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ジャパンカップ回顧(今後の予想に向けた重要な要素を紹介・解説)

ヴェラアズールの豪脚で幕を閉じたジャパンカップ🐴
皆様の予想はいかがでしたか?
戦前の予想通り上位伯仲、最後までどう転ぶかわからない手に汗握る名レースでしたね!
今回もレースを振り返りながら、ヴェラアズールの勝因は?来年以降の外国馬の取捨は?次回以降の注目馬は?等を中心に考察していきます。
結果を元に理由を考えることで、多くのパターンを学び、予想のバリエーションを増やすことができます。あなたにとって新たな発見に繋がる機会にして下さい。
それではレースの流れに沿って紐解いていきましょう。

レース当日の天候は比較的安定していたこともあり、馬場状態は概ね良好。ジャパンカップ本番は良馬場で行われることになりました。当日の芝レースから推測する馬場傾向は、内から4~5頭目ぐらいまでがヴィクトリーロード。9レースの2勝クラス・オリエンタル賞では、33秒前半の上がりタイムが複数頭記録される結果となり、切れ味自慢の馬に向く馬場であった。
また、今週も外国人ジョッキーが好成績。乗っている馬が強いということも言えるが、ムーアやレーン・C・デムーロ等世界的名手のレース運びや馬のコントロール含めやはり上手さが目立っていた。
今年の出走はフルゲートの18頭。頭数が多い場合は位置取りや馬群の捌き等で有利不利が顕著に出やすいので、そのあたりも考慮しながらレースを振り返っていきます。

発走前の予想では、逃げそうな馬はユニコーンライオンとドイツからの遠征馬テュネス。テュネスの調教師のコメントで、「ここ数戦逃げたのはたまたま」との発言もあり、またドイツの馬場は特殊でヨーロッパでは1、2を争うぐらい重いパワー型の馬場なので、スタート後の日本競馬のスピードに戸惑うと予想されました。レースが始まると予想通りユニコーンライオンの単騎逃げとなり、引き付けてスローで逃げる展開となりました。スローペースを見越して道中捲っていく馬がいても良い展開でしたが、最終コーナーまで各馬終始動きのない落ち着いた流れに。完全に直線の上がり勝負になりました。
馬場の良い内側を通りたいという心理の中、一団で密集した状態で直線を向く展開に。進路が塞がり追い出せなかったり等で不利を受けた馬が多数出た中、馬群を上手く捌いたヴェラアズールが間隙を縫ってGⅠ初挑戦初制覇。
競馬界の新たな主役の誕生を目の当たりにすることとなりました。
シャフリヤールとダノンベルーガを含めた3強の構図の中、ヴェラアズール戴冠の理由を推察していこうと思います。

~ヴェラアズールの勝因は?~
1、能力
2、展開
3、位置取りと騎手の腕

まずは能力比較。前走の京都大賞典では他馬が止まって見えるほどの凄い脚で差し切り、上がりが33秒2。戦ったメンバーがGⅡにしては小粒だったこともあり、初の一線級との比較が難しかったが、2着ボッケーリーニが日経賞でタイトルホルダーに小差の2着と健闘しており、単純な比較で言えばGⅠでも上位に来れる下地はあったと判断できる。また、芝転向後ほぼ毎走違う騎手が乗るテン乗りの連続ながらも、全てのレースで素晴らしいパフォーマンスを見せていたことが、能力の高さを証明していた。

次に展開。ヴェラアズールの武器は何と言っても直線の豪脚。スローの上がり勝負となったことが、能力を最大限引き出せる絶好の展開となった。

最後に位置取り。勝因としてこの要素が一番大きいと思われます。
ヴェラアズールの近走を見る限り、最後方に近い位置での競馬になると思われたが、ムーア騎手の巧みな誘導によりほぼ中団に付けられた。ここが何と言っても大きい。当日の馬場状態を考えても、後ろから外を回して追い込むのにはリスクが大きく、差し馬が勝利を狙うには馬群を捌いてでも内を付く覚悟が必要な状況だった。この位置取りを取れたことで、シャフリヤールとダノンベルーガに対してアドバンテージを得たと考えてよい。また、スタート後にヴェラアズールが掛かる素振りを見せたが、馬とケンカせず落ち着かせたムーア騎手の腕も見逃せない。直線も決して広くないスペースへ誘導出来る技術もさすがの一言。ムーア騎手が勝たせた一戦だったと思います。


~来年以降の外国馬の取捨について~
1、新国際厩舎の新設
2、外国馬の質
3、日本の馬場への適応

今年もやはり日本馬が上位独占、、外国馬にとってはなかなか厳しい結果となってしまいました。やはり上がり重視の高速馬場の影響なのか、、これからもこの傾向は続くのか?私の見解は”NO!"
来年以降は外国馬の馬券圏内への好走が増える!
と考えています。

理由は3つ。まずは新国際厩舎の存在です。
今年から東京競馬場内に新設された、検疫可能な遠征馬の為の厩舎です。
今まで海外からの遠征馬は、千葉県白井市のJRA競馬学校か、兵庫県三木市の三木ホースランドパークに移動し、検疫を受ける必要がありました。海外の遠征馬にとっては、遠い異国からの輸送に加え、更に多くの移動を強いられることによる負担の大きさがジャパンカップへの参戦に対する消極的な姿勢を生む要因の一つとされてきました。しかしこの新国際厩舎のおかげで、日本に到着後すぐに競馬場へ向かうことが出来るようになり、遠征馬の身体的・精神的な負担の軽減が見込まれます。

次に外国馬の質ですが、凱旋門賞馬アルピ二スタの参戦表明(怪我で回避)や、パリ大賞典優勝のオネスト、バーデン大賞優勝のテュネス等例年以上に実力のあるGⅠ馬が揃いました。新国際厩舎の新設が影響していることも考えられる点と、来年から賞金が1億円増額され、優勝賞金5億円となることも参戦の後押しとなることが予想されます。為替がユーロやドルに対して円安になっている現状から考えても、一時的要因とはいえ今後魅力的なレースになるのではないでしょうか。

そして気になる日本の馬場への適応についてですが、今年のレースを見る限り、今年の出走馬と同等の実績馬かそれ以上の能力を持っている馬なら十分馬券圏内を狙える状況と言えると思います。
今年の最先着は昨年も5着と好走したグランドグローリーでした。位置取りが後ろ過ぎた結果、前の馬が壁になってスムーズに追い出せず。不完全燃焼な敗戦でしたが、なかなか加速出来ない中で34秒2の上がりは健闘範囲。高速馬場への対応も問題なかったと言えます。それ以上にツキがなかったのがオネスト。終始インコースの好位から前が空くのを待っていたが叶わず。
直線の手ごたえも良かっただけに、最内が空けば弾けそうな感じがしまし
た。過去のパリ大賞典やアイリッシュチャンピオンSのレース振りからも、切れで勝負するタイプだと判断出来たので、来年以降同じようなタイプが出走してきたら注目です。また、3歳牡馬は55キロで、牝馬は53キロで出走可能なだけに、58キロ以上の重量を背負いなれている外国馬にとっては相当有利に働くと思います。切れ味自慢の3歳馬注意!と覚えておいて損はないと思います。
今年は国内のレベルが低かったから外国馬も健闘できたと見る向きもありますが、最後に外国馬でジャパンカップを勝ったアルカセットも、オグリキャップとの死闘を制したホーリックスも、高速レコード決着です。時計が速いというだけで海外馬が力を出せないというのは早計です。また、馬場が重いイメージがある凱旋門賞ですが、同じ2400m(シャンティ)で2分23秒61で勝ったファウンドは今年のジャパンカップより速い走破時計ですし、同じ時期にフランスで開催されるフォレ賞(ロンシャン・1400m)では、2014年・2015年と走破時計が2年連続で1分17秒台と日本の同距離より速いです。海外=時計がかかるではなく、あくまで適正があるかどうかが重要なので、過去のレース映像を参考に今の日本の馬場に合うかどうかを検討することが大事になると思います。


~次回以降の注目馬は?~
★デアリングタクト ~
中1週の強行ローテながら4着。実際シャフリヤー
          ルの斜行の影響で急減速を余儀なくされた不運。これ
          がなければ勢いからもしかすると勝っていた可能性も
          あった。いまだ能力の衰えはないことを証明。GⅠで
          もうひと花咲かせる可能性を十分感じさせた。

★ハーツイストワール~こちらもアルゼンチン共和国杯から中2週。追い切
          りの映像から上積みは感じられず、良い意味で状態を
          キープして出走してきた。武騎手の積極策で2番手に
          付けたがこの馬の上がりの切れと言うストロングポイ
          ントが影を潜めたままだった。ペースを考えると2番
          手追走は名案だが、前に馬を置いて追いかける形の方   
          がこの馬には合っている。先行馬が多い長距離戦で狙
          ってみたい。

番外編
★C・デムーロの直線の進路取りが秀逸。直線に向いた時、前にユーバーレーベンがおり進路を外に切り替えることも考えられたが、わずかに空いたスキをすかさず狙って距離ロスを抑えた。直線の斜行はいただけないが、もしユーバーレーベンの外に出していたら、デアリングタクトの進路が確保され連対出来ずにレースを終えた可能性もあった。

★ダノンベルーガの適正距離。早め先頭も残り100mで力尽きる。
ダービーや天皇賞のレースを見る限り、そして※胴の詰まった体型から判断してもベストはマイルから2000mまで。今回はスローペースの瞬発力勝負になったため見せ場を作ったが、古馬になり斤量が増えると厳しくなると予想。今後2400m以上のレースに出走して来た場合は危険な人気馬として認識しておいた方がベター。
胴の詰まった体型は短距離馬に多いです

個人的な見解ですが、ジャパンカップは海外GⅠ馬の精鋭を日本が迎え撃つ構図が一番ワクワクします。そして世界トップレーティングの海外馬を見れると思うと胸が躍ります。賞金増額も大いに結構ですが、遠征馬に帯同した馬が出走できるよう、GⅡやGⅢの国際競走をジャパンカップウィークに創設したり、時期的な部分の再考(11月初旬の米ブリーダーズカップや12月2週の香港国際競走の谷間にあるため、ローテーション的に選択しづらい)含め改革を進めて頂きたいなと思います。

結果を振り返ることで、次の予想に繋げていくことが重要です。もちろん勝因や敗因は一つではありませんし、色々な要素が組み合わさっています。多くの知識やパターンを知りそれらを組み合わせて考えることで、より競馬が面白くなると確信しております。
この分析で得た知識によって、あなたの競馬脳が少しでも進化したのであれば幸いです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。

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