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いい情報とは、相撲の寄り切りのようなものである〜佐渡島庸平さんによる『編集の学校』@福岡12月の学び

『ドラゴン桜』(三田紀房)や『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『働きマン』(安野モヨコ)など、数々のヒット作を生み出してきたスーパー編集者、佐渡島庸平さん。
ローンディール社の案件でライターとして取材させていただく機会があり、佐渡島さんのものの見方や、そこから繰り出される言葉の数々が響きまくった。

私も編集者の端くれとして、佐渡島さんのエッセンスを吸収したい。
情報を漁っていたところ、佐渡島さんによる『編集の学校』なるものが12月ー3月、福岡で開催されるという情報をキャッチ。
編集をテーマにしたリアルな勉強会だ。

東京在住の私ですが、福岡であろうが「今でしょ!」と前のめりに参加を決めた。

いい情報とは、相撲の寄り切りのようなものである

『編集の学校』12月のテーマは「編集の基本・安定してヒットを打つ方法」。
正直な話、初回にして元を取れた気がした。

それは「いい情報とは、相撲の寄り切りのようなものである」という名言に触れることができたからだ。

相撲の決まり手の一つである寄り切り。
一見、とても地味に見える寄り切りに、いい情報の極意が詰まっているという話だった。

寄り切りとは、
【相手と体を密着させ、前や横に進んで相手を土俵の外に出して勝つこと】

寄り切りをするには、相手の上半身を起こし、一瞬の隙で相手のまわしを取らなければならない。

情報を伝える時、上体起こしに当たるものは驚きだ。
「え!?」という驚きを与え、上体を起こした瞬間、まわしを取る。
そこから一気にゴールの土俵際まで追い込み、寄り切る。

驚きの次には何を伝えればいいのか。
次なる一手をしっかり設計して、相撲のように、一連の流れをつくること。
受け手の「感情の流れ」をつくるのが編集である、というお話だった。

いい情報は、寄り切り。
相撲の映像とともに、この言葉が脳内に強烈にインプットされた。

広告キャンペーンの設計にも当てはまる、寄り切り理論

1回目の『編集の学校』の後、クライアントと広告キャンペーンについて議論をする機会があった。
効果の良かったクリエイティブを振り返り、次のクリエイティブをどうするか話をしていた時。
寄り切り映像がフラッシュバックした。

そう、寄り切り理論は広告設計にも当てはまるのだ。
効果の良かったクリエイティブは、最初に意外性や驚きを訴求していた。
そこから次なる一手として驚きの背景を伝え、だからこの商材がオススメなのだと土俵際へと追い込む設計ができていた。

寄り切り理論はマーケティングやキャンペーンの設計にも使えたのだ。

その後も発見した、寄り切りの応用編

お正月、歯が痛くなった。
数日間痛みがおさまらない。
痛みの感じからして、根の深そうな虫歯の気配。
2年間、歯医者を避けてきたけどもう限界だ。腹を括って行くしかない。

長らく通院を怠っていたので、前の歯医者には行きづらい。
しかもまた通いたいかというと、それほどではない。
そこで夫が最近通い始めて「まあまあいい」という歯医者に行ってみることにした。

都会のど真ん中の真新しいビルにある、カフェとジムが併設されたキラキラ系歯医者。
それでいて前日あっさり予約できた上に、私の前には他の患者さんがいなかった。
どうにも胡散臭い。
きっと私費治療のオンパレードで一人の患者からがっぽり稼ぐ形態なのだろう。
警戒態勢で担当医の診断に耳を傾けると、意外な言葉が飛び出した。

「痛みの原因は噛み合わせですね。
過去に歯列矯正してますよね。その影響で噛み合わせに左右差が出てきています。」

虫歯が原因だと思い込んでいたので、予想外の一言に驚いた。

さらに、
「歯ブラシってどれくらいの頻度で交換していますか?歯茎を見た感じ、少し力を入れすぎかもしれません。今後うちで、歯ブラシ指導していきますね」

歯ブラシ指導??それって保険診療じゃ??意外と良心的!?

その後も、先生のトークは続いた。
なかには、私が警戒していた私費治療の情報もふんだんに盛り込まれていた。
保険治療と私費治療の考え方の違いなど、知らない情報も多く、「へー」の連続だった。

最後に提示された今後の治療のロードマップは十分に納得のいくもので、最初の警戒はどこへやら、あっさり次回予約をして帰った。

帰り道、脳裏にこびりついているあの映像が再びフラッシュバックした。
寄り切られたのだった。

寄り切りで実感した、優れたコンテンツの極意

寄り切りを体感した1ヶ月。
こんなにも寄り切りが刷り込まれた理由を、私は知っている。
優れたコンテンツの極意を佐渡島さんが語っていたからだ。

「優れたコンテンツは、そのコンテンツが表現できていない、五感のなかの違う感覚を再現している」という話だ。

例えば、スラムダンクの最終巻。
試合の最後の8秒はセリフがない。無音なのだ。

花道が「左手はそえるだけ…」と最後のシュートを決める。
試合終了のホイッスルが鳴り、流川と花道がハイタッチをする。
この瞬間、読者には、はっきりと音が聞こえるのだ。

音が聞こえる漫画、スラムダンク。
「優れたコンテンツは、そのコンテンツが表現できていない、五感のなかの違う感覚を再現している」とはまさにこのこと、という話だった。

話を戻すと、寄り切り話が刷り込まれたのは、力士の映像が脳内で再生され、視覚で再現されるようになったからだと思う。
つまり、編集の学校そのものが優れたコンテンツになっていたわけだ。
伏線回収じゃん……!!!

さあいよいよ今夜は第2回『編集の学校』。
どんな学びがあるか楽しみだ。



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