家族の風景
齋藤工監督作「blank13」の感想です。
もちろん本編に触れまくりなので、未視聴の方はお気をつけてください。
家族ってね、ただ家族なだけなんですよ。
父親と母親の間に子供が産まれて、それが一緒に暮らしている。
まあこの作品の父親は、一緒に暮らすこともなくなっちゃうわけですが。
この父親、正直ろくでもないです。
作文で賞をとった息子が喜び勇んで見せに行っても、麻雀で忙しくてポンとそこに置いてその作文はメモ代わりにされてしまう。
でもね、多分悪意はそんなにないの。この父親。それが余計辛い。
ここで父親がそういう人だと分かる。
そんな父親が13年。
借金作って、借金取りに毎日取り立てられて「煙草買いに行ってくる」って居なくなるわけですよ。
13年、お母さんもお兄ちゃんも主人公も苦労して生きて…
13年経って見つかった父親は癌で死んじゃう寸前。
でもね、死ぬからって「じゃあ仲直りしよう父さん」とはならない訳です。
会いに行った主人公と父親の間には、微妙な空気が流れる。
母親と兄と弟であって話しても「会いに行かない」って結論になるんです。
ここ凄くリアルだなぁって思いました。
うちもね、似た感じの家族関係で…何年も失踪してた人と会うと、まあ気まずいんですわ。
何言ったらいいかわかんないの。
このひりひりした雰囲気良かったです。
(あと斎藤工と高橋一生兄弟。色気ありすぎ)
後半はお葬式が中心になるんですけど、参列者が個性のぶつかり合いですよ。
でも、みんな死んだ父親のことを「いい人だった」と語るんです。
あぁ。となんか腑に落ちるんですよ。
きっとこの父親は他人限定の「いい人」なんだなって。
こういう人いるんですよね。
優しいし、思いやりもあるし、とてもいい人。
でも、家族とか身内は平気で犠牲にしちゃえる人。
最初の方に言ったように、そこに悪気とか悪意とかはないんです。
ただ「家族」だからやっちゃう。
結局、主人公も兄も母も許すことはないし大団円で終わったりもしない。
兄は挨拶の途中で出ていっちゃうし、主人公は「手品を練習するような人間でよかった」くらいしか言えない。お母さんは、喪服まで着ても葬儀には来ない。
でもそれでいいんだろうなって思います。
そういう「家族の風景」もありなんではないでしょうか。
映画的にも、私はかなり好きな映画でした。
多くを語らず、少しコミカルに淡々と進む物語。
齋藤工さんが撮った映画。もっと観たいです。