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「SPITZ, NOW!」展感想

 この文章は批評と呼べるほど仰々しいものではなく,いちスピッツファンの情動をそのまま綴ったものであるので,「感想」としている.

1 来場者アンケート

本展覧会はいかがでしたか?:楽しかった
理由:4人+坂口社長のわちゃわちゃトークに癒された.坂口社長はセットリストを決めているライヴのキーマンにもかかわらず,なかなか表に出てこないので,引きずり出してきたのは企画者の功績であろうと思います.ステージ衣装で気に入ったやつは持ち帰るという情報がたいへん栄養価高かったです.以下は蛇足というかQ2[註:この質問]に対する難癖なのですが,スピッツのオタクにとって彼らの声を聴くという行為は「楽しいか否か」などという1次元的な表現で表せないものです.この選択肢を考えた方は,おそらく「楽しい」と「よい」は完全に等価であり互換性があって,Specificな感情表現を指向したものではないとお考えなのでしょうが,そういう「よさ」を「娯楽性」だけに収斂させる感覚に六本木ヒルズに象徴される「思考のクセ」が出ていると感じます.いかがでしょうか.

グッズコーナーはいかがでしたか?:あまり満足していない
理由:ぶっちゃけあまり魅力的な商品がなかったなという印象.木村豊先生によるいつものツアーグッズのデザインはあんなに洗練されてるのに,今回どうしちゃったんだろう.メンバーの顔がプリントアウトされたグッズは,欲しくないオタクが大半とまでは言わないが少なくともおしゃれではないでしょう.ただディスプレイのしかたが良かったのと,あれだけの会期で欠品を最大限出さないように努力していらしたスタッフのみなさんには脱帽です.

ご意見、ご感想がありましたらご自由にお書きください
六本木ヒルズという,都市のエレガンスやサクセスの象徴のような土地での開催はまあ喜ぶ人もいるでしょう.また,都心の一等地を借りたうえに,いろいろなビジネスのステークホルダーが絡むならこれくらいのチケット代はしょうがないのかと思いつつ(たとえば三菱一号館美術館でのシャネル展はチケット代高かったなという印象でしたが,この展覧会はそれ以上に高額でした),やっぱりモヤモヤします.スピッツはどれだけセールス的に大きなバンドになっても,客との距離の近さや庶民派なイメージを売りにしているはずです(だからひみつスタジオのツアーでも,まち一番の大きなホールのキャパが1000人とかの小さなまちを忘れずに回ったんです).決して安くないカネを払って,眠らない広大なまちを遥かな高みから見下ろしながら,その生きざまを体験するようなバンドとは思えない.できれば,関係者の中でどのような稟議によってこの展覧会が決定したのか知りたい.せめて,このチケット代がどれだけバンドメンバー,糟糠のスタッフおよび現場でスピッツ愛をもって企画を考えた人々に還元されているのかを知りたい.

2 補足

 前節に掲載したのは,「SPITZ,NOW! 〜ロック大陸の物語展〜」来場者アンケートに,筆者が綴った文章である.当該展覧会は,2024年11月8日 ~ 2025年1月15日,東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階展望台)にて開催された.
 筆者はこの展覧会の開催が発表された当時から,運営のやり方に不信感を抱いていた.この展覧会の主催は「SPITZ,NOW! 主催委員会
(WOWOW/読売新聞社/ウィステリアート/TOKYO FM/ニュートラルコーポレーション)」
となっていた.つまり,「誰が言い出しっぺか」が(少なくとも鑑賞者にわかるようには)明示されていないのだ.加えて,自然を愛する草野マサムネを筆頭としたバンドメンバーなら絶対に選定しないであろう,「六本木ヒルズの高層階」という立地.スピッツのメンバーや,ファンにも名の知れるようなスタッフではなく,なにか得体の知れない人々が意思決定の中枢を担ったのではないか.
 そんな疑問を払拭できないまま,いちおう会場へと足を運んだ.現地では,デビュー当時からスピッツのマネージャーを務める坂口優治までも巻き込んだ,メンバー全員によるトークを聴くことができた.そのため,「この展覧会の開催自体,メンバーの意志によるものではないのではないか」という懸念は少なくとも消えた.しかし,大筋で不満が残ったことは,前節に記載したとおりである.
 Twitterを眺めてみても,この開催地・チケット代について不平を言い,あるいは懸念を表明するスピッツファンはほとんどいなかった.しかし,それは「オタクなら多額の消費を行い,経済を回すべきだ」という消費資本主義的な「オタク」観に毒されてしまっているからなのではないか.いまいちど考える必要があるだろう.以下はどうでもいい小ネタ.

  • 1998年3月27日,PUFFYとスピッツが「ミュージックステーション」に同時に出演した(演目はPUFFY「愛のしるし」,スピッツ「運命の人/冷たい頬」).このとき,草野マサムネは「愛のしるし」楽曲提供者として,PUFFYのためのステージセットをデザインした.そのセットには,白く毛足の長い,巨大な架空生物が描かれていた.これは,2016年7月27日にリリースされたスピッツのアルバム『醒めない』において,ジャケットに描かれた巨大な架空生物(通称「モニャモニャ」)の元ネタではないかと,実物大の「モニャモニャ」の展示を観てはじめて直感した.

  • 田村明浩がステージで実際に着用したというスニーカーはごつごつしていてボリューミー,表面の凹凸には不規則性を感じ,たいへん筆者好みのデザインだった.筆者は田村明浩のことを10年ほど見つめ続けているが,やはり,好きになるには相応の理由があるものだ.

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