競走馬の悲劇~ブラストウェーブの突然死から学ぶ競走馬のリスク
いつもご愛読誠にありがとうございます。
改めまして、育む競馬脳ライター@りょうです。
本日悲報が届きました。
期待の3歳馬ブラストウェーブが、調教中に心不全を起こして急死。有馬記念を制したブラストワンピースの全弟ということもあり、今後の飛躍が期待されていただけに競馬ファンにも衝撃が走りました。
競馬というスポーツには切っても切り離せないのが、故障や病気等のアクシデント。過去には、天皇賞・秋のレース中に骨折、安楽死の処置を取られたサイレンススズカや、遥か中東の地で遠征中に転倒し後続馬と追突、重度の骨折により安楽死の処置がとられたホクトベガ等、レースや調教などで多くの悲劇が起こり、その事実が競馬ファンの心に焼き付いていることでしょう。
生き物である以上やむを得ない部分もあるとはいえ、実際に目の当たりにすると、悲しくそして辛い気持ちに包まれます。
そこで今回は、競走馬が抱えるリスク(4項目)についてお話します。
1、故障(怪我)
2、病気
3、引退後
1、故障(怪我)
レースに出る競走馬には、常に”故障”のリスクが付きまといます。その中でも一番多いのは脚部の怪我です。骨折や脱臼、靭帯や腱の断裂等多岐にわたります。ご存じの方も多いと思いますが、馬という生き物は500キロ前後の馬体を細い4本の脚で支えています。この1本に大きな損傷が発生すると、立つことが困難になり動けなくなった結果、内臓機能が急速に悪化し死へと繋がります。骨折した結果安楽死の処置が取られるのは、回復の見込みが薄いこと、苦痛からの解放という理由からです。
日本の中央競馬(JRA)では、レース中の安楽死処分の件数は年間で約30~40件ほど、悲劇が今なお高水準で発生しています。
この問題について、JRAも真摯に取り組んでおり、硬い馬場による馬の脚部の負担を軽減するため、クッションの効いた馬場への改造を進めています。馬にも優しい安全な競馬づくりの推進の結果、故障の発生が限りなくゼロに近い未来が来ることを願ってやみません。
2、病気
馬だけに限らないことではありますが、病気もリスクとなります。
上記のブラストウェーヴのように、心不全を起こしてしまうケース。兄のブラストワンピースも5歳時に出走した有馬記念で心房細動を起こして競走中止しているように、遺伝的要素もあるかもしれませんが、冬の寒い時期に心不全が起きやすいというデータがあります。また、アドマイヤラクティというオーストラリアのG1レースを勝った馬も、次走のレースの最後の直線で失速し、馬房に戻った後倒れて、そのまま息を引き取ったという事例もあるように、激しいレースの後にはかなりの肉体的な負担がかかっていると推測されます。よってどの馬にもリスクがあるようにも思えます。
また蹄を持つ動物特有の”蹄葉炎”(蹄内部の炎症)で命を落とすこともありますし(テンポイント等)、腸捻転が原因(ナリタブライアン等)で命を落とすこともあります。
全てを予防することは出来ないですが、競走馬の体調管理の技術向上や異常の早期発見可能なテクノロジーの創出で、今以上の競走馬の保護に役立てる未来が来ると良いですね。
3、引退後
競走馬は毎年7,000頭ほど生産され、デビュー出来るのはその中の6割~7割です。牝馬であれば、デビュー出来なくても、繁殖牝馬として子孫を残す道が残されていますが、牡馬でデビュー出来ないとなるとほとんどの場合は、殺処分されてしまいます。
デビューできたとしても、活躍できなければ同様の道筋を辿ることになります。
種牡馬として子孫を残せるのはほんの一握り。
運が良ければ乗馬として活躍の場が与えられます。
実際年間の生産頭数から見る年間殺処分の割合は、9割にも上ります。
それぐらいサラブレッドにとっては厳しい世界です。
そんな現実を少しでも変えようと、引退馬のセカンドキャリア創設の動きが活発化しています。クラウドファンディング等で基金を募って引退馬の支援を目的に行動を起こしている方も増えてきています。
また、数々の名馬を輩出した角居勝彦元調教師(2021年2月勇退)も、引退競走馬を再調教し、乗用馬のほか、障害者や高齢者の心身の機能向上を目指す「ホースセラピー」向けの馬として活用するプロジェクトを立ち上げ引退馬のファンクラブも設立。賛同する競馬ファンに月会費を払ってもらい、引退馬が乗用馬となるのに必要な費用を手当てする仕組みを作りました。
少しづつ競走馬の未来が変わろうとしています。このような実態を理解した競馬ファンが増えることで、より一層この問題に興味を持ち携わる方々が増える好循環が生まれると嬉しいなと思います。
今回は競走馬のリスクについてお話しました。
楽しい競馬を作り上げている裏側では厳しい現実があります。
これも競馬の大事な一部です。
この記事によってあなたの競馬脳の進化に貢献できていれば幸いです。
ご熟読誠にありがとうございました。