経済政策「新しい資本主義」における脱炭素

新しい資本主義

5月31日に政府が、経済政策「新しい資本主義」の実行計画案を公表したようだ。実行計画案は(1)人への投資(2)科学技術(3)スタートアップ(新興企業)(4)脱炭素・デジタル化――の4本柱で構成されており、この中には、当たり前のような気もするが「脱炭素」も含まれた。
過去の政権の主な経済政策においては、安倍晋三元首相が金融政策、財政政策、成長戦略の「3本の矢」で経済成長を目指す「アベノミクス」、菅義偉前首相は50年に温暖化ガスを実質ゼロにする脱炭素やデジタル庁の創設などを表明している。日経新聞においては、この「新しい資本主義」の実行計画案について、脱炭素は簡単ではあるがグリーントランスフォーメーション(GX)投資を実現する、とある。

脱炭素は「10年間に官民で150兆円規模のグリーントランスフォーメーション(GX)投資を実現する」と提唱した。呼び水として政府がGX経済移行債(仮称)を発行する。これまで環境問題の解決に資する事業を支援する国債には慎重論もあった。再生可能エネルギーや原子力は「最大限活用」と強調した。

6/1日経新聞朝刊

GX経済移行債?

このGX経済移行債というのは、欧州中心に発行が拡大しているグリーン国債(再生可能エネルギーなど地球温暖化をはじめとした環境問題の解決に資する事業を支援する国債)のことのようである。日経産業新聞の記事には以下のように掲載されていた。多額のGXには多額の資金が必要な中、このような国債発行というのは必要なことであろう。

2016年にポーランドが世界で初めて発行した。21年末までにフランス、ドイツ、英国、オランダ、ベルギー、イタリア、チリなど世界20カ国で累計1500億ドルあまりのグリーン国債が発行されている。20年からは、ハンガリーが円貨債券の形態でグリーン国債を発行した。

5/30 日経産業新聞(Web)

わかりにくいと思いながら、ここで政府が「グリーン国債」と呼ばず、「GX経済移行債」と呼ぶのは別の意図があるようだ。
再生可能エネルギー事業などの操業における排出ゼロ事業に限定しないという意図があるようである。つまり発電分野での水素・アンモニア利用、製造業の製造工程の省エネ、省エネ性能の高い住宅・建築物の導入、次世代自動車の導入、デジタル社会構築への対応なども支援先に位置づけられる可能性があるとのこと。

調達した資金利用方法と日本の未来

日経産業新聞の記事においては、この多額の資金について、とても賛同できる提言も書かれていた。特に「既存の大企業やそれに連なるサプライチェーンのみを想定しない配慮」というのはとても重要なのではないか。
思い出すのは先日に、三菱商事が秋田県沖の2海域と千葉県銚子沖で計画されている洋上風力発電の入札で、三菱商事が3件全てを落札したということがあった。ここにはベンチャー企業も含まれていたと思うが、大企業が圧勝というのはでは全く日本においては、企業が育たない。
まさにここに提言されているとおりに、大学の研究やスタートアップなど、もっとリスクを取りながらも事業を行っている団体に機会を与えてもらいたい。きっと日本発のグリーンジャイアント(新時代の再エネの巨人)が生まれるはず。

第二に提言したいのは、調達された資金による支援先もしくは受益者として、既存の大企業やそれに連なるサプライチェーンのみを想定しない配慮である。脱炭素社会に向けたイノベーションの担い手として、大学などの研究機関やスタートアップへの期待も大きい。大学発スタートアップにも有望なものがあり、そうした担い手へ資金の流れを加速させようとする機運が高まっている。
例えば、日本を代表するアカデミア、スタートアップ、アセットオーナー、アセットマネジャー、ベンチャーキャピタル(VC)、事業会社などが参加して一般社団法人科学と金融による未来創造イニシアティブが2月に発足した。アカデミアのサイエンスナレッジを社会に実装する取り組みを目指すという。
今回のGX経済移行債で調達された資金が、こうした動きでけん引される民間資金と組み合わされて活用されるような官民連携のスキームも大いに考えられよう。

5/30 日経産業新聞(Web)

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