1年6組というクラスについて

娘からこんな質問があった。
『パパは小学校、中学校、高校、どの学年が1番楽しかった?』

『高1かな』(即答)
『なんで?』
『うーん、仲良かったからかな』
『ふーん』

40歳となる今、振り返っても高1は楽しかった。
高校受験を終えた後でプレッシャーもなく、大学受験もほど遠く、
部活の中でヒエラルキーもなかった。

思いつくエピソードを1つ。

クラスの中にU君という、目立たない、ほっそりした少年がいた。
彼は周りから声を進んでかけられたりするようなタイプではなかった。
ただ、クラスの中でずば抜けて頭が良かった。

彼が頭がよいとわかったのはテストが返却された後の点数を誰かが見たからだったと思う。高校は進学校だったが高校1年生のテストが恐らく授業で習っていない事ばかりだったので普通に高得点をとるのは不可、中には本当に0点のやつもいたし、僕は30点くらいだったと思う。100点満点で、である。U君はそんなテストで70-80点をとっていた。

1学年のクラスは9クラスあったけど1年6組は
頭の悪いクラスだった。僕が嬉しかったのはそんな教室の隅にいそうなU君を全員で崇めた事。みんなでU様!と言っていた。文章では誤解を与えかねないがこのU様!という表現には嫌味も何もなく、純粋にU様ってすごいよねという敬意があったし、そこから色んなやつがU様に勉強を教えてもらっていたと思う。U様は嬉しそうな顔で勉強を教えていた。

ある時、学食でカルピスを飲んでいたら友達がコーラを混ぜてきた。じゃんけんで負けたやつがこれを飲もうぜというゲームになり、毎日続いた。毎日続き混ぜる内容がどんどんエスカレートしていき、ドレッシングとかも入れて飲んだらすぐに吐き出してしまうような代物になっていった。
そのうち、混ぜてできた代物を教室にもっていってじゃんけんするようになった。じゃんけんに参加する男子はどんどん増えていき、ある日U様が参加していい?と聞いてきた。これも誤解を与えかねないがじゃんけんは決して強制参加ではなく参加しろという空気は一切なく、バカしたいやつがバカしようぜみたいな感じであったのでU様が参加したいと言ってきたのはとてもびっくりだったがなんだか嬉しかった。なんとなく認め合えた、そんな感じがした。

その後、高2 高3ではU様と同じクラスではなかったし、話をした事もほぼないと思うけどあの時間を共に1年6組で過ごせたのが嬉しく、これのみならず、あーこんな事があったなという出来事が1年6組がダントツで多い。


進学校なのにパチンコ好きのI君。パチンコに勝った日はビックリマンチョコを40袋くらい買ってきてみんなに分けてくれた。I君は茶髪でやんちゃだが弁護士を目指すあつい奴。3年生の時に教室で放課後自習していた時、数人の男子がおしゃべりをしていたところどんどんうるさくなり、I君はとことこ男子のほうに向かい胸ぐらを掴んで『うるさい、出て行け!勉強に集中できひんやろ!』とわけわからん切れ方をした事で有名になっていた。

1年6組ではI君も含めて運動会のリレーに参加した。僕らは運動神経が良いやつが多かったので勝つ自信があったのだけれど、I君が転倒してしまい、9クラスのうちビリになった。その後、ちょっとずつ前と差を縮めていき最後の最後で1人追い抜き8位になった。会場は大盛り上がりだったと思う。

運動会が終わった後、担任のK先生(ちなみにK先生は『今日は国語の授業を辞めてみんなで焼き芋をしよう!』と粋な事をして他の先生に怒られていたりするみんなに人気の先生)が『みんなよくIのミスをカバーしたな!感動したぞ!』と言った。その瞬間、I君は机を蹴飛ばして教室を出ていった。

僕の記憶に鮮明なのはこの後である。

みんな口々、『K先生今の言い方はないで〜、Iが可哀想やん』と言ったのである。もちろん僕も言った。そしてK先生はI君を追いかけていって謝罪した。

なんだろう、青春だったと思う。



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