一大陸周遊記 ⑤ブライトン(イギリス)
Day8
ユーロスターでロンドンへ
パリ北駅に近いホステルで、頑張って早起き。ユーロスターに乗るのは憧れでもあったので楽しみな一方、パリ北駅が広くて難解すぎるせいで乗り遅れるのが怖く、相当時間に余裕を持って行動した。
逆に着くのが速すぎて少し待つように言われたものの、のんびり行動して無事乗車。車内はとても快適で、音楽を聴きながらうとうとしていたらあっという間にロンドンに着いた。
この日はロンドンに泊まったものの、特にやることもなかったので着いてすぐにホステルへ。一階がパブになっている構造で、シャワーもあって快適だった。チェックイン直後に雨が降ってきて、外に出る気にもならなかったのでYouTubeやAmazon Prime Videoなどで時間をつぶしつつぐだぐだしていた。
夕食は一階のパブでハンバーガーを食べた。大きなTV画面があったので今夜のCLを見られるか聞いたのだが、残念ながらライセンスを持っていないのでスポーツは見られないらしい。
店員の男性が東京リベンジャーズのTシャツを着てポケモンGOをやりながらビールを注いでいた。
Day9
不真面目バス
20時キックオフのELを見るためにブライトンに移動。
最初は電車(1時間半くらい)で行く予定だったのだが、直前に予約するとチケットが高くなるのをマンチェスター行きの時に痛感していたので、移動方法をNational Expressというイギリスで有名なバス(3時間~3時間半)に変更。前日にチケットを取っておいた。
Victoria Coach Stationというターミナル(日本で言う新宿バスタ)でバスに乗り込む。大きい荷物は下の荷物入れに預けて、予約したeチケットを運転手に見せて乗車。
結果的にバスはそこまで混むこともなく、二人掛けの席に一人で座っていたのだが、チケットを買うときは混み具合が分からなかったので、100円ほどの追加料金を払って座席を予約しておいた。
そういう人はほかにもいるらしく、車内にも"Reserved"となっている席がちらほらある。
にもかかわらず、自分が予約したはずの席が”Reserved”となっていない。まあ座れるから全然かまわないのだけど、数日後の帰りのバスも同じように予約しているのでそこで座れなかったらいやだな、などと考えていた。
ここで大事件。
乗車して1時間くらいたったころ、何気なく自分のeチケットを見返してみて驚愕。
なんとバスの予約日時を間違えて、明日のバスのチケットを取ってしまっていた。そりゃ当然Unreservedだな、と納得した。
もうバスは最後のバス停を出てしまっており、次はブライトンに着くまで止まらない。つまり今更向こうが気づいても降ろされることはないのでこちらとしては全く問題ない(むしろありがたい)のだが、問題は運転手のおっさんである。
チケットを見せた時、あんなに爽やかなスマイルで「OK、乗っていいぜ!!」と言っていたのに。あんたは一体どこをチェックしてGoサインを出したのか。大げさに言ったら不正乗車みたいなものじゃないのかこれ。
雨中の打ち合い
とにかくブライトンに到着。着いてしまえばこちらのもの。ホステルにチェックイン、荷物を置いてアメックススタジアムへ向かう。
日本でネット注文していた三笘のユニフォームが出発までに届かなかった(出国前日に半泣きでキレた)ので、スタジアムのグッズショップでTシャツとマフラーを買う。シャツ2枚で4000円ほどと比較的安いものがあったので良かった。
イングランドのスタジアムは客席にアルコールを持ち込めないため、試合前はみんなコンコースでビールを飲んでいる。いくつかあるTV画面では、遠藤航が出場しているリヴァプール-LASKが放送されていたので、それを眺めながら何人かの地元サポーターと喋った。
中でも仲良くなったのが、バリーという名前のおじいちゃん。
「せっかくのヨーロッパの舞台なのにダンクが欠場なの残念だねえ」と話しかけたところ、めちゃくちゃいろいろ喋ってくれた。
「確かにヨーロッパの舞台だけどな、大事なのはプレミアリーグの方だ。今日欠場しても次のボーンマス戦に出てくれればいいのさ」
「なるほど、おれ先週のユナイテッド戦にも行ったし次のボーンマス戦も来るよ!何ならカラバオカップのチェルシー戦も行くつもり!」
「なに、オールドトラッフォードに行ってたのか!そりゃいい試合を観たな!カラバオは全く大事じゃないから行っても行かなくてもいいと思うぞ」
他にも何人かと喋った後、自席に向かおうと思ってビールの列を通り抜けたら、偶然そこにバリーが息子のゴードンと一緒に並んでいて、紹介してくれた。ちなみに息子といっても30代くらいだった。
「ゴードン、こいつは日本から来た三笘ファンであり、アルビオンファンだ」
そういって紹介してもらったとき、なんだか仲間の一員として認められた感じがしてとても嬉しかった。
キックオフ1時間半前なのに顔が真っ赤なバリー、ビールはほどほどにして長生きしてくれ。
肝心の試合はかなりの塩試合。セットプレーから失点し、得点はPKによるゴールのみ。主審のノーファール判定→VARが介入してOFR→PK、という流れが2回あったので(しかもどちらもジョアンペドロへの接触)スタジアムはかなりフラストレーションが溜まっていた。
2回目のOFRの最中、「ジョアンペドロに謝れ」と野次ろうかと思ったのだが、apologiseに続く前置詞がtoなのかforなのかわからないのでやめた。この旅で唯一、ちゃんと文法を勉強しておけばよかったと思った瞬間だった。
試合後、みんなイライラしてるし、夜だから眠いし、雨が降ってきてめちゃくちゃ寒いしで散々だった。スタジアム最寄りのFalmer駅は小さい駅で屋根もないので、みんなずぶ濡れで震えながらぶつぶつ文句を言っていた。
Day10
Good Old Sussex
この日はのんびりブライトン観光。フィッシュアンドチップスを食べたり、ランドリーで洗濯が終わるまでの間、海辺で音楽を聴きながら昼寝をしたりしていた。
主要な通りをぶらぶらしながら、Poundlandという100円ショップ的な場所で油性ペンを買ったり、虹と夕日を楽しんだりして過ごした。
Day11
チョコを増やすならバナナも増やせ
朝はのんびり起きて、ブライトンピアという遊園地みたいなところへ向かう。昨日のうちに目をつけていた屋台があって、そこでチョコバナナクレープを買う。
このクレープ屋の兄ちゃんが、ものすごいNARUTOファン。こちらが日本人だと分かると嬉々として腕に入れたタトゥーを見せてきた。
「おー、めっちゃチャクラ持ってんじゃん」
などとふざけていたら気に入られてしまい、日本への旅行資金はいくらが良いか、アニメ以外で行った方がいい観光スポットはどこかなど質問攻めにあった。途中からめんどくさくなって適当に答えてしまったので、もし現地に行く人がいたら適度に訂正しておいてほしい。
「色々教えてくれてありがとな!お礼にヌテラ(チョコクリーム)を倍にしてやるぜ!」
と言って、長話の間に2回ほど焼くのを失敗したクレープ生地に、倍量のヌテラをぶち込んだクレープを受け取り、遊園地のベンチで食べた。
バナナの存在感が薄すぎて、チョコクリームをそのまま飲み込んでいるかのようだった。
Lancingの奇跡
ブライトンはコンパクトな街で、昨日のうちに観光は一通り終わってしまったので、この日は暇。というわけで、ブライトンの練習場に行ってみることにした。
練習場への行き方等はこちらの記事を参考にさせていただいた。
少し早いかと思ったのだが、13時半ごろに現地に到着。
Google Mapを片手に何とか練習場の近くにたどり着くと、入り口から少し離れたところに現地の若者2人組が立っていた。この2人、サインまみれのユニフォームに、分厚いアルバムをいくつも抱えている。どう見ても出待ちの達人。早速話しかける。
「こんちは。アルビオンの選手たちに会いたいんだけど。」
「お、じゃあここで待っとくと選手たちが車で出てくるぜ。日本人か?三笘目当てかい?」
「三笘がメインの目的だけど、できるだけたくさんの選手に会いたいんだよね。このTシャツをサインで埋めに来たんだ。」
「OK、協力してやるよ。あ、ほら、三笘が来たぜ!」
聞き間違いかと思った。現に一度聞き返した。
到着してまだ30秒くらいしか経っていない。
達人に言われるまま、サインをもらう予定のTシャツを振る。目の前に止まった車には、本当に三笘が乗っていた。
心の準備もできないまま、サインをもらい、写真を撮ってもらう。
「フロンターレ時代からずっと応援してます、頑張ってください」
それだけは何とか伝えられた。
その後も達人たちのおかげで何人かの選手・監督にサインと2ショットをもらった。この2人まじで凄い。選手たちならまだしも、GKコーチの車種、ナンバープレートまで覚えていた。あととても優しかった。
電車を1本遅らせていたら、練習場までの道を1回間違えていたら、途中で水を買っていたら、三笘には会えなかったと思うと本当に奇跡としか言いようがない。
Day12
熱狂
朝起きてホステルでフロンターレの試合を観る。勝ってよかった。
昨日のTシャツをにやにやしながら眺めてから、アメックススタジアムへ向かう。
流石リーグ戦、木曜のELに比べて圧倒的に日本人が多い。そのほとんどが複数人で来ているので、逆に気まずい。
いつもDJブースがある場所に、今日はサンバ隊が来ており、寒い中で踊っていた。Luke Linx氏に再会した。オールドトラフォードで少し喋っただけなのに覚えていてくれて嬉しかった。
席が隣だったお爺ちゃんがサポーターの生き字引のような人で仲良くなり、本拠地がなかった時期の話を教えてもらったり、こちらの旅行について説明したりした。
三笘はベンチスタート。メインスタンドの左側、割と前の方の席を取っていたので、前半は目の前でアップをして、後半は出場してドリブルを見せてくれるんじゃないか、なんて話もしていた。
前半は何とも言い難い内容で、サイドハーフが三笘とマーチでないのがもろに響いている感じ。
ハーフタイムに三笘とファティがアップを早める。
隣の爺ちゃんも「敵のボックスに侵入する回数が少なすぎる。当然三笘が必要だ。」とつぶやいていた。
後半キックオフ。早速ファティがプレスをかけ、こぼれたボールを三笘が拾う。
あの時のスタジアムの雰囲気。
サッカーを見ていると稀に味わうことができる、言葉で説明しきれない濃密な時間。
歓声が沸くわけではない。拍手が起こるわけでもない。
ただ、スタジアム全体がわくわくさせられる。
全員の体温が少し上がるような、心拍数が少し上がるような。
ゆっくりと時間が過ぎ、十数秒後、三笘がネットを揺らしていた。
信じられなかった。こんな出来すぎなことがあるだろうか。
思わず立ち上がって後ろを振り向いた。
日本から遠く離れたサッカーの母国で、スタジアムが総立ちで三笘のゴールを称えていた。後ろの席のおじさんに肩を叩かれた。隣の爺ちゃんは何故かドヤ顔で頷いていた。
”熱狂”という言葉がぴったりだなあ、とぼんやり思った。
慌ててピッチに目を戻すと、その熱狂の渦の中心に三笘がいた。
自分が何かしたわけでもないのに、なぜだか誇らしくなった。
いつも見ている等々力と、映像でしか見られなかった海外が地続きになった気がした。
約30分後。左サイドにボールが渡り、三笘がするすると中央に入っていく。エストゥピニャンからのボールにヘディングで合わせて、この日2点目。
まじか。プレミアに入ってからどころか、Jリーグ時代を振り返っても三笘の1試合2得点は記憶にない(ベルギー時代にはハットトリックとかしてたはず)。とんでもない試合を引いてしまった。
そのままブライトンは3-1で勝利。隣の爺ちゃんはアディショナルタイム6分の表示を見た途端「Too much.」と言って帰ってしまった(ちゃんと「お前は最後まで楽しんで帰れよ」と握手してくれた)。
余韻に浸ったまましばらくスタジアム周辺をぶらついた後、駅に戻る。お祭り騒ぎの車内の中、たまたま偶然高校の後輩と会い、駅で少し喋る。イギリス留学中らしい。こんなところで会うなんて。
おまけ
迷った結果、敬称はあえてつけずに書いたのでご理解を。
ブライトンのホームゲームでは”Sussex by the sea”という歌が必ず流れるので覚えてから行ったのだが、これはおすすめ。試合前だけでなく試合中にも応援歌として使うので、歌えるとかなり楽しい。
次回は最終回ロンドン編、聖地巡礼して旅を終える話。
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