カウントダウンエッセイ “うとぅ〜しゃへの道2023”
奄美野外公演"うとぅぬうしゃぎむん(うとぅ〜しゃ)"=おとのささげもの
いにしえからある島の聖なる地を束の間お借りして、 村松健の音楽が醸し出す『時空』を共にするひととき。 それはまるで大いなる"聖地"への感謝をこめた捧げものなのです。 島の人々に支えられ、2023年に19回目を迎えます。
“うとぅ〜しゃ”まであと10日
僕らの奄美大島は、8月上旬にすでに12日間も船が止まり、しぶり(冬瓜)と乾物と冷凍もの以外なぁんにも食べ物がなくなったんだ。でもあの彷徨台風がまだナンバー8だったから、必ず帳尻を合わすように頻発する時期があるなーち思ってたらこの空模様。いゃ〜参りました。まずは9/3でご参加予定だった皆さんに申し訳ありませんでした。そんな方にまたその気になって頂くために、気を取り直してひさびさにカウントダウンします!
今回の会場の土浜集落の浜は、今までで一番空港から近く(10分!)、たおやかなこじんまりした佇まい。そんな素敵な場所だから、東側に台風さんが来ると浜が狭くなり、安全に開催出来ず10日に延期になりました。東海岸だから、ティダガナシは西に傾く夕すだみどきに、サマーブリーズとともに、海生まれのナンバーをメンバー5名でプレイします。僕らはそう、海に溶けて一体になるようなそんな時間を目指し、その日に思いを馳せています。きっと今度は大丈夫!(でもまた台風さんがいらした際にはインドア開催します。)10日なら!というあなたも是非そこに居て下さいね。
“うとぅ〜しゃ”まであと9日
天気図とにらめっこして暮らす。毎年思うことだけど、農業や漁業に従事されているおじおば達はなんとタフなことだろうと。それを思えば1年に数週間位、どうすることもできない空模様と向かい合うことぐらい大した事じゃないなと思う。天候の影響を受けないように自然と距離を置いて、人工の環境の中で暮らしている僕ら。それでも100年前の今日のように天変地異が起きればそれまで。僕にとっては、そんな戒めの期間にさえなっているんだよね。
台風の行く末も見えてきたので、今日は雨の合間を縫って海に出てみようと思う。ところで皆さんは、台風のために浜の風景が変わることをご存知かな?流れた川の道筋が変わるのは、すべての川がかつてこんなふうにうごめいていたことを想わせる。圧倒的な力で押し戻されて豊かになった砂の量は、やっぱり島が島であるために台風もまた欠かせないものなんだと教えてくれる。そして僕らは、今年限りの波打ち際の風景の中で、1度限りの特別な時間をご一緒するのです。あなたも“そこ”に居て下さいね。
“うとぅ〜しゃ”まであと8日
さてカウントダウンし始めて3回目。今日は“うとぅ〜しゃ”=うとぅぬうしゃぎむん についてお話しします。
フォトグラファーの濱田康作兄と僕とでよく島の聖地(神神しい場所)を巡っている際に、そこで笛や三味線で遊ぶ僕を見て、彼が「ここでコンサート出来たら凄い時間になるね」と言い出してくれたのがそもそもの始まり。だから、ステージを作るんじゃなく、初めからあるその“特別で心地よい場所”で可能な限りナチュラルにその場所に居させてもらう、そんなやり方になったんだ。
参加される方も思い思いに陣取って頂くのがミソ(笑)。風向きや光、お天気で時々移動して楽しんでもらう。敷物や携帯イス、そして飲み物なんかも、そうそう天候だって移るから雨具(風を考えてレインウェアがお勧め)も用意して頂いて。浜下れ、ピクニックそんな感じで付き合ってもらう。
与えられたその日の塩梅で、島生まれの曲をプレイして、目の前の風景にサウンドトラックをつけて行く感じが楽しい。それは夜明けや黄昏、のぼる月や森の木陰 etc…
そうして今回は、満ちてくる潮のかたわらで、海生まれのナンバーばかりをメンバー5名でおだやかな海風になってあなたに吹かせる予定。
こんなことをずっと19回も続けてこれたのは誰も止めらんかったからだけど(笑)、皆さんがそこに居て下さったからなんだね。求められてこその大きなイタズラ!だからまた最初の2人に戻ることもある(つまり最後になる)、そう思って毎年続けてきました。来年に続くように、どうぞ “あなた” がそこに居て僕らにパワーを下さいね。
“うとぅ〜しゃ”まであと7日
今日暫くぶりに湿度が下がって、心地よい空気感の日曜日。ちょうど1週間後のこの時間に思いを馳せながら過ごす心地よい夕すだみ時。天気図には現れない上層寒冷低気圧の乾いた空気のおかげで、この先台風も発達しそうにないのにちょっとホッとしている理由だったりする。僕はいつも開局時からつとめているディ!ウェイヴの『夕すだみにスロウ』でもよくこの先のお天気についてお話しする。空の上のことに目を向けるのは、全てを受け入れる大らかさや謙虚さに繋がれて良いなと思う。目先のちまちましたことの前に、僕らは今年の今、地球に乗っかっているんだからね。
確かなのは今だけだから、来週の日曜日幸せになりましょう!きっと波打ち際で耳にするピアノは世界中どこを探したってないんじゃないかな。アウトドアにピアノを連れ出すのは僕のライフワークだけれど、その場所の心地よさはそこに身を置かないとわからないもの。普段、閉ざされた空間の響き(跳ね返ってくる音)の中で聞いてもらっている音楽は、ここでは無限の空気の中で自由に羽ばたく!行ったっきりの響きが風向きで動いて見せたり、満ち潮に波音がクレシェンドするのはここだけの醍醐味。音楽に誘われて鳥が集まってくるのは、まるでそこにいることを許されたような喜びを与えてくれるのだ。
9/10、旧暦文月26日は若潮。神様に捧げるプレコンサートから少しずつ満ち始めて、17時37分に満潮を迎えるその日。日の入りは18時43分 、そこからゆっくり時間をかけて、薄明は20時頃までロングフェードアウトする。僕らはみんなでこの時の移り変わりにシンクロして、そしてその日だけに起きることを全て良いことにして、そこにいてくださる方と生きてる幸せを満喫します。僕らはもちろん、家路に着く誰もが、そこに居られてよかった、そんな時間になるように、まだ無垢なこの1週間のスケジュールを書き込んでいこうと思います。
“うとぅ〜しゃ”まであと6日
昨日から停まっていた船が動き出して、まずは食料品が、そして今日は待っていた荷物が届いた。なんだと思いますか?安藤さんのエレキベースとギター!3日だったら間に合わなかったから、これも思し召しだったなあと感じる。彼はウッドベースを持って来島するので先発隊というわけ。僕らの音楽は、スタイルとしてのジャンルを超えてボーダーレスに生まれるもの。それは自分達が触れてきたあらゆる音楽の薫風を受けて、水平線まで広がるんだよね。例えば、自由な魂の表現はJAZZ、心地よいグルーヴはR&B、どこにもないもの目指すハートはRock、自然と一体になるアンビエントはNew Age、そして暮らしながら遊びながらここから生み出すのはシマウタのように。
時間ができた分だけ細やかにアプローチ出来るのが嬉しい。共演者と重ねる時間もそうだけど、当日を待ちながら過ごす時間は、思いの丈をグッと深くしてくれる。予定を変更して付き合ってくださる皆さんにはお礼の言葉もないけれど、僕にそしてあなたに募る想いこそが差し上げられる最高のプレゼントかも知れない。謙虚なわけでもマイナス思考なわけでもなく、ただ一度その日その地で醸し出されるひとときが、誰かのためになったらそれでいい、そう思う。
ある街で僕のライヴを支えてくれていた存在が、急にこの世からいなくなってしまった。直接関わらせてもらうことは多くなかったのだけど、こんな時は途方もないやるせなさに襲われる。たかが音楽だな、と思うけれど、それでも僕に出来るのはこれだけ。僕らが生きてるってことをさらけ出して海とひとつになったら、こんな時間もあるんだなってほっとして下さる方がきっといらっしゃるはず。だから音楽の力を信じて、この黄昏時を日曜日に向かって駆けて行こうと思う。
“うとぅ〜しゃ”まであと5日
今日は新元一文くんとリハーサルをした。とはいっても、いつも近況報告と島の未来への夢語りをお茶しながらゆっくりしてからなんだけど。僕らの組んでいるA-pulse(エーパルス)は、シマ唄の歌心と遊び心で、今この島に暮らす中から新しい歌を作ろう!そういうユニットなのだけど、こうして時々会って話す中から全てが生まれてくるから、とても自然で楽しいんだよね。
日曜日は、渚のピアノと一緒に歌ってくれるんだけど、やっぱり海にまつわるナンバーを一緒にやろうと思う。1曲は昔、島のおばから夫婦喧嘩をすると浜に出て口ずさんだなんて聞いたシマ唄。そしてもう1曲は、幕末の奄美大島を舞台にしたLove Storyを歌にしたラブソング。島盤“蝶々夫人”のせつなさは、きっと黄昏の水際で沁みるんじゃないかな。この夏、恋をした人にも失くした人にもそこにいて欲しいな。
“うとぅ〜しゃ”まであと4日
この夏くらい、湿り気を感じることってなかったような気がする。本土と違って、気温のピークは7月くらいにとうに過ぎてるから、温度はさほどでもないのに湿度の上下が行ったり来たり。地球全体の気候に緩衝力が働かなくなっているのは皆さんも感じてると思うけど、エルニーニョの今年はまた別格にそれを感じることが多い。その一方で、鮮やかな夏の記憶が刻まれたり呼び起こされたり…エナジーは要るけど、夏はやっぱりいいね。いらんこと考える前に、感覚に飲み込まれて過ごしてるのが心地よい午後。
こうして毎日書くことなんてあんまりないから、新学期は始まってるけど、僕的には夏休みの日記をつけているような(笑)。週の半ばの水曜日といえば、僕が5月から始めたYoutubeチャンネル【村松健の“Healthy!”】月に一度、夜10時から、ちょっと停滞気味の方をリフレッシュして、寝付けないあなたを穏やかな眠りに誘う1時間。次回の生配信は9/20(もちろん水曜日!)の予定。
すでに4つのアーカイブがあるので、日曜日の前にぜひ覗いてみてくださいな。
夕暮れにいつも思うのだけど、サンセットタイムの美しさは断然雲に変化がある時。このところ、驚くほどビビットな彩りで空が染まる日が増えてきた気がする。そんなタイミングに出くわすと、全部放り出して浜に走っていって、そしてただただ立ち尽くす。そんな気にさせてくれる、ここで暮らすことの豊かさ。でもやっぱり一番大事なのは、この先で起きることを受け取る本能と、それをちゃんと自分の人生に割り込ませることが出来る心と体の“スペース”を持っていることなんだな。
“うとぅ〜しゃ”まであと3日
この公演は、島で聖地と呼ばれている神々しい(ここではかみがみしいと読む)ロケーションで、
皆さんと時空をともにするもの。
今回の現地の北側にある節田立神(せったたちがみ)は、その大きさゆえにとみに有名で、
飛行機で島に帰ってくる時、出迎えてくれる懐かしい島の眺めでもある。
第5回の会場としてお邪魔した際、奇しくもその日が満月で、
ステージ中盤でその彼方に浮かび上がった赤いお月様は、
今も語り草になっている。
さて今回の土浜集落では、土浜立神(つちはまたちがみ)という聖地周りで、
僕たちはエネルギーを頂きながら、その日限りのプレイをする。
ここは集落のシンボルと呼べる巨石・奇岩なのだが、
海の彼方の先祖の国“ネリヤカナヤ”と集落に暮らす人々がクロスする大切な場所なのだ。
毎回、本公演に先立ってプレコンサートという名のセレモニーを行う。
これは、云ってみれば場所をお借りする前に仁義を切る訳だが、
その時の感覚は、特別なものなんだ。
五体投地とまではいかないが、全てを投げ出してその土地その空気と一体になる。
風をまとい、波しぶきに溶けて、初めからある風景の一部になれたら、
音楽することを許してもらえた様な気持ちになれるのだ。
その時ばかりはお客様に背を向けることになるのだけど。
ずっと空模様と睨めっこしながらの8日間、今のところ日曜日のお天気は今ひとつ。
明日の晩には、いよいよ先行きを見定めないといけないなぁ。
でもどんなことになっても、全ては与えられし1日。
しなやかに受け止めて、皆さんと楽しもうと思う。
何よりこうしてこの場所に通って過ごしたこの数日は、
僕の中に鮮やかに映りこんでいるものね。
本公演を現地で開催できない時にも、
プレコンサートだけは、14時からメンバー全員で
立神の麓で捧げますので…
“うとぅ~しゃ”まであと2日
気を揉んでいた日曜日のお天気。また雨模様かなぁなんて半ば思っていたら、今朝になって好転して、土浜の浜辺での開催が実現します。少し雲は多いようですが、1日通して海風が心地よい開催日になりそう。
こんな時いつも思うのだけど、今日あたりまで知らん顔しとけばよかったかななんてね。でもそうじゃないんですよね。こうやって一喜一憂しながら描いてきたストーリーがあって、当日をとっても濃い時間にしてくれるのだから。
今日は島出身の共演者、浜田美稔くんと一緒に新聞社に立ち寄ってから、今回初めて共演する曲をリハーサルした。同じ風景を思い描き、音楽の中に漂う。波音に混じり合って、その場にいる方だけに分かち合ってもらうのが、今からとても楽しみ。
コンサートもたけなわ、そんな時間帯に今日も現地を訪れた。土浜立神から節田立神を望むそのはるか彼方の、喜界島の島影に焦がれる想い。縁とは自らつないでいくもの、ふとそんな言葉が浮かんできた。それが人生を鮮やかにしてくれるんだよね。明後日、僕と一緒にご縁を結んでくださるあなたにお逢いしたい、そんな夕すだみに。
“うとぅ〜しゃ”はいよいよ明日!
日曜日のお天気はどんどん良くなって、
いよいよティダガナシのもとでの煌めく1日になりそう!
島の聖地をめぐる野外公演に2回目から付き合ってくれている浩ちゃんが無事到着。
メンバー揃ってのラジオ出演のあと、すかさず浜へ…
そよぐ風に明日を予感しながら「最高じゃや〜」なんてやっていたら、
突然の大波がやってきてあららっ。
お腹の底から大笑いの一幕。
自然相手は、だからやめられないんだね。
彼の言葉を借りれば、年に一度の“みそぎ”のパフォーマンス。
そうなんだよね、僕らにとってこれは、
自然とクロスしながら与えられた時空を受け入れて、
自分を一切投げ出して、その先に出くわす時間。
いい演奏をしようなんて気持ちはどこかに行っちゃう。
自然の音に耳を傾けて、それと同じくらい優しく、
始めからそこに居るように懐かしく、
今に生きることを波動にする。
ささやくように、祈るように…
まもなく開演、人生を重ねてくださる皆さんと
この世界のこの国のこの島のこの渚で出逢える奇蹟。
この浜の微小貝のようにささやかに
時折訪れる大波をつかんでサーフする軽やかさで、
一瞬にして永遠の夏の午後に
溶けてしまいましょう!
奄美 うとぅぬうしゃぎむん vol.19 “KEN's BLUE”詳細
オフィシャルサイトの詳細ページはこちら
【日時】2023年9月10日(日)
プレコンサート:14時(入場無料) 本公演:15時開場 16時開演
【会場】 土浜立神(奄美市笠利町大字平)
【出演】 村松健 ピアノ・フルート・奄美三味線
安藤浩司 ベース・ウクレレ / 浜田美稔 ドラムス・パーカッション
新元一文(A-pulse)唄 / 泉 香子 フラ
【チケット】一般5000円/小中高生1500円 各税込・100名限定
※ 雨天決行!雨具のご用意を。
荒天などで現地開催が出来ない場合は、ロードハウスASIVI(名瀬)にて、17時開場18時開演で行います。
【お問い合わせ・ご予約】
・KOSAC eyes(奄美市名瀬伊津部町20-4) 0997-53-0151
・ケンムンの館(宇検村湯湾2937–81) 0997-67- 2919
【ネットでのお問い合わせ・ご予約】music@ken-muramatsu.comまで
今までで1番、空港に近い会場。空港から車でわずか10分の現地は、静かな集落の傍にあります。土浜の海岸は豊かなサンゴ砂に恵まれ、入江には右手に土浜立神(タチガミ)、この場所がプレコンサートの会場。左手の奥には第5回の会場になった節田立神を望むこの浜の夕すだみどきが、今回の僕らのステージ。ティダガナシ(太陽)も山向こうに傾き、優しい海風と満ちてくる波とともに、島生まれの音楽を浴びるひと夕を。