呑んで忘れたい5
「え、どうするんですか?西蓮寺さん」
「まぁ一応、俺が店長だからぁ詫びを入れに。。」
そういって店長は腰にぶら下げた鍵の一つを
店の奥にある金庫に向けて席を立つ。
「諭吉が一枚、二枚・・百枚と」
「百万円?そういうものなんですか?」
西蓮寺が申し訳なさそうな顔をしながら俯く
「百万じゃ怖いから200諭吉持ってか」
「二百万ですか?!」
「じゃあタクトいくよ」
そういって店長と西蓮寺さんは怖い大人の
事務所へと行くことになった。
「イチカさんほんとすみません・・」
「気にすんな俺も若い頃はやんちゃしてたし
ちなみに、その女の子かわいいの?」
「かわいいっていうかエロいです・・すんません」
そして二人は神妙な面持ちで例の事務所の
目の前にまで来ていた。
「秋吉組・・怖いっすねぇ」
「やばい吐きそう・・」
「俺のせいですみません」
互いに覚悟を決め事務所のドアにノックする
そのドアの先には映画や漫画の世界でしか
見たことのないような世界が広がる
ぱっと見7人の男が二人をにらみつけている
「失礼します、近くで飲み屋をやってるものです
今回は大変申し訳ございませんでした。」
そういって店長は懐にある札束をテーブルの上に
そっと置き、床に頭をつけ謝罪した。
しかし男たちはしばらく動きを見せない。
もう一つの札束を出そうとした時に
おそらくその中で一番偉いと思われる人間の
隣にいた男が立ち、札束から5万円だけを抜き
残りの束をイチカのもとに投げた。
「ここで組長やらせてもろうてる秋吉です」
奥の席で秋吉が口を開く。
「ウチの娘がえらい世話になってるようで
迷惑かけたなぁ、今日は帰ってくれ」
そう言われ逃げるように退出する。
「だ、大丈夫だったんですか?イチカさん」
「今日は店閉めて飲み行くぞ」
「え、そんな呑気なことやって大丈夫すか?
俺が原因ですけど・・」
「違う、ただ飲みに行くわけじゃねぇよ
秋吉組さんが経営してる店に行って
この95万分金落としにいくんだよ」
店に帰ってきて西蓮寺がことの経緯を
詳細に話してくれ俺含め、スタッフ全員が
震えた、歌舞伎町は怖いと・・
俺のバイト二日目の仕事内容は
バイトのやらかしによる禊ぎであった。
その後秋吉組が経営するホステス
「クラブ春夏冬(あきなし)」へ
できるだけ高い酒を飲むよう指示された
そこで飲む酒の味はまったく覚えてない
我々のことなど尻目に楽しそうに飲んでいる
テレビでお馴染みの芸人がいる
まさに売れっ子というべき人だ
「エレンくんと同じ事務所の人だっけ?」
「あ、そうっすね」
「いつかああなってよね!」
西蓮寺が他人事のように言うまぁ他人事だが
いつか売れたらまたここに来て
綺麗な女性に囲まれながらハメを外すと
心に決めた禊ぎであった。
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