
メタバースは破壊的イノベーションか?ライフスタイルを変えるか?
メタバースは、破壊的イノベーションでしょうか?
メタバースは、私たちのライフスタイルを変化させるでしょうか?
その答えを探るために、ライフスタイルを変化させる「破壊的イノベーション」をシステム思考で考えます。
イノベーションの種類
イノベーションには次の2種類があります。
破壊的イノベーション
持続的イノベーション
破壊的イノベーションとは
「人々の行動や働き方」といったライフスタイルを変えるようなイノベーションを、破壊的イノベーションと呼びます。
例えば、EV(電気自動車)が普及した場合、自動車を走らせるために必要な行動は、「ガソリンの給油」から「電気の充電」へと大きく変化します。
そのため、EV(電気自動車)の普及は、破壊的イノベーションといえます。
破壊的イノベーションは、不連続なイノベーションとも呼ばれます。
持続的イノベーションとは
「既存の製品やサービス」を改善・改良することで、価値を向上させるようなイノベーションを、持続的イノベーションと呼びます。
「既存の製品やサービス」をアップグレードする形で行われるので、人々の行動や働き方を変えることはありません。
持続的イノベーションは、連続的イノベーションとも呼ばれます。
※上記の内容は『キャズム Ver.2』の「第1章 ハイテク・マーケティング-錯覚」を参考にして作成しました。(参考文献1)
システム思考で考える
破壊的イノベーションを、システム思考で考えてみましょう。
システム思考では、さまざまなものをシステムとして捉えます。
システムは、Sカーブを描いて発展することが観察されています。(参考文献2)

図の縦軸は「システムの価値」で、横軸は「時間」です。
システムの発展には、4つの段階があります。
導入期
成長期
成熟期
引退期
1.導入期
ほとんどの人が、その存在や良さを知らない段階です。
ゆっくりと発展する段階です。
【例】 大学や企業の基礎研究の段階
2.成長期
システムの良さが伝わることで、多数の人々が関心を持ち、開発に加わります。
【例】 研究→開発へ
技術開発が進み、相乗効果でシステムが急速に発展する段階です。
【例】 多くの企業による開発競争
3.成熟期
技術が成熟し、システムの発展が頭打ちになる段階です。
カーブの傾きが横ばいになります。
【例】横並び→価格競争へ
4.引退期
そのシステムが、徐々に使われなくなる段階です。
システム発展の4段階は以上です。

引退期を迎えたシステムは、その後どうなるのでしょうか?
Sカーブのシフト
「システム発展のSカーブ」には続きがあります。
現行のSカーブに対する新しいSカーブが登場します。

A:現行のSカーブ
B:新しいSカーブ
2つのSカーブは、現行システムと新システムに相当します。(参考文献2)

SカーブA = 現行システムA
SカーブB = 新システムB
現行システムの交代期
「現行システムA」が引退期を迎えるころには「新システムB」が現れます。

新システムBの価値は、当初(導入期)は、現行システムAに及びません。
しかし、成長期に入ったころには、現行システムAを追い越しはじめます。
そして現行システムAを追い越した時点で、新システムBが完全に取って代わります。
これが交代期と呼ばれる段階です。
2つのSカーブは不連続
「現行SカーブA」と「新しいSカーブB」は不連続です。

そのことが示すように「現行システムA」と「新システムB」の関係も不連続です。

不可逆なイノベーション
「現行システムA」と「新システムB」の間には互換性はありません。
それぞれを置き換えることはできません。
破壊的イノベーションは、人々の「行動や働き方」といったライフスタイルを変えます。
一度変化すると、もとの状態には戻りません。
そのため、破壊的イノベーションは不可逆なイノベーションといえます。

メタバースは破壊的イノベーションか?
破壊的イノベーションを、システム思考で見てきました。
では、冒頭の質問の「答え」を考えましょう。
メタバースは、破壊的イノベーションか?
メタバースは、私たちのライフスタイルを変化させるか?
システム思考で見てきた「破壊的イノベーションの不連続性や不可逆性」は、メタバースに当てはまると考えられます。
メタバース以前のシステムとの互換性も少ないでしょう。
そのため、メタバースが破壊的イノベーションになる可能性は高いといえます。
しかし、メタバースがイノベーションであるかを決めるのは、メタバースを使う人々、つまりメタバースの顧客です。
メタバースの顧客のライフスタイルが大きく変化することで「メタバースが破壊的イノベーションである」ことが明確になります。
メタバースが「人々の行動や働き方」といったライフスタイルを変えるかどうかは、メタバースに関わる方々の今後のお働きによります。
また、社会や経済の変化も影響してきます。
そのため、現時点で「冒頭の質問」の「明確な答え」を出すことは難しいです。
今後、メタバースが「人々のライフスタイル」をどのような変えるかに注目したいですね。
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参考文献
ジェフリー・ムーア『キャズムVer.2 [増補改訂版]新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論』の「第1章 ハイテク・マーケティング-錯覚」
Darrell Mann『TRIZ 実践と効用 (1) 体系的技術革新』の「第7章 問題定義-Sカーブ分析」