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使いやすいUIとは何なのか?ユーザビリティの定義を調べてみた。
皆さんこんにちは!株式会社フーリエのデザイナーの平澤です。
弊社のデザイナーの主な業務はデジタル媒体のデザインであり、特にWeb/UIデザインを中心に取り組んでいます。
UI(User Interface)は「User(ユーザー)」と「Interface(接点・接地面)」を指す言葉であり、製品やサービスの接触面、つまりユーザーが目にしたり操作したりするすべての部分をUIと捉えることができます。
そのため、UIデザインの定義は非常に広く、Webに限らず様々なサービスや製品としての使いやすさを意識して日々のデザイン業務に望まないといけません。
ユーザビリティとは?
この製品やサービスにおける「使いやすさ・使いにくさ」をはかる尺度としてユーザビリティという考え方があります。
皆さんは「ユーザビリティが高い」といった表現を耳にしたことがあるかもしれませんが、具体的な定義をご存知でしょうか?
実は、ユーザビリティはさまざまな機関や専門家によって定義されており、評価の基準も異なります。今回は、ユーザビリティやサービスの品質に関する資料を基に、「使いやすいUI」の本質を探っていきたいと思います。
国際規格によるユーザビリティの定義
早速ですが国際規格によるユーザビリティの定義を見ていきましょう。
ユーザービリティとは一言でいうと「ユーザーが目標を達成出来たかどうか」ということを表しており、国際規格では下記のように定義されています。
特定のユーザが特定の利用状況において、システム、製品又はサービスを利用する際に、効果、効率及び満足を伴って特定の目標を達成する度合い。
そして、この文章内に登場する用語はそれぞれ下記のように定義されています。
ユーザ:システム、製品又はサービスとインタラクションする人。
利用状況:ユーザ、目標及びタスク、資源並びに環境の組合せ。
効果:ユーザが特定の目標を達成する際の正確性及び完全性。
効率:達成された結果に関連して費やした資源。
満足:システム、製品又はサービスの利用に起因するユーザのニーズ及び期待が満たされている程度に関するユーザの身体的、認知的及び感情的な受け止め方。
目標:意図した成果。
例えばECサイトでは、目標が「商品の購入」とすると、効果は「商品を問題なく購入できること」、効率は「希望の時間内に購入を終えられること」、満足は「またこのサイトで購入したいと思えること」に該当します。
ヤコブ・ニールセンによるユーザビリティ特性の5分類
また、Webのユーザビリティ研究の第一人者であるヤコブ・ニールセンによるユーザビリティ特性の分類も存在します。
学習しやすさ: システムは、ユーザがそれを使ってすぐ作業を始められるよう、簡単に学習できるようにしなければならない。
効率性: システムは、一度ユーザがそれについて学習すれば、後は高い生産性を上げられるよう、効率的な使用を可能にすべきである。
記憶しやすさ: システムは、不定期利用のユーザがしばらく使わなくても、再び使うときに覚え直さないで使えるよう、覚えやすくしなければならない。
エラー: システムはエラー発生率を低くし、ユーザがシステム使用中にエラーを起こしにくく、もしエラーが発生しても簡単に回復できるようにしなければならない。また、致命的なエラーが起こってはいけない。
主観的満足度: システムは、ユーザが個人的に満足できるよう、また好きになるよう楽しく利用できるようにしなければならない。
国際規格ではユーザビリティは”目標の達成の度合い”というように表現されていました。
しかし、ニールセンのユーザビリティ特性では”目標の達成”は前提条件として扱われており、意味が若干限定的になっています。
ユーザーが目的を達成するための機能はユーザビリティという言葉の中にはなく、その機能をどれくらい便利に使えるか、という意味であるとされています。
ISOの国際規格に比べて、『便利』な状態がより詳細に分類されています。
具体的には「学習しやすさ」「記憶しやすさ」といったサービスを触るユーザーの時間軸が広く取られている印象です。
実際に自社のサービスを評価する際には、ユーザーがサービスに触れる前後のことまで考慮する必要があるため、ニールセンによる分類のほうが実践向きかもしれないですね。
とにかく、高いユーザビリティを実現するためには「目的の達成」+「学習しやすさ」「効率性」「記憶しやすさ」「エラーの少なさ」「主観的満足度」を満たさないといけないということがわかりました。
ヤコブ・ニールセンによるユーザビリティ10原則
ヤコブ・ニールセンは、UI設計や評価の実用的なガイドラインを制定しました。
この原則を用いると、具体的なUI/UXの改善につながるため、ヒューリスティック評価(経験則を基にシステムを評価する手法)で広く活用されています。
1. システム状態の可視性
システムは妥当な時間内に適切なフィードバックを提供して常にユーザーに現状を伝えることが重要です。例えばローディング中であればローディング画面を表示、更に詳しく伝えるならローディングインジケーターを表示して進行状況を表示する等がこれに当たります。
2. システムと現実世界の一致
システムは専門用語ではなく、ユーザーにとって馴染みのある言葉やフレーズ、概念を使用する必要があります。実世界でよく用いられる表現に結びつけ、情報を自然で論理的な順序で、表示しなくてはなりません。例えば、ボタンを立体的にデザインすることで『クリック可能』と示したり、フローティング要素に影を付けることで、手前にあることを直感的に認識させるといった工夫が該当します。
3. ユーザーに操作の主導権と自由度を与える
ユーザーは必ずしも設計者のストーリーどおりに行動するわけではなく、常に誤った操作をしてしまう可能性があります。このような場合は不要な操作を中断できたり、取り消したりすることで容易に元の状態に戻せるようにすることが重要です。
4. 一貫性と標準化を保持する
同じシステム内で繰り返し使用されるパーツやコンポーネント、文言は一貫性が求められ、ユーザーが迷うような事があってはいけません。業界としての標準の慣例に沿ってデザインすることで他のシステムで培った知識や経験を活用し、よりユーザーの学習コストを下げることが出来ます。
5. エラーを予防する
エラーの発生時に適切なエラーメッセージを表示、またはエラーが起こることを事前防いだり最小限に抑えることが重要です。例えば入力フォームでは記入例を示したり、入力後にJSで内容をチェックしその結果を表示したり、確認ページを設置したりといったオプションを用意するとエラーを事前に防ぐことが出来ます。
6. 記憶しなくても、見て理解できるデザインにする
要素や操作方法、用意されているオプションを可視化することでユーザーが操作時に深く考えなくても直感的に操作ができるようにすることが重要です。情報のコミュニケーション途中で別のページに遷移するなどの際は、ユーザーが情報を覚える必要が無いようにしなくてはなりません。操作に必要な要素は必要なときに簡単にアクセスできるようにし、また不要な情報や選択肢を削ぎ落としたデザインでユーザーが目的に集中できるようにしましょう。
7. 柔軟性と効率性をもたせる
システムには常に経験の浅いユーザーから熟練したユーザーまで幅広いユーザーが存在します。初心者ユーザーにはチュートリアルやガイダンスの機能を充実させる一方で頻繁に使う機能にショートカットを割り当てるなどで異なるスキルレベルのユーザーが同じシステムを効果的に利用で切ることを目指しましょう。
8. 最小限で美しいデザインを施す
極力、無関係な情報やほとんど必要されない情報は含むべきではありません。余計な情報は関連する情報と競合し、相対的な可視性を低下させます。また、文言表記すると冗長になってしまうケースではピクトグラムやアイコンを用いたり、アクティブな状態は緑で表記するなどのアイデアは必要です。
9. ユーザーによるエラー認識、診断、回復をサポートする
エラーが発生した場合、エラーメッセージは平易な言葉で表現し、原因を明確に伝えることで建設的な解決策を提案する必要があります。
10. システムのヘルプとマニュアルを用意する
基本的にシステムはマニュアルを見なくても使えることが一番重要です。しかし、ユーザーがタスクを完了させるためにユーザーが必要な情報、サポートにアクセスできることも必要です。
狩野モデル
ユーザビリティに関する品質を考慮するうえでは狩野モデルというものも存在します。狩野モデルは客観的側面としての物理的充実状況と主観的側面としての満足度を直行軸として設定し、品質を「当たり前品質」「魅力的品質」「一次元的品質」の3つのタイプに定義したものになります。
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当たり前品質
1つ目は「当たり前品質」です。YouTubeでたとえると「再生・停止」「横向き画面での再生」に当たる機能だと思います。これらは動画を見るうえで当たり前に存在する機能であり、それらの機能が実装されていない動画再生メディアが仮にあったとしたら使いづらいと感じてしまいます。
このように「無いと不満、あっても当たり前」と評価される物を「当たり前品質」と呼びます。
魅力的品質
2つ目は「魅力的品質」です。当たり前品質とは反対に、ユーザーにとってまだ当たり前ではない機能で実装すると満足度が上がりやすい機能やデザインのことです。YouTubeで例えると「4K画質」「自動字幕表示」などが該当するでしょう。機能の内容によっては非常に高い費用対効果を得られるものもあります。
一次元的品質
図の真ん中のグラフで品質の高さとユーザーの満足度が比例するようなものです。YouTubeで例えると「ローディング時間」「保存できる動画の容量」などがそれらに該当します。一長一短といった側面がなく、早ければ早いほど、多ければ多いほど満足度や充実に繋がるというものを「一次元的品質」と呼びます。
狩野モデルによって、当たり前品質を過剰に強化しても顧客の満足度には繋がらないことがわかります。つまり、品質の向上が常に顧客の満足度に結びつくわけではないということですね。
例えば、魅力的品質は初めて使うユーザーの満足度を高める要素として特に重要であり、ユーザー体験の向上に直結します。一方で、当たり前品質は基本的な満足度の土台となるため、これを欠けさせないことが前提です。
つまり、顧客の主観的満足度が高い状態とは当たり前品質+競合他者よりも優位な一元的品質、または競合他者と差別化された魅力的品質要素のどちらか、あるいは両方が満たされている状態であると言えるのではないでしょうか?
まとめ
今回はUIにおける使いやすさの指標である「ユーザビリティ」の定義、意味をより深堀りしていきました。
一つ一つの項目は当たり前のように感じるほど基本的だと感じましたが、実際に制作して検証してみるとうまくいかなかったということがあると思います。
一度作って終わりではなく実際に評価して改善を繰り返すことでユーザビリティの高いUIを実現できるのだと実感できました。
また、一般的にWebデザインはUIデザインよりも短期間で納品となるパターンが多くすべての案件でユーザビリティテストを行うのは難しいかもしれません。
そのため、グローバルメニューやボタン、ナビゲーションなどをコンポーネント化し、最低限のユーザビリティを担保する流れが一般的です。
裏を返すとそれらのパーツを組み合わせただけの最低限のユーザービリティはすでに当たり前品質となってしまっているということでもあると思います。
当たり前品質のレベルが上っていく流れの中でデザイナーとしてどのような付加価値、差別化を図っていくのかが重要担っています。
常にUIの基本であるユーザビリティを意識しつつ、新たな価値を追求していきたいと思います。