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同じ曲を繰り返し何度も聴いてしまう

たまに、一つの曲からどうにも離れられないモードになる。これがカセットテープだったら確実に擦り切れているだろうな、と思うくらい、同じ曲を繰り返し何度も聴いてしまう。

そして、今がまさにそのモード。ここ数日、わたしはずっと、SUPER BEAVERの『your song』を聴いている。

ふと、「今までじっくり聴けていなかったアーティストの曲を改めて聴いてみよう」と思い立って、Apple Musicで彼らのトップソングを順に聴き始めたのがきっかけだった。

イントロの空気に触れた瞬間、ヒュンッと一気に魅せられた。やさしい歌い出しと所々に挟まる絶妙なブレイク、繊細なアルペジオに丁寧なアンサンブル、聴き手に語りかけるような歌詞に惹き込まれて、「なんだかずっとこの心地よさに浸っていたいなぁ」って、気づいた時にはスマホの画面の「リピート」のアイコンをタップしていた。

この唄に『your song』と名付けるセンス、ズルい。(訳:好き)

最初、1番の歌詞を聴いた時、まずは、「愛情深くて不器用な誰かの恋の唄かな」と思った。感情移入するというよりは、<僕>と<君>を遠巻きに眺めて見守るような、一つの物語の傍観者みたいな気持ちで聴いていた。

でも、1番で<君に何かを伝えたい>だった歌詞が、2番で<君に何かを歌いたい>になると、途端に、わたしの中では「アーティストとリスナーを繋ぐ曲」として響き始めた。
急に歌詞が自分事になって、バンドの熱量がこちらに向かって響いてきて、わたしも真っ直ぐ向き合いたい気分になって、どんどん曲に惹き込まれていく。

あれこれ悩みながらも、虚勢を張らず、想いを素直に言葉にする力強い唄から、じわじわエネルギーを貰って、一曲聴き終わる頃にはすっかり聴き入っていた。

2度目に再生した時は、1番の歌詞の一節一節にさっきとは全く違う意味を見出している自分がいて、少し笑えた。曲全体を通して、「恋情」というより「愛情」を歌った唄なのかも、と認識を改めたら、今、恋をしていないわたしでも「大切な人に大切と伝える難しさ」は感じることがあるし、共感できる。そう思えた。
「そうか、私はこの曲の<僕>にも<君>にもなり得るのか」と、初めはあんなに冷静に聴いていたのに、今となっては『your song』というタイトルにも大きく頷いてしまう。

しかも、この曲のメッセージ性や切実さは、バンドが歴史を積み重ねるにつれて深みを増している気がする。彼らについて知らないことの方が多いわたしですら、「この曲をライブで聴けたら…」と想像してグッとくるものがあるから、長年応援しているファンの方にとってはたまらない一曲なのでは、と思うのだ。

一つの曲を繰り返し聴いている時って、ただぼーっと聴いているようでいて、実は、そうじゃない。
繰り返し何度も聴いている間に、曲の解釈を深めて、その曲と自分の接点を見つけると、それを足掛かりに自分自身の感情に潜り込んで、自分と対話して、本音と向き合って、整理しようとする、ような気がする。そして、感情の整理がある程度済むまで、リピート再生を止められなくなるのだ。

最近のわたしはとにかく、不安で、迷ってばかりいた。だからこそ『your song』のように、迷って悩んで、それでも力強く進んでいこうとする音楽を必要としていたのかも知れない。

2012年のアルバムの中の曲に2022年の今更ハマるなんて周回遅れもいいところで、もっと早くにこの魅力に気づきたかったけれど、きっと人それぞれに出会いのタイミングというものがある。わたしにとってはそれが「今」だったのだと思う。

『your song』に浸るモードから抜けたら、今度はこの曲を入口にして、彼らの他の曲も色々と聴いてみよう。
少しずつでもいい。今いる場所から、動き出していきたいから。

2022.11.07