見出し画像

【NHKマイルC2024】東京芝1600mの特徴と馬場傾向(トラックバイアス)

NHKマイルCの好走傾向=外(差し)有利

NHKマイルC(東京芝1600m) 過去5年好走馬直線進路

直線平均進路:8.9頭目÷大外平均:14.4頭目=馬群内直線位置:62%
4角平均位置:9.2番手÷出走平均数:18.0頭=馬群内道中位置:51%
好走馬上がり3F平均タイム=34.15秒

今年で29回目を迎える当レースは日本ダービーのトライアル競走だった前身からGⅠに格上げされて以降、さまざまな立ち位置として存在しながら、現在はクラシック世代におけるマイル最強馬決定戦として存在している。
過去10年では1人気と2人気が合計5勝と支持されている馬の活躍もある反面、6人気以下の激走は2着5回、3着8回と多く、13年には10人気のマイネルホウオウが勝利したシーンの印象は強いだろう。
好走馬の傾向は直線だと内ラチから8.9頭目で馬群の真ん中よりやや外、脚質は9.2番手で真ん中ぐらいに推移した。比較的先行馬が多い勝ち馬に対し、②着以下で見ると4角二桁通過の馬が多い。

★東京マイルはノンフレームコース

東京マイルGⅠはNHKマイルC、ヴィクトリアマイル、安田記念と年間3度行われ、開催時期は5~6月の近い。通常同じコースのレースであれば馬場条件なども含めてレース展開や血統の好走傾向など類似することが多い。しかし、この3レースに限っては三者三様である。

東京マイルGⅠ平均ラップ比較

NHKマイルCが最も前傾度合いが強く前半からスピードで押していって中盤で一度落ち着くものの最後はスパートでスタミナ勝負。Vマイルは牝馬限定戦らしく脚を溜めて終盤で一気にスパートをかける上がり勝負になっているため後継度合いが最も強い。そして安田記念は前後半のラップが他のふたレースと比べてフラットに近いため、序盤中盤終盤と最初から最後までスピードを出し続けるバランスの取れた能力を求められるレースである。

同じコースで近い時期に行っているのにこれほどまでにレースの特徴が異なっていくのにはコースの形態が影響していると考える。

東京芝コースレイアウト

東京芝1600mは3角あたりがスタートとなり、ワンターンのコース。直線が長い東京のため、もちろん向正面も長く、このコースは向正面を目一杯走った上で最初のコーナーである3角を迎えることとなる。コーナーまでの距離が長いと、内外のポジション争いに余裕が生まれて激化しにくく、コース由来による枠順の有利不利が生まれにくい。
またコーナーが緩やかで癖が少なく直線は長く広く、坂を登坂するが急ではないため、最後まで各馬が力を出しやすいフェアな舞台になっている。

コースに癖がないということは、各馬の思惑が反映されやすいとも言える。これが1番の理由となってコースによるレースの特徴が生まれにくいノンフレームなコースであり、レース毎のメンバー構成やレースの立ち位置によって傾向が異なるというわけだ。

NHKマイルCは「世代限定マイル以下競走」

東京マイルGⅠ平均ラップ比較

NHKマイルCの前半3Fは他2つの東京マイルGⅠよりも0.2秒も早く、距離の短いレースならばこの差が大きい。それだけテンのスピードが早く、スタートダッシュと前半の流れが激しいレースであることがわかる。この要因はメンバー構成にあるのではないか。

NHKマイルC 前走距離割合

1600mという距離は日本の競馬において純粋なマイラーだけでなく短距離馬と中距離馬が相対する絶妙な距離設定である。故にGⅠともなると幅広いタイプの馬が出走してくることが多い。
しかし、NHKマイルCは承知の通り世代限定戦でありクラシック戦線真っ只中で行われる。現代の立ち位置としては皐月賞→日本ダービー→菊花賞(近年では天皇賞・秋などの選択肢も増える)といった中距離~長距離の3冠レースが主流の中、距離の持たない短距離系の馬たちが輝くレースがこのNHKマイルCである。よって中距離以上に適性がある、好走のチャンスのある馬はこの舞台に駒を進めてくることは限りなくゼロに近い。

NHKマイルC過去10年前走距離を見ると、芝1600mが57.2%と過半数を超えて最も多く。これはNHKマイルCをターゲットにニュージーランドトロフィー(中山芝1600m)やアーリントンC(阪神芝1600m)といったマイル重賞を前哨戦として選択してくるからである。
これ芝1400m(17.8%)→芝1800m(12.8%)→芝2000m(8.9%)と続く。マイルの前後200mが続くわけだが、短い方の芝1400mが多く、芝1600mと合わせてその割合が多い年ほど前半2Fや前半3Fのタイムが比較的速い。

競馬の基本は
①距離が短いほど速いラップを刻む
(短距離戦の方がスプリント性能が問われるため)
②前走が今距離より短いと前走のペースに釣られてラップ速くなる
(競走馬は走破予定距離を知らず、前回の感覚で走りやすい)
③前半のペースが速いと先行馬不利→差しが利きやすい
(前半でレースを引っ張る先行馬の体力が奪われるため)

であるため、世代間の中距離以上に適性のある、実力のある馬が積極的に参戦してこない&マイルより短い距離に適性のある馬も多く参戦してくるNHKマイルCは展開の恩恵があって差しが有利となりやすい。
さらに東京マイルというコースの特性がレースに反映されにくいノンフレームなコースだからこそNHKマイルCのメンバー構成から生まれる傾向はそのまま出てしまうと考える。

当週の馬場傾向

<トラックバイアス>
2019年 土曜:4.8/日曜:8.3
2020年 土曜:5.1/日曜:4.6
2021年 土曜:5.1/日曜:6.7
2022年 土曜:6.3/日曜:7.1
2023年 土曜:5.7/日曜:7.8

※数値はその日の3着内馬がL1Fで内ラチから何頭分離れた場所を走ったかの平均値

開催3週目でこの時期は気温上昇のために芝の状態も良い。さらには6月末まで続くロングラン開催で元々傷みにくくするために養生されているため、よっぽどのの道悪にならない限り馬場が悪化する(≒開催前半から内不利/外有利)の傾向は見られない。しかしながら、太字になっている2019年だけは日曜に数値が急増している。

この年は土曜午後に急な雹が降ったため、開催が急遽中止となった。(メインレースの予定だったプリンシパルSは翌週に代替、その他のレースは完全中止)
雹の水分が馬場に残った状態で日曜を迎え、朝時点で含水率はG前:21.0%/4角18.0%と稍重発表ながらも道悪に匹敵するほどだった。

東京芝の馬場の乾き方

東京芝は特徴として、内外で最も高いところから乾き始めていくため、Aコースだとちょうど馬場の真ん中あたりから内側にかけて順番に乾いていく。よって外を走る差し馬は内を走る馬よりも好条件であり、これがバイアスに反映された。
実際にNHKマイルCはレース自体が元々外差し有利の傾向があるのに加えて外有利の馬場状態になってしまったことで、外から追い込んできたアドマイヤマーズとケイデンスコールが鋭い末脚で好走している。

注目馬

◎ジャンタルマンタル
皐月賞からの距離短縮の臨戦過程のため、通常であればNHKマイルC特有の前半の速いペースについていけないが、今年の皐月賞は前半2F 22.7/前半3F 34.2の2000mとは思えないようなラップだった(このタイムは逃げたメイショウタバルのタイムであり、番手はそこから約8馬身ほど離されていたため上記のタイム通りで走ったわけではない)ため、ペースについては懸念材料が少ない。
その他、過去に勝利した朝日杯FSは前半2F 23.4/前半3F 34.1、デイリー杯2歳Sは前半2F 23.3/前半3F 35.0と比較的速いラップを刻んでいるため、激流ラップには対応済みと解釈できるだろう。
それでいて毎度上がり3Fは上位のタイムをマークするように末脚に長けていて、末脚が問われるこの舞台でも直線で差し馬にかわされる可能性は低いだろう。

○★はXにて後日公開予定。

★最終予想はX(旧Twitter)で公開予定です。


いいなと思ったら応援しよう!