月組「DEATH TAKES A HOLIDAY」における月城かなとと風間柚乃
生憎だけど休暇中なんだ♪
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デスホリは前半は喜劇、
死神が休暇取りに我が家に来ちゃったぜ?!というシュールコミカルからの
後半では、死神と愛し合ってしまった娘が死を選んでしまうという、人として親としてこの上ない悲劇を同じ作品の中で描く。えげつないです。
ポイントとして、ヒロインは死神との添い遂げる(死ぬ)に不安をまったく持っておらず…というか理解しておらず、理解しても迷うことなく死神と共に旅立つ。
ずっと朗らかに笑っている娘。
…もうちょっと遺される父母のことを思ってあげてもよくない?すでに一人亡くしてるのよご両親は。
というわけでその苦悩を背負うのが、死神:月城かなとくんとヒロインの父であるヴィットリオ公爵:風間柚乃くんとなる。
もうテキストだけで父親可哀想…
この2人の芝居力は、死神とパパがぶつかり合う3回のシーンで特にバシャバシャ溢れ出るのでご注目。
最初は死神が「オッス!オラ死神!よろしくな!」と、突然やってくる夜。
パパはビビりっぱなしで力関係は
死神≫≫≫≫≫≫≫≫≫パパ
死神があけすけで面白い。
二度目はヒロインと恋仲になりかけた死神が「娘に近づくな」とパパから苦情を申し立てられるも、死神の権力でまたしても押さえつけるシーン。
優しくヒロインに語りかけたあと、死神としてパパに話す声色が一瞬で太く冷たくなり、その後振り返ってまた一瞬でサーキ王子に戻る月城くん。他の親族に「では皆さん♪ボナロッテ♡」って、怖っええぇ
死神≫≫≫≫パパ
三度目の会合は
死神≫≫パパ から 死神≪パパ と逆転する応酬が行なわれる。
この三度目の会合は本当に素晴らしい。
素晴らしいという言葉ではもはや足りない。
月城かなとについて
死神は自分の正体を明かしているヴィットリオ公爵(パパ)の前だけでは偽りのサーキ王子ではなく、本当の死神として振る舞う。
が、もちろん姿は王子のままなので、声色と一瞬のぞっとする表情だけで死神に戻る。
そういう演じ分けが月城くんは上手。
これが頑張って背伸びしてる感の役者では絶対に良くない。
高いところからちょっと降りてきてあげたくらいの振舞が出来ないと。
歌もそう。上手くなったねレベルでは駄目で少し遊んでやってるくらいのゆとりが必要。
だから愛を知って心が乱れて迷っていく流れに意味が乗ってくる。
が、もちろん月城かなとくんはそういうシーンになっても悶え騒ぐことはしません。
少し傾けた眉、あと顔や身体の角度や階段の手すりに手をかけたりする仕草で、ああこの人の胸は今すごく乱れてると解らせてくる。
これだけの実力者でありながら、この人は「おれカッコいいだろ?可哀想だろ?」というオラオラが香らないのがファンにとってはたまらないんだと思います。
風間柚乃について
前半から悲劇に落ちすぎることなくコミカルさも保って最後まで死神とぶつかり合う役は本当に難しいと思う。
死神の意向を揺るがせる事ができるのは、恋に落としたグラツィアの他にはこの父親だけである。
三度目の会合で「娘を愛しているならなぜ娘の人生を奪うのだ?」からの畳み掛け台詞は、未婚の若い女性が男声でやっているとは思えないほど迫真だし、
その後、死とは?生きるとは?で打ちのめされた死神へかける言葉がここでも「父」なのである。
哀愁のある面差し。
私には概ねくどく感じるつけまつげすら風間くんには地まつげのようだよ。おひげも。
風間柚乃くんについて少し調べてみて、
2018年に月組エリザベート公演で休演者が出た際にいろいろと代役繰りがあって、当時研5の風間くんが暗殺者ルイジ・ルキーニ役を数日間埋めたのだと知ってぞっとした。
いくら風間くんが新人公演でルキーニ役についていたとしても、本公演でルドルフ皇太子という出世期待役についてたとしても、
本来は5年目の役者がやれる役ではないのだ、ルキーニは。
ルキーニは宝塚エリザでは黄泉の帝王トート閣下、皇帝フランツに次ぐ男役の3番手格だけど、一般的にはこの3役は同レベルの実力者で埋めるべき。
特にルキーニは1人で“回さ”なくてはならないぶん質を落とせない、
トートとフランツは歌えて美しく立つのと歩くのができれば、芝居をあまり出さくても役としてある程度成立する。
もちろん芝居できるに越したことないが、役柄どちらも権力者なのでいざとなれば余計な動きをせずズドンと立っていれば(ズドンと立つのも簡単ではないのだけど)周りの役者が上手いこと間合いと敬意を演技で示してくれればなんとかなるのだ!
だけどルキーニはさ…
あの話自体がルキーニの「オレの考えた最強の閣下の物語」なんだから。
カンパニーの一番の実力者をあてたいくらいの役。
そうかそうかこの子はそう言う道を歩いてきたんだな。