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行動経済学を環境問題対策のためにもっと活用しては?

デザインの勉強をしている過程で紹介されていた「ビジネスデザインのための行動経済学ノート」を日々のビジネスに取り入れられないか、と読んでいましたが、行動経済学は気候変動対策のための行動変容にも有効なのではと思いました。

ビジネスデザインのための行動経済学ノート

行動経済学とは

行動経済学(behavioral economics)とは、経済学と心理学が融合した学問で、人間の「人々が直感や感情によってどのような判断をし、その結果、市場や人々の幸福にどのような影響を及ぼすのか」を研究する学問のことです。従来の経済学では「人は合理的な行動をする」という前提ですが、行動経済学では、「直感や感情によって合理的ではない判断をする」ことを前提としています。

行動経済学を知ることで、「どうしてユーザーはこんな行動をするのか」という問いに対する答えを、人間の特性から捉えて理解することができるようになります。「ビジネスデザインのための行動経済学ノート」では、行動を単に観察するだけにとどまらず、「ユーザーが何を求めているのか」まで考察することで、利便性や効率性とは違った価値を見つけ、機能勝負ではない商品やサービスの開発に活かせるのではないか、と説いています。そして色々な人間の心理特性についての紹介と、その採用例が書かれていて、とても参考になりました。

ビジネス側のみではなく、ユーザー側に立って考えるということが繰り返し述べられていますが、気候変動に関する問題も国や企業が色々とやってはいても、国民はなかなか気候変動に対する考えが変わっているようには思えず、ここに行動経済学を活かす余地があるのではないかと思いました。気候変動に関係すると思われる理論を2つほど紹介してみます。

正常性バイアス(変化がきらい)

気候変動問題は時間軸が長いということもあり、今のようなひっそりとした情報展開では、この本で紹介されている正常性バイアスによって、変化を起こすに至っていないと感じます。

正常性バイアスは現状を変えたくない思考のことで、以下のとおりです。
・過去・現在・未来を同一線上え考えてしまう傾向にある
・多くの人は本格的に変化を拒み、兆しがあっても変化に対応できない
・変化を起こしたいときは明確に強く打ち出す必要がある

活用方法1として、「端的に強く明確に示す」とあります。
そこで紹介されていた例には、1977年に起こった、ビバリーヒルズ・サバークラブの火災のことが示されています。このケースでは、「ボヤが発生しました。ここからだいぶ離れていますが、すぐに避難してください。」という曖昧な警告に対して、避難はゆっくりしたもので、中には酒を飲み続けている人もいて、結果、164人が逃げ遅れ死亡したというもの。この気候変動も2050年までになどと非常に悠長に見えてしまい、正常性バイアスによって動けなくなっているとすれば、もっと何もしない場合の状況をしっかりとニュースなどで擦り付けるくらいのことをしないといけないのでは、と思いました。現在の経済インパクトが出るとしても、未来に向けた工夫されたサービスや商品が生まれるのではないかと。

そして活用方法2としては、「一瞬でわかるようにする」とあります。これは緊急地震速報の例があります。明らかに平常時とは違うことを警告する意図があり、それまでの雰囲気を断ち切ることができるようになっている点。先日の神奈川西部での緊急地震速報などは、その音を聞くと一瞬で緊急モードになるので、よく作られた音なのですね。
異常気象を原因として世界で発生している山火事などもニュースで少し聞くだけです。温室効果ガスの日々の数字を1年前と常に比べるようにする、世界中の森林面積がどの程度減ってしまっているのかを1年前と一瞬で比較するように、常に見えるようにするなどがあるのではないか。

ネイチャーポジティブとは

8/25の日経新聞の記事に「ネイチャーポジティブ」について触れている記事を読みました。失われた自然を回復に転じさせる「ネイチャーポジティブ(自然再生)」が、脱炭素と並ぶ国際社会の重要課題になってきているようです。しかしこの言葉、不勉強ながら全く知りませんでした。

失われた自然を回復に転じさせる「ネイチャーポジティブ(自然再生)」が、脱炭素と並ぶ国際社会の重要課題になってきた。その進捗度を測る指標づくりが国連の会議で動き出す。一方、民間団体からも様々な評価枠組みや指標が提案され、相互調整が課題になる。日本企業がルールづくりに貢献できるかも焦点だ。
世界では過去30年で1億8千万ヘクタールの森林が減り、動植物種の約3割が絶滅の危機にある。生態系の損失に歯止めを掛け、増勢に転じさせるのがネイチャーポジティブの考え方だ。国連は2022年末、生物多様性条約に基づき「昆明・モントリオール生物多様性枠組み」を採択。30年を照準に23の目標を定めた。
南米コロンビアで10~11月に開かれる生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)では、その進捗度を測る指標づくりが主要議題になる。5月にケニアで開かれた同条約補助機関会合では、昆明・モントリオール枠組みの目標ごとに数値や有無で記述する指標を設けることが提案された。

2024/8/25 日本経済新聞 朝刊より

この中で「温暖化対策では地球の気温上昇や温暖化ガス排出量など単純明快な物差しで進捗度を測れる。だがネイチャーポジティブは生物種の多様性、生態系が人間に提供するサービス(恩恵)など多くの概念からなり、測定が難しい。」ということが言われています。確かに脱炭素の対策をしていても、マイクロプラスチックによる海洋汚染などは脱炭素対策とは異なる枠組みが必要なので、自然環境を守るという視点ではとても重要なのだと思います。

この言葉をググると真っ先に出てくるのは、環境省のページでした。

Google検索結果より

このページでは「ネイチャーポジティブの実現には、企業、地方公共団体、NGO等をはじめとするさまざまなステークホルダーに協力してもらう必要があります。そのため、環境省が事務局を務める2030生物多様性枠組実現日本会議(J-GBF)は、ネイチャーポジティブの実現に向けた第一歩として、「ネイチャーポジティブ宣言」を表明してもらうよう呼びかけています。」と書いてあるのですが、全く認知していませんでした。(どこで認知させているのだろう・・・CMでやっているのか?)

また、なんとイメージキャラクターも作られているようです。


脱炭素、そしてネイチャーポジティブ。いずれにしてもこのような課題につては、通常よりも強めに危機感をいただかせないと行動変容につながらないということが行動経済学の面からもわかります。

気候変動対策に向けて活用できそうな行動経済学があれば、またまとめて整理してみたいと思います。

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