見出し画像

システム思考で、木を見て森も見る方法

ものごとの一部だけに気を取られていると、本質を見落としてしまうことがあります。

これが、木を見て森を見ずと言われる状態です。

「木を見て森を見ず」になることを防ぐうえで、システム思考は効果的です。

システム思考とは「ものごとをシステムとしてとらえて多面的に考える」思考法です。

「木を見て森を見ず」を防ぐ

「木を見て森を見ず」を防ぐ、つまり「目の前のものごとだけを見てしまい、全体を見失うこと」ことを防ぐためには、

  • 高い所から見下ろすように見る

  • 広い視野全体を把握する

ことが大切です。

このような見方・考え方をするうえでシステム思考は効果的です。

システム思考とは

まず「システム思考とは何か」を説明します。

ここでのシステムとは、次のような意味になります。

  • 複数の要素集まり

  • それぞれの要素が働いて、全体1つの機能を働かせる

システム思考とは「ものごとをシステムとしてとらえて多面的に考える」思考法のことです。

システム思考では、ものごとシステムとしてとらえて多面的に考えます。

まず、ものごとを「ある機能を働かせるための集まり」(システム)としてとらえます。

そして多面的に、さまざまな角度から分析します。

本記事では、システム思考の具体的な方法として、システム分析を解説します。

システム分析

システム分析は、次の手順で行います。

  1. まず、分析したいものをシステムとしてとらえる

  2. 「システム⇔その周辺」や「システム⇔その要素」の関係を考える

一般的には「分析したいもの」だけ、つまり「システムだけ」を考えてしまう傾向があります。

システム分析では、システムだけではなく「システムの周辺」や「システムの要素」も、分析の対象にします。

「システム⇔その周辺」間の関係を考えることで、広い視野で全体を把握することができます。

さらに「システム⇔その要素」間の関係を考えることで、より深く分析することができます。

「システム⇔その周辺」や「システム⇔その要素」の関係を考えるうえで、ものごとの階層を認識することが大切です。

階層を認識する

ものごとには階層があります。

階層とは「建物の階の上下のかさなり」のことですが、ものごとの関係にも階層があります。

次の図を使って説明します。

図1.階層

上の図のXには「A・B」が含まれます。

またAには「a・b・c」が含まれます。

そしてcには「c1・c2・c3」が含まれます。

「A」に対して「X」は上の階層になり「a・b・c」は下の階層になります。

ものごとの関係には、このような階層があります。

システム分析では、階層の「どの部分をシステムにするか」を決めます。

何をシステムにするか

システム分析では、まず分析したいものをシステムとしてとらえます。

階層の「どの部分をシステムにするか」を決めます。

例えば、図1のcについて分析したい場合は、cシステムにします。

図2.cをシステムにする

次に、c(システム)の上位システム下位システムを考えると、

  • 上位システム:A

  • 下位システム:c1・c2・c3

となります。

図3.cの上位システムと下位システム

「何をシステムにするか」は自由です。

Aをシステムにした場合は、

  • 上位システム:X

  • 下位システム:a・b・c

となります。

図4.Aをシステムにした場合

システム分析では、分析したいものを中心に、その上位システム下位システムを考えます。

図5.システム分析の基本

システム分析では、上の図の関係が基本になります。

この関係を維持した状態で、ものごとの階層の中を自由に移動して分析を行います。

図6.階層の中を自由に移動

では、システム分析を使って具体的に考えてみましょう。

木を見て森も見る

冒頭で述べた「木を見て森を見ず」とは、「目の前のものごとだけを見てしまい、全体を見失うこと」ことでした。

このようにならないために、システム分析で木を見て森も見てみましょう。

システム分析は次の手順で行います。

  1. まず、分析したいものをシステムとしてとらえる

  2. 「システム⇔その周辺」や「システム⇔その要素」の相互関係を考える

をシステムにします。

木をシステムにすると、その木を含むが上位システムになります。

さらに下位システムも考えましょう。

下位システムとは、システムに含まれる要素です。

システムに含まれる要素を構成要素と呼びます。

木(システム)の構成要素には、「みき・枝・葉」などがあります。

  • 上位システム:森

  • システム:木

  • 下位システム(構成要素):幹、枝、葉など

システム分析では俯瞰ふかんすることが大切です。

俯瞰ふかんとは

  • 高い所から見下ろすように見る

  • 広い視野全体を把握する

ことです。

そのためのシステムの空間図をご紹介します。

システムの空間図

「システムの空間図」のフォームを示します。

図7.システムの空間図

システムを中央にして

  • 上の欄:上位システム内の他のシステム

  • 中央の欄:システムにするもの

  • 下の欄:下位システム(構成要素)

を記入します。

をシステムにした場合の空間図を考えましょう。

上位システムはになります。上位システム(森)内の他のシステムには、次のものがあります。

  • 他のシステム

    • 周囲の木

    • 周囲の草

    • 地面

下位システムの構成要素には、次のものがあります。

  • 構成要素

    • みき

「システムの空間図」のフォームに、システム・他のシステム・構成要素を記入します。

図8.木の空間図

木の空間図が完成です。

「木の空間図」を見て、木システムを俯瞰ふかんしながら分析してみましょう。

木の空間図を俯瞰する

「なんとなく木を見ている」状態は、空間図のシステムだけを見ている状態といえます。

図9.システムだけを見る

木(システム)だけを見ていると、気づかないことがたくさんあります。

他のシステム(周囲の木・周囲の草・地面)も見てみましょう。

図10.他のシステムも見る

「他のシステム⇔システム」間の関係を考えると

  • 周囲の木の高さにより、木への日当たりが良くなったり悪くなったりする

  • 周囲の草や地面の状況により、木の成長が影響を受ける

といった気づきが得られます。

さらに構成要素(幹・枝・葉・根)にも目を向けましょう。

図11.構成要素も見る

「システム⇔構成要素」間の関係を考えると、

  • 木の構造が「幹→枝→葉」の形で枝分かれすることで、葉が空間上に効率よく配置され、太陽光を吸収できる

  • 根を地面に張ることで、木が安定する

といった気づきが得られます。

大きく見て、小さく見る

ものごとを見るときには「今見ている(見えている)ものが全てである」と考えがちです。

しかし実際には、ものごとの一部だけを見ていることがあります。

システムの空間図を使えば、大きく見たり、小さく見ることができます。

図12.大きく見て、小さく見る

(上位システム)の他のシステムも見ることで、木を大きく見ることができます。

「他のシステム⇔システム」間の関係を分析することで、広い視野で全体を把握することができます。

また下位システムの構成要素も見ることで、木の細部まで小さく見ることができます。

「システム⇔構成要素」間の関係を分析することで、より深く分析することができます。

ものごとの本質をつかむうえで「大きく見て、小さく見る」ことは効果的な方法です。

次回は「システム思考で、過去未来を見る」です。

シリーズ記事

  • 前回の記事

  • 次回の記事

関連書籍

※Kindle Unlimited 会員の方は、追加料金なし(¥0)で読み放題です。

発明原理グループ1(01分割〜08つり合い)を1冊にまとめました。
アイデア発想のチェックリストとしても使えます。
※Kindle Unlimited 会員の方は、追加料金なし(¥0)で読み放題です。

参考文献

Darrell Mann『TRIZ 実践と効用 (1) 体系的技術革新』の「第4章 システム・オペレータ/9画面法」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?