見出し画像

カーボンプライシング

自身がビジネス上でDX(デジタル・トランスフォーメーション)に関わっているというともある中で、カーボンニュートラルにも興味が出てきている中において、次は「脱炭素DX」という本を読んでみた。

内容としては、モノを作ることには強みを持っている日本ではあるが、コトに至るとそこは弱い。一方の欧米はモノからコトへと強みを変えてきていて、結果GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)といったIT企業を生み出してきた。ITに対する投資も、日本はコスト削減としてITを使うということであるが、欧米はITを新たなサービス創出に使ってきたということが書かれている。全くそのとおりで、日本でデジタル系の提案をするといつも出てくるのはコスト削減効果。ではどのくらい価値を創出するのかという投資の観点での視点は本当に欠落している。そもそも、中小企業であればよく活用する補助金に「ものづくり補助金」とあるが、この名前がそれを代表している。もっとも最近はソフトウェアに対しても補助が出やすくはなったが、ネーミングそのものを変えねばならないのではないかと思うところ。そしてカーボンニュートラルを目指そうとすれば、モノ、を作るということは必然的に温室効果ガスを生み出すということであり、結局ものづくりで突き進もうとすると、カーボンニュートラルの世界ではどうしても温室効果ガス削減=経済成長率の低下というカップリングを生み出してしまう。

しかし「カーボンプライシング」という、CO2排出量に応じて事業者がコストを負担する炭素税ともいう呼ぶべき仕組みがあり、これは日本でも検討されているとある。北欧諸国ではすでに1990年代初頭に、その他のヨーロッパの大国でも2000年前後にはすでに取り組みを開始しているとあり、なるほどすでに日本は遅れているようである。

そしてスウェーデンでは過去15年でGDPが87%も伸びている一方で、温室効果ガスの排出量は23%も減っており、温室効果ガス削減=経済成長率の低下ではなく、温室効果ガス削減=経済成長率の向上というデカップリングを成り立たせているようである。これには、CO2の排出源となっている化石燃料による火力発電を廃止し、再生エネルギーに転換シていくような仕組みのみでなく、さらには非物質的な世界で大きなビジネスを展開し、産業構造の変化をもたらす仕組みを創り出す事が必要とあり、まったく共感をする。

そのような本を読んでいる中で、12/8の朝刊の日経新聞の記事が本当に気になった。

政府・与党は10日にもまとめる2022年度税制改正大綱で、温暖化ガス排出に価格を付ける炭素税などのカーボンプライシングの明記を見送る。脱炭素を実現するための税制を今後の検討事項と位置づけるが、具体的な制度のあり方はみえていない。
脱炭素に向け「ポリシーミックス(政策の組み合わせ)について政府の議論も踏まえつつ、産業競争力の強化やイノベーション、投資の促進、成長に資するかの観点から、専門的・技術的な検討を進める」と記す。欧州連合(EU)が検討する温暖化対策の足りない国からの輸入品に価格を上乗せする「国境炭素税」などを踏まえ「国益の観点から主体的かつ戦略的に検討する」と盛り込む。

既存のものづくり企業、そして化石燃料を燃やしている電力会社、それぞれ規模が大きいから調整が大変なのは十分に承知はしているが、欧米諸国、そして中国も動き出している中においては、今動かないとまずいのではないか。炭素税導入はもっと企業の行動を動かすものではないか、もっとイノベーションを起こすものなのではないかと思う。

いいなと思ったら応援しよう!