夫が「くも膜下出血」 vol.4
術後の夫に会う
主治医の説明のあと、看護師さんに案内され病室に入りました。
当時は新型コロナの感染予防のため面会は一切できませんが、手術後は特別に会うことができました。
夫はたくさんの装置に囲まれ、頭には包帯が巻かれ、顔にも管が貼り付けられて、「触れてもいいですよ」と言われるも、触れることができる肌の面積はわずか。目はわずかに開いているけど、まだ麻酔が効いていて反応はない。顔全体が浮腫んでいて、まるで別人のようにも見えました。
でも、くっきりとした大きなまぶた、まつ毛の生え方、それは夫のものでした。
夫に触れてみると感じる体温。しっとりと吸いつくような触り心地の肌の感覚はいつもと同じ。
温かいことが嬉しい。
けど、悲しい。
大好きだった夫は、これからどうなるのかわからない。
不安だし、やっぱり悲しい。
でもこうして大変な手術に耐えて生きている夫に感謝を伝えました。
そして、
まだ頑張って。一緒に過ごせるようになるまで頑張って。
私はカウンセラーになってから、頑張るとか頑張ってとか、まったく言わなくなったのですが、今回だけは言わせて。そう思って声をかけていました。
触れても、話しかけても反応はないけど、夫には通じる。そう思います。
夫には意識がある。生きることを自ら選択した。と私は信じます。
ずっと触れていたかった。いつまでもそばに居たかった。
帰ってしまって、それが最期だった。となるのが怖かった。
時刻はもう午後になっていました。
早朝、連絡をした夫の兄が遠方から病院に駆けつけてくれました。
義兄は、義母のくも膜下出血にも立ち会った経験があるという。
私を励ましてくれて、心強かった。
良くなることを願って別れ、私は迎えに来てくれた両親と、やっと自宅に帰りました。
帰っても、いつ病院から呼び出されるかわからない。
主治医の「夜中でも何かあれば電話しますので、いつでも出られるようにしておいてください。」という言葉が刺さり、私はどこにいても、何をしていても、常に緊張感を持っていました。
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