んでいるもの。馬主によって起用するジョッキーは違う。厩舎の人脈、エージェントも絡んでくるので、固定されているわけではない。
最近では若い永野猛蔵がテストされているのか使われていて、先がどうなるかはわからない。減量が取れたら依頼数が減る可能性がある。
馬のタイプの問題からだろう、実際にそうであるかは別にして、追いが強く、しっかりと動かしてくるジョッキーを選ぼうとしている感じだ。モレイラやレーンなど、短期免許で来日する外国人ジョッキーを起用することもある。
リーディングを争うになっている川田将雅、ルメールの2人が騎乗するケースは少なくなっている。横山武史、坂井瑠星、松山弘平、石川裕紀人、菅原明良あたりが合うだろうが、こちらも起用数は多くない。
【騎手の話】の章で詳しく書くが、技術レベルが高く、外国人騎手のように強く馬を押せる若手が出るようになっている。岡田一族はそんなジョッキーを意欲的に使うといいと思うのだが…。
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かなり戻って、ジリッぽい馬が多いという話…。その意味でデアリングタクトは異質の存在と言えるかもしれない。同馬を生産したのは、北海道の日高町にある長谷川牧場。夫婦で経営している牧場で、競走馬の年間の生産頭数は10頭未満である。
当歳(0歳)のセクレトセールに上場し、この時はリザーブ価格(売り手が希望する最低落札額)が800万円で売買は成立せず、主取りになっている。ちなみに同じセールの最も高く売れたのは、イルーシヴウェーヴの17(父ディープインパクト)で価格は6億2,640万円(税込)。近藤利一氏(故人)が落札し、アドマイヤビルゴという競走名を与えられて活躍を見せている(現在の馬主は近藤絢子氏)。
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【推奨検索ワード:444 デアリングバードの2017 一般社団法人日本競走馬協会 オンラインカタログ】
※「2017年度 セレクトセール サラブレッド 当歳」に上場された時のカタログに掲載された馬体
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『2017年度 セレクトセール サラブレッド 当歳のセリの映像』(YouTube、JBIS-Search×ふるさと案内所チャンネル)
https://www.youtube.com/watch?v=-USTVptBBm4
※デアリングバードの2017は6時間00分25秒から
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その後、1歳の夏になってセレクトセールに上場し、ノルマンディーファームが1,296万円(税込)で落札した。所有者はノルマンディーサラブレッドレーシングノルマンディーファームになり、一口馬主のノルマンディーオーナーズクラブで募集がかけられることになる。ちなみに、募集総額は1,760万円だった。
1,296万円というのは1歳のセレクトセールにしてはかなり安い部類に入る。同じセールの最高価格は2億7,000万円(税込)で、平均価格が4,968万7,714円だった。1,000万円を超えているのだから、一般的には高馬には入るのだが…。
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【推奨検索ワード:53 デアリングバードの2017 一般社団法人日本競走馬協会 オンラインカタログ】
※「2018年度 セレクトセール サラブレッド 1歳」に上場された時のカタログに掲載された馬体
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『2018年度 セレクトセール サラブレッド 1歳のセリの映像』(YouTube、JBIS-Search×ふるさと案内所チャンネル)
https://www.youtube.com/watch?v=cdffOt_Ap8Y&t=327s
※デアリングバードの2017は5分23秒から
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では、なぜデアリングタクトは購買者が欲しがって競い合い、価格がつり上がるようなことにならなかったのだろうか?
血統は確実に良い。父はエピファネイアで、母の父がキングカメハメハ。そして、「サンデーサイレンスの4×3」というクロスがある。3代母がアメリカ産の輸入基礎牝馬になり、2代母のデアリングハートは3歳時に桜花賞3着、NHKマイルカップを2着し、のちに重賞を3勝した。
が、デアリングハートは繁殖牝馬として目立つ活躍馬を出せていない。その仔でデアリングタクトの母であるデアリングバードは1戦して未勝利だった。母系に勢いがないように映ったところはあったと思う。
あと、父エピファネイアにとっては初年度の産駒で、未知の部分があった。ちなみにエピファネイアの種付け料は、初年度が250万円で、22年は1,800万円と、正にケタ違いの額になっている(いずれも受胎確認後支払い)。
大きく注目されなかった最大の要因は販売者が小規模の牧場だったことだろう。先に書いたように、長谷川牧場は1年の生産頭数が10頭未満。デアリングタクトが生まれた2017年は5頭だったという。
デアリングタクトが当歳のセリに上場した17年の勝利数を見ると、【中央0勝・地方6勝】で、1歳のセリに上場した18年は【中央0勝・地方4勝】となっている。購買者が二の足を踏むのも仕方ないところだ。
長谷川牧場の場主である長谷川文雄氏がデアリングタクトのことを話したインタビュー記事をネットで見つけることができる。下に【推奨検索ワード】を挙げているので、読んでみてもらいたい。
気になる馬体に関しては、上に当歳時と1歳時の姿を見ることができるリンクを貼っている。馬体をどう評価すべきかは、実際に競り落としたノルマンディーファームの代表である岡田牧雄氏の話を聞くのがいいだろう。
下に「NumberWeb」と「netkeiba」のインタビュー記事にたどり着くリンクを貼っておいた。牧雄氏はいつからデアリングバードの2017に目を付けていたのか、馬体のどこに良さ感じて購入することを決めたなどかが記事からわかる。とても勉強になるので、ぜひ。
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【推奨検索ワード:スポニチ 【秋華賞】日高の長谷川牧場 デアリング3冠に感無量「小さい牧場にもチャンスあると証明できた」】
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『【秋華賞】デアリングタクト、史上初の無敗三冠牝馬へ 「将来はアーモンドアイのように」桜花賞の裏側』(NumberWeb、2020年10月15日)
https://number.bunshun.jp/articles/-/845414
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『デアリングタクトを見抜いた岡田牧雄の執念』(netkeiba.com、2020年10月13日)
https://news.netkeiba.com/?pid=tarekomi_view&no=11555
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デアリングタクトと言えば切れるイメージが強い。しかし、劣悪な不良馬場だった桜花賞を大外から闘争心を切らさずに脚を使って差し切っている。これも岡田流の育成があってこそ。肉体面でも精神面でも鍛えられていたのだろう。
育成に関して細かいことは、下記から調べられる各記事を読んでいただけたらと思う。
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『史上初の無敗三冠牝馬・デアリングタクト 日高の小さな牧場で生まれた牝馬に起きた3つの出会い』(テレビ東京スポーツ、2020年11月21日)
https://www.tv-tokyo.co.jp/sports/articles/2020/11/015200.html
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【推奨検索ワード:デアリングタクト「えりも」で培った精神力 サンスポ】
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『デアリングタクトを見抜いた岡田牧雄の執念』(netkeiba.com、2020年10月13日)
https://news.netkeiba.com/?pid=tarekomi_view&no=11555
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『ノルマンディー昼夜放牧延長の効果とは』(ブログ「おら一口馬主さ始めるだ」、2017年12月7日)
http://hitokuchibanushibeko.blog.fc2.com/blog-entry-679.html
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『【岡田牧雄氏(前編)】姉弟で夢の有馬記念へ! メロディーレーン&タイトルホルダー育成秘話』(netkeiba.com、2021年12月21日)
https://news.sp.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=50313
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『岡田牧雄氏に聞く 馬を見る上で大切にすべきこと』(一口馬主DB、2021年11月4日)
https://www.umadb.com/
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2021年、ビッグレッドファームがベンバトル(Benbatl)を種牡馬として導入することを発表した。ベンバトルは2014年生まれのイギリス産馬、馬主はゴドルフィン。4歳時にドバイターフ(GI・芝1800m)を3馬身半差で完勝している。この時の2着がヴィブロス、3着が同着でリアルスティールとディアドラ。日本のGI馬を相手にしなかった。
その後、やはり4歳時にドイツとオーストラリアでGIを制覇する。同じ年に3つの国でGIを勝つのだからスゴイ。6歳時には1着賞金1,000万米ドル(当時のレートで約11億円)のサウジカップ(ダート9F)に挑んで3着。7歳時になってイギリスでGIIを勝ち、同年で競走生活を終えた。生涯成績は25戦11勝だった。
父はドバウィで、母はイギリスの3歳牝馬チャンピオン。血統に関して詳しくは、下記のビッグレッドファームのホームページを見ていただけたらと思う。一言で「また重厚な血を持ってきたな…」という印象で、いかにも岡田一族らしい。
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『新種牡馬ベンバトルの導入について』(ビッグレッドファーム、2021年11月4日)
https://news.sp.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=50313
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ふと思うのが、「もしかしてデアリングタクトと配合することを目的として連れてきた?」というものだ。前述のようにデアリングタクトには「サンデーサイレンス(アメリカ産)の4×3」のクロスがある。ベンバトルはサイアーラインをたどれば4代父がアメリカ産のミスタープロスペクターで、ダンシングブレーヴ、エタン、カーリアンといったアメリカの血も入っている。
ただ、父ベンバトル、母デアリングタクトの競走馬を作ろうとして、5代血統表内に出てくる父系と母系をまたいだクロスは「ミスタープロスペクターの5×5」だけになる。強靭、かつ切れる競走馬ができ上がりそうだが、さて…。これは私の勝手な想像でしかないが、付けることがあったら楽しみだ。
なお、データベースサイトの「JBISサーチ」では、架空血統の血統表を作ることができる。いろいろとおもしろいので、試してみることをすすめたい。
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【推奨検索ワード:JBISサーチ 架空血統】
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競走馬のふるさと案内所のコラムにベンバトルについて触れたものがある。下記の検索ワードからたどり着いてもらいたい。中で「亡くなった先代の岡田繁幸が、ドバウィの産駒の活躍を見て、ドバウィは本物の種馬だ、と言っていました」というビッグレッドファーム代表・岡田紘和氏の話が紹介されている。
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【推奨検索ワード:ベンバトルがビッグレッドファームにスタッドイン 競走馬のふるさと案内所】
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ベンバトルの22年度の種付け料は受胎条件で250万円。同ファームのゴールドシップが200万円で、「ベンバトルが最高値の種牡馬」ということになる。
重厚な血、スピードもスタミナも備えた血…。ちなみに、ドバイターフで日本馬を完封した時の時計は1分46秒02(良)だった。日本の時計が出る馬場に対応できるだろうと思われるし、砂質は違うが自身はサウジカップでダートでも結果を出している。
デアリングタクトうんぬんは私の想像で、ビッグレッドファームがベンバトルに大きな期待をかけているのは間違いない。初年度は108頭の牝馬に種付けされている。同ファームや岡田一族の他の牧場の牝馬が多いが、社台ファームやダーレー・ジャパン・ファームもいて、注目している生産者はいるようだ。
桜花賞3着のスマイルカナは気になるし、マイネカンナ、エントリーチケット、マイネレーツェル、ウインファビュラス、ウインシャトレーヌなどがいて、デビューが待たれる。
で、何とメーヴェがラインナップに名を連ねている。タイトルホルダーとメロディーレーンを産んだ牝馬…。ベンバトル×モティヴェイター(Motivator)という配合はとても興味深い。
クロスを調べると「シャーリーハイツの5×3」、「シャーペンアップの4×5」、「ミルリーフの5×4」、「ミスタープロスペクターの5×5」、「ノーザンダンサーの5×5」と、歴史に名を残す大種牡馬の名前が5つも出てくる。ちなみに、ミルリーフはシャーリーハイツの父で、6代までさかのぼると「ミルリーフの(6×5)×4」になる。
5代血統表を見た時、ひっくり返るぐらいに驚いた。これほどに大種牡馬のクロスが連発するのはなかなか見ない。最近ではファントムシーフの血統表に恐ろしさを感じたが、それに負けない衝撃である。先に「デアリングタクトに付けるために…」と妄想を書いたけど、ベンバトルは“メーヴェ用の秘密兵器”だったのかもしれない。
なお、社台ファームが付けたのはファビュラスセンス。父はグラスワンダー、2代母がマイルで切れたカッティングエッジで、この仔も活躍してくれそうだ。
「ジャパンスタッドブックインターナショナル」が提供する「血統書サービス」のサイトで、どの種牡馬がどの牝馬に種付けされたかのリストを調べることができる。下記の検索ワードでサイトの検索ページが見つけられるので、そこからベンバトルの相手を調べてみていただきたい。
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【推奨検索ワード:JBIS ファントムシーフ】
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【推奨検索ワード:血統書サービス 種雄馬別種付け雌馬】
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日本競馬の最大勢力である社台グループは、血という面ではサンデーサイレンスがあふれた状態になっている。このままでいいはずはなく、1つの策としてポエティックフレア(Poetic Flare)を導入した。22年から社台スタリオンステーションで種牡馬生活を始めている。
競走馬としては英2000ギニー、セントジェームズパレスSと芝8FのGIを2勝。血統的には、サイアーラインをさかのぼるとドーンアプローチ~ニューアプローチ~ガリレオ~サドラーズウェルズとなる。母の父は、“ザ・ロック”の愛称で知られるロックオブジブラルタルだ。
22年の種付け料は受胎条件で600万円。種付け頭数はベンバトルと同じ108頭となっている。お相手の牝馬を見ると、アクアミラビリス、アマルフィコースト、インヘリットデール、カーロンバンビーナ、カデナダムール、ガロシェ、コンテッサトゥーレ、ダイワレジェンド、チェッキーノ、ラシンティランテ、ラナンキュラス、ランズエッジ、ヴェルザンディ、ヴェルスパーなど、社台系の良血馬がわんさといる。漏れが多くあって、この点はご容赦いただきたい。それほどまでに社台は本気だ。
なお、ウインガーネット、オートクレール、ライジングリーズン、レアファインドなど、岡田一族の牧場にいる牝馬が数頭いる。“欧州系の重厚な血”となれば、彼らが目を付け、欲するのは自然なことだろう。
ポエティックフレアが付けた牝馬に関しては、前出の「血統書サービス」で調べていただけたらと思う。
社台はドバイゴールデンシャヒーン(UAE)を連覇するなど短距離で活躍したマインドユアビスケッツ(Mind Your Biscuits)も導入している。アメリカ産馬、ポッセ×トセットの配合でアメリカ系の血統。「デピュティミニスターの3×4」というクロスがある。
ファーストクロップは2022年にデビュー、種付け料は200万円(受胎確認後支払い)。12月12日の時点で産駒は中央で17勝を挙げている。12月14日にはデルマソトガケが川崎で行われた交流GIの全日本2歳優駿を制覇した。
あと、世界的な組織であるゴドルフィンのグループに属するダーレー・ジャパンがウィルテイクチャージ(Will Take Charge)を導入していて、23年から種付けが始まる。
アメリカの血が濃く、スピードに秀でたタイプ。「ファピアノの3×4」というクロスがあるのがおもしろい。アメリカで種牡馬としてデビューしていて、初年度にハリウッドゴールドカップ(米GI)勝ちのゼアゴーズハーバードを出した。この産駒にも日本の競馬、血統地図に影響を与えることになるかもしれない。
日本軽種馬協会(JBBA)が導入したデクラレーションオブウォー(Declaration of War)も注目されるところだ。アイルランド調教馬になるが、アメリカ産でスピード色が濃い。14年はアイルランド、15年からはアメリカで繋養され、シャトル種牡馬としてオーストラリアでも産駒を出している。
産駒はフランス、アメリカ、オーストラリアでGIを勝っている。日本ではジャスパージャックがマル外馬として活躍し、22年の12月に中山芝1200mでラピスラズリステークス(L)を逃げ切って勝利した。
日本産の産駒がデビューしたのは22年。トップナイフが萩ステークス(L)を勝つなどしていて、これからも走る子供が出るだろう。
もちろん、血の問題を考えて海外から導入された種牡馬は他にもいて、ググって調べていただけたらと思う。
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先に昼夜放牧のことを書いたが、社台系の牧場でもJRAの育成牧場でもやっているごく一般的なもの。岡田一族の専売特許というわけではない。
ビッグレッドファーム明和の坂路コースについても触れたが、滋賀県にある社台のノーザンファームしがらきにも立派な坂路コースが作られている。屋外の直線800mのコースで、高低差は約40mにもなる。ノーザンファーム天栄(福島県)にも立派な坂路コースがあって、資金のレベルが違う社台グループの施設は凄まじい。
岡田一族の育成について土台の作り方を書いたが、社台グループはこれに触発された部分があったか? それは考えすぎか? 社台グループがこれを聞いたら怒るか?
社台の馬は特別に高額である。「良血ゆえに体質が弱い」という馬も多い。体ができていない段階で下手にタフな昼夜放牧をやったり、坂路やコースで強い負荷をかけると、壊れる危険性が出てくる。
良血の牝馬の場合、デビューできなかったとしても繁殖牝馬として価値が高い。牡馬の場合、目立つ成績が残せなかったとしても血統と馬体が良ければ種牡馬になれる可能性はある。元手がかかっていることもあり、優しい扱いになるのは当然ではあるだろう。
「これが重なることが良血馬がひ弱になる要因の1つなのでは?」とか思うのだが、わたしは遺伝子学の専門家ではないし、本当のところはわからない。名伯楽だった藤沢和雄師は、「牝馬はあまり実戦を使わず、早めに繁殖に上げた方がいい」と話していた。
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『ノーザンファームしがらきの調教施設』(ビッグレッドファーム、2021年11月4日)
https://www.northernfarm.jp/facilities/shigaraki/
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次に下にあるリンク先の記事を読んでいただきたい。Business Journalの記事で、少し古くて2015年のものになる。書かれているのは、社台の吉田照哉氏と吉田勝己氏、岡田一族の故岡田繁幸氏と岡田牧雄氏の4人が集まった時の話。しかし、何とも豪華なメンバーだ…。
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『社台帝国の二大巨頭からの“上から”発言に発奮して誕生した一口馬主クラブ』(Business Journal、2015年6月30日)
https://biz-journal.jp/2015/06/post_10562.html
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社台の吉田一族と岡田一族の関係性については、いろいろと書かれることがある。全体の規模がずいぶんと違うのは確かで、「岡田一族が吉田一族に対抗意識を燃やしている」という感じで言われがちだ。まあ、人の腹の内など本当のところはわかるはずもない。互いが刺激し合い、互いにいい面を取り入れ、日本調教馬のレベルが上がってくれたらファンとしてはうれしい。
先に挙げたレックスは吉田一族と岡田一族の両方がかかわっている。ポエティックフレアのところで名前を出したビッグレッドファームが所有するレアファインドは、もとは社台ファームの生産馬だ。薄い関係であることはない。
ではあるものの、22年の凱旋門賞は個人的には不思議な思いを持って観戦していた。挑戦したのはタイトルホルダー、ドウデュース、ステイフーリッシュ、ディープボンドの4頭。前出のようにタイトルホルダーは岡田スタッドの生産馬で、ドウデュースとステイフーリッシュは社台系の生産である。
社台の生産馬の凱旋門賞といえば、まず思い浮かぶのが06年のディープインパクト。大きな期待を集めたが、3位入線で失格(禁止薬物が検出)となった。12年と13年にはオルフェーヴルが2年連続で2着。寸前までいったことはあっても勝利には手が届いていない。
「そんな状況で先に岡田一族の生産馬が凱旋門賞を勝ってしまったら…」
タイトルホルダーが勝ったりしたら、吉田一族も複雑な気持ちになるだろう。素直に喜べなかったとして、人間だから致し方ないのではとも思う。
結果は日本勢はすべて凡退。逃げてレースを引っ張ったタイトルホルダーが11着(20頭立て)で最先着だった。直前に降った大雨が痛かったのは確かだが、それも凱旋門賞の一部である。
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岡田一族が鍛えて地を作った馬は、久々の時、中1週とかローテーションを詰めて使った時にも注意を払わないといけない。
久々、休養明けに関しては、牧場で乗り込んでから厩舎に返すケースが多いため、トレセンで乗り込み量が少なく見えても復帰緒戦でいきなり結果を出したりする。
美浦所属馬の場合、トレセン近郊にあるビッグレッドファーム鉾田に放牧に出されることがある。鉾田は81頭分の厩舎があるトレーニングセンター。トレッドミル、ウォーキングマシーンといった施設があり、640mの屋根付き坂路コースもある。ここである程度のレベル、あるいはかなりのレベルで仕上げてくるわけだ。
ローテーションを詰めて使うことに関しては、土台がしっかりしていることを考え、一般的なケースに当てはめない方がいい。
例えば「中1週使い」はパフォーマンスを落とすケースが多い(主に1勝クラス以上での話)。これは競馬を見てきている人ならわかっていると思う。厩舎のコメントで「前走は中1週が応えた」、「中1週でどうか」というものが非常に多いことからも明らかだ。
ただ、もちろん、馬によってまったく違う。例えばナムラクレアのデビュー時のローテーションや攻めの内容、そして、結果を確認してもらいたい。あと、メイショウドウドウなど、中1週で続け走っても攻めで速めの時計を出し、かつ実戦で堅実に脚を使ってくる。
デアリングタクトは22年の秋、エリザベス女王杯で1番人気に推されて6着に敗れたあと、中1週でジャパンカップを使った。さすがにこれには批判的な論調が多く、「壊れたどうするんだ…」と思った競馬ファンは多かったと思う。
レースは馬群に入ってタイトな競馬になった。並の馬なら、途中で戦意喪失していただろう。しかし、直線に向くとマーカンドのスペシャル級にパワフルな追いに応え、馬群を抜けて伸びてくる。残り100mではスペースがなくて外に持ち出すロスがあり、それでも脚を使って勝ったヴェラアズールと0秒2差の4着で入線した。
5番人気(単勝1,300円)での奮闘。「もう少しスムーズに運べていたらあるいは…」とも思うが、仮定でしかないのでわからない。デアリングタクトは6歳も現役を続けることになった。
デアリングタクトが6着だったエリザベス女王杯を2着したのが岡田一族のウインマリリン。そこから中3週のレース間隔で香港ヴァーズ(芝2400m)に挑んだ。レーンが騎乗し、直線で大外から豪快に伸びて抜け出してみせる。若い頃から肘種に悩まされてきたが、手術をしていい方向に向かい、ついに国際GIのタイトルをつかみ取った。
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【推奨検索ワード:中日スポーツ ウインマリリンの中間不安要素「肘腫」って何だ?【獣医師記者コラム・競馬は科学だ】】
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10年、20年が過ぎた時、日本の生産界、生産馬の質とレベルは大きく変わっているだろう。今は変化の途中にあり、岡田一族が刺激、影響を少なからず与えていると個人的には思っている。
社台グループにダーレー・ジャパン、他のグループもそうだし、個人馬主もそう。調教師や騎手、獣医、装蹄師など競馬にかかわるすべての人間が加わり、日本の競馬を底上げしてくれるはずだ。
あと、2023年から平地競走の負担重量が引き上げになる(基本は1キロ)。これは岡田一族にとってプラスになる気がするが、どうなるだろうか。競走馬の底力アップにつながることが期待され、しかし、故障する馬が増える可能性がある。
岡田一族の今後にはより一層、注目したい。みなさんも、この項で書いてきたことを実際の競馬で確かめていただけたらと思う。
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『来年から変更となるJRAの負担重量 2003年以来20年ぶりの変更の狙いとは』(netkeiba.com、2022年11月15日)
https://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=213359
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