代謝II
唯一の友人と遊ぶ時は、決まってみなとみらいに行く。いつもだいたい同じ場所を回って、いつもだいたい同じ会話をして、たまに電車に乗らず歩いて帰ったりする。本当につまらない俺の人生の数少ない救いである。
その会話の内容はと言うと、オシャンなパンケーキ屋の前を通る度に
「彼女が出来たらここにきて一緒にパンケーキを食べたい。」
「彼女が出来る頃には潰れてるよ。」
「みなとみらいすら滅んでるかもな。」
そのパンケーキ屋は潰れた。
未だお互いに彼女は出来ていない。
そんなことを4年くらいしているのでデートスポットであるみなとみらいを知り尽くしている自信がある。と言いたいところだが、結局のところオシャンな店は価格帯が手を出せないレベルだからほとんど行ったこともないし、いつもサイゼで済ませているゆえ、万が一、いや億が一彼女が出来たとて、エスコートできるかと言われると多分ろくに出来ないと思われる(対人能力の欠如がよりそれを深刻にさせる)
前に、代謝が止まってゆっくり死にゆく町の話をしたが、みなとみらいはこれの逆に位置する。ものすごい勢いで代謝をしている。人気店も気づいたら違う店が成り代わり、草木が生えるよりも早くビルが建つ。みなとみらいが滅ぶとかいう冗談以前に、逆に俺が置いてかれているのだ。
もうすぐティーンエイジャーが終わってしまう。そんな時期のうちに女の子を連れてみなとみらいに遊びに行くとかしたかった。歳をとってこの願望が歪んだ形で顕現しそうでとても怖い。クソクソクソ
なんで急にみなとみらいの話をしだしたかと言うと、この前ハムリーズというクソデカおもちゃ屋さんが閉店するという知らせを聞いたからである。
高一の12月頃だったかな、ワールドポーターズの2フロアの半分を使ってそのおもちゃ屋は現れた。ディズニーランドのようにスタッフがめっちゃ話しかけてくる実演販売をしたり、子供向けのパレードのようなものをしたり、少子化の現代日本にはとても見合わないようなノリとスタイルのおもちゃ屋だった。
お気に入りだったラーメン屋がそのせいで消えたりしたので当時は「なんだよこれwすぐ潰れるだろw」といったような反応を俺たちはしていた。
そしてコロナ禍がやってきた。俺たちはハムリーズを心配していた。潰れてしまうのではないか、それとも巣ごもり需要でやりすごせるのか。そしてハムリーズは耐えきった。でも、歌って踊るハムリーズの店員さんはいなくなった。彼らがいるとコミュ障ゆえ絡まれるを恐れていたが、妙な喪失感があった。
やっぱり日本にはハムリーズはあんまり相性が良くなかったみたいだったんだけど、ゲーセンを拡張したり、アニメコラボを頻繁にしたり、めっちゃデカいガシャポンデパートなるものを作ったり、いい感じにジャパナイズされていた。
先週、急に重い感じでLINEしてくるもんだからどうしたんだと思ったら、閉店の報せが送られてきた。
別にすごい世話になった訳じゃないけど、なんかショックだった。いつ潰れるのか笑いながら話していたけど本当に潰れるなんて。小学生の時ここで思い出のおもちゃを買ってもらった、とかそういうんじゃないし、別段いい思い出があるわけでもない。
でも、高校時代の時間が消えたような気分で、なんだかんだ好きだったんだなって
ありがとうハムリーズ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?