24年皐月賞を振り返る~一番速い馬が勝つレースを勝った正体不明の生物~
週中、競馬ニュースを眺めていると『牝馬が皐月賞を勝てば76年ぶり』という活字が目に飛び込んできた。
お前は76年前に何をしていたのかと言われても、まだこの世にいなかったから答えかねる。
76年前、1948年は一体何があったのかと思い、文明の利器Wikipediaを開いたところ、いきなりマハトマ・ガンジー暗殺というニュースが目に入った。それはだいぶ前だな。
1948年、当時は農林省賞典と言われていた皐月賞を勝ったのがヒデヒカリ。ただ当時は7頭立てで、今とは競走体系が違うから、76年ぶりとはいえ比較は難しい。
牝馬は桜花賞→オークスというのが基本路線であって、別に必ずこちらに出ないといけないわけではないが、この時期の牝馬の有力馬はこの路線か、マイルが短い馬であればフローラS→オークスという路線を歩む。
レガレイラの場合はスワーヴリチャードにハービンジャーという血統的背景に加え、現3歳世代のサンデーレーシング牝馬のレベルが高い影響もあって、早くから桜花賞ではなく皐月賞に進むプランは進行していた。
逆に言えば桜花賞は不向きで、長い距離に向くと判断されている、とも言える。そんな牝馬が『一番速い馬が勝つ』と言われている皐月賞でどんなレースを見せてくれるのか、これがマスクの最初の注目点だった。
トニカクハヤイイ
もう一つ、マスクが注目していたポイントがある。今週の天気だ。
関東在住の方は分かると思うが、今週は火曜に雨が降った後、水曜以降は雨がほとんど降らない日々が続いていたんだ。予報を見てこれは馬場が速くなるという予測は立てられるし、予想にも今年の皐月賞はタイムが速そうと書いている。
そして日曜。中山8Rで、皐月賞と同じ芝2000mの野島崎特別という2勝クラスの特別戦が行われたんだけれど、勝ち時計がなんと1:58.2だったんだよ。
いや、いきなりタイム出されても速いのか遅いのか分からんという人間に向けて説明すると、中山芝2000mのコースレコードは15年中山金杯ラブリーデイ、17年皐月賞アルアインが記録した1:57.8。
野島崎特別は2勝クラス。しかも牝馬限定。しかも9頭立て。本来であれば速い時計なんぞ出ない条件設定なのに、コースレコードと0.4秒差の好時計が出たのだ。
☆皐月賞と、当日の2勝クラスの勝ち時計
・19年 良
鹿野山特別 1:59.4
皐月賞 1:58.1
・20年 稍重
鹿野山特別 2:03.0
皐月賞 2:00.7
・21年 稍重
鹿野山特別 2:02.3
皐月賞 2:00.6
・22年 良
野島崎特別 2:01.0
皐月賞 1:59.7
・23年 重
野島崎特別 2:00.6
皐月賞 2:00.6
3年前までは当日に行われる2勝クラスが鹿野山特別。2年前から野島崎特別に変わったんだけれど、ペースの違いもあるから一概には言えないとはいえ、例年1.5~2秒前後皐月賞のほうが速い。昨年は例外。
☆今年の野島崎特別
12.7-11.9-12.3-11.7-11.5-11.7-11.6-11.5-11.5-11.8
1:58.2
前半600m 36.9
前半1000m 60.1
後半600m 34.8
勝ちタイムを見て驚いた。1:58.2だったんだもの。いや、馬場が速くなる想定はあったから、勝ち時計が速くなることに関しては別に驚きはない。
前半1000mが60.1と大して速くなかったのに、これだけのタイムが出たことに驚いたんだ。ハイペースなら分かるが、9頭立てということもありペースは上がりにくい。
中盤から全て11秒台、単純に今年の野島崎特別はレベルが高かったと言えるんだけど、これだけ速いラップが最後まで刻めてしまうくらい速い馬場が登場したんだ。
前述したように、皐月賞は同日の2勝クラスの特別より1.5~2.0秒ほど速い年が多い。野島崎のレベルも高かったから2秒はないとして、ペース次第で1分56秒台の皐月賞もあるのではないか…という予測はあった。
☆24年皐月賞
12.2-10.5-11.5-11.7-11.6-11.8-12.0-12.1-11.7-12.0
1:57.1 1位
前半600m 34.2 1位タイ
前半1000m 57.5 1位
後半600m 35.8 7位タイ
この順位は14年~23年の皐月賞と比較したもの。前半3Fは1位タイ、前半5Fは1位。とんでもないハイペースだった。
前回前半600mが34.2だったのは16年ディーマジェスティが勝った年なんだが、この年は強烈な南風が吹いていて、スタートから1コーナーまでが追い風だった影響もある。
今年はそこまでの風は吹いていない。実質1位と考えていいだろうね。それくらい今年のペースは速かった。今の馬場でこれだけペースが速ければ、当然勝ち時計も速くなる。
結果、出たタイムは1:57.1。皐月賞レコードが17年アルアインの1:57.8。0.7秒も更新するスーパーレコードが出てしまった。
まずは全体タイム、ラップを頭に入れてこの先の話を聞いてほしい。
トニカクババイイ
馬場についても少し話をさせてくれ。
・4R 芝2200m 未勝利
1着緑 クリフハンガー モレイラ
2着白 ブラックバラード 横山武
3着赤 リリエンフェルト 幸
これは日曜の中山、最初の芝のレースとなった2200m未勝利の4コーナーだ。こうして改めて見ると、4コーナーで好位にいる馬が上位を占めていることが分かる。
1000m通過61.6、まー、前で決まるのもある程度納得のレースではあるのだが、次の芝レースだった8Rの野島崎特別の4コーナーを見てほしい。
8R 芝2000m 野島崎特別
1着桃 エンパイアウエスト モレイラ
2着橙 シランケド デムーロ
3着白 コスタレイ 川田
ペースはもう説明したから省略するが、こちらのレースでも4コーナーである程度前にいる馬が上位を独占していた。
そして4R同様、少しだけ外を走っている馬がより上位に来ている。というより2着だった橙シランケドのデムーロが内を空けているのがここから分かる。
10R 芝2500m ドゥラメンテC
1着黄 セイウンプラチナ 武豊
2着緑 サトノクローク 松山
3着黒 ダノングロワール デムーロ
これは日曜の中山、芝3R目となった10RのドゥラメンテCだ。これまでの2Rと違って内目を使えているという違いこそあれ、ある程度前にいる馬が上位を占めているという点は変わりない。
つまりここまでのレースから、今日の中山の芝は『内は使えはするが、基本的には外前が有利』と考えられる。
なんで前がこれだけ来ているかって、その理由はラップに書いてある。
・4R 3歳未勝利
12.2-11.5-12.6-12.8-12.5-12.2-11.9-12.3-12.3-11.8-11.7
・8R 野島崎特別(2勝クラス)
12.7-11.9-12.3-11.7-11.5-11.7-11.6-11.5-11.5-11.8
・10RドゥラメンテC(3勝クラス)
7.1-11.9-11.9-11.7-12.2-12.8-12.5-12.5-12.1-11.7-11.6-11.5-11.9
お分かりだろうか。ここまでの3Rは全て、残り400mからの2Fがどちらも11秒台なのだ。
序盤緩んでいた4Rはまだ分かる。ただそれでもこの時期の未勝利とは思えない加速ラップだった。10Rにしても中盤12.8が入ったとはいえ、『セイウンプラチナが11.5-11.9を使ってくる馬場』なのだ。
セイウンプラチナが毎回上がり上位の脚を繰り出せる逃げ馬だったら話は異なるが、そんなことはない。切れ味に欠けるタイプのセイウンプラチナがラストを11秒台連発でまとめられるくらい直線の負荷が少ないんだよ。
どちらもスローだから出たんじゃないかというご意見もありそうだが、8Rの野島崎特別なんか、残り1400mから7F連続で11秒台だ。これだけ厳しいラップになりながら、前の2頭は11.5-11.5-11.8と全て11秒台で乗り切っていた。
ラストがこれだけ軽い馬場になってしまうと後ろの馬は辛い。レース上がりラップというのは前にいる馬が出している数字だ。このタイムを差し切るには当然、レース上がりよりだいぶいいタイムを出さないといけないわけ。
2F連続で11秒台前半を出せれば差し切れてもいいが、直線の短い中山でこの数字が出せる馬は条件戦には存在しない。
しかも皐月賞の時間帯の中山は、南西からの風が3m。直線は追い風ではあっても向かい風ではない。負荷が一切ないことから、皐月賞も4コーナーである程度前につけないと話にならない可能性が高かった。
つまり4コーナーでこの赤丸の位置にいられる馬たちだ。セイウンプラチナは逃げ切れているとはいえ、中盤に12.8を刻んで息を入れられていた。
さすがに皐月賞でここまで緩むことはなく、すると逃げ馬は苦しいから、有利条件は4コーナーで外前にいられる馬、となる。
昔は開催最終週の皐月賞ともなると、時計も掛かって、外のほうが断然有利な差し馬場になることが多かった。使うほど内は掘れるしね。
今は馬場整備技術がとにかく高い。そのため最終週だろうがペースによっては内も使えてしまうくらいいい馬場が出てくる。
念のため書いておくが、これは造園課が意図して速い馬場を作っているわけではない。しっかり整備しないと馬が馬場に脚を取られる危険性が出てくるし、走りやすい馬場を追求すればそりゃ走りやすくなってタイムも出る。
しかも今朝の中山は朝露があったようだし、そこに昼間の高温が重なって馬場が一気に締まった可能性もある。造園課の計算以上に速い馬場だった説はあるね。
我慢できなかったメイショウタバル
トニカク○○イイというタイトルを連発した以上、ここも合わせるべきかと思ったのだが、トニカクデガイイなんていうタイトルをつけたらそれは乳酸菌を取り過ぎた人間だ。腸が活性化し過ぎている。
この回顧をココ壱番屋でカレーを食べながら見ている人間もいる可能性がある。自重させてもらった次第だ。
さて、いい加減皐月賞本体の話に入ろう。いつもであればスタートから一つ一つポイントを見ていくところだが、今回は少し趣向を変えさせてもらう。
まず触れたいのはある意味レコードの立役者となってしまったメイショウタバルだ。ネットでは『浜中速過ぎ』『何も考えず飛ばし過ぎ』なんていう声も見られるが、浜中だってもう何年もジョッキーをやっているのだから、それくらいは分かる。
なんてことはない、落としようがなかったのだ。
このレース、逃げ候補は以下の通り。
②白メイショウタバル(毎日杯ハナ 35.2)
④黒シリウスコルト(弥生賞ハナ 35.2)
⑥赤アレグロブリランテ(スプリングSハナ 37.5)
⑪ホウオウプロサンゲ(若葉Sハナ 36.1)
これ以外で俺は逃げる候補を思い浮かばなかったのだが、いやいや、ここは○○が逃げるよという候補があったのであれば、400字詰めの原稿用紙20枚分くらいの理由を添えてマスクに送ってほしい。
基本はこの4頭のいずれかがハナということで衆目の意見は一致していたのではないかな。まー、スプリングSで前半3F37.5、超スローで逃げていたアレグロブリランテハナの可能性は最初から除外していた。
ホウオウプロサンゲも大して速くないし、マスクは逃げるならメイショウタバルかシリウスコルトと見ていた。シリウスコルトは昨年の芙蓉Sを4番手で進めて勝ったのを見ても、別にハナにこだわらなくてもいい。
並びからすると、より内を引いたメイショウタバルが逃げる想定で馬券を買うレースだったと思う。
☆24年毎日杯
12.6-11.2-11.4-12.1-12.3-12.0-11.6-10.9-11.9
これはメイショウタバルが逃げ切った今年の毎日杯のラップだ。そもそもこれは阪神のワンターン1800m、皐月賞は中山の一周だから比較対象にはならないんだけれど、それは前提の上で。
毎日杯でメイショウタバルは序盤11.2-11.4で入りながら、そこから12秒台前半を3つ並べて少し息を入れていた。そしてラスト2Fから10.9を踏んで後続を離して勝負を決める、というやり方だ。
今年の毎日杯、えらく数字がいい。極端に緩んでいるわけでもなくて、それでも10.9を刻めるのは単純に能力が高いから。今回大敗したが、マスクはメイショウタバルが弱いとはまったく思っていない。
浜中からしても今回やりたかったのはこれだろう。やっぱりどこかで息を入れたかった。
ところがスタート後100m過ぎ、このあたりですでに白メイショウタバルの頭が少し上がっているのが分かるだろうか。騎乗している浜中の肘が、他のジョッキーより少し下に下がって曲がっている。
まー、レース動画を見てくれればいい話なんだけど、すでに引っ掛かりつつある。それを抑えにかかっているのだ。
17着メイショウタバル 浜中騎手「返し馬は落ち着いていましたが、ゲート入りに手間取ってテンションが上がってしまいました。リズム良く運ぼうと思いましたが、掛かってしまいました」
まー、気性が難しそうなのはこれまでのレースを見ていても何となく伝わってくる。少なくともそんなに簡単な馬ではないだろう。
上手ければ抑えられるというイメージを持たれる方もいるかもしれないが、そもそも相手は一馬力だ。人間には限界がある。もちろん一馬力に勝てる腕力がある場合、話は変わるが。
☆24年皐月賞
12.2-10.5-11.5-11.7-11.6-11.8-12.0-12.1-11.7-12.0
※24年毎日杯
12.6-11.2-11.4-12.1-12.3-12.0-11.6-10.9-11.9
結果生まれたのがこのラップだ。毎日杯と違い、中盤に一切溜めが作れていないのが分かる。序盤からして10.5-11.5だもんな。ここでもっとゆっくり行きたかったのだろうが、1つ前の画像を見ても分かるようにシリウスコルトなども結構速かった。
周りも速い、こっちは掛かっている。浜中に与えられた選択肢がなさ過ぎる。できることと言えば抑えることくらい。しかし相手は一馬力。日本語で、このような状況を『詰み』と言う。
しかも白メイショウタバルは1000m通過57.5という超ハイペースで逃げているのに、他の馬たちが同じ画面に普通に映っているのだ。
黒シリウスコルトで大体1秒ほど遅れて通過しているから、58秒台半ばでの逃げというところだろう。これでも十分速い。後ろは追走力が試されてくる。
正体不明の存在 ジャスティンミラノ
予想を書く以上、ある程度細かく書くことにはしている。そのため予想が毎回長文になる。あまり『分からない』とは書きたくない。
ただ今回のジャスティンミラノは違う。『(共同通信杯を)勝ったジャスティンミラノは正直分からん』と予想に書いてしまった。
☆ジャスティンミラノのここ2走
・2歳新馬 東京芝2000m
13.0-12.1-12.7-12.6-12.7-13.0-12.4-11.4-10.8-11.3
前半600m 37.8
前半1000m 63.1
・共同通信杯 東京芝1800m
12.8-12.2-12.3-12.7-12.7-12.2-11.4-10.9-10.8
前半600m 37.3
前半1000m 62.7
なんで分からんと書いたかって、理由は単純。中盤が厳しいレースをやっていないからだ。
弱いなんて一切思っていなかった。前走共同通信杯のレース上がり2Fが10.9-10.8。能力がない馬が、こんなラップを乗り切れるわけがない。能力が高いのは分かる。
ただ新馬も、共同通信杯も、どちらも1000m通過は62.5以上掛かっている。しかもどちらも一周ではない。今回は一周で、ペースがある程度締まる。どんだけ少なく見積もっても、これまでのレースより1000m通過タイムが2.5秒~3秒は速いだろう。
3秒と書くと大したことないように思うかもしれないが、15馬身以上の差だ。これまでの2Rとはまるで違う適性が求められる。対応できるかどうかは正直やってみないと分からない。だからマスクは予想に、『分からない』と書いた。
前走62.7通過の流れで10頭立ての5番手からちょっと上がるくらいのポジション。正直今回、10番手くらいにいても全然驚かなかったし、対応できないならそれも納得できる。
なあ、シンエンペラーより前にいるんだけど。
紫シンエンペラーは前走こそ内で締められていたが、ホープフルSも好位で運んでいたように、ある程度前に行ける。
今回はシンエンペラーが橙ジャスティンミラノのポジションにいて、内を締める読みだった。ところがシンエンペラーの前にジャスティンミラノがいるのである。普通に追走できていてびっくりしてしまった。
ジャスティンミラノの母・マーゴットディドはイギリスの1000mGIナンソープSの勝ち馬。スピードがある馬だった。子どももスピードがあると言われてもそこに関しては納得できるのだが、まさか今回こんなにスムーズに前に行けるとは思わず。
紫シンエンペラーの瑠星は切り換えて、橙ジャスティンミラノの真後ろにつけた。強い馬の後ろがベストポジションだともう見飽きるくらい回顧に書いたから今更触れないが、与えられた状況を考えるとベストな判断だったと思う。
俺はまさかジャスティンミラノがこんなポジションで前を視野に入れているとは予想していなかったし、ただただ驚きながらレースを見ていた。
前述したように、馬場は4コーナーで外前を確保できる馬が優勢。この時点でジャスティンミラノは悪くないところにつけている。
トニカクウマイイ
また始まったよと思った方もいるだろうが、マスクは手っ取り早く回顧を書いて、今週のトニカクカワイイを再度読み直したいのだ。
水曜早朝に読んではいるのだが、仕事が控えていて心穏やかに読めない。翌日、何もない状況でじっくりトニカワを読みたいんだよ。
いや、何もないはいい過ぎた。明日月曜は総裁の命令で網戸の掃除をしなければいけない。トニカクムナシイ。
話を戻そう。もう7300字まで来てしまった。この章で見たいのはコスモキュランダとモレイラの位置取りだ。
これは皐月賞の向正面。前述したように、馬場は外前有利。つまり赤丸で囲んだあたりのポジションがいい。黄ジャンタルマンタル、橙ジャスティンミラノあたりのポジションだ。
実際ジャスティンが勝って、ジャンタルマンタルが3着だから、ほぼ馬場通りの決着ではあったんだが、好走馬の中で少し違うポジションにいるのが緑コスモキュランダさ。
与えられた枠順は6枠12番。18頭立てという状況を考えると、まー、渋谷のギャル100人に聞けば95人が外枠と答えるところだろう。残り5人のうち3人は真ん中と言うだろうし、残り2人は皐月賞に襷コースがあると勘違いして内枠と答えるかもしれない。
コスモキュランダのモレイラが、外枠という状況から、なぜか向正面で内ラチ沿いにいるのだ。
動画で見てもらったほうが絶対分かりやすいから、文章を読みつつこちらのVTRを見てほしい。
しかし便利だね、このカメラがあるおかげで前からも後ろからも状況が把握できる。思考がより分かりやすいようになった。
これは最初の直線。緑コスモキュランダの内に、紫ホウオウプロサンゲがいるのが分かる。これは失敗したな、シンエンペラーも紫なのに、何も考えずに紫の矢印をつけてしまった。
これ、よく見ると緑コスモキュランダのモレイラが内側を見ているのが分かるだろうか。動画で確認してほしい。モレイラがスタートしてから何度も内を見ている。
動画で見てくれたほうが本当に分かりやすいのだが、何度も内を見ながら少しずつ内に寄せていった緑コスモキュランダのモレイラは、ゴール板手前で内ラチ沿いを視界に捉えた。
モレイラからすると、水アーバンシックは大してテンが速くなかったことがより追い風になったね。おかげで、内ラチとの間にいるのは青ルカランフィーストくらいとなる。
緑コスモキュランダのモレイラが狙っていたのはこの青丸で囲んだ部分だ。白サンライズジパングの後ろにあたる。
先ほど『強い馬の後ろはベストポジション』と書いた。マスクはサンライズジパングが弱いとは思わない。実力のある馬だが、この中間アクシデントがあって弥生賞を回避したりと、うまくいっていないのは事実だ。
本来であれば白サンライズジパングの後ろというのはあまりいいポジションではない。
ただラチ沿いを取り切った後の画像を見ると、このポジションは実は悪くないことが分かる。というのも、斜め前には紫シンエンペラーがいるのだ。
仮に白サンライズジパングが早めに垂れても、シンエンペラーの後ろに避難できる。
実はモレイラは先週の桜花賞で似たようなことをしている。最初はアスコリピチェーノの後ろにいたのに、途中からアスコリピチェーノの後ろから離脱してシカゴスティングの後ろに入りにいっていた。
通常のセオリーならシンエンペラーの後ろだと思うが、あえてターゲットを斜め前に置いて、道中はロスなく回れるラチ沿いを通っている。
確かに内の状態がまだ持っていること、全体的にペースが流れて馬群がちぎれている分囲まれていないことはあるが、それにしてもだよ。『リスクを背負って1頭分内に詰める手』は感心するものだ。
この経緯があるから、向正面でこうなる。モレイラの視線はもう左前の橙ジャスティンミラノ、紫シンエンペラーのほうを向いているんだ。
しかもこのレース、前述しているように、ペースは流れている。
☆24年皐月賞
12.2-10.5-11.5-11.7-11.6-11.8-12.0-12.1-11.7-12.0
道中11秒台が並んで、過去10年と比較しても1位のハイペースとはもう記したんだが、内の状態がまだ持っている状況を考えると道中は内で脚を溜めたほうが有利にはなる。たぶんペースを考えると、モレイラが一番向いているんだよな。
あとは3コーナー過ぎから橙ジャスティンミラノ、紫シンエンペラーが動き出すタイミングに合わせて、後ろからついていけばいい。
幸いだったのは緑コスモキュランダの外が黒ホウオウプロサンゲであることだと思う。
ホウオウプロサンゲも悪い馬ではないが、ならここでコスモキュランダを締めるほどの実力があるかというと、客観的に見てそれは厳しいだろう。締めきれない。ここが例えばレガレイラだったら話は変わったんだろうけどね。
締め切れなかった黒ホウオウプロサンゲを置き去りにした緑コスモキュランダは、あとは橙ジャスティンミラノが主導する武蔵野線ABCマートラインに乗車すればいい。俺はあまり乗車したくないけど。不当に料金が高そう。
再度モレイラのジョッキーカメラを見てほしいが、一切モレイラは不利を受けていない。2000mずっとスムーズに回ってきた。実際レース後モレイラも「スムーズに運びました」と言っている。
ただ逆に考えると、これだけ道中ロスなく回り、ロスを削ったのに、ずっと外を回っていた橙ジヤスティンミラノに負けたのだ。
最後の着差は同タイムクビ差だが、この2頭には明確に力量差があると考えられる。
トニカクシンドイ
堂本剛の正直しんどいを思い出すタイトルになってしまった。見てたなあ。
今回の皐月賞、見せ場を作りまくっていたのが3着だったジャンタルマンタルだ。
白丸で囲んだように、これは皐月賞4コーナー、残り400m地点。
青ジャンタルマンタルが早くも黒シリウスコルトを交わし、白メイショウタバルを視界に捉えている。
☆24年皐月賞
12.2-10.5-11.5-11.7-11.6-11.8-12.0-12.1-11.7-12.0
残り400mからというと、この太字にした11.7が刻まれ始めた地点だね。
画像を見ると分かるように、青ジャンタルマンタル川田がもう追い出しているのだ。かなり早めに踏み込んでいる。
それこそ先行集団の中では一番早く踏み込んでいると言ってもいいかもしれない。
本日、マスクが『ジャンタルマンタルはこれ以上ない騎乗』とPostしたところ、「早め先頭過ぎたから負けた、これ以上ないなんてことはない」というお便りが届いた。
大体こういうお便りは具体的な数字がなく、見た目の観測で言われるのだが、せめて具体的な数字を出したご意見が欲しい。具体性についてはあまり期待していないんだけど。
☆24年皐月賞
12.2-10.5-11.5-11.7-11.6-11.8-12.0-12.1-11.7-12.0
改めて皐月賞のラップを見てほしい。ラスト1Fが12.0となっている。その前が11.7だから、0.3秒落ちた。これだけ見ると上位が最後止まっているように見えるんだけれど、そうでもない。
これは残り100m過ぎたあたり。まだ青ジャンタルマンタルが先頭にいるのが分かる。つまり、レース上がり2Fの11.7-12.0というのは、ほとんどジャンタルマンタルが出した数字なんだ。
ジャスティンミラノとコスモキュランダはジャンタルを差し切っているわけだから、これ以上速い脚を使っている。
0.3秒の失速だから、止まった…といえば止まっているが、それでもよく踏ん張っているとも言えるんだよ。
では仮に、早めに仕掛けないで4コーナーで溜めたとしよう。ジャンタルマンタルが後ろにいた橙ジャスティンミラノとほぼ同じ位置から、末脚勝負に持ち込んで勝てるのだろうか。
これが中山マイルなら話は変わるが、舞台は中山の2000mだ。そもそもジャンタルマンタルは戦前から距離に不安があるとされている馬で、体力勝負だと分が悪い。
4コーナーといえば、すでに1700m近く走っているわけ。ある程度の疲労が溜まった状態から、すでに2000以上で結果を出しているジャスティンミラノやシンエンペラーあたりと末脚を比べて勝てる馬なのか、という話さ。
☆ジャンタルマンタルの過去4走の上がり3F
新馬 京都1800m 34.6 1位
デイリー杯 京都1600m 34.7 2位
朝日杯FS 阪神1600m 34.8 3位
共同通信杯 東京1800m 32.6 2位タイ
これまで4戦3勝2着1回、まったく崩れていない馬ではあるのだが、上がり3Fタイムを見ると、最速を使ったのが新馬だけという馬。デイリー杯は2位、朝日杯は3位。
ジャンタルマンタルという馬の長所は競馬が上手いところ。道中引っかかるものの、 馬群は捌けるし、パワーもある。非常に器用で、毎回テストで全教科85点くらいを取ってくるタイプ。
こういう馬で、何か特定教科で100点を取ってくるタイプを相手にする時、相手と同じことをしては結局負ける。
川田の視点からすると、ジャスティンミラノあたりがどこにいるかくらいはすぐ後ろだったし分かると思うが、その後ろのシンエンペラーや、レガレイラのポジションは分からない。
これらの有力馬が差してくる可能性が高い状況で、後ろに合わせて仕掛けを待って、似たようなポジションからヨーイドンで走っても勝てないんだよな。1F11秒台前半を使えるわけでもない。まして長い距離で体力に不安がある中で。
だったら逆に仕掛けを早めて、4コーナー出口で後ろとのアドバンテージを取る作戦のほうが効率がいい。これが東京2000なら絶対できない作戦だ。4コーナーで動いたところで、長い直線で捕まるんだから。
しかし中山の直線は310m。520mちょっとある東京より200mは短い。後ろが脚を使ってくる前に自分が脚を使って勝負を決めてしまう、身を削るやり方は十分あり。相手が有力な差し馬ばかりだったしね。
川田もハイペースだということは分かっている。それでも「勝ちに行く競馬をした」と言っているように、これは勝つための競馬なんだよ。なぜ追い出しを待たなかったかって、それは『負ける競馬』なのだ。
川田がレース後、「最後の1Fは完全に止まってしまった」と話しているが、それが分かるのが直線。
青ジャンタルマンタルの川田は右ムチを入れていることが分かる。つまり馬は逆のほう、左側に寄っていく。
ただ青ジャンタルマンタルは川田の意思に反して、少しずつ内にモタれていく。川田が何度も右ムチを入れているにも関わらずだ。
つまり川田は、内にモタれていくジャンタルマンタルを矯正しようとしている。ところがジャンタルマンタルはもう限界が近いから、少しずつ内に内にモタれていった。
相当しんどかったと思うよ。堂本剛が連続しんどいで縄跳びしていた頃の100倍くらいしんどかったと思う。
勝ちに行った結果だからね。溜めてもほぼ切れ負けているし、勝率を上げるためにやった戦法に対して、馬がよくここまで耐えた。
俺が小泉純一郎だったら馬房の前で「よく頑張った!感動した!」と賞状を渡しているところだ。完全に止まったと言っても失速は0.5秒くらいだろう。立派。
川田が最後止まったと言ってるのも分かる内容で、本来は1800m以下の馬。今後使うたびに短いほうの距離に適性が寄っていくと思う。とにかく競馬が上手いから来年の中山1800m中山記念で狙いたいんだけど、その頃まで1800が持つかどうか…。
札幌1500なんかいかにも上手そう。ただ重賞がない。中央競馬は小回りのマイルが少ないからなあ。中山マイルもGIIIまでだし…。外回りならマイラーズCみたいなレースは合いそう。
上がりがより問われるレースになると、相当上手く立ち回らないとキレ負けする。NHKマイルCも展開によるし、今回相当動かしたから反動が少し出そうではある。
正直これまでの数字は半信半疑な部分があったんだけれど、すごいね。朝日杯も早く踏み込んで粘り切ったが、似たようなことを2000でもできると思わなかった。いい馬。
トニカクナガイイ
もう1万2000字だよ。ここから他の馬に触れないといけないのに、とてもじゃないが12時に間に合う気がしない。サクサク行こう。
2着コスモキュランダはもうだいぶ触れたからいいかな。立ち回りも完璧。全部スムーズ。これで負けたんだから仕方ない。競馬の内容は100点。相手が強かった。それ以上ない。
お父さんのアルアイン同様、立ち回りが上手い。内がいいレースや小回りで良さが出る。ダービーとなると内はいいが、コースが広いからここまで上手くはいかないかな。勝ち切るまでにはいかないと思う。
いずれ函館記念で狙いたかったんだけど、もうそういう状況の馬ではなさそう。弥生賞の数字が良くて、それでも結構半信半疑だったのだが、数字通りだった。正直侮っていた。気性面にまだまだ成長する余地がある。ああ、セントライト記念で買おうか。
4着アーバンシックはトモが緩い分前半からポジションを取れないのが難点。どうしてもポジションが後ろになる。
3コーナーでホウオウプロサンゲの内から入っていきたかったところだが、できずに外を回るあたりがこの馬の短所。緩くて動ききれない。画像がないのは俺が疲れてきたからだ。パトロールビデオで見てくれ。
逆に言えばそんな状態でここまでやれているんだから能力は高い。東京になると今度は外に張りそうな点がネックになるのがどうかだが、この中間色々あったことを考えると上積みはありそう。ダービーでも相手で抑えたい。
5着シンエンペラーは瑠星が言っているように、「現状の力は出し切った」と思う。確かに外目を回っているが、ジャスティンミラノの真後ろに入れている。本来であれば有利か不利かというと、前者。それでもジャスティンに離された。正直完敗。
以前は直線で思い切りモタれたりしていたものだが、だいぶマシにはなっている。今日のパドックも良かった。仕上がりも少しずつ良くなっているし、ダービー馬になれるかというと疑問だが、現状の数字、上昇度なら好勝負は可能じゃないかな。
左回りがプラスに出る気がしている。この馬はこれから伸びるね。今年の秋かというとまだ早い気がするけれど、来年が楽しみな馬。
6着レガレイラは、『一番速い馬が勝つ』皐月賞に対応できなかった、それに尽きる。
☆23年ホープフルS
12.5-10.8-12.1-12.5-12.1-12.2-12.1-12.4-12.0-11.5
前半1000m 60.0
☆24年皐月賞
12.2-10.5-11.5-11.7-11.6-11.8-12.0-12.1-11.7-12.0
前半1000m 57.5
冬場の開催とは馬場が違うから、同じ条件とはいえ一概に比較できないところはあるのだけれど、2.5秒も違うんだもん。しょうがない。
それこそラスト1F以外は全部皐月賞のほうが速い。『ずっと速く走る』ことを求められて、それに対応できなかった。基本的にこれが一番大きいと思う。
しかも4コーナーで橙サンライズアースを外に吹き飛ばしてしまった。まー、これが大きかったとは言わないが、全体的に最後まで皐月賞という船に乗れずに終わった感じ。
調教師は「仕上げ切れなかった」と言っていたが、この中間はテンションを上げないように慎重に仕上げたことについて言ってるんじゃないかな。むしろアイビーSは気持ちが入らずに最後届かなかった。気持ちの合わせ方が難しい。思った以上に仕上げにくい印象が強いね。
当然1Fのラップがもっと遅くなる東京2400のほうが乗りやすくはなると思う。上がり勝負も対応はできる。やはり次も気持ち次第かな。あとゲート。全体的に未完成。まだこれからの馬。
10着ミスタージーティーもまだまだこれからの馬。今回は中間カイ食いが悪く、細いまま。よく468で出てきたなと思うくらい陣営が努力して出してきたデキで、今回は正直仕方ない。
東京だと若干キレ負けする可能性があるし、現状はコーナー4つのそこまでコーナーが広くないコースのほうが良さそうではある。
前脚の出方が非常にいい馬で、ホープフルSの前脚の出には感動した。あのレベルの出が戻ってくれば、もっと上に行ける。休み明けのセントライトで体が増えていれば楽しみがあるね。
9着だったサンライズジパングはたまにいる頭の位置が低い馬。荒れた芝や道悪になると走りにくいタイプ。
時計出る馬場になってきたしもう少しやれるかと思ったが、この馬場でもノメっていたというし、今後狙いどころがかなり絞られそう。走り方がすぐ変わるとも思えない。
12着サンライズアース、13着ビザンチンドリームもまだまだこれから。全然いい話は聞いていなかったが、実際気性が子ども過ぎる。逆に言えばそんな状況で自力で賞金獲得して皐月賞に出てくるんだから、どちらもいい馬。
どちらももう少し常識に掛かってほしいね。ビザンチンドリームの新馬の数字は素晴らしいものがある。今後に期待したい。来年かな。
トニカクツヨイイ
さて、1万4000字まできてしまった。珍しく日をまたいでしまったな。メシ食いに行ってた先週より早く取り掛かったし、なんでこんなに時間が掛かったのか分からない。思い出す原因が子どもとピザ食べてダベっていたことくらいだ。おかしいね。
勝ち馬の話をしよう。といってももうレース内容の話はしてしまったから、時計面について少し触れたい。
☆皐月賞 勝ち時計ベスト5
1:57.1 ジャスティンミラノ
1:57.8 アルアイン
1:57.9 ディーマジェスティ
1:58.0 ロゴタイプ
1:58.1 サートゥルナーリア
こうして見ると速いなあ。ロゴが58秒出した時点でだいぶ速いと思ったものだが、11年で更に1秒ほど詰まってきた。
もちろんある程度限界ラインはあると思うが、いずれ皐月賞が1分55秒台になる日も来るのかもしれないね。
一つ問題になってくるのは、皐月賞を速いタイムで勝った馬たちがダービーでそこまで成績を残せていないことだ。
1:57.8 アルアイン→5着
1:57.9 ディーマジェスティ→3着
1:58.0 ロゴタイプ→5着
1:58.1 サートゥルナーリア→4着
偶然ではなくて、それこそロゴタイプはその後安田記念を勝って、アルアインがマイルチャンピオンシップで3着に入っているように、時計が速くなり過ぎると、『リアルに一番速い馬が勝つ皐月賞』になる。
アルアイン5着 (1着レイデオロ)
ディーマジェスティ3着 (1着マカヒキ)
ロゴタイプ5着 (1着キズナ)
サートゥルナーリア4着 (1着ロジャーバローズ)
隣の()内はその年のダービーの勝ち馬だ。レイデオロやマカヒキのような皐月賞で負けた馬、別路線から来たキズナ、ロジャーバローズのように、通常であればまだまだ他馬でも逆転可能。
ただこの4頭とジャスティンミラノには異なる点がある。この4頭は後傾の上がり勝負をほとんど経験していないのだ。
それこそロゴタイプなんかはダービーまで上がり3F最速の脚を使ったことがなかった。アルアインも新馬だけ。アルアインはこれまでの履歴や運び方がジャンタルマンタルに似ている。ならジャンタルマンタルがダービーで勝てるのかって話。
対してジャスティンミラノは共同通信杯でヨーイドンの上がり勝負になり、上がり3F32.6の脚を使って勝ち切っている。これまでの4頭とはちょっと毛色が違うんだよな。
母マーゴットディドは短距離馬で、胴がそこまで長いとは思わないが、跳びもそれなりに大きいし、東京2400mが問題ない可能性は十分あると思う。
その点から、『とにかく速さが問われた皐月賞』の勝ち馬でもダービーをこなす可能性はある。3戦目でこの数字が出せるんだから間違いなく能力は高い。
しかしスローの上がり勝負から、前傾の持続戦までなんでもできるね、この馬は。しかもキャリアが浅いのに。学習能力も高い。調教でも乗り手に丁寧に教え込まれてきたんだろう。
今更書かなくても巷に溢れかえっている話だが、今回のジャスティンミラノは1週前追い切り、2週前追い切りが藤岡康太くんだった。
いつものように調教をつけていたのにな。先週の水曜、誰もこうなることを予想してはいなかったと思う。予想なんかしてはいけない話だしね。
先週の桜花賞回顧で、マスクが最後に、レースとはあまり関係なく藤岡康太くんの話を始めたことを覚えている人間もいると思う。
日曜夜、その時すでに藤岡康太くんがかなり危険な状況であると聞いていて、ただただ祈るように最後の一文を書かせてもらった。快復することを願ってね。
今週は心に穴が空いた気分だった。別に仕事でレース後話を聞くくらいの関係性だけど、いつも配慮してもらって、こっちからすると本当に助かるタイプのジョッキーだったんだよ。
もちろんコメントは義務ではない。レース後気持ちもしんどい時に出してもらわないといけないから、負担を掛けているのは自覚している。
それでもこちらにやってきては一言でもちゃんと残してくれるのが藤岡康太くんだった。マスクは1、2列後ろから競馬する彼をあまり馬券的に評価することはなかったが、それと人間性は別。藤岡康太くんを悪く言う人間は今のところ見たことがない。それくらいいいヤツだった。
結婚して、子どもができて。子煩悩で、お子さんの成長に合わせるように成績も上昇して。
これからだろうよ、まだまだ。お子さんが小学生になって、中学生になって、もしかしたらその後ジョッキーになったかもしれない。ライダーになって藤岡厩舎に入っていたかもしれない。
誰よりも楽しみにしていたのは藤岡康太くんだったと思う。それだけに胸が痛いし、残されたご家族を思うと辛い。
色々考えさせられる一週間だった。とある調教師に「今、家族を大事にしなさい」と言われて、より考えてしまったよ。別に俺はジョッキーではないが、明日何があるか分からないなってな。
今週、どのインタビューでもジョッキーが泣いていた。友道師も泣いていた。これだけ泣かれる人間はこの世にどれくらいいるんだろうな。俺も泣いたよ。年下ではあるが、尊敬する人間の一人だった。
競馬は常にドライに考えたいマスクだが、ジャスティンミラノの直線は本当に後押しがあった気がしてならない。本来こういうことは考えてはいけないんだけどね。
昨日の中山グランドジャンプの後に黒岩が言ったからというわけではないが、最後に言わせてほしい。
康太、お疲れ様。