福岡と伝統行事(博多祇園山笠)
福岡は、例年なら今日から誰もが知る伝統行事が始まる。
博多祇園山笠だ。
福岡を代表する夏の風物詩も、ご多分に漏れず今年の開催は中止となった。
起源は諸説あるようだが、疫病除去のための行いが、災厄除去の信仰と結びついて櫛田神社の神事として発展したのが始まり。
本来であれば今日から様々な取り組みを経て、15日の「追い山」まで行事は続く。
詳しくは知らないのだが、最終日の「追い山」は早朝5時から始まるにも関わらず、桟敷券を購入して現地で観覧をする人が大勢いる。
電車もそのための臨時ダイヤが組まれ、複数のテレビ局が生中継で様子を放映する。
博多の街全体が山笠のために動き、山笠に全ての力を注ぐ。観る側としての印象だが、平日の昼間にも関わらず法被にふんどし姿でいる人を見ると、7月の2週間にかける並々ならぬ情熱のようなものが伝わってくる。
博多に暮らす人の生活の一部である山笠。今年の延期は避けられないものと分かりつつ、やはり当然のように今までやってきた一大行事が無くなるのは、寂しい気持ちもあるだろう。山笠のために1年を過ごしている人もいるかもしれない。
山笠自体は1年の延期となったが、櫛田神社の「飾り山笠」のみ今日から公開となった。
飾り山笠は本来であれば行事の15日間、14箇所で公開される。歴史上の出来事や童話・アニメなどが題材になってつくられた博多人形が、豪華に山笠に飾り付けられる。
足を止め、写真を撮る人も多く、期間中の博多を盛り上げるものの一つだ。
今年は14箇所ではなく、櫛田神社の1箇所のみ。
ただし、来年の6月まで公開されるようだ。
その飾り山笠の、表側は「清正公虎退治誉」。
裏側は「桃太郎鬼退治誉」。
説明も諸々あるが、加藤清正と桃太郎を題材にしたものだ。
朝早くから、写真を撮影しにくる一般の方や、テレビ撮影の人が何人も櫛田神社を訪れていた。
いつもの山笠の規模からすると、櫛田神社に飾り山笠のみというのは、やはり寂しいものがある。
櫛田神社が道を1本入った通りにあるため、幾分かひっそりとしてしまった感もある。
だが、博多に暮らす人たちからすれば、飾り山笠だけでも櫛田神社に公開されたのは嬉しいことなのかもしれない。伝統行事ですら延期や中止を余儀なくされる今の状況を、少し忘れさせてくれる。いつもの博多の様子を、少しだけでも感じさせてくれる。
今年はこの飾り山笠が、博多の人たちの希望になるかもしれない。
飾り山笠は1年近く公開される予定だ。
この時期だけでなく、福岡の一大名物を感じられるものが櫛田神社にある。福岡に住む人だけでなく、他の都道府県から福岡に来た人も、観光の機会などがあれば訪れて、山笠の豪華さ・壮大さ・脈々と続く伝統を味わって欲しい。