見出し画像

高校生が語るM-1 2024の感想

こんばんは、m400です。私が通っている高校では各々が興味があることを探究するという時間が設けられていまして、何を血迷ったのか「M-1グランプリ」の探究を始めてしまったのです。
探究を進めるにつれて「自分は何様なんだ」と何度も嫌になりましたが、当然成果がなければ成績がつかないため、やむなく完成させることに
以下の内容は本文の一部をそのままひっぱってきたものです。どうか大目に見てもらえると嬉しいです。

各ファイナリストに対する考察

令和ロマン

前大会、そして今大会のチャンピオンである「令和ロマン」。漫才そのものが非常に面白かったことは言うまでもないが、ネタ以外にも彼らをチャンピオンたらしめる所以が随所に見受けられた。
くるまは、2023年には薄い丸縁のメガネをかけ、「おしゃべり」で「胡散臭い」キャラクターを演出していた。しかし、今回はきっちりとしたスーツに黒縁のメガネ、さらに髪をオールバックにして、ヴィラン的なキャラクターを打ち出した。この変化は、観客に強い印象を与えるための工夫であり、飽きられないための自己分析とマーケティング戦略の巧みさを感じさせるものである。大会の雰囲気を変える「人(にん)」の力が重要である中、今年の令和ロマンはその「人」を意図的に変えることで、大会全体に新たな風を吹き込んだと言える。また、トップバッターというポジションを活かし、つかみの一言で一気に令和ロマンの世界観へと引き込んだ点も、勝因の一つであろう。
1本目と2本目のネタ選びも完璧であった。1本目をくるまがコントインしないしゃべくり漫才にすることで、彼という人間の「チュートリアル」のような役割を果たしたのではないか。一方、ファイナルラウンドでは単なる大喜利の羅列ではなく、ストーリー仕立てのコント漫才を披露したことで、M-1の「品格」を求められる最終決戦において高く評価されたと考えられる。
その結果、ファーストラウンドでは850/900点(約661/700点)という、トップバッターとしては異例の高得点を叩き出し、最終2位で通過。ファイナルラウンドでは5/9票を獲得し、見事優勝を果たした。

ヤーレンズ

前回準優勝のヤーレンズだが、今大会では825/900点と平均92点弱の高得点を記録しながらも、最終順位は5位と期待ほどの結果を残すことはできなかった。
前回大会のネタは、楢原の小ボケの乱打によって笑いが絶えない構成であり、そのスタイルが高く評価されていた。それに対し、今回のネタはボケ数を抑えた分、ストーリーの円滑さが向上し、出井のワードで笑いを取るパートも設けるなど、変化が見られた。しかし、令和ロマンの直後にヤーレンズが登場したことで、どうしても観客の中に前回大会のイメージが残っており、出井のワードなどの新たな試みが完全にハマらない場面も散見された。その結果、ヤーレンズ本来の持ち味が十分に発揮されていない印象を受けた。
また、もう少し楢原に翻弄される出井の姿が描かれていれば、観客に共感を呼ぶ笑いが生まれ、より良い評価に繋がったのではないかと考えられる。

真空ジェシカ

個人的な話にはなるが、決勝直前のラジオ番組「ラジオ父ちゃん」で、川北が「俺らのキャッチコピーは絶対お前ら(リスナー)が予想しても当たらない」と語っていた。しかし、いざ本番で発表されたキャッチコピーは3年連続の「アンコントロールIV」であり、その時点でネタが始まる前から1人で笑ってしまった。
1本目のネタは、2020年2回戦で披露し話題となった「商店街ロケ」のネタである。川北主導の大喜利羅列形式のコント漫才で、まさに真空ジェシカらしさが凝縮された内容だった。ただし、この形式のネタは通常、ツッコミの発言で笑いを取る部分が多いが、今年の真空ジェシカはさらに進化を遂げていた。コントインした「子育て支援」のくだりや「ジャンプは最後まで面白い」など、観客がツッコむ余地を残す形で、2人の間のやり取りそのものが笑いを生み出しており、例年に増して引き込まれる構成となっていた。
2本目のネタは「ピアノがデカすぎるアンジェラ・アキのコンサート」という内容であった。このネタは最終的に1/9票しか獲得できなかったが、個人的にはM-1史上でも1、2を争うほど面白いと感じた。掴みには真空ジェシカ好きなら誰もが知る「智春さん」を取り入れ、これが会場全体の期待感を一気に高める効果を生んでいた。また、あまり注目されていないかもしれないが、2人の演技力は本当に秀逸である。テレビ越しに見ていた自分も、ガクの立場に立ったかのように引き込まれ、緊張感のある不安定な気持ちでネタを楽しむことができた。

マユリカ

今回の敗者復活枠はマユリカである。敗者復活戦で披露した「舞妓さん」のネタは非常に印象的であり、特に「舞妓さんにとって一番大切なもの」のくだりは、マユリカらしい振って振ってからの大きなツッコミで笑いを誘った。阪本の「品どす」に即座に中谷が「納得いかないどす!」とツッコむ流れは痛快であり、非常に心地よかった。
しかし、本戦では敗者復活戦とは異なる「同窓会」のネタを披露した。前回大会後、大吉先生がポッドキャストで「阪本くんの仕草が役と合っておらず違和感がある」と指摘していたが、今回の大会ではマユリカの2人のキャラクター性が審査員や観客により伝わっていた。特に中谷のリアクションによって大きな笑いが生まれており、2人の魅力がしっかり発揮されていた印象である。
ただし、マユリカのネタの特性上、1つのボケに長い時間を費やすため、「モーニングセット」のくだりから最後の「ゆで卵」が伏線として回収されるまでの距離感がやや近すぎると感じた。「うんこサンドウィッチ」というワードが強烈すぎたこともあり、伏線としての存在感を隠しきれなかったのだろう。

ダイタク

ラストイヤーで初の決勝進出を果たした彼らに大きな期待を寄せていたが、海原ともこや大吉先生から「綺麗すぎる」という評価を受け、最終順位は7位に落ち着いた。
テンポの良さや2人の掛け合いは見心地が良く、ネタ自体も非常に完成度が高かった。しかし、2人とも同じ声のトーンで話し、さらに口数が多いため、今回のネタにおいてはインタビュアーが即座に大きくツッコむことができず、ボケが流れてしまう構成となっていた。このため、集中して見なければ笑いどころがわかりにくかった可能性がある。また、2人だけの計算され尽くした間合いでの掛け合いだったからこそ、観客を引き込む「共感の笑い」が少なく、結果として2人と観客の間にわずかな距離が生まれたように感じた。
もし兄弟ならではの口論の要素をもっと取り入れていれば、彼ら本来の「人」を活かし、漫才の構成に抑揚が生まれたであろう。その結果、より観客を引き込みやすくなり、賞レースにおいても有利に働くネタになったのではないかと考える。

ジョックロック

NHKで2年連続準優勝を果たしたジョックロックが、満を持してM-1決勝に進出した。ネタは「医療ドラマ」であり、結果としては9位に終わったものの、その日の会場次第では優勝する可能性もあったほどの爆発力を秘めたネタであった。
序盤の「マイナンバーカード」や「MRIのアラーム音」のくだりでは、しっかりと拍手笑いが起きていた。一方で、終盤にかけて福本のツッコミが不発に終わる場面が見られ、ツッコミのペースがやや早くなってしまったように感じた。また、審査員からも指摘があったように、ゆうじろーの振り自体では笑いが生まれにくいため、振りを減らすか、そこに大喜利要素を強く加えるべきだったのではないかと考える。
個人的な意見だが、今年から始まったコントイン時のゆうじろーのズレた返事や、福本の「早く言え!」「リズム感がなくて裏拍に乗れない!」といった小ツッコミは非常に魅力的である。これらを活かし、さらにテンポ感やボケ数を重視することで、賞レースでより高い評価を得られるネタに昇華できる可能性があると感じた。

バッテリィズ

去年から「エバースとバッテリィズは来年絶対決勝に行く」と周囲に宣言していたが、まさかバッテリィズが準優勝するとは思わなかった。
1本目のネタはつかみが非常に効果的であった。「名前を書いたら受かる大学、名前を書き忘れて落ちた」→「毎日楽しいぞ」というやりとりにより、エースのキャラクターが端的に表現され、観客にその楽しみ方が伝わったと考える。また、若林も指摘していたが、バッテリィズの特筆すべき点は寺家の安定感である。序盤はしっかり聴かせるテンポ感を保ちながら、終盤に向けて適度にテンポと音量を上げていく。さらに、エースにツッコむ際には感情に抑揚をつけ、難しい箇所は一気に読み上げるという緩急が非常に心地よかった。
歴代3位の得点率を叩き出し、1位通過でファイナルラウンドに進んだバッテリィズだが、ファイナルラウンドでは3/9票にとどまり、令和ロマンに一歩及ばず準優勝となった。1位通過のコンビが優勝を果たしたのは2019年のミルクボーイが最後であり、それ以降は優勝者が出ていない。近年では、1本目で跳ねすぎるとそれと比較され、票を獲得しにくい傾向があるように感じる。
ファイナルラウンドで披露された「世界遺産」のネタは、エースの無知で真っ直ぐな感性に加え、大山古墳を「墓」と伝えたくない寺家の葛藤に共感の笑いが起こる構成となっており、個人的には1本目よりも高度で面白いネタだったと感じる。

ママタルト

準決勝常連のママタルトだが、今大会では10位という結果に終わった。個人的にはもっとウケても良いと感じるが、812/900という得点は最下位として史上最高得点であり、得点率が初めて9割を超えた。
ネタは「銭湯」である。礼二を中心に、檜原のツッコミが大きすぎると指摘されていたが、個人的には初めの「エアコンのフィルター」の大きすぎるツッコミでむしろエンジンがかかったように思える。しかし、「掛け湯」や肥満が髪を洗うとき、最後の「珪藻土マット」のくだりでは、ツッコミのフレーズが長すぎるため、前半部分を聞き終わった時点で観客に後半のフレーズがバレてしまい、檜原がツッコミを続けている間に笑うタイミングを逃してしまうというなんとも勿体無い場面が見られた。
例えば、「冬の公衆便所で、なるべく手濡れなくない時か!」というツッコミは、「冬の公衆便所か!」で終わらせるか、「なるべく手が濡れたくない、冬の公衆便所か!」のように弱い方を前半に配置する方が、笑いの量としては増えた可能性がある。こうしたツッコミのフレーズの構成を工夫することで、さらにウケを取ることができたのではないかと感じる。

エバース

前回王者の令和ロマンと、4回連続決勝進出の真空ジェシカが序盤で高得点を叩き出し、初出場のバッテリィズが圧倒的1位で爆発。この展開は、まさに2019年のM-1で、かまいたちが2番手2位、和牛が3番手3位、初出場のミルクボーイが1位で後半に突入した展開を彷彿とさせる。つまり、和牛を穿つ「ぺこぱ枠」が今年も登場するのではと期待が高まった。
そんな中、9組目に笑神籤で引かれたエバースは、結果として真空ジェシカに1点届かず4位に終わったものの、この展開は非常に熱いものだった。「桜の木の下」のネタでは、テンポ感やワードセンスが全て完璧であり、お互いのキャラクター性や2人の関係がネタのやりとりを通じて少しずつ滲み出る、絶妙な「人」の表現が見事であった。
ネタの題材上どうしても長くなりがちな佐々木の設定説明パートは、ラフな話し方でありながら非常に分かりやすく、むしろ町田のツッコミのフリにさえなっていたように思える。また、佐々木が町田のことを「町田」と呼ぶことで、町田特有のキャラクターが強調され、全てのツッコミが大ハマりしていた。このネタは、エバースの持ち味が存分に発揮された一幕であった。

トム・ブラウン

6年ぶり決勝のラストイヤーとなったトム・ブラウンが今年のトリを務めた。予想の範疇ともいえる結果ではあるが、塙が自身最高点の95点をつけた一方で、他4人の審査員は自身最低点をつけるなど、まさに賛否両論の評価であった。
M-1の打ち上げで2人が触れていたように、役に徹するトム・ブラウンのネタの性質上、素に降りることができず、彼ら本来の「人」を出すことが難しいという圧倒的なハンデを抱えている。そのため、賞レースで大きな結果を残すことは他のコンビと比べて相当に難しい。しかし、ネタの終盤に差し掛かると、布川がツッコまず、みちおがコントインする「観客にツッコむ余地を残したすかしツッコミ」が会場にハマり、トム・ブラウン独特の雰囲気に会場を塗り替えていた点は見逃せない。
さらに言えば、トム・ブラウンの芸風が世間にバレすぎたことも、伸び悩んだ要因の一つではないだろう。例えば、さや香のように大きな結果を残したカムバック組の多くは、前回からネタのテイストを変えており、それによって観客の展開一つ一つに対する期待感を維持していた。一方、今回のトム・ブラウンのネタには、「冷静に考えればこの設定は面白い」と感じても、笑いこそ起きない箇所がいくつか見受けられた。その点が、彼らの芸風と賞レースにおける結果を左右した一因とも言えるだろう。

おわりに

本当に、ただお笑い好きな高校生がこんな大口叩いてるの、恥ずかしいですねー。大考察時代を感じます。
ただこの探究を通して、M-1に対する熱はより大きくなりましたし、悪いことばかりではないと信じてます。

いいなと思ったら応援しよう!