24年前の続き(四十一番目の少年 井上ひさし原作)
それからどう動いたのか覚えがない。気がつけば利雄の足は前のめりだった昌吉の腹を蹴り倒していた。
何度も蹴り上げた気がする。昌吉の顔面は赤く赤く染まっていた。いつの間にか利雄の腕の中に孝はいた。全体重を利雄に預け四肢は利雄の上半身の動きに合わせ糸のように揺れ続けていた。
「お母さん」孝のつぶやきで我に返り、利雄は木工場を飛び出した。嵐の中、孝に覆い被さるように松林を抜け、利雄は本館に駆け込んだ。
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