おばあちゃんの唄
ちっちゃな頃
自転車で転んで泣いた日
傷だらけで帰った私に
「頑張ったね」と
優しく頭を撫でてくれた
おばあちゃんの笑顔が嬉しかった
大好きだったおばぁちゃんの手のひら
少しずつしわくちゃになっていくよ
だからギュッと強く手を握りながら私は
「いつかおばあちゃんを支えてあげるからね」
って、約束したんだ
そしたら
「ありがとう」って
優しく笑ってくれた
大好きなおばあちゃん
「長生きしてね」
思春期のころ
学校に行くのが嫌になって
時々ズル休みをするようになった私に
「どうしたの」とも聞かず
ニコニコ笑っているだけで
何だかイライラして八つ当たりしてしまったんだ
大好きだったおばぁちゃんの優しさが
たまらなく嫌になってしまっての
どうしてあんな酷いことを
言ってしまったんだろう
「おばあちゃんに分かる訳がないじゃないっ!」
「ごめんね。おばあちゃんバカだから」と言って
うつむき ただ微笑んだ
ごめんね、おばあちゃん
そうじゃないの
おばあちゃんのその優しさに私は甘えていたんだ
ホントは救われていたのに
大好きだったしわくちゃの
手のひら
少しずつ冷たくなってしまうよ
だからずっと
あなたの手を握り
擦りながら言ったんだ
「私はおばあちゃんに何もしてあげられなかったよ」
そしたら
いつもと同じに微笑んで
「いっぱいしてもらったよ」
そのあと
おばあちゃんは静かに
そっと目を閉じた
ちっちゃな頃
いつも隣で寝ていた
おばあちゃんの優しい寝顔
今も変わらない
おばあちゃんだけのぬくもり…
そっと入って来た
“赤トンボ”
おばあちゃんを迎えに来てくれたんだね