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24年天皇賞秋を振り返る~『後の先』を極めし予言者武豊~

強い。

本当なら回顧はこれで終わらせようと思ったんだよ。2文字でな。『。』を入れたら3文字か。

そうすりゃマスクも帰宅してからゆっくり録画した笑点を観れるし、いいことばかりな気がしたんだ。今回の天皇賞を先週の菊花賞のように1つずつ、序盤から振り返っていくのはなかなか難しい

ただいくら無料とはいえ、『強い』とだけ書いて世に出すのは申し訳ない気がしたんだ。それくらいの良心はマスクの中にも残されている。

もう大迫半端ないってbotのようにドウデュース半端ないって!で終わらせようとも思った。ただそれも気が引ける。

☆3秒で分かる天皇賞秋、雑な回顧はこちら

24年天皇賞秋を雑に振り返る~ドウデュース半端ないって~

分かるか?こうやって前振りからグダグダ書いていって、文字数を稼ごうっていう作戦だ。悪党のやり方だよ。

本来はここから今日マスクが食べたお昼ごはんの感想を書いていって話を引き延ばす手も考えたが、さすがにそこまでやるとお叱りを受けそうだから、いい加減天皇賞の回顧をしていこう。

なんかRGのあるある言いたいみたいな出だしだ。


今年の天皇賞秋を見る上での予備知識

まずは馬場の話からさせてくれ。ジャイアントのほうじゃないぞ。ブルーザーに勝ったところから話を書いていったら2万字は間違いない。

東京3R 芝1400m
桃 1着⑪チューラワンサ C.デムーロ
橙 2着⑧ダンケルド C.ルメール
緑 3着⑦ガジュノリホワイト 佐々木

全部の芝のレースを取り上げていくのも面ど…いや、あまり意味がないから抽出しながら。

まずは東京3R。このレースは2番手から進めた桃チューラワンサが勝ったのだが、逃げた橙ダンケルドが内を使って逃げ粘っている

東京8R 芝2400m 本栖湖特別
白 1着①ベンサレム C.ルメール
緑 2着⑥マンデヴィラ C.デムーロ
青 3着④ウィープディライト 松山

これは8Rの本栖湖特別。最内枠だった白ベンサレムが勝ったのだが、お分かりだろうか、ルメールが3Rと違って少し外に移動している。

そして2着緑マンデヴィラ、3着青ウィープディライトと、真ん中より外の馬たちが好走した

☆東京9R 芝1600m 国立特別
桃 1着⑧ミエスペランサ C.デムーロ
白 2着①ラファドゥラ 武豊
赤 3着③ナムラエイハブ 横山武

天皇賞直前の芝のレースとなった国立特別を見ると、勝ったのは外を走っていた桃ミエスペランサ。ただ2着の白ラファドゥラは内ラチから3頭目付近を走っている。

秋の天皇賞ウィークというのは例年、Bコース開幕週にあたる。仮柵を動かして荒れた部分がカバーされるから、前の週に比べて内の状態が良くなりやすい

そのため日曜は前半使えた内ラチ沿いが後半使えなくなったにしても、内2頭分くらい開ければ、まだまだ内は使える馬場だったんだよな

これが一週間早かったらもっと外差しになっていたかもしれない。Bコース変わりの天皇賞ウィークだからこそ、まだ内がかろうじて生きていた。

まー、Bコース変わりだからもっと極端にイン馬場になってもおかしくないところ、今年は開幕週の毎日王冠週が雨に当たったのもあって、ラチ沿い一辺倒馬場にはならなかったのだがね。

内2、3頭分を開ければ内目も十分走れる、まずはこれを頭に入れてほしい。

岩田親子の明暗

予想を読んでくれた人間なら分かるだろうし詳細を書く気はないが、マスクの今年の天皇賞のぺース読みはスローだった。

理由は簡単、ハナ候補がノースブリッジとホウオウビスケッツだったから。この2頭はそもそも飛ばして逃げるタイプではない。そしてこの2頭は同じ奥村武厩舎だ。

しかもジョッキーはノースが康誠、ホウオウが望来。そう、親子だ。そもそも飛ばさない馬たちで、しかもハナと番手のジョッキーが親子関係だったら、わざわざ潰し合うようなペースを作らない。それはそうだ。

Xのほうで『ミドルだろ』なんていうご意見がやってきたが、このメンバーでミドルになる根拠が分からなかったくらいさ。

マテンロウスカイが思いついてハイペースで逃げる可能性は考えた。ただこの馬は最近テンから掛かり倒すこともなくなったし、毎日王冠でも差しに回したのに今急にハナを切ってどうする、という思いもあったから、たぶん岩田親子がハナ、2番手のスローなんだろうなと思っていたわけ。

まさか赤ノースブリッジが今日やらかすとはなあ。ヤスナリがレース後「つっかけてしまって体勢が悪くなってしまった」と言っているが、ゲートの前扉のほうに重心がいったところで前扉が開いてしまった。

おかげでフワっと立ち上がるような形のスタートになってしまって、後ろからになってしまったんだよね。せっかくデキも良かったのにもったいないの一言。そしてこれもまた競馬だ。毎回全部上手くはいかない。息子は無事先行できたんだけどな。親子で明暗が分かれた。

ヤスナリもレース後「イメージとしては逃げるぐらいのつもりでいた」と話しているように、五分以上のゲートならハナがノースブリッジで、2番手がホウオウビスケッツ、岩田親子の隊列組みだったと思う。

しかしこれは考え方によっては、スロー確定のお知らせとも言える。だってハナ候補だったノースブリッジがそもそもスタート失敗していないのだから。

これでホウオウビスケッツがハナなら、何か変なトラブルでもない限りスローになる。このゲートを見た瞬間、マスクはスローだと思った。

24年天皇賞秋
12.8-11.5-11.6-12.0-12.0-11.9-11.8-11.1-11.1-11.5
35.9-33.7
1000m通過 59.9

日常生活で59.9という数字に触れることはそうないだろうから簡単に説明すると、昨日の東京8R芝2000m、3歳上1勝クラスの前半1000mが59.8。そう、1勝クラスと同レベルのラップなのだ。

一応ここ10年の天皇賞秋で比較すると5番目というタイムで、これだけ見れば真ん中くらいなんだが、それは他の年がもっと遅いだけであって、全然速くない。

実際スローペースだったと言っているジョッキーは何人かいて、そもそも逃げたホウオウビスケッツの望来が「GIにしてはぎりぎりスローペースで運べました」と話しているくらい。

ここで注目したいのは望来の『ぎりぎりスローペース』というコメントだ。そう、『極端なスロー』ではない。

過去、良馬場の天皇賞の代表的なスローと言えば05年の天皇賞、ヘヴンリーロマンスが勝った年。

05年天皇賞秋
13.4-11.5-12.1-12.5-12.9-12.3-11.8-11.0-11.2-11.4
37.0-33.6
1000m通過 62.4

24年天皇賞秋
12.8-11.5-11.6-12.0-12.0-11.9-11.8-11.1-11.1-11.5
35.9-33.7
1000m通過 59.9

もう20年近く前のレースだから、当時とは馬のレベルも馬場の状態も違うため一概には比較できないものの、当時の『ザ・スロー』の天皇賞秋より、1000mベースでは2.5秒速かったんだ

ラップの太字は1F12.1以上掛かったところ。東京の芝2000はスタートしてからすぐ2コーナーがやってくるため、1F目が掛かりやすい。これはノーカンとして、05年はその後2F目以降に12.1以上掛かったところが4つ

一番遅いところで12.9だからこれは超スローになるな、今見ても緩い。GIとしては驚異的なスローだ

それが今年の天皇賞を見ると、1F12.1以上掛かった区間が道中存在しないのだ。一番遅くても1F12.0。そう、中盤極端に緩んでいない

念のため触れると、ラップの構成自体は3年前の天皇賞、エフフォーリアが勝った年に近い。

21年天皇賞秋
12.8-11.5-11.9-12.0-12.3-12.0-11.8-11.1-11.1-11.4
36.2-33.6
1000m通過 60.5

24年天皇賞秋
12.8-11.5-11.6-12.0-12.0-11.9-11.8-11.1-11.1-11.5
35.9-33.7
1000m通過 59.9

ただこの年は今年以上に雨が降っていて、ダートが途中から稍重になるレベル。今年のほうが馬場は速く、スロー度合いでいえば今年のほうが上

中盤極端に緩んでいないスロー、これも頭に入れておきたい。

ここまでのおさらい
1.馬場はフラットに近い、内ラチ2、3頭分を開ければ内目も使える
2.中盤極端に緩まないタイプのスローペース
3.マスクはまだ今週の笑点を観れていない

かわいそうなルメール

声のイメージは星明子だ。

それはいいとして、今年の天皇賞秋において最もかわいそうだったのはレーベンスティールのルメールだろう。間違いない。声のイメージは長井秀和だ。

まずかわいそうだったのは枠。引いてきたのは14番。そもそも東京の2000mは外枠不利の構造をしているが、加えて今週からBコース変わりだから、極端に外伸びにはならない。

周りが追い込み馬とかであればその分インに行ける可能性は出てくるんだけれど、決してそんなこともなく並びも悪い。

逆にこれだけ悪い条件でルメールがどう乗ってくるものかと思ったら、かわいそうに、不利はもう1つあった。

スタート。桃レーベンスティールはほぼ五分に近いスタートを切っていた。その2つ隣で橙リバティアイランドが凄い体勢でスタートを切っている。

なんかどこかで見たことあるな、この体勢。ジョジョ立ちみたいな感じになっている。ここまで脚開いて体勢悪いのにスタート五分で出してくる川田が凄い。出遅れてもおかしくない局面だ。

五分以上に出た橙リバティアイランド川田は少し出していく。紫シルトホルンがなぜか外に飛んでいって右ムチで内側に戻そうとしているのも気になるが、桃レーベンスティールはこの形だと橙リバティアイランドの後ろを狙いに行く。

強い馬の後ろはベストポジション』とはもう過去の回顧でタコが腐るほど言ってきたことだ。セオリー上そうなる。

ところが桃レーベンスティールの枠がちょっと外過ぎた。そのため、橙リバティアイランドとレーベンの間に、桃丸の部分のスペースが空いてしまった。これが痛い。

14番なんか引かなければ、せめて10番くらいであればリバティの後ろに入れたのだろうが、14番だったことで2頭分ほどスペースが空いた。黄キングスパレスあたりがこのスペースに入る可能性が出てくる。

当然桃レーベンスティールとしては先ほどの桃丸のポジションに入りたいのだが、今回は黄キングズパレスの動きが非常に厄介だった。

キングズパレスが掛かっちゃったんだよね。シュタルケは「道中スローペースが厳しかった」と言っているが、そもそもこれはスタート直後の話。

気性がかなり難しい馬だからある程度仕方ない部分はあるものの、シュタルケがキングズパレスを抑え込めていない。

これはレーベンスティールのルメールのジョッキーカメラだ。これはジョッキーカメラを見てくれれば分かるんだけど、内のキングズパレスから思い切りぶつけられているんだよね。

1枚目、猛獣のように掛かって制御しきれていないキングズが外に張ってきているのが分かる。ほとんど当たり屋のようなものだ。

正面から見るとこんな感じ。黄キングズパレスが、桃レーベンスティールを外に弾き飛ばしてしまったことが分かる。

ただでさえこれからスローが待っているのに、2コーナーで外に飛ばされているようではもう厳しい。この時点でレーベンスティールの天皇賞はほぼ終わった

不利を受けたのはレーベンスティールだけではなかった。なかなか画像にしにくいところなのだが、2コーナーのところで緑ダノンベルーガが躓いているのがお分かりだろうか。

クリスチャンは「接触した」と言っているが、これパトロール見てくれれば分かるんだけれど、一旦外に飛んでいってしまったシルトホルンが右ムチを使われ戻ってきて、そこで接触してるんだよ。

実際シルトホルンの大野が一瞬だけ後ろを見ていて、ここで大野は過怠金3万の処分が下っている

東京2000の2コーナーはポジション争いも激しくなるし、どうしても接触はあるのだが、ここで緑ダノンベルーガが躓いたことで、リバティアイランドも接触して躓いてしまっている。

まー、すごく躓いているわけでもなく極端な不利とは言えないが、リズムは多少崩れただろう。大野の寄りもちょっと危なかったな。

レジェンド・武豊の思考を思考する

レジェンド武豊の思想を勝手に類推するてそんな恐れ多いことはできないのだが、今回の天皇賞において大きなポイントとなったのは武さんの思考だったと思う。少し考えていきたい。

前述したように、レーベンスティールが不利を受け、リバティアイランドも不利を受け、人気馬が軒並み不利を受けていった。その中で大きな不利を受けていなかったのがもう1頭の人気馬、ドウデュースだ。

スタート後に青ドウデュースは両サイドからちょっと挟まれてしまった。ただこんなのは競馬でよくある話だし、大きな不利にもカウントされない。

ある程度腹を括ってラストの脚にかけるレースをと思っていました』とレース後武さんが話している。先行したかったならまだしも、この程度のロスは特段痛手にはならない。

面白いなと思ったのは2コーナー前のところ。青ドウデュースが、緑ジャスティンパレスを少し外に張るような態勢になっているんだ。

腹を括った乗り方をするということで末脚に賭けるのはまあいいとして、このメンバーだとある程度スローになることは誰しもが考えるところ。

しかも武さんの目の前には『本来逃げる予定だった』ノースブリッジがいる。ノースブリッジが逃げ争いをしていないのは当然分かるわけで、武さんもこの時点でスローになることはほぼ確信しただろう。

一般的に考えて、スローペースは前が残りやすい。つまり道中なるべく前にいたいものだ。

自分がドウデュースに乗った気分で考えてくれ。これからほぼ間違いなくスローペースになる。10番手と14番手、どっちにいたいだろう

マスクは10番手だね。後ろ過ぎたら届かない可能性のほうが高いんだから。たぶん10人中9.8人くらいは10番手のほうを選ぶと思う。

武さんは天才だから14番手を選んだんだよ。これが凄い。

2コーナーまでは少し張る素振りを見せながら、すぐに考えを変えたか緑ジャスティンパレスを先に行かせたんだ。レース後「今回は馬群に入れるつもりはなかった」とレジェンドは語っているが、これにはちょっと驚いた。

マスクだったら行かせず、ちょっと出して黄ソールオリエンスの後ろに入り、ジャスティンパレスにポジションを取らせないと思う。でもそれは常人の思考でしかない。天才は違う

緑ジャスティンパレスの後ろに入った青ドウデュースの武さんだが、普通であれば、赤丸で囲んだ部分、スペースの空いたところを走りたいものだ。

これ、武さんは考えたんだろうな。確かにこのインは今、前が開いているが、いずれこのコースは怪しくなるのではないかって。

黄線で示したこの5頭がスローになるといずれ厄介なことになるんじゃないかということを、ある程度経験則で予測していたとしか思えない。そしてこの武さんの小さな動きは、後に大きな動きに変わってくる

武さんが青ドウデュースを誘導し、緑ジャスティンパレスの後ろにいれたのは当然だ。

赤ノースブリッジは出遅れてハナに行けなかったことで、掛かってコントロールが利いていない。そんな馬の後ろにいるよりGI馬の後ろに入るのは当然の選択と言える。

ただこれ、最初にジャスティンを張っていけば、緑ジャスティンパレスの位置にドウデュースは入れていたわけ。スローペースなんだから1頭分でも後ろになるのは『普通』マイナスになる。

ちょっと飛んでこれ4コーナー前あたりだが、青ドウデュースが緑ジャスティンパレスの真後ろにいる。

通常、強い馬の後ろはベストポジションだとタコを焼くくらい書いてきたが、普通は前を走る強い馬の動きを見ながらレースを進める

ところがこの場合、緑ジャスティンの瑠星が前を走る黄ソールオリエンスをターゲットに動いているのに、青ドウデュースの武さんが見ているのは桃レーベンスティールのほうなんだよな。後述。

堀厩舎の明暗

この回顧はいつも勝ち馬にあまり触れない。いや、自覚はあるよ。先週もアーバンシックに触れ始めたのは中盤遅くだった。

まー、出走馬みんな1頭ずつ動きを振り分けていったらさすがに1日では完成しないからな、マスクはもう少し休みたい。

さっきから2着馬のタスティエーラについてまるで触れていなかったから、ここから少し触れていこう。

向正面入り口で橙シルトホルンにちょっと寄られている。シルトホルンは全体的に内の締め方が雑だったな。まー、それはこれ以上書いても仕方ない。

赤タスティエーラは切り換えて橙シルトホルンの後ろについた。そこを締めにきたのが黄リバティアイランドだ。

これで仮にタスティエーラがシルトホルンの外を回るとすると、リバティアイランドは更に外を回ることになってしまう

当然川田は分かっているから、タスティエーラを閉じ込めにいく。これはもうセオリー。当たり前の動きだ。

黄リバティアイランドは3コーナーでも赤タスティエーラを締めていた。

まー、これは川田がタスティエーラの実力を評価して締めたというより、外枠のスタートだった分、なるべく内を締めてロスなく回りたかった意味合いのほうが大きそうだ。

ただ4コーナーになると、赤タスティエーラの横はリバティアイランドではなく、緑ダノンベルーガになってしまったんだよ。

タスティエーラからすると前にシルトホルンがいるから進んでいけない。その間に外を通ったリバティアイランドが上がっていったから発生した事案なのだが、緑ダノンベルーガは赤タスティエーラと同じ堀厩舎でもある。

さすがにクリスチャンも、自分の騎乗馬が内隣のタスティエーラと同じ厩舎であることくらいは分かっていただろう。

先に書いてしまうが、ダノンベルーガは裏情報にも書いたように今回仕上がっていなかった。パドックでもテンションが高く、これでは厳しい、という状況下でもあった。

タスティエーラからするとラッキーだ。だって本来締めるはずの外隣は同厩舎で、しかも仕上がり切っていないのだから。プレッシャーは甘くなる。

それもあって、直線に入ったところで赤タスティエーラには十分な進路が与えられていた

これ、緑ダノンベルーガが違う厩舎でもっと仕上がっていたら、ガッツリ締められてここまでの進路は開いていなかった可能性がある。

タスティエーラに能力があるのは間違いないとして、今回は進路的にも能力を出しやすい環境であったと考えられる

予言者・武豊

ここまでのおさらい
1.馬場はフラットに近い、内ラチ2、3頭分を開ければ内目も使える
2.中盤極端に緩まないタイプのスローペース
3.マスクはまだ今週の笑点を観れていない
4.武さんはジャスティンパレス瑠星にポジションを『譲った』
5.日曜夜のマスクの夕食はカレー

このあたりまで来て、マスクは今日中に回顧は終わらないと判断し、録画した笑点を見た。まず3番は解決した。

直線で一番ポイントになる動きをしていたのが緑ジャスティンパレスの瑠星だ。

レース後瑠星が『道中は感じよく行けて一発勝負に行ったんですけど、結果的には下げて外へ出していたほうがもう少し際どかったかもしれません』と話している。スローだったからな。瑠星は外ではなく、馬群を捌く選択肢を採った。

最初に緑ジャスティンパレスの瑠星が狙ったのは外目。桃ダノンベルーガの内の桃丸のスペースだった。

ダノンベルーガのクリスチャンが左ムチを叩いているのが分かる。馬はムチを叩いた逆のほうに動くから、この桃丸の部分が大きくなることが予想される。

よく見ると青ソールオリエンスの武史も右ムチを持っているし、桃丸が大きくなるんじゃないかと思う気持ちはよーく分かる。

ところが桃丸は瑠星が思っていたより育たなかった。桃ダノンベルーガと青ソールオリエンスの間に来たはいいが、思ったより進路がない。

1頭分もないスペースは入ってはいけない。だからこのラインは使えない。これは瑠星としては誤算だった。まー、スロー寄りの流れで馬群が簡単に開くとは瑠星も思っていないだろうが。

そこで緑ジャスティンパレス瑠星が見つけたのは、内側のラインだ。お、意外と空いてるやん、ここワンチャンあるやん、となって、当然このラインを狙う。一瞬しっかり開いたしね。

ただよく見ると、黄リバティアイランドの川田が右ムチを叩いているのが分かる。リバティは内に少しずつ寄っていく可能性が高い。

間違えた、リバティアイランド黄色だったね。許して。

橙リバティは右ムチを使われた通り少し内に寄ってきた。紫シルトホルンは客観的に見てもこれ以上伸びないだろう。

先ほど瑠星の前にあった緑のラインはまたなくなってしまった。スローで馬群が固まりながら直線向くとこんなことはよくある話なんだけどな。

するとここで、急にリバティアイランドが止まった。白べラジオオペラがさっきまでリバティがいたほうに動く。結果、緑ジャスティンパレスの瑠星は更に内のほうに行くしか手がなくなってしまった

逆のほうが開いているが、ベラジオが少し外に寄っていることから見た目ほどの進路は開いていない。

普通はここで無理しないところなんだが、そこはGI。脚がある以上どうしても攻めてしまう。しかもだいぶ前に書いたように、内は2、3頭分開ければ十分使える状態だったからね。

まー、逆に言えば内目が2、3頭分を除いて使える状況だったから、内の馬たちが密集していたとも言えるが。

GIで引けないこともあって、緑ジャスティンパレスの瑠星が強引な進路取りになってしまったんだ。

黒ステラヴェローチェの大輔が手綱を引いてしまって、赤ノースブリッジの進路も狭くなってしまっている。この強引な進路取りで瑠星は過怠金5万円取られた

ネットを見ていると瑠星よく内から伸びた、よく捌いたという声もあるが、前にも書いたようにマスクは裁決に引っかかる動きの進路取りについては一切好騎乗と言わないことにしている。

5万レベルだからかなり際どいという不利ではないが、もしこれで大輔が落馬していたらと思うとね。

瑠星が『結果的には下げて外へ出していたほうが、もう少し際どかったかもしれません』と言っているのがここまでの動きだ。


さて、ここで考えてほしい。瑠星ってそもそもなんでこのポジションにいたんだっけ

そう、武さんが2コーナー出口で瑠星にポジションを譲っているのだ。瑠星は馬群の間を見ていたのに対して、武さんは最初から最後まで外を見ていた。

これは序盤に出した画像だが、黄線を引いたべラジオオペラやステラヴェローチェが確かに内の進路に影響を与えている。

緑ジャスティンパレスと、青ドウデュースのポジションがもし逆だったらどうなっていただろうか。

まー、武さんがうまく外に出していた可能性があるし、そもそも瑠星にしても直線でダノンベルーガのインがもっと開いていた可能性があるから結果論ではあるんだけれど、武さんが序盤『スローになるのに下げた』効果が出ている。

どれだけ先の手を一瞬で考えたのかと背筋が凍った。内の並びなどそもそも新聞などで予想してプランを練っていたのかもしれないが、2コーナーで手を打ったプランがドンズバで当たっているのが怖い。

スローだし早めに動きたい気持ちも分かる。瑠星が安易だったとは言わないが、これが経験かと思ったね。そりゃGIを100以上勝つな。

未だに武さんがGI勝つといい馬に乗ったからなんていう意見があるが、技術、判断力がないといい馬は回ってこない。そしていい馬に乗っても、勝たせるのはこれだけ難しい

究極の発想 『後の先』

後の先』という言葉をご存知だろうか。あとのさきではなく『ごのせん』と呼ぶ。

元々は剣術用語だったが、大横綱の双葉山が理想の立ち合いとして挙げたことから相撲の世界でも知られている言葉だ。

相手より一瞬後に立ちながらも、当たった時には先を取っている立ち合いを指す言葉で、遅れて立った側が有利に立つやり方。双葉山を尊敬する白鵬が提唱したことでも知られる。

先ほどポジションをジャスティンパレスに譲って外を狙ったやり方も今回の武さんの勝因の一つだと思うが、もう一つ、今回の武さんのやり方で驚異的な点がある。

これは直線入口。桃レーベンスティールの後ろを、青ドウデュースがついてきているのがお分かりだろうか。

正面から見るとレーベンスティールの後ろに隠れる形だ。学級記念写真を撮る際はカメラマンから指導が入るポジションと言える。

更に時間を進めて、桃レーベンスティールが更に外に出すかどうかを考えている時も、青ドウデュースはまだ、ピタリとレーベンの後ろにいる。

先週のメリーさんルメールとは逆。私武豊、あなたの後ろにいるの状態だ。まー、ルメールが「ギャアアア!」なんて叫ぶ姿は想像できないがね。

注目はこの時点で、白べラジオオペラや緑ジャスティンパレスあたりがもう仕掛けに入っていることだ。

更に時間を進めると、桃レーベンスティールのルメールも仕掛けだしているし、赤タスティエーラの松山も追っているのが分かる。橙リバティアイランドも追い出しに入っていた。

しかし青ドウデュースの武さんの姿はまだはっきり映らない。次第に外に出していき、大外の黄キングズパレスのシュタルケの影に隠れている。

シュタルケ気を付けて、あなたの後ろにメリーさんがいるよ。ドイツにメリーさんって概念があるかは知らん。

もちろん大外に出す前から少しずつギアを上げていって動かしには掛かっているが、青ドウデュースがしっかり追い出したのは大外に出されてから。

つまり他の馬より完全にゴーサインを出したタイミングが遅いのだ

考えても見てくれ、何度か書いているように、このレースはスローなんだぞ。当然前のほうが有利になるし、3着は逃げ粘ったホウオウビスケッツだ。前にいたほうがいい。当たり前だ。

なのに武さんはポジションをあえて落としただけでなく、追い出しまで他馬より遅くしている

24年天皇賞秋
12.8-11.5-11.6-12.0-12.0-11.9-11.8-11.1-11.1-11.5
35.9-33.7
レース前半1000m 59.9
レース後半1000m 57.4

今年の天皇賞はラスト1Fが11.5、ラスト2F目が11.1だから、全体のラップとしては0.4秒失速した

レース後半1000m57.4というのはここ10年の天皇賞秋で3位タイのタイム。思い出してほしい、確かにこのレースは全体としては緩いが、『極端に緩んだスロー』ではない。

超スローだった05年のように、みんな脚が溜まったヨーイドンではないんだよな。脚を少しずつ使いながら上がり勝負を演じるレースだったんだよ。

天皇賞秋 上がり3Fタイム
32.5 1着ドウデュース
33.0 4着ジャスティンパレス
33.0 10着ニシノレヴナント
33.2 8着レーベンスティール
33.3 7着ソールオリエンス
33.3 11着ノースブリッジ

これを見ても分かるように、とにかく速い上がりタイムを使った馬から上位を占めるレースではない。むしろ上位はメンバー内比較だとそう速くないタイムの上がりを使って雪崩れ込んでいる。

要は後ろにいた馬はみんな、中盤から脚を使いながら最後また末脚を使う能力が求められていた分、スローの割に最後爆発的な上がりを使う馬が少なかった。なんといえばいいか、みんな似たレベルのタイムでそのままなだれ込むイメージに近い。

武さんのやっていることはこのラップとは逆。ひたすら脚を溜めて、周りが動き出してもまだ我慢し、ラストだけ脚を使わせるやり方だ

周りが動いても動かず、後から動いていつのまにか有利な態勢に持っていく、まさに『後の先』。レースを観ていて、双葉山と白鵬を思い出した。

いや、普通は焦るんだよ。瑠星あたりも焦りが見えていた。GIで人気馬に騎乗して、しかもスローの流れの中後方。普通は早めに動いて前を捕まえに行きたくなる。差し損ねが一番怖い。

ここで待てるのが武豊の武豊たるところ。追い出しを待って最後食う差しは武豊のお家芸でもある。これ平成の初期から中期にかけて武さんが散々やっていたことで、古き良き時代を思い出したマスクだ。

古き良き時代とか言っちゃうと老害認定されちゃいそうで怖いが、今回の武さんの後の先は見事という他ない。神業

レースの全体レベルは高いのか

そこまで高くないのではないか、というのがマスクの見解だ。

大して速くもないのに全体時計は伸びたが、これは中盤極端に緩んでいなかった影響もある。ホウオウビスケッツが弱いと言っているのではなく、ホウオウが3着に逃げ粘れるレースだった、とも言えるんだ。

ここまで一切矢印で触れていないが、今回のホウオウビスケッツのペースメイクは完璧だった

24年天皇賞秋
12.8-11.5-11.6-12.0-12.0-11.9-11.8-11.1-11.1-11.5
35.9-33.7
レース前半1000m 59.9
レース後半1000m 57.4

道中遅くて1F12.0。これだと極端な上がり勝負にはならない。実際上がり勝負ではあるが、上がり3F32秒台だったのがドウデュースだけ、というのが証明している。

注目は太字の部分で、残り600mから11.1になっているだろう。これ、望来が「セーフティーリードを取りたかったので、早めに踏んでいきました」と言っているように、ジョッキーのプラン通りなんだよな。

逃げ馬に早めに踏まれると、後ろも少し早めに動くことになって最後甘くなる。上がり勝負だと分が悪いホウオウビスケッツの短所を長所に変える好騎乗だった。

ここでホウオウが早めに踏んで、追いかける側も早めに踏んだのはドウデュースがラスト届いた一つの要因でもあるね。

早めに踏んでもラスト11.5のラップに貢献しているように、大幅には止まっていない。持ち味を存分に引き出した内容で、実戦騎乗初でこれは凄い。

ノースブリッジが出遅れたからマイペースを刻めたことが大きいのはあるにしろ、この騎乗はもっと称賛されていい。逆に言えばノースブリッジや、他に同型がいればここまでマイペースにはならない。

24年函館記念 ホウオウビスケッツ 1着
12.5-11.1-11.8-12.0-12.2-12.1-11.8-11.8-11.9-12.0

24年毎日王冠 ホウオウビスケッツ 2着
12.7-11.0-11.6-12.2-11.9-12.0-11.3-11.0-11.4

24年天皇賞秋 ホウオウビスケッツ 3着
12.8-11.5-11.6-12.0-12.0-11.9-11.8-11.1-11.1-11.5

コース、距離は違えど、ここ3走の好走は、中盤までのラップパターンが似ている。中盤を1F12.0前後で通過するレースが現状ピッタリなんだろう。

つまり強力な同型がいて、この数字が踏めない流れになると怪しく、踏める流れだったら信頼感がある。中山金杯かな。Cコース開幕週だし。


4着ジャスティンパレスはよく差してきているが、視覚的にすごく伸びている面は否めない。詰まり気味になって待たされ、ラスト他の馬が甘くなったところを差している部分がある。内を通っていた馬は外よりも脚が止まっていた。その分目立つ。

先ほど書いたように中盤から速くなって、後ろから運んだ馬は長く脚を使う必要が出た分、スタミナを問われたのも良かった。昨年このレースを好走した時もレース上がり1000mは57.5

2000mだとこれくらいレース上がり1000mが速くなって、タフな流れになるほうがいいんだろう。当然2400mへの距離延長は歓迎だが、ヨーイドンで直線だけの勝負になるとキレ負けの可能性が出てくる。いかにスタミナを生かせるかどうかの馬。

あとはジャパンCの前はCW中心にやってほしいな。坂中心だと怖くて買いづらい。

評価が落ちるのは5着マテンロウスカイ。2番枠を見た時点でまずインベタだろうと思っていたが、インを長男の後ろでピッタリ回って、最後も内。ほぼ2000mピッタリ回ってきた。

ジョッキーの言う通り「よく頑張った」と言える内容。そしてこれだけ完璧に立ち回っても5着。天井。

べラジオオペラは6着だったのだが、マスクのもとには「なんでべラジオオペラが伸びなかったんですかね」という質問があった。

上がり3Fだけ見ると33.7と決して悪い数字ではない。ただ現状のデキだとこれくらいの数字に落ち着くんだろうな。

状態に関しては先生やスタッフさんも言っていた通り、本調子にないのかなと感じさせる返し馬でした」と和生も言っているが、夏の調整が難しい馬で今回も間に合った内容だった。

逆に言えばこれから冬に差し掛かるわけで、チャンスは増してくる。寒い時期になかなか合いそうなレースがないのが難点なんだがね。有馬で好枠引いたら、多少長い気もするが買いたい

7着ソールオリエンスは次以降が楽しみだ。2000m以上で上がり3F33秒台前半が問われるレースはどうしても厳しい。それでも2着と0.2秒差。

馬体は昨年の同時期に比べたらだいぶいい。延長してくる次のジャパンC、ちょっと楽しみがある。いい馬になってきた

もったいなかったのは8着のレーベンスティール。敗因はもう書いた通り。外枠で、不利もあってポジションが取れず、中団後方から上がり33秒台前半を求められる流れは根本的に合わない

このペースですし後ろからでは勝ち馬以外は大変でした」というルメールの言葉はその通りで、今日はノーカン。中山2500延長が楽しみになる内容だった。

この馬はもっとやれる。昨年とはまるで違う馬体。成長してしっかり調教できるようになって、体から変わってきた。今日は自分の持ち場にならなかっただけ。年末を楽しみにしたいね。香港じゃなくていいよ。

9着ステラヴェローチェは不利もあったし、そもそもこの手のレースは合わない。ノーカンでいいと思う。そして東京2000の限界が見えた。

現状はコーナー4つでもう少し上がりが掛かる2000mくらい。マイルだと抱えられないし、1800以上は合ったほうがいいかもね。


負け過ぎと言えるのは13着リバティアイランドだろう。故障の箇所が厄介なところであること、そして調教も『時計だけ出ている』状態だったから消したが、正直ここまで止まるとは思わなかった。

4コーナーの回り方も良かったし、手応えの良さ、ペースを考えると好ポジションだっただけにこれはやられたと思った。

そこからの直線半ばでの失速劇。急にフラつき出して失速している。普通は息切れか故障を疑う局面だが、故障だったら川田がステッキを入れていない。ジョッキーカメラを見ても故障という感じではない。

まー、レースが終わって数日後に故障が分かるケースがあるから今断言はできないがね。ダノンベルーガに接触する不利があったが、その後の手応えを見る限りそう影響した感じがない。

乗り方もペースを考えれば至極妥当なところ。中には『そんなに強くない』なんて声があるが、そもそもこんなゆったりした流れで上がり3F34.1しか出ていないように、それまで出してきた数字より明らかに遅い以上、これは能力を出し切ったレースにカウントされない。

気持ちが切れるような負け方でもなかった。精神面という感じもない。単純に調教が足りずに中身ができていなかった、というのが現状のマスクの見立てだ。牝馬は一度大敗すると心が折れる馬がいるだけに、そこだけ心配。

こんな馬ではないから、またいい数字が出せるよう期待したい。馬体は1800くらいがベストだから一度マイルで見たい思いもある。ピリっとしそうだよなあ。

14着ダノンベルーガはもう書いたから省略。次のジャパンカップで狙いたかったのだが、今回の叩きくらいで劇的に変わるか?というくらい今回デキがイマイチだった。仕上げにくい馬だから難しいんだけどな。


ああ、2着のタスティエーラの話もしないとだな。よくここまで立て直されたよなあ。

この中間の追い切りの動きが凄くて、いい時のタスティエーラに戻ってきた感触が確かにあった。だから今回買ったんだけれど、ある意味期待通りというところ。

今回はスローの上がり勝負でも、直線最後だけのヨーイドンではなく、その前から脚を使う流れも良かった。この馬はこれまでのキャリア9戦で上がり3Fメンバー中最速の脚を使ったことがまだない

ダービー馬で上がり最速がまだ一度もないのは珍しい。直線ヨーイドンより少し手前からラップが速くなる体力勝負で、なおかつ輸送距離が短い条件が合うことがハッキリした。するとこれからも条件を選ぶ。

立て直しているからここ2走の大崩れはないと見ているが、輸送競馬にはまだ不安を残すし、ノドがたまに怪しい時がある。今後も慎重に取り扱っていきたい馬

現4歳は低レベルとか何度も言われていて、この馬も大阪杯で負けた時に弱い弱い言われていたが、力のない馬はダービー勝てないから。単純に条件を問うところもあるから戦績に波がある。

ダービー馬に失礼な物言いが目立っただけに、ここで2着に踏ん張って力を見せてくれたことは嬉しいね。

ドウデュースはどこから来て、どこへ行くのか

マスクが今回、ドウデュースで危惧していたのは東京で4度走って、上がり3Fメンバー中最速だったのが一度もなかったことだった

スローペースは濃厚だったわけで、その中でどれだけ速い上がりが使えるか、というところがネックだった。まー、結果的には上がり3F32.5という、国内GI優勝馬としては3F歴代最速の脚を使って勝ったわけだが。

まー、上がり3Fという概念はちょっと考えものだとも思う。要はラストの600mのタイムなわけで、中にはラスト400だけ異様に速かったけれど、その前の200mは大して速くなくて600mのタイムがそこまで上がらない、なんて馬もいる。

だからあくまで指標でしかないんだけれど、今回のドウデュースは武さんが脚の使いどころを完璧に合わせてきた。追い出しも待って、一瞬の爆発力を最後に合わせてきた。ラスト1F10秒台だろう。エグい。

最後まで追い出しを待てばラスト1F10秒台で上がれるのに、マイルのGIから大回り2400、そして小回り2500までできているんだから、本当に懐が広い馬だ

今回は武さんが完璧な誘導で脚を使わせたところがあるが、そもそも完璧に誘導してラスト1F10秒台で上がれるポテンシャルが凄い。今回の天皇賞はただただ強い、この言葉に尽きる。

色々なレースを観てきたが、直線ラスト2Fの衝撃度としてはマスクの中でも歴代トップクラス。鳥肌が立った。

相変わらずパドックでもイカツイ筋肉量だったな。正直去年以上。更に成長している。ハーツクライなんだから成長力はあって当たり前みたいなところがあるんだけれど、友道厩舎も上手い。ここまで仕上げ切れるのは友道厩舎だからこそだと思う。

あれだけの筋肉量、育て方が違えばワンチャンダートの短距離馬になっていた可能性すらある。コースを長めからしっかりやる友道厩舎に入れて、なおかつ距離を持たせる武さんが乗るからこうなっている。

加えて今回ベストターンドアウト賞を獲ったように、休み明けでもここまでしっかり作ってこれる優秀な担当さん、助手さんが関わっている。携わる人間のほうがハイレベルだったことはドウデュースにとって最大の幸福だと思うね

これだけ勝ちっぷりが鮮やかだったものだからどうしてもネットでは、昨年天皇賞、そしてジャパンCと連続で4着以下だった戸崎と比較する声が上がっていたが、それは違うんだよな。

ドウデュースって馬は武さんとスタッフさんたちが、デビュー前から一本の線になるように大事に大事に育ててきたわけだけれど、武さんが乗れなくなって、線に切れ目ができるところだった。

急な代打でも戸崎がそこで一本の線をしっかり描いてくれたから、こうやって今のドウデュースがある。それまで大事に育てていたのに一つの動きで線が崩れる、なんてことはよくある話だ。昨年のレースと比較するのは無意味。

しかし、あの筋肉量を見てしまうとやっぱりこの馬は1800~2000、むしろマイルでも見たいくらい。この先2400m、そして2500mを使っていくとなるとどうしても中心視するのは躊躇う。最後まで頭を悩ませそうな一頭だよなあ。

ジャパンCではこのやり方ができるかどうかはペースによると思う。似たようなラップなら2400でもと思うが。

しかし武さんがジャパンCで、ハーツクライ産駒に乗って、欧州最強のディープインパクト産駒を迎え撃つっていう構図は面白いな。高鳴っちゃうね。

単純に凄い馬だと思うよ。使える脚とか度外視で、阪神マイルから中山2500までGIを勝てるのは、スペシャリストが増えている近代競馬において非常に珍しい

しかも2歳から3歳、4歳、5歳と毎年GIを勝っている。2歳GIを勝つレベルの完成度があって、なおかつそこから毎年成長していくのはちょっと意味が分からない

こういう、物差しで測れない馬はたまに出てくる。イクイノックスしかり、グランアレグリアしかり、アーモンドアイしかり。今ドウデュースという馬をこうして生で見られることに感謝したいし、まだあと2回、生で見られることに感謝したいね。


余談だが、今回マスクが良かったと思うところがもう一つあって、それがジョッキーカメラ。今回も良かったなあ。リバティアイランドのジョッキーカメラも興味深かったが、とりわけ面白かったのがドウデュース、武さんの頭につけたカメラだった。

武さんのカメラ、見ると分かるがスタート後数秒でキックバックを受けた分、ほとんど何も見えないんだよ。

これが良かった。ゴール後、何も見えずに音声だけを拾う状況で、武さんの「すごいよこの馬」「楽に届いた」という声が入っているんだ。

武さんがどういう顔で言ってるのか、想像するだけで楽しくなる。マスクも競馬を始めてそれなりに長いが、こういう楽しみ方もあるのだな。

カメラに加えて、それこそ今回の『後の先』による爆発力ある競馬など、常に新しいものが見れる。それもまた競馬の良さだと改めて感じているところだ。

最近色々あってJRAが叩かれがちで、馬が完全に置いていかれているようなトラブルが続いていた。競馬は馬が中心にいてこそ成り立つ、魅力的なコンテンツであることを証明した天皇賞と言っていいんじゃないかな。


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