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24年NHKマイルCを振り返る~不運もあった珍しい不利~
NHKマイルCというレースは難しい。
いや、俺何年か前に予想か回顧で書いたな。最近記憶力がアリさんで、昨日総裁に頼まれたことももう忘れてしまっている状況のマスクが思い出せるわけがない。
総裁からは「ちゃんとメモを取りなさい」と言われているのだが、普段から仕事でメモを取りまくる影響か、家に帰ると一転、メモを取るのが面倒なのだ。
と、総裁に言ってしまうと俺の名前をデスノートにメモされる可能性があるからマスクはギリギリのところでまだ言っていない。我慢、忍耐、これが夫婦生活を続ける上で重要なことだ。大谷翔平くん、聞いているか?
マスクはマクラでそんな話をしたいわけじゃなかった。NHKマイルCが難しいという話をしたかったんだ。
NHKマイルCは難しい
タイトルと本文被ってるじゃねえかと思った読者の方には非常に申し訳ないのだが、難しいのだから仕方ない。
なんで難しいのか、マスクが考えるに理由は大きく分けて4つある。4つもあんのかと思われそうだが、もう少しマスクの話を聞いてくれ。
1.ゴールデンウィークの開催
近年はゴールデンウィークの開催になっているこのレースだが、当然ながら輸送面で時間が掛かる。3歳春という時期はまだ環境変化に弱い。いつもより輸送時間が掛かってしまうとなかなか大変。
このゴールデンウィークというのは固定制だ。憲法記念日や子どもの日の開催で固定しているのなら金曜にやったりする可能性はあるが、基本的に2回東京3週目6日、NHKマイルCはここで固定されている。
☆春の東京のGI
Aコーススタート
2回2日目→なし
2回4日目→なし(裏が天皇賞)
2回6日目→NHKマイルC
ここまでAコース
2回8日目→ヴィクトリアマイル
2回10日目→オークス
ここまでBコース
2回12日目→ダービー
3回2日目→安田記念
3回4日目→なし
ここまでCコース
3回6日目→なし
3回8日目→なし(裏が宝塚)
よくダービーの1枠有利が叫ばれるが、何度か書いているようにダービーがCコース開幕週であることによる。
同じ東京マイルのGIであるヴィクトリアマイルはBコースの開幕週、安田記念はCコースの2週目。2週目でも厄介なのに、NHKマイルだけ『3週目』の開催なのだ。
年によるんだよな。内が掘れていなければ開幕3週目でイン有利の時があるし、3週目の分外伸びになるかもしれない。直前まで馬場を見ないといけなくなる。
2.3歳春であること
先ほど触れたように環境変化に弱い一面もあるが、この時期は短距離馬が普通にマイルを走っている。橘S→葵Sと短距離路線は整備されたものの、みんながみんなこの路線を歩むわけではない。
☆NHKマイルC 過去5年のタイム
19年 1:32.4 33.9-34.6 良
20年 1:32.5 34.1-34.5 良
21年 1:31.6 33.7-34.7 良
22年 1:32.3 34.1-34.9 良
23年 1:33.8 34.3-35.4 稍重
予想にも書いたのだが、基本的にこのように前傾ラップになるレースだ。
通常のNHKマイルは勝ち時計が1:32.5以内で決まってくるのが普通。ペースは34秒前後で入ることが多い。
それこそ前半3F35秒以上掛かったのは15年、クラリティスカイが勝った年が最後。基本は34秒前半、速い時は33秒台後半で入ってくる。
『マイル』で、『1分32秒台』で、『前半から速く後半も速い』というレースは3歳春までほとんどないんだよ。
3年前の7番人気2着ソングラインがその後にヴィクトリアマイル、安田記念を連勝しているが、『コースリピーター』を生みやすいのはこのため。
『隠れリピーター』がいる可能性があって、たまにとんでもない穴馬がやってくる。阪神外回りマイルとかならここまではないんだろうが。
3.いろんな路線から馬がやってくる
ダービーで考えてみてほしい。前走なんて皐月賞、青葉賞、京都新聞杯、プリンシパルS、たまに毎日杯やNHKマイルCだろう。
☆今年のNHKマイルC 前走レース
中京1400m ファルコンS 3頭
阪神1800m 毎日杯 1頭
阪神1600m アーリントンC 3頭
阪神1600m 桜花賞 3頭
中山1600m ニュージーランドトロフィー 3頭
中山2000m 皐月賞 2頭
東京1600m サウジアラビアRC 1頭
東京1600m クイーンC 1頭
前走が8組もあるんだよ。しかも条件設定はバラバラ。1400から来る馬もいれば、2000mから来る馬もいる。前走比較が難しいのも、NHKマイルならではと言える。
4.主要トライアルがまるで役立たず
言い方はなんだが、結局のところニュージーランドトロフィーが本番に直結しているかというと、それは否。中山芝マイルと東京芝マイル、求められるものは当然変わってくる。これもまたNHKマイルを難しくするポイントの一つだ。
まだ阪神外回りのアーリントンCのほうが直結しそうなもんだが、ニュージーランドより1週遅い開催で、皐月賞の前日になる。
皐月賞とアーリントンは本番まで中2週。関西馬はこのタイトなスケジュールで2度輸送をこなさないといけない。これも結構ハード。反動が残っている可能性もある。
ここまで4つのポイントについて触れてきたが、NHKマイルCというレースはこのようなレースを難しくするポイントがいくつもあることを頭に入れておいてほしい。
たくましく生きる内
たまにど根性野菜がニュースになる。マスク、ああいうニュースに弱いんだよ。アスファルトで覆われたところから何とか生きようとする姿、美しいと思わないか?
まー、それはいいとして、まず前の章の1番に関わる部分から書いていきたい。Cコース3週目となった東京の芝だ。
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昨日から東京芝は内、前の有利が目立っていた。改めてスクショとって1Rずつ貼っていくと回顧が終わらないから省くが、これは8R。
緑グランドカリナンが走っている少し前のところ、緑の丸で囲んだように内目の芝は少し掘れていて、色が変わっていることが分かる。
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ただ内が入れないかというとこれがそうでもなくて、緑グランドカリナンは内を使い、7番人気ながら3着に粘り込んだ。
2着は内目を通った赤リミットバスター。勝ったのは直線外を通ったとはいえ、最内枠スタートの白ハギノアルデバラン。
このレースを見る限り、3週目で色が変わっていてもまだ内が終わっていないことが分かる。
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加えて影響を及ぼしていたと思われるのが、この南風だ。日曜は風が強く、メインの時間帯は南からの風が6mほど吹いていた。
東京競馬場の南風は向正面からスタンドのほうに吹いてくる。直線は横風になるんだけれど、東京の南風は外差しを止めてくる傾向があるんだよね。
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近年の東京の南風で代表的なのが4年前のフローラSだ。砂ぼこりでパトロールの画質から怪しくなっているのだが、勝ったのはインで立ち回った黒ウインマリリン。2着がすぐ隣で立ち回っていた青ホウオウピースフル。
外組は桃フアナがなんとか3着に差したレースで、基本的に南風が強いと外が怪しくなってくる。
3週目でもまだそこまで悪くない内、そして南風。この2点から、今年のNHKマイルCは内目が伸びる展開になる可能性が高いと考えられた。
ハイペースか、スローペースか
馬場の次はペースを見ていこう。まずは今年のNHKマイルCのラップから。
☆24年NHKマイルC
12.3-10.7-11.3-12.0-12.0-11.4-11.2-11.5
34.3-34.1 1:32.4
☆NHKマイルCの前半3F 過去10年速い順
33.7
21年シュネルマイスター 良
33.9
19年アドマイヤマーズ 良
34.1
20年ラウダシオン 良
22年ダノンスコーピオン 良
34.3
16年メジャーエンブレム 良
23年シャンパンカラー 稍重
24年ジャンタルマンタル 良
前半3F34.3というペースは、過去10年で5番目タイのタイム。つまり至って標準だ。同じ34.3でも昨年は稍重。それよりはペースは辛くない。
☆前半3F34.3のNHKマイルC
16年 良 1:32.8
12.3-10.7-11.3-11.7-11.7-11.3-11.5-12.3
23年 稍重 1:33.8
12.4-10.6-11.3-12.0-12.1-12.0-11.5-11.9
24年 良 1:32.4
12.3-10.7-11.3-12.0-12.0-11.4-11.2-11.5
今年のNHKマイルを考える上で一番のポイントと言っていいのは、中盤の緩み方だろう。600m→1000m区間が12.0-12.0の24.0だったのだ。
これ、遅いんだよ。600m→1000m区間のタイムとしては過去10年で8位タイ。昨年は12.0-12.1の24.1で一番遅いのだが、ここ10年で唯一の稍重馬場だった影響もある。
実際16年のラップと比べてほしい。前半3F34.3は同じだが、600m→1000mが23.4だった16年に対し、今年は24.0。緩んでいるのが分かるよな。
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前述したように今日の東京競馬場は南風。つまり青矢印の方向に風が吹くのだが、600m→1000m通過という部分は高低図から分かるように3、4コーナーの部分なんだ。
つまり追い風区間なんだよ。本来だったらラップが速くなってもおかしくないのに、ここでペースが緩んでしまった。
マスクは前の章でNHKマイルについて『前半から速く後半も速い』と書いたが、今年は少し違って、『中盤が遅く後半が速い』というレースだった。実質、スロー寄りと言ってもいいくらいのペースだったのだ。
☆NHKマイルC好走馬
1着⑯ジャンタルマンタル 3-3 33.9
2着⑭アスコリピチェーノ 5-3 34.2
3着⑥ロジリオン 8-6 34.0
4着⑫ゴンバデカーブース 9-9 33.9
5着④イフェイオン 6-6 34.4
勝ったジャンタルマンタルが3番手から上がり3F33.9を使うのも納得と言っていい。これを差し切るには33秒台前半の数字がいるし、南風がそれなりに強く吹いている状況で33秒前半はなかなか難しい。
3番手を取れた時点でジャンタルマンタルはだいぶ有利になり、馬場、風を踏まえても外を回り過ぎると話にならない状況さ。
勝負を分けた8枠のスタート
では、そもそもなんでこんな中盤が緩んで上がり勝負になったかって、一番の要因は8枠のスタートにある。
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たぶん緑アルセナールから買っていた人間は頭を抱えたんじゃないかな。桃アルセナールが思い切り出遅れてしまった。
レース後武史が「ゲートは最後入れで良いかなと思っていたものの、入ってから急に体勢が悪くなってしまい、整える間も無くゲートが開かれてむしろ最後入れがアダになってしまいました」と話している。
大外枠のマイナスポイントだよなあ。大外は最後入れだからゲートの中に入っている時間は短い。ゲートの中で我慢できない馬なんかは最後入れの大外がプラスに働く。
ただ逆に言えば、ゲートの中にいる時間が短い分態勢を整える時間が他馬に比べて圧倒的に短いんだ。ジョッキーに聞いても「大外枠は難しい」とよく聞く。
もう一度一つ前の画像に話を戻そう。思い切り出遅れた緑アルセナールに対し、桃ジャンタルマンタル川田は絶好のスタートを切った。問題はその奥の紫ユキノロイヤルで、スタートしてすぐに躓きかけて、スピードに乗り切れていない。
手元に競馬新聞があるなら見てほしいが、前走逃げていたのはこのユキノロイヤルしかいない。2走前に範囲を広げてもキャプテンシーしかいない。貴重な逃げ候補がスタートの時点で飛んでしまったんだよね。
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黄キャプテンシーは未勝利、ジュニアカップを逃げ切ったとはいえ、そこまで速い馬でもない。ユキノロイヤル出遅れも重なって、赤ボンドガールが逃げるというまさかの展開が生まれてしまった。
正直マスクはボンドガールハナを一切考えていなかった。折り合いにちょっと怪しいところがあり、少なくとも序盤から飛ばすような馬ではないから、この時点で標準~スローはほぼ決まったと言ってもいい。
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これはパトロールで見てくれたほうが圧倒的に早いんだけれど、実際赤ボンドガールは掛かっていた。この画像でも少し分か…らないな。静止画の限界を見たね。
まー、橙シュトラウスがその5万倍くらい掛かっていたから印象度としてはだいぶ下がるんだが。シュトラウスの掛かり方は凄かったなあ。
話を戻すと、ボンドガールは掛かれば当然抑え込む。ハナに行った馬が抑えたことで、序盤のペースはそこまで上がらず、中盤は緩んでしまったんだ。
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上記の馬場、風向き、ペースを踏まえると、イン前有利になる分、黒イフェイオン、赤ロジリオンあたりがいいポジションになってくる。実際イフェイオンは5着、ロジリオンは3着だった。
注目したいのはその外。絶好のスタートを決めて先団に取りつこうとしている桃ジャンタルマンタルの内に、橙アスコリピチェーノがもういるのだ。紫マスクオールウィンの真後ろにいる。
桜花賞で中団追走、今回もそのくらいかと思ったら先行策だもんなあ。ペースが遅いと見るやポジションを取りにくるんだから休み明けでもこのフランス人は怖い。
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ただそんなフランス人より上手かったのが桃ジャンタルマンタルの川田だ。
あくまで客観的に見てだが、紫マスクオールウィンが直線で伸びる可能性はほぼない。伸びるような馬だったら桜花賞でもっと走れている。
よくマスクは『強い馬の後ろがベストポジション』と書いているが、逆に言えば『そこまで強くない馬の後ろはいいポジションではない』。
ジャンタルマンタルは橙アスコリピチェーノを外からガッツリブロックしているんだ。アスコリピチェーノはマスクオールウィンの真後ろという、まったく喜べないポジションに入ってしまったわけ。
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橙アスコリピチェーノのルメールは難しい。桃ジャンタルマンタルを先に行かせてその外からという手もあるが、内がまだ生きてる状態でスロー寄りとなると、先にジャンタルに動かれては捕まえきれない。
ずっとこのポジションにいれば紫マスクオールウィンが下がってくる可能性がかなり高い。すると黄キャプテンシーの後ろのほうに行くプランが現実的になってくる。
これがマスクオールウィンがめちゃくちゃ強ければ話は変わる。だってマスクが勝手に前を潰してくれて、その後ろについていくだけで進路が得られるんだから。
川田は完全に進路を潰して、アスコリピチェーノのルメールに余計に色々考えさせる競馬をさせているのだ。頭脳戦だよ、これは。
勝負を分けたルメールの進路
ペースのポイントを8枠のスタートとすれば、上位着順のポイントはやはり直線のルメールの詰まり方だろう。
Xを見ていても『なぜルメールは騎乗停止じゃないのか』というご意見を数多く見る。結論から言わせてもらうと、あれは騎乗停止にならない。
念のために書いておくが、『騎乗停止にならない』だけで、『セーフ』『無罪』と言っているわけではない。これは頭に置いておいてくれ。
たぶん今回の回顧でこの斜行の話を期待している人間も多いだろうからスペースを多く取ろうと思うが、最初に見ておきたいのは『加害馬』となったアスコリピチェーノのルメールのレース後のコメントだ。
2着 アスコリピチェーノ C.ルメール騎手「すごく良い競馬をしてくれましたし、良いポジションを取れました。『最後は狭くなりましたが』、また良い脚を使ってくれました。1600mはベストで、もう少し長くても大丈夫です」
『』の部分だ。『最後は狭くなりましたが』と言っている。
これについてXでは「被害者ぶってる」と言われていたが、ルメールは被害者ぶっているわけでもなんでもない。ありのままの事実を述べているだけだ。
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そもそも今回の事象は、桃ジャンタルマンタルが外から完璧にブロックしているからこそ起きた事象だ。
ただし川田が悪いわけではない。外からのブロックは当然ルールの範囲内であり、むしろ紫マスクオールウィンとの間に一切のスペースも与えず回ってきたことで、橙アスコリピチェーノの進路がまったくない。
このブロックは上手過ぎる。普通は遠心力で少し外に張るものだが、張る素振りが一切なかった。川田のブロックが上手いのは今に始まったことではないにしろ、ここ数年でトップクラスの完璧な締めを見せてもらった。
これにより橙アスコリピチェーノの進路は紫マスクオールウィンの内しかなくなってしまう。ジャンタルを弾き飛ばして外に進路を取ろうとしたらそれこそ裁決行きだ。
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今回話をややこしくしているのが、紫マスクオールウィンと黄キャプテンシーの間、紫丸の部分が1頭分開いたり、閉まったりしていること。
もちろん馬はまっすぐ走るほうが難しい。1頭分の進路なんてあってないようなもので、1頭分のスペースは突いてはいけないというのはジョッキーの間でも暗黙の了解。1頭分のスペースを突いて事故ったら、裁決も突っ込んだ側の責任になる。
そんなことはルメールも知っている。この1カ月の休養の間に忘れたなんてことはない。マスクは前日の朝食のメニューも忘れているのだがね。
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かといって、外に出そうとしても桃ジャンタルマンタルはしっかり内をブロックしているから出しようがない。橙アスコリピチェーノのルメールに与えられた進路は、紫丸で囲んだ、紫マスクオールウィンの内側のスペースしかなかったんだ。その当時は、という話だけど。
これはパトロールビデオを見てもらわないと分からないところなんだが、ルメールはこの紫丸のスペースにすぐに突っ込んでいるわけではない。紫丸くらいのスペースが開いてから、マスクの手動計測で3秒ほど、ルメールは突くのを待っている。
ギリギリのところだからな。1頭半分のスペースはあるから突いてもいいところなんだけれど、前述したようにこの紫丸は開いたり閉まったりしている状況だからルメールも安易に突けない。
さながらここでのルメールは、SASUKEファーストステージのフィッシュボーンでタイミングを合わせようと待っているミスターSASUKE・山田勝己のような状況だ。この前はフィッシュボーンの前でリタイアしていた気もするが…
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その待った3秒が短いか長いかどうかは人の感性によると思うが、マスクはよく待ったほうだと思う。ルメールも万全を期したタイミングだったと思うのだが、ここで大誤算が発生してしまった。
紫マスクオールウィンも内に移動してしまったのだ。
まー、これは斜行に入るかというとそうでもないところで、追っている中でこのくらいの左右のヨレは別に珍しいものでもないし、特筆すべきものではない。
困ったのは橙アスコリピチェーノ。完全に進路に入ったコンマ1秒後くらい、いや、ほぼ同時くらいのタイミングで、前にいた馬が自分の入ろうとしていた進路に入ってきたのだから。もう完全に進路に入っている状況だから切り返しも難しい。
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寄ってくる紫マスクオールウィンを回避できずに、橙アスコリピチェーノは思い切り詰まってしまった。躓いて、完全にバランスを崩している。
そのアオリを食らった黄キャプテンシー、赤ボンドガールも追えずに不利を受けてしまった。この時点で内の3頭はだいぶしんどい。
では寄っていった紫マスクオールウィンが悪いかというと、これがそうでもない。確かにフラついていたものの、蛇行レベルではない。
これがヤスナリが右ムチを叩いて内に寄せていたとなると、ヤスナリが悪いことになる可能性が増すのだが、ムチは使っていない。前述したように偶発的なヨレだ。
それこそヤスナリのゴーグルにバックミラーでもついていて、後ろが確認できるならこんなことは起きていない。ジョッキーにそんなものはついていないし、自分のほうが前にいる以上、オーロラビジョンでも見ない限り、自分の後ろがどうなっているかはよく分からない。
ルメールだって後ろから声は出しているだろうが、全部が全部届くわけでもないからね。
入ったルメールが悪いということにもなるのだが、こちらも前述したようにルメールはスペースに入るのを一旦待っている。決して無理筋なイン狙いではなかった。前述したように「最後は狭くなりましたが」と被害を受けた側のコメントを出しているのはこれが理由。
運が悪過ぎた。まさかマスクオールウィンとアスコリピチェーノが同時に動くなんて、ヤスナリもルメールも思っていなかったはずだ。
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まー、運が悪いという言葉だけで片づけたくはない場面だがね。黄キャプテンシーのデムーロ、赤ボンドガールの武さんは追えずに不利を受けてしまっているわけで。
ごく稀にこういうケースはある。『どっちが悪いのか分からないパターン』だ。ヤスナリが内に少しヨレたのも事実だし、ルメールがスペースに入らなければ起きなかった案件。
JRAではどっちが悪いか分からない時は、お互いに悪いとして制裁を同じように課すことが多い。心情的にマスクはルメールのほうが気持ち重いかなと思うのだが、ルメールとヤスナリそれぞれに過怠金3万の処分がくだった。
今回多かったのは『なぜ騎乗停止ではないのか』というご意見だ。
仮にこれが騎乗停止になったとしよう。ルメールとヤスナリ、どちらにも責任があるのにヤスナリも騎乗停止になるとすると、この程度のヨレで騎乗停止になったら競馬にならない。馬なんて基本まっすぐ走ってくれないのだから。全部のレースで騎乗停止ジョッキーが出てくる。
もちろんジョッキーはまっすぐ走らせるのが仕事だから、走らせられずに不利を与えたら制裁は食らうがね。ただ一つ前で触れたように、他のレースのパトロールを見てくれれば分かるが、このくらいのヨレ方をしている馬なんぞどのレースにもいる。
前述したようにルメールは進路に入るまで数秒待って、ある程度安全面を考慮した乗り方をしているから、ルメールが一概に悪いとも言い難い。だってヤスナリがヨレてこなければ進路は十分開いていたのだから。
複合的な要因が重なったことで今回の事例が起きてしまった。もちろんボンドガールとキャプテンシーから買っていた人間が納得できるかというと疑問だが、上記の理由から今回の件を騎乗停止にするには無理がある。
今回の件を騎乗停止とすると、極端な話、空いてる進路突いたら同時に前の馬も動いてきて隣の馬の進路をカットしたらみんな騎乗停止になる可能性があり、そんな運みたいな話で騎乗停止になっていたらレースが成り立たない。
ジョッキーが連続して落馬で亡くなるという心の痛む事故が続いた日本競馬だが、藤岡康太くんの場合は誰かが斜行したパターンでもない。
『落馬事故があったばかりなんだから厳しく裁定しろ』なんていうご意見もあったが、そんなゴールマウスみたいに簡単に動くルールでいいのかって話だよね。
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覚えている人間も多いと思うが、ルメールは今から5年前のNHKマイルCでも斜行し、降着処分を食らっている。グランアレグリアの時だ。懐かしいね。
青グランアレグリアが黒ダノンチェイサーの前をカットしたことで降着になっているのだが、この時は前を走る桃トオヤリトセイトが特に何か外に動いたわけではない。
グランアレグリアルメールが単独で動いてダノンの進路を潰してしまったから、責任の所在はルメールにある。これは完全にアウト。
今回グランアレグリアは降着だったのに、という話があったが、まったく別の事例であることを頭に入れてほしい。
この時はグランアレグリアの斜行がなければダノンチェイサーがグランに先着した、と判断されたことで起きた降着劇でもある。仮に今回、みんなスムーズだったとしてボンドとキャプテンがアスコリに先着したかというと…。
まー、こんなのは人の感じ方にもよるから深く掘り下げないがね。もちろん危ないシーンであることに間違いはない。3万だったから良しとは言わんし、そんなことは思ってもいない。
裁決が悪いよ、裁決が
常々思っていることだが、こんなことを回顧で長々と書くのは正直面倒ではある。もちろん回顧はマスクが好き勝手書いてるものだから自己責任なんだけれど、いくら説明しようが納得しない層は多い。
これはマスクの書き方が下手であることも理由の一つ。ただそれ以上に、JRAの説明が足りない。以前にも書いたと思うが、相撲なんかは取り組みが終わって勝敗が怪しい時はその後審判部長の説明がある。
野球はチャレンジの後に球審による説明が入る。別にこれらが全員納得できる回答を毎回行えているかというと違うと思うが、対してJRAの裁決の説明不足にはいつも腹が立つ。
マスクは過去の事例とかも記憶から引っ張り出しながら裁決の妥当性をある程度考えることにしているが、騒ぐ層はそんなことはしないだろう。もちろん説明したとてこの層が納得するとは思っていないよ。ただ説明が足りな過ぎて、納得できないファンを増やし続けている。意味がない。
今回の裁決は過去の事例も踏まえて考えると完全に妥当とまではいかないが、納得するところがある。別に長文で説明書き出したり、アナウンスで10分間事例を説明しろとは言わんが(本音は10分くらい説明してほしい)、少なくとも説明がほぼない現状よりはマシ。
個人的には昔より裁決の判定に不満を持つことが少なくなった。ジョッキーに聞くと意味が分からないという裁定はまだ結構あるようだし、乗っている側がみんな納得する裁定をしているとは言わないが(みんなが納得する裁定は不可能)、少しずつ良化した部分はあると思う。それだけに説明がないのはもったいなさ過ぎる。
まー、裁決もかわいそうだと思う部分はあるよ。今朝のケンタッキーダービーで瑠星がガファリオンから不利を受けるシーンがあったが、『シエラレオーネの騎手がフォーエバーヤングを上から抑えて妨害した』とか、『シエラレオーネの騎手がフォーエバーヤングの手綱を引っ張って邪魔をした』なんていうとんでもないご感想がネットの海を漂っていた。
そんなことをしたらガファリオンは長期騎乗停止、瑠星側からも当然異議申し立てがあるが、それがない時点で『そういうこと』であるのに、アメリカのプライドで日本馬を勝たせたくなかったとか、勝手に妄想を繰り広げている層がいるほどだ。
こんな層を相手に仮に説明したとて納得させられるとは到底思えないのだが、少なくとも今の説明不足は良くない。ファンだけじゃないね、ジョッキー、オーナーサイドに対しても最低限の説明を尽くすのは主催者の使命だと思う。
嫌な時代だなとも思う。今年の東京新聞杯でマスクトディーヴァの前扉が遅く開いたケースがあっただろう。仕組みを知っている側としては当然制裁がジョッキーに来るものだと思っていたのだが、知らない層は公正競馬ではないと騒ぐ。
開いていない画像だけが拡散されて、裁定がおかしいと言われる。ルール上妥当な裁決だったのにな。そういう時代だからこそ、JRAは最低限の説明が求められる。
負けた馬に光を当てよう
マスクの予定では、8000字付近までにレースの説明を終えて、残り2000字は他の馬の話、更に2000字は最近嵌まっているNHKBSの番組の話でもしようと思っていたのに、もう1万1000字だ。予定がだいぶ狂ってしまった。
これはレースの回顧だ。馬の話に戻ろう。
☆24年NHKマイルC
12.3-10.7-11.3-12.0-12.0-11.4-11.2-11.5
34.3-34.1 1:32.4
前述したように今年のNHKマイルは追い風区間の中盤が緩み、南風や直線内の状態から外差しが簡単に入らないレースだった。一種の不利を受けている外の差し組などから次以降の好走馬を拾っていきたい。
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まずは4着だった緑ゴンバデカーブース。これは驚いた。ホープフルを熱発で取り消し、中間蹄をやって頓挫があって、今日もプラス体重。
体型的に太く見える馬だが、それにしても今日は太く最初から消していた。と思ったら、外差し不利のレースで外から差して4着。驚いたよ。キャリア2戦で経験値も足りない状況でこんなに走れるんだな。
もちろんスムーズに走れた分は差し引かないといけないが、今後の伸びしろが楽しみ。まだ幼児体型で気性も幼いしね。
まだこの馬の一番嵌まる形が分からない。新馬で逃げながらサウジアラビアRCで追い込んで勝ったように何でもできることは分かるが、一周がどうなのかも結局分かっていないし、距離も延ばしていいかもしれないし、マイルがベストかもしれない。正直分からないことだらけで、今後に注目している。
そのゴンバデの斜行の影響を食らったのが7着ディスペランツァ。レース後克駿が「外に出して、いざ伸びかけるというときに、内の馬が外に出てきて、僕の馬の目の前に入って、引っ張らなくてはいけない不利がありました」と話しているが、実際この不利は痛い。
モレイラももう少し安全確認してほしいところで、致命的な不利ではあった。ペースや馬場から、不利がなければ勝ったとは言わないけれど、少なくとも掲示板はあったと思う。
マイルがベストなのはもう分かる。中盤断続的に流れるレースでどうかが分かるのはこの先の話かな。マスクは同じルーラーシップ産駒のソウルラッシュに近いタイプだと思っていて、ソウルラッシュが好走した条件で狙いたい。来年のマイラーズカップとかかな。
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あとは9着だった桃アルセナール。前述したようにゲートで終わった。最初はおとなしかったが、パドックの後半あたりからテンションが上がってきた点からもまだまだ場数を踏まないといけなさそう。これからの馬だろう。
正直上のナミュールとは違う馬で、ナミュールより数字が出ていない以上そこまでの評価ではないのだが、仮に現状の賞金のまま秋のGIが終わると、今後3勝クラスに出てくる。斤量も軽いし、さすがに買うことになりそう。
同じキャロットの16着橙シュトラウスは前半で少し触れたが、道中でもうめちゃくちゃなくらい掛かっていた。何度もXなどで触れてきたから今更細かくは書かないが、朝日杯の負け方は尾を引くと見ていて、実際それ以降折り合えていない。それ以前折り合えていたかというと疑問だがね。
持っているエンジンは間違いないが、現状馬群の中では競馬できず外枠でしか走れなさそうで、外枠の今回もこうなっている以上相当時間が掛かる。メイケイエールより大変だと思う。
簡単に言えばライオンがハミくわえて人乗せて競馬場を走っているようなもので、今後の推移を温かい目で見守りたい。ハミくわえて走るライオンを温かい目で見守るのにも勇気がいるが。
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こちらも前述したように、通常であれば内が有利になるペースだった。ラチ沿いを走る馬にも触れていくと、最先着の5着イフェイオンは全部が上手くいった。
いや、全ては言い過ぎだな。アスコリピチェーノの動きにより追い出しを少し待たされていた。ただそれ以外は完璧で、数字があまり伸びないタイプの5着。
能力はあるのだが、爆発しやすい気性もネック。今すぐここという条件が思い浮かばない。いずれ滞在のクイーンSで買いたい馬。来年夏までに気性が成長していることを祈る。いかにもクイーンSが合いそう。内枠なら最高。
その後ろを走っていた12着ノーブルロジャーは、正直デキを考えたらここまで負けるとは思わなかった。
レース後松山が「内枠で苦しい形になり、リズムはあまり良くなかったです。うまく導いてあげられませんでした」と話しているが、現状内で囲まれると駄目なタイプなのかもしれないね。
今回は数字ほど走れておらず、また巻き返す時は来る。気性を考えても1800はちょっと怪しい。いずれ1400向きになっていく可能性も感じていて、1400m短縮一発目とかは押さえておきたいね。
更にその後ろを走っていた13着白ダノンマッキンリーは、最初からマイルが長いことは分かっていた。最初から北村友一が抱えにいって、いかにもマイルは長い、という競馬。
トップジョッキーたちも怖がるくらい気性が怪しい。でも能力は高い。今回は参加賞でノーカン。いずれはスプリンターになると思う。噛み合ってくれば短距離でいいところまで行ける存在になると思うんだよね。
そうだなあ、折り合いのつかないピクシーナイトという感じ。折り合いがつかないことが一番の問題ではあるのだがね。夏以降1200主体に使うでしょう。もう少し成長すればこの先が楽しみ。
17着だった赤ボンドガールは不利が致命的だったが、それ以前に掛かっていた。でなかったらハナまで行かない。前から折り合いに難点があった馬だが、一度使っただけではガスが抜けきらなかった感じがある。
新馬の数字は完全に重賞級のそれ。昨年のサウジアラビアRCも精神面が難しかったようだし、気性の成長が課題になってくるものの、数字だけなら重賞を勝てる。いずれ京都牝馬Sで買ってそうな馬だな。
武さんのレース後のコメント「アンラッキーだったね」というのは深い。本当にアンラッキーだった。それ以外にない進路取りだった。
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3着だった赤ロジリオンは、橙アスコリピチェーノの後ろという素晴らしいポジション。強い馬の後ろはなんとやらだ。前走のファルコンSは最内枠からただ回ってきただけ。本来このくらいは走れる馬。
心の声を言わせてもらうと、ロジリオンからアスコリピチェーノとジャンタルマンタルの馬連を持っていたから2着をお願いしたかったのだが、ポジション完璧、アスコリがスムーズに行かなかったにも関わらず3着。
正直逆転できる要素がないからマスクはもう切り換えている。マイルもできる馬だが、いずれは1400主体の馬になりそうな気配はある。オーロカップに出てきたら買う。
その後ろにいた青チャンネルトンネルも現状の力は出し切った。転厩挟んで詰めていることを考慮すれば上々。なんでもできる優等生タイプ。逆に言えば飛びぬけてこれというものがない馬でオープンでは苦労しそう。
なんだけど、この馬の注目点はジュニアC2着、アーリントンC3着だったこと。それぞれ絶妙に賞金を稼いでいないため、現在の収得賞金400万。これが1勝クラスに出てくるんだよな。反則。
たぶんこれで休ませるだろうが、夏か秋、復帰一発目から普通に勝ちそう。3勝クラスまでは勝てると思う。その先は成長による。1400~1600、現状コースはそんなに問わない。
2着アスコリピチェーノはもうほとんど書いたからいいかな。不利がなければというところだし、ジャンタルマンタルに完璧に立ち回られた以上、今日は相手のほうが上手だった、とも言える。
予想や過去の回顧で触れているから今更細かく書かないが、阪神JFも桜花賞も優秀な数字で、桜花賞はあの数字で勝てないならもう相手を褒めるしかない状況。
今回の仕上がりも素晴らしいものがあった。ただ少し置かれるところがある馬だから、今後も肝心なところでの2着はありそうな馬。
チャンネルトンネルの上位互換という感じ。本当になんでもできるタイプ。3歳秋までは1800の外回りでもやれそうで、そこから距離が持たずにマイル以下を使う馬になりそうな。
来年のヴィクトリアマイルが楽しみな馬。現状の完成度からその先となると何とも言い難いが、4歳春のヴィクトリアマイルなら。
ルメールは復帰週という感じの動き。他のレースを見ていても無難な運びで、少しかばう感じの雰囲気もあるあたり、まだ休み明けという感じ。
ルメールの長所は詰まってもひたすら待って馬群を割ってくる強心臓と、それを可能にする技術。今日も追い出しを待ったとはいえ、少しらしくない動き。まー、馬だけでなく人も使って良くなっていくだろう。技術は間違いないんだから。
人も育てたマツクニ厩舎
勝ったジャンタルマンタルの話をほとんどしていなかったな。
もちろん川田のブロッキングが完璧だったのが大きな勝因であることは間違いないが、あれは川田が『アスコリピチェーノを封じれば勝てる』と思っているからやっていることで、川田にそう思わせるだけの力があるとも言える。
皐月賞の回顧にこの馬の能力面について書いているから、力量の部分は省略で。熱闘!Mリーグを観たいがために省略しているわけではない。
☆ジャンタルマンタルの過去4走の上がり3F
新馬 京都1800m 34.6 1位
デイリー杯 京都1600m 34.7 2位
朝日杯FS 阪神1600m 34.8 3位
共同通信杯 東京1800m 32.6 2位タイ
皐月賞 中山2000m 9位
NHKマイルC 東京1600m 33.9 2位タイ
この前の回顧でも触れたが、ジャンタルマンタルはこれまでのレースで上がり3F最速だったのが新馬しかない。
他馬より早めに動いて勝負を決めたり、コーナーをうまく使ってポジションを上げて押し切る形が定番になっている馬だ。今回も2位タイ。競馬の上手さを存分に披露した形さ。
ペースが流れても対応できるのは分かっているのだが、今回のNHKマイルは中盤が12.0-12.0と緩んだのも追い風になっている。
安田記念でこの600m→1000mが24秒以上掛かったのはここ10年で、不良馬場の中ジャスタウェイが勝った年、ロゴタイプがスローペースで逃げ切った年、2年前にソングラインが勝った年。基本安田は中盤が流れやすい。
マイルの締まった流れだとどうかというのがマスクの懸念点ではあるが、基本競馬が上手いタイプは簡単に崩れない。東京マイルで今後ともお世話になりそう。
毎日王冠で復帰されると取捨に迷うね。夏を超えるとたぶんマイラーになる。まだギリギリ持つ頃か。来年からは完全にマイラーになると思う。川田みたいなタイプと手が合うし、今後もマイルで川田みたいな騎手が乗った時には買っておきたい。
しかし偉い馬だね。何がって、皐月賞から中2週で勝ってしまうんだから。もちろん過去にも前走皐月賞で勝った馬はいるんだけれど、阪神外回りの2歳GIを勝って、皐月賞もある程度走って、NHKマイルCも勝つ、これはなかなか難しい。
求められる適性が変わってくるし、よほど競馬センスがないとできない離れ業。2歳王者がこのレースを勝ったのはアドマイヤマーズ以来だが、マーズに似た空気を感じさせる馬だ。つまり香港マイルも楽しみだったりする。
☆アドマイヤマーズの戦績
デイリー杯2歳S 1着
朝日杯FS 1着
共同通信杯 2着
皐月賞 4着
NHKマイルC 1着
☆ジャンタルマンタルの戦績
デイリー杯2歳S 1着
朝日杯FS 1着
共同通信杯 2着
皐月賞 3着
NHKマイルC 1着
本当にアドマイヤマーズと似ているよね、この馬は。ダイワメジャー産駒とパレスマリス産駒の違いこそあれ、レースの上手さもそっくり。
このアドマイヤマーズを管理したのが友道康夫師だ。元松田国英厩舎のスタッフでもある。ジャンタルマンタルを管理する高野友和師も元松田国英厩舎のスタッフ。
間隔を詰めても結果を出してくるのがマツクニ厩舎出身らしい。この2人と角居勝彦元調教師はマツクニ厩舎の前期、ひたすら馬を鍛えて強くする時代を知っている。
今年はキングカメハメハがNHKマイルC→ダービーを連勝して、マツクニローテを完成させてから20年の節目の年。そんな節目の年にイズムを受け継ぐジャスティンミラノが皐月賞、ジャンタルマンタルがNHKマイルを勝つのは感慨深いものがある。
もちろんこれはスタッフさんの腕がなければ成功しない。中2週のGI連戦なんてどう考えても苦しいローテで、馬を再度GIで戦えるレベルまで上げてくるのはスタッフさんたちが優秀だからこそ。旧マツクニ厩舎も腕達者な人が多かった。
マツクニローテに賛否があるのはもちろん存じ上げているが、経験値が元スタッフを通して現代に繋がっていると考えれば、あの挑戦は無駄ではなかったと改めて感じるところだ。