排他性の諸刃の剣 (The Double Edge Sword of Exclusivity)
* この記事は著者の了承を得た上で翻訳したものです。
オリジナル記事はこちらです: The Double Edge Sword of Exclusivity
著者: Mason Nystrom
翻訳者: 渡辺圭祐
先日、Bessemer Venture Partnersの投資家であるGaby Goldberg氏の素晴らしいMirror記事を読みました。
ソーシャル・トークン・パラドックス:新しいノードへの収益の逓減
この記事の中でGoldberg氏は、彼女が「ソーシャル・トークン・パラドックス」と呼ぶものについて論じています。これは排他性に基づくソーシャル・トークン・コミュニティで生じる問題です。その問題とはソーシャル・トークンは新しいメンバーを加えることで価値が上がるのに、会員制のゲーテッド・コミュニティはグループを排他的に保たなければならず、そうしないと社会的価値やユーティリティの価値が下がってしまうというものです。このようにして、ソーシャル・トークンのパラドックスが生まれたのです。
訳者注: ゲーテッドコミュニティ(英語: Gated community)
ゲート(門)を設け周囲を塀で囲むなどして、住民以外の敷地内への出入りを制限することで通過交通の流入を防ぎ、防犯性を向上させたまちづくりの手法。Wikipedia
他の方法でユーティリティを高めることができなければ、排他的なコミュニティはソーシャルトークン・パラドックスに直面し、以下のような悪循環を繰り返す運命にあります。
第1段階: ソーシャル・トークンを使って排他的なコミュニティを構築し、一定数のトークンを保有することでメンバーになる。
第2段階: 早期参入者がトークンを獲得することで、トークンの価値が上がる。また、新規参入者は、そのグループが排他的で社会的に価値があるという考えを強化するため、一時的に排他性が高まる。
第3段階: ある閾値(グループによって異なる)を超えると、新規メンバーの継続的な増加により、グループの社会的ユーティリティと排他性が低下し始める。しかし、新規メンバーはトークンを獲得せざるを得ないため、トークン価格は上昇する。
第4段階: 最終的に新規メンバーは、トークンの価値を確実にするために新規メンバーをリクルートするインセンティブが与えられる。しかし、十分な規模になると、新規メンバーは排他性の価値のリターンを減少させる結果となる。この時点でトークンは価値があり、ある程度のメンバー数でピークを迎える。
第5段階: メンバーは利益を得るため、または排他性/ユーティリティの低下を理由にトークンを売却する。最終的にコミュニティはある程度の均衡を保った後、再びこのサイクルを繰り返すことになる。
このパラドックスは、メンバーシップベースではないトークンでは起こりません。例えばビットコインの新規購入者は、それぞれビットコインの価値を高め(希少性を高め)、その結果、すべてのメンバーの目的が揃うことになります。ネットワークに新しいノードやメンバーが加わることで、ネットワークの価値が高まります。
排他性という諸刃の剣
残念ながら、排他的なコミュニティの成長には収穫逓減があります。一般的に、人が増えると排他性が減り、社会的価値が下がります。金銭的な価値と引き換えにメンバーになることは、排他性の最も一般的な形態です。カントリークラブ、イベント、購読料などは、金銭的価値と排他性を交換する形態です。 会員資格にはイベントなどの一時的なものもあれば、会費などの定期的なものもあります。
金銭的に得られる排他性やメンバーシップは諸刃の剣であり、ソーシャル・トークン・パラドックスに陥ります。また、コミュニティの規模や潜在的な成長を制限することになります。
バリュープロポジションとしての排他性は常に存在しますが、金銭的に完全に依存する必要はありません。
パフォーマンスまたは業績の排他性
パフォーマンスや業績は社会的に価値のあるシグナルです。パフォーマンスの評価は曖昧なことが多いですが、Rabbitholeはすでに、特定のタスクを完了したことをチェーン上に記録することを始めています。さらに、様々なDAOでタスクを完了した個人(例:ブロンズメンバー、シルバーメンバーなど)や過去の投票者にメンバーシップを与えることができます。実績や参加状況に応じてメンバーシップを階層化することで、異なるコミュニティの個人を1つのDAOやコミュニティに集めることができます。様々なDAOからトップの貢献者や投票者が1つのDAOに集まっていることを想像してみてください。
時間の排他性
時間に基づいたメンバーシップを作成することで、長期的なプレイヤーが集まり、ゲームや金銭などでは購入できない要素が加わります。時間によるメンバーシップは、達成されるまで何時間も何週間も作業に没頭するようなタスクのような成果と組み合わせることもできます。このモデルは参加するために多大な努力を必要とするコミュニティを発展させる動機付けとなります。
経験やサービスの排他性
経験を共有することで、社交クラブや大学生、同じ地域に住む人など、さまざまな人が結びつきます。経験は、慈善団体への加盟などの目的志向のものや、アーティストのコンサートに参加してからDiscordチャンネルへのアクセスを提供するNFTを得るというイベント志向のものもあります。
排他性についての最終的な考え
金銭的な独占性が否定されるわけではありません。活動や会員権など、人々がどのように資本を配分するかは、すべてトレードオフの関係にあります。排他性は目的や目標を共有するコミュニティに価値をもたらします。ソーシャル・トークン・コミュニティがネットワークを拡大しようとするとき、金銭的なものだけではないユーティリティや価値をもたらす方法を想像することが重要になるでしょう。
オリジナル記事はこちらからご覧ください。
排他性の諸刃の剣 (The Double Edge Sword of Exclusivity)