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DMと君と。♯11

店を出ようとする父の手を掴んだ

「私の話をちゃんと聞いて」

私の名前は向井彩奈
令和4年生まれの24歳
職業は警視庁科学調査班に所属する警察官だ。

令和20年より試験が開始されていた
時差移動式調査に携わっている。
簡単にいうとタイムマシーンである。
令和になり時空移動は研究が積極的に進められ
令和17年は事実上、時空の移動は可能になった。

自主的訓練のもと令和3年に来たのだが
それには理由がある。

私の家族は父と母の3人
母は先日50歳という若さで他界した。
癌であった。
母が亡くなる一ヶ月前、母は今までになく
私と話をするようになる。
私との思い出、学生時代の思い出
そして一番驚いたことは
父と血が繋がっていなかったということ。

私の父は向井孝宏、母より5つ上で
一人娘の私を心から大切にしてくれた。
その父は私の血縁の父ではなく。
母の中に私の命が芽生えたとき出会い結婚。
血の繋がった父は私の存在はしらないらしい。

母は父と同じくらい
それ以上に愛した男性がいるという
母は若い頃にお笑いに夢中だっという
ずっと応援していた芸人さんもいたらしい
母はお笑いに救われたと言った。

母が最後の瞬間に
意識が朦朧とするなか口を開いた
「伊達くん、伊達くん…」

誰、聞いたことのない苗字

「将暉くん、伊達将暉くん」

母は息をひきとった。
最後に私たちの家族の誰でもない人の
名前を呟いて母は眠る。

お葬式を終えて家の整理をしていると
母の部屋から伊達将暉という芸人の
グッツや切り抜きが出てくる。

「東京ラブタンク伊達って…」

私は母の話を思い出した
父とは血が繋がってない
最後の伊達将暉、私の本当の父って
この人なの?

東京ラブタンクは今やお笑い界の売れっ子
業界を牽引する存在である。

そう目の前にいる
若手芸人に私は全てを伝えた

「僕の、娘…なのか?」

「そうよ。お父さん、それを伝えたかったの。」

「どうして友美は言ってくれなかった」

「あなたはここからお笑いが忙しくなるの
    それを気遣って伝えなかったの」

「そんなぁ…」

「私は通常歩まれるべき流れを壊した
    元の令和24年で処分が下ると思う。」

「なんでそんなリスクを?」

「そうしないとお母さんが報われない」

目を真っ赤にしたアヤメンタルを前にして思う
そうか聞き覚えのある声だ。
友美に似た可愛らしい声だ。
止まらない動悸に落ち着かない喫茶店。(つづく)

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